ネクロフィリア

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336051097

作品紹介・あらすじ

サドから、バタイユ、ジュネ、マンディアルグの系譜に連なるフランス・エロティシズム文学の秘められた傑作、20世紀最後の禁断の書物。衝撃の"黒い文学"。

感想・レビュー・書評

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  • ほーっと溜息。物言わぬ死者達に纏わる静謐。触れれば触れる程に夢のようにほろほろと崩れゆく身体。贈り物の包み紙を解く様に、秘密の園へと分け入る様に、甘い陶酔に身体ごと浸っていれば、いつしか麝香や蚕の薫りも強烈な腐臭になってゆく。それでも抗えない、束の間の静寂の美。青年の日記に綴られる、死せる恋人達との誰も知らない甘美な日々。儚い夢の後、死者達は羊水のような河を漂い、海の生物達に愛され食され、循環していったのだろうか。甘い腐液を養分に育つ、妖しい花のような青年の恍惚ももはや爛熟。やがて根腐れ、崩れゆくだろう。

  • 文章が身を結ばない

  • 死体とセックスすることに淡々と勤しむ主人公に激しく興奮する。
    フランスのお耽美な世界を堪能できる一方で、
    日記としての記述はまるでレポートを読むような気分。
    嗅覚や触覚を刺激してくる生々しさと、無感情で距離を感じる思考回路のバランスがたまらない。

    挿絵や装丁も含めて本当に綺麗な一冊。
    何がなんでも手元に残したくなること間違い無し。

  • ネクロフィリア-死体に性的興奮を感じる異常性欲。屍姦症

    死体愛好家による日記という体裁を取り美しい文章のように綴られているがその内容は醜穢で残酷だ

    生きながら死にたい、二項対立が上手く組み込まれている作品
    作者によるコラージュも素敵

  • 刊行当時気になっていながら、タイトルから想像されるあまりの暗黒ぶりに尻込み。近頃思い出してようやく買った。
    原著はフランス語と了解したのち、著者のWが濁るラストネームに首を傾げた。訳者後書きで納得。そしてフランス人と思ったのに、「ガブリエル」でつい男性だと思ってた。フランス語は難しい。

    ある屍体性愛者の手記。1人称の呵責の無さ(何しろのっけから飛ばしてる)で、老若男女あらゆる恋人たちとの交歓を綴る。少年期に発見した死の芳しい香り、性的陶酔から、現在耽ってやまぬ死者の賞玩、死への憧憬とそれらの隔絶へのジレンマ。壮絶な内容であるはずが、とどめようのない腐