白い果実

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制作 : Jeffrey Ford  山尾 悠子  金原 瑞人  谷垣 暁美 
  • 国書刊行会 (2004年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336046376

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白い果実の感想・レビュー・書評

  • 世界幻想小説大賞受賞作。
    世界観がモロ好みでした。訳者の山尾悠子の格調高い文章がかなり幻想的な雰囲気を盛り上げてくれる。

    観相学が法律の全てという世界観。その他にも、理想形態都市、独裁者、美薬、青い鉱石、楽園ウイナウ、旅人、サイレンシオ、双子の番人、人狼…。世界観を色成す設定がセンスに溢れている!訳者のあとがきにも書かれていたが、ストーリーは女性に対する罪と贖罪への暗喩ともとれないこともない。独裁者ビロウと倒して終わりというところが普通すぎたのが少し気になるといえば気になったぐらいか。
    3部作のウチの1作目。まだまだこの世界に浸れるのが楽しみだ。

  • 「シャルビューク夫人の肖像」もそうだったけど身悶えしちゃうようなこのゾワゾワ感がこの人の特徴なんだなと読み進むうちにそのゾワゾワ感がいつの間にか消えて、切なく美しすぎるラストに感動。読むべし。

  • 1997年世界幻想文学大賞受賞作。
    20世紀の最後を飾る奇書とは訳者の弁。2004年8月発行。
    翻訳は山尾悠子・金原端人・谷垣暁美の3人がかり。
    古典を読むような文章にやや戸惑ったが、もとの味わいを出そうと苦心したらしい。
    理想形態市(ウェルビルトシティ)は、独裁者ドラクトン・ビロウが築いたクリスタルとピンクの珊瑚で出来た街。
    主人公のクレイは一級観相官。四輪馬車の迎えに乗り、北方の属領にある鉱山の町・アナマソビアへ出立する。
    アナマソビアはブルースパイアの発掘が行われ、青い粉を吸い込んだ鉱夫はいずれ青く染まってブルースパイアと化す。
    観相が異常に発達している時代で、幼女が人狼であることを見抜いた功績もあるクレイ。
    「白い果実」の盗難をめぐって、アナマソビアへ派遣されたのは左遷に近い。美しい娘アーラに出会って助手とするが滞在中に一時知識を失い、美薬という麻薬中毒も相まってとんでもない事態を引き起こし、流刑へ。
    旅人と呼ばれる人間ではないミイラの真実は?楽園とは?
    カフカの城とか…いろいろ思い出します。
    独裁と暴力と血と苦難と革命と…感情移入は出来ないが、架空世界を作りげたパワーは買います。

  • 幻想的であり、そしてなにより寓話的である。カフカの小説を彷彿とさせないではいられない小説だと思う。例えば「流刑地にて」のような作品。本全体を、罪、という基調が覆っているように感じてしまう。

    一方で、物語は後半に向けて勢いを増し、トールキンの「指輪物語」のような様相を呈してくる。と思ったら、ナントこれは三部作の第一部だという。なるほど、そういうエンターテイメントの香りがするなあと思っていたのは当然だったのだ。

    しかし、やはりなんと言ってもカフカである。この寓話の箴言は何なのだろう、と考えずにはいられないのだ。自然を思いのままに作り変える(ことができていると信じる)人類への警鐘か。あるいはマネーという実態のないものに振り回されることへの意趣の表れか。単なるエンターテイメントを越えた何かが魔物のように言葉の裏に潜んでいるように思うのである。

    人は何かを読み取られずにはいられない。村上春樹の新作を読んだ直後であったことも影響してか、そんなことを考えずにはいられないのである。例えば、タイトルにある「白い果実」。少なくともこの第一部ではそれは明らかにシンボルではあるけれども、何か象徴的な意味を明確に示すようではない。単純に言えば、それがよきものであるのか、あしきものであるのかすら、判然とはしない。あるいは、それは「指輪」のような存在なのかも知れない。もちろん、何かが隠されている気配は濃厚である。その寓意は第二部、三部を読まなければ見えてこないものなのだろうと思う。

