聖母の贈り物 (短篇小説の快楽)
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みんなの感想・レビュー・書評
若島正さんが現役世界最高の短編作家と紹介しているが、それに全面的に同意である。収録作マティルダのイングランドの素晴らしさといったらもう。ちくまのアイルランド短編選に収録されているロマンスのダンスホールも大好きです。
第一話目からゴツッとした重たい球が飛んでくる。時間のあるときに取っておいて、どっぷり堪能したい一冊。
「マティルダのイングランド」が怖面白かった。初めは農園育ちの女性が過去を振り返る穏やかな話かと思っていたら、最後はホラーなオチが待っていた。
凄い切れ味。一見弱く取るに足らないと思われていた者が恐ろしく強くまっすぐ (KYともいうかも) で、それを前にすると普通の人々の世間体、優しさ、欺瞞などは弱さをさらけ出さずにいられない。
ストーリー・テラーの国、アイルランドは、多くの作家を輩出してきた。 語り部文化ケルトの子孫であるアイルランドの人は話が好きで、神話や伝説、妖精の話を子供の頃から聞いて育つ。 しかし、ウィリアム・トレヴァーの短編小説の世界は、かなりユニークだ。 「聖母の贈り物」は12話を収録したもので、様々な時代や国々を舞台とした短編集である。 トレヴァーの世界に慣れるには、多少の忍耐力とアイ... 続きを読む »
短編小説の名手と知られる、世界的に評価の高いアイルランド人作家で、彼の短編を気に入って日本で紹介・翻訳している人々の顔ぶれ(柴田元幸、村上春樹、柳瀬尚紀等)を見れば納得できる話だ。 この本はすでに発表済みの短編12編をアンソロジーとしてまとめたもので、いわばトレヴァー入門編にあたるもの。読み終えて感じるのは、どの短編にも強くキリスト教の抑圧的なイメージが(カソリックやプロテスタントを問わず)感じら... 続きを読む »
12篇からなる短篇集。長編小説を読んだ後のような、ずっしりとした満足感。「トリッジ」の辛らつさに、登場人物とともに驚き、「こわれた家庭」では、静かな生活が突然暴力的にかき乱されるミセス・モールビーにやきもきし、表題作のラストでは、何故か涙がこぼれ・・・。どの作品も細やかで、静かな語り口で。しみじみと孤独で。
――Selected Short Stories by William Trevor
収録作の中で圧巻なのが、中篇といってもいい「マティルダのイングランド」。この小説は、戦場の出てこない戦争小説でもあり、そして幽霊の出てこない「亡霊」の物語。凄みがあります。
初めて読んだけれど全て面白かった。生きてそばにあって変わるものよりも、死んだ人や、土地、家と一方的な会話をしたり勝手に支配されたりするのが好きそうなマゾっぽい人たちが主に主人公になっている。短編の並べ方も上手。最初の数編を読むと底意地悪くて巧みな、と思ったが、読み進めるに従ってもっと楽天的でシンプルなところもある作家なのだということが分かるように構成されているようだった。個人的には『マティルダのイングランド』の場所に対する不健全な執着心が『丘を耕す独り身の男たち』では崇高な感じに描かれているところとかが印象的だった。どんな彫刻を作っていたのか。






