あなたまかせのお話 (短篇小説の快楽)

  • 国書刊行会
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本棚登録 : 138
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336048424

感想・レビュー・書評

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  • うーん。全体的に短い短編が沢山。特に内容はない。カフェなどでとりとめなく今日あったことをだらだら話す、そういう感じ?人間だけでなく普通に動物も参加してくるな。フランス語ってわからないが、読んでる最中に何だかピアノを弾いているような感覚が蘇ってきて。はたから見ると演奏者は自由に弾いているように見えるだろうが、実際はリズムや旋律という決め事に沿っているのであり、意外に自由度は低い。この本が別にリズミカルというとそうでもなく。まあ、陽気な作品であるが。

  • おもちゃ箱の様な本

  • 代表作『文体練習』などが知られるレーモン・クノーの短編集です。
    本書は著者の没後にまとめられたもの。
    原題を直訳すると「お話と思いつき」とのことですが、その名のとおりクノーのさまざまな試みが味わえる1冊です。

    本書の後半はクノーのラジオ対談の邦訳が収録されており、言語や文学にクノーがどのように向き合っていたのかをうかがうことができます。
    文体の構造を分析してパズルのように組み合わせてみるなど、創作というよりも実験というような試みもされているのですね。

    独特のユーモアや魅力的なわけのわからなさに、くらくらしてしまうのでした。
    個人的に好みだったのは「パリ近郊のよもやまばなし」、「血も凍る恐怖」、「加法の空気力学的特性に関する若干の簡潔なる考察」。

    もう1度『文体練習』を読んでみたくなりました。

  • 小さな遊び、オムニバス・ムービー、そんな感じ。本当にうとうとしたときにベッドで読むのにぴったり。

    言葉の選び方、組み合わせがすごく綺麗。久々に出会った、何度も、ところどころ読みたくなる本。

  • 前半は著者没後に単行本未収録の小編をまとめた本の訳。未収録小編だけあって、お話に入り込もうとしたところですとんと終わってしまうものが多い。クノーの入門編に良いとはいえないが、目に見えない犬が同行するポルトガル旅行の話(「ディノ」)や、犬や馬が人よりも生き生きと話しだす話(「森のはずれで」「トロイの馬」)が面白かった。

    後半はラジオ対談の書き起しで、クノーが自らの創作、フランス語、ウリポの活動内容などについて語る。こちらは文章に興味がある人ならどこか興味をひかれる内容だろう。「ザジ」がなぜあれほど有名なのか、『百兆の詩篇』のしくみ、ウリポの試みの一端を垣間見ることができた。

  • どうしてこんなにブンガクっておもしろいんだろう!
    (2010.05.27)

  • 「そうかもね。僕にははっきり感じられるよ、君にとって僕の価値は爪切り以下なんだってね。ストッキングの伝線、靴のかかと、洋服屋の住所、エレベーターの故障にも及ばない・・・。」−『通りすがりに』

    「ええ、単なる責任以上のものと言ってもいいでしょう。神が世界を創り給うたとき・・・神は世界を言葉によって創ったと言われていますが、そのことが後にあらゆる厄介をもたらしたことはご承知の通りです。」−『レーモン・クノーとの対話』

    クノーの「文体練習」を読んだとき、流れの中にある小さな「ずれ」、それは「すれ違い」と言い表すのが適当なようなものだが、を一瞬感じたのだったが、その流れが何度も何度も繰り返される内に、徐々に角が丸くなり、ずれはなめされてしまった。もともと「文体練習」は語り口の、言ってみれば言葉の並べ替えの面白さに力点のほとんどが集中しているようなものだし、ずれは言葉の入れ替えの内に埋もれていってしまう運命だった。

    しかし、実はその最初に感じた小さな「すれ違い」、それはものごとが落ち着いて行くべき先に落ち着かないこと、それこそが、クノーの面白さの本質であったのかも知れないと、この「あなたまかせの話」読んで思い直した。

    表題作となっている短編(?)は、そのずれを最も先鋭化させたような作品かと思うけれど、一つの文章の中で起こるであろうと予測されるようなものごとのベクトルは、決まって覆される。言葉はすぐさま全く別のイメージと結びつき、どんどん別の方向へ滑って行く。そんな例がクノーの本には溢れている。読み飛ばしてしまえば何ということもないギャップであっても、気づくと知らない場所を歩かされている自分を発見したりする。頭の中がくるくるっと回る感覚がとても楽しい。

    でも実は楽しんでばかりはいられないのである。言葉は実に厄介なものだから。音の無い本の中にひっそりと潜んでいる言葉であっても、いやだからこそ、読み手によって確実に読み取られる意味が保障されてはいない。それはひょっとしたら言葉を紡ぎ出した者の意図をはるかに越えて、生き延びていく可能性がある。

    言葉を連ねるとき、あるいは何かに書きつけるとき、少なくとも書き手は言葉に載せたい思いに強いこだわりがある筈だと思うけれど、クノーはひょっとすると、そんなことにはこれっぽちの意味もないんだよ、言葉としてそこにあることが全てなんだ、ということに誰よりも早く気付いていた作家なのかも知れない。

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著者プロフィール

一九〇三年ル・アーヴル生まれ。パリ大学で哲学を学び、シュルレアリスム運動に参加。離脱後、三三年に「ヌーヴォ・ロマン」の先駆的作品となる処女作『はまむぎ』を刊行。五九年に『地下鉄のザジ』がベストセラーとなり、翌年、映画化され世界的に注目を集める。その後も六〇年に発足した潜在的文学工房「ウリポ」に参加するなど新たな文学表現の探究を続けた。その他の小説に『きびしい冬』『わが友ピエロ』『文体練習』『聖グラングラン祭』など、詩集に『百兆の詩篇』などがある。一九七六年没。

「2021年 『地下鉄のザジ 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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