    この気配から感じ取ることのできる仕掛けのようなものは、トールキンを持ちだすまでもなく、例えば「スターウォーズ」にも共通するような王道であるように思う。つまり、この物語には語られていない過去がある。その予感はたっぷりとする。だとすると、それを読まずにはいられないと思い始めるのだけれど、この一部の読者に偏愛を生むような物語の完結編は、はたしてこの翻訳陣で再び翻訳されているのだろうか、それが気になる(と思ったら、やっぱり)。

  • バベルの塔をモチーフにした、カバー装画がいい。街ひとつをそっくり呑み込んだ建築物という絵柄が、この三部作に共通するであろう主題を象徴している。ファンタジーなのだが、ディストピア小説めいた趣きもあり、寓意を多用した思弁的小説の装いも凝らしている。とはいえ、その本質は様々な怪異に満ちたあやかしを次々と繰り出し、見る者の目を眩ませる大がかりな奇術。ちょうど、理想形態都市(ウェルビルトシティ)を支配するドラクトン・ビロウが主人公の目を楽しませる手品と同じように。

    ヘルマン・へッセに『ガラス玉演戯』という小説がある。ガラス玉演戯というのは、「古代から現代に至るまでの芸術や科学のテーマをガラス玉の意匠として一つ一つ封じ込め、それらを一定のルールの下で並べていくことによって、ガラス玉に刻まれたテーマ同士の関係を再発見し、新たな発見・感動を生み出すという、架空の芸術的演戯」というものだ。

    人格形成小説(ビルドゥングス・ロマン)だから、一人の人間が如何にして人格を作り上げていくのかを描いている。弟子として師足るべき相手を探し、一段一段認識を高めていく。その舞台が、一種の理想的学園都市で、音楽や数学をはじめあらゆる学問技芸のマイスターが集まるカスターリエンは、第二次世界大戦の惨禍に嫌気がさしたヘッセが想像した究極の理想郷である。

    マスター・ビロウが作り上げた理想形態都市は、その裏返しである。師であるスカフィーナティに教わった記憶術、それは自分の心の中にある宮殿をつくり、記憶するべき考えを象徴する花瓶や絵画、薔薇窓といった物体に置き換え、宮殿内に配置するというものだった。知識欲の強いビロウは、宮殿ではおさまらず、それを都市の規模に変えた。そして、頭の中にある都市を現実に作り上げたのだ。

    多くの人々の知恵や技芸が互いを高めあい、相補い合って生成してゆくカスターリエンとは逆に、ビロウ一人のために都市があり、人々はその構成物に過ぎない。理想形態都市の住民は魔物の角から精製した粉末で一時恍惚感を味わったり、辺境の村に住む珍奇な生き物や剣闘士の競技といった見世物を見たり、とパンとサーカスを与えられることで懐柔されている。しかも人口増加に業を煮やしたビロウは人員削減のために主人公に命じ、観相学的観点から見て劣位の市民を処分することまで始める。

    主人公のクレイはビロウの覚えめでたい一級観相官である。高慢で自惚れが強く人を人とも思わぬ傲岸不遜な人物だが、ビロウには忠実だった。そのクレイがスパイアという鉱石の産地である属領行きを命じられる。教会に置かれていた白い果実が盗まれ、その犯人を観相術で探せというのだ。属領でクレイはアーラという娘と出会う。理想形態都市に憧れ、そこにある図書館で学ぶことを夢見るアーラは独学で観相学を学び、クレイに劣らぬ能力を持っていた。

    アーラを助手にしたクレイは何故か自分の能力を一時的に失い、捜査をアーラに頼らざるを得なくなる。捜索に失敗すれば硫黄鉱山送りはまちがいないからだ。立場の逆転によって自尊心を傷つけられたクレイは詭計を案じ、アーラを犯人だと告発。捕らえられたアーラの顔にメスを入れることで、従順な相を生み出し反抗心を除去するという暴挙に出る。ところが、大事な手術の最中に麻薬の一種である美薬が切れ、手術は失敗。アーラの顔は二目と見られぬものとなる。なぜなら、その顔を見た者は恐怖のあまり死んでしまうからだ。

    任務に失敗したクレイが送られるのがドラリス島という流刑地。かつて自分が罪人と決めつけた人々を送り込んだところだ。高熱と悪臭が充満する硫黄採掘場である。ダンテの『神曲』の地獄めぐりを思わせる、この世の地獄で、クレイは自分の犯してきた罪の深さを知り、アーラに赦しを請いたいと願うようになる。赦免され、理想形態都市に... 続きを読む

  • 感想は「緑のヴェール」へ

  • 広義の意味でサイバーパンク的というか。私がこっそり名づけている狂都市ものというか。ビロウという男(支配者)が頭の中で構築した理想の都市が具現化されていて、そこでへまをやって属領に送り込まれた男が主人公。結局そこでもへまというか云々あってもっとひどい島に送り込まれてというなかなか壮大な物語ですごく面白く読んでいたんだけど、なんか後半がな。
    主人公、すっごい傲慢でイヤな男なんだけど島での強制労働で心を入れ替えてしまう。しかも結局理想的な都市よりも緑が合って光があるだけで幸せを感じられる素朴な村での生活がシアワセって。本当は☆3ぐらいだけど、三部作らしく、ラストには「百年の孤独」も驚くしかけが用意してあるとあとがきに書いてあったので期待を込めた☆ですこれは。

  • この語り手はほんっとうにいいとこなしで、中盤を経てもまだ傲慢。
    それなのに読ませるのは奇想オンパレード(顔ビーム女!)と、

    やっぱり文章だ。
    「ミネハハ」方式に初めは眉をひそめていたが、山尾悠子は偉大。そして金原氏も偉大。

  • ここ何年かで一番楽しめた本。

  • 世界幻想文学大賞に恥じぬ読み応えのある一冊。3回読んでも新たに楽しい、が。3部作・・・続きを買おうにも近くの書店になく、アマゾン待ち中。ただの印象だけれど、ロバート・アーウィンのアラビアン・ナイトメアにちょっと感じが似ている。

  • 幻想の中では、醜悪や恐怖もまた美である。
    しかしこの本の美しさは、山尾悠子氏の文体によるところも大きいのだろう。

    楽園の禁断の果実を巡る物語。
    そして一つの帝国の崩壊。

  • 冒険活劇、幻想的な世界観、次々登場する空想上の生物たち、空想上の機械たち、空想上の都市、国家、世界。
    そんな、作り上げられた世界に「入り込む」ことがSFやファンタジーの醍醐味だとするならば、本書はその醍醐味を存分に味あわせてくれます。読めば読むほど頭から飲み込まれてしまいます。それくらいの傑作ファンタジー。
    ただ、傑作は傑作でもオーソドックスさはどこにもありません。とにかく独特。
    しかし、読めばわかりますが、見たことない世界なのにスッと景色が見えてきます。カラフルでグロテスクで陰鬱で息苦しい世界が良く見えてきます。否応なしにそんな世界に引きずり込まれてしまいます。
    派手なストーリーではありませんが、世界観、登場人物、浮き彫りに描かれる欲望や罪の意識などすべてが魅力的な小説です。今までにない世界にどっぷりつかりたい方は是非どうぞ。

  • 大人のファンタジー。主役は普通かっこいいものだけれども、全然かっこよくなく嫌な奴だったが、話に引き込まれてしまった。
    とても幻想的で、霧の中の世界を見ているような不思議な感覚を味わった。
    天から地へ、地から這い上がり、主人公が一人の権力者ビロウによって人生を翻弄される。彼を中心ではなく、物語の上に主人公が載っている感じ。しかも物語の波から落っこちそうな。物語自体がビロウ自身なのかもしれない。

    猿人間、狼人間、彼の人、青い炭坑?の人たち、硝子の中の世界
    各種族がそれぞれの文化や宗教観、世界観が別々でそのおのおのの世界を楽しめた。


    備忘録:
    顔でその人の生りを判断する仕事。ある種、むちゃくちゃな職業。そんな彼が失敗をしでかし、不思議な力がある果実を探して、青い炭坑の街へ行く。そこで一目惚れをし、、、、
    彼の人と愛しい人を助けるために戦う、、、、

  • これ、読みづらい小説だ~と最初は思ったけど、意外とさくさく読めて、冒険小説であるな、これは、と。そして、魅力的なキャラクターが多過ぎて是非とも映画化希望です。映像で見てみたい!

  • 12/18 読了。
    想像よりずっとずっとエンターテイメントしてる小説だった!楽しい!大人の読むファンタジーだ。
    ジェットコースターみたいに展開が早いけどエンタメ一辺倒にならないのは、やはり金原瑞人氏の慧眼によって、訳文を山尾悠子自身の手で山尾文体に書き直すという采配がなされたおかげだと思う。

  • 『白い果実』は、風吹き荒ぶ曇天の日からはじまる。
    ウエルビルトンシティ 理想形態都市とは一体何なのか。

    そこは、独裁者ビロウの支配する極めて異常な都市で、ビロウの部下でありこの本の主人公であるクレイは、優秀な観相学者なのだ。

    ビロウの元で辣腕をふるうクレイもまた極悪非道な男で、異世界にしか存在して欲しくないような性格をしている。
    彼の任務は、盗まれた白い果実を取り戻し犯人を見つけ出すことだったが、物語はどんどん違う方向に展開を見せ、ジェフリー・フォードの作り出す想像の世界に引きずり込まれてゆく。

    『シャルビューク夫人の肖像』 とは、違うジャンルの小説で、SFの部類に入るのだろうが、本書は実は、三部作で、その一作目が『白い果実』だそうで、完全完結というような気がしないのはそのためなのかもしれない。

    本書は、世界幻想文学大賞を授賞。

  • なかなかに想像力をかきたてられる物語でした。
    3部作の第一作ということで、続きも読んでみようと思います。

    「白い果実」が始めは単に不死の果実だと思って読んでいましたが、そんなに単純ではないのですね。

  • わけはわからない。だが、イマジネーションと、想像される色とガジェットの洪水が凄まじく、そして思いの外読みやすくもある。ファンタジー嫌いには厳しいかもしれないが、文字で絵画を描いているような秀作。

  • これぞ、世界幻想文学大賞!
    世界観はもとより、次々と予想外の展開で進みゆく文章表現に読み終えて感嘆しました。読み進めていくうちにいつの間にか、その世界にいるような文章がかなり魅力的でした。

  • お、終わったーーーー!

    幻想小説と呼ぶにふさわしい一冊。でも、小難しいところは全く無い。読み応えのある物語。

    特に、山尾悠子さんの書く文体は硬質で、高慢で冷酷な主人公の性格によくマッチしているなーと思った。

    でも、慣れない雪道でずっこけたり、お間抜けな一面もあるんだよね。

    三部作だそうで、残りの2作も読んでみたいな。

  • 文句なしに面白かった!こういう話が好きです。

  • 金原瑞人らが訳してそれを山尾悠子が書き直したという一冊。山尾悠子という名前にひかれて。内容は大人のおとぎ話といった感じ。舞台は欧州を元にしたようで、ある観相学官の不思議な旅が書かれている。なぜか世界観がいまいちつかみにくい感じがした。三部作の一つ目のため、今後どうなるか、という意味では楽しみ。

  • 幻想文学というのはこうでなくっちゃ。というほど語られる世界観が素晴らしく悪に満ちていて美しい。独自の神を崇めるさびれた鉱山の村、ピアノを弾く猿のいる厳しい流刑の島、神の奇跡を起こす独裁者の治める都市、と次々に舞台を変えつつも、常に痛みと虚無感とを湛え、タイムパラドックスや楽園願望やメタのエッセンスも織り交ぜた贅沢さ。細部に至るまでがっちりと構築され、ページの間にどっぷりと遊べる濃密な時間。流麗な訳文、装丁も含めて大ヒット。何よりあと2冊続刊という「物語の途中」をまだまだ楽しめるのが嬉しい。心の本棚の、特別な場所に置くことが決まった本。

  • 山尾悠子さん訳に惹かれて読んでみました。

  • 3部作の1作目。最低な主人公が話が進むにつれてどんどん良い人になっていきます。
    ウッド(犬)との愛に涙。

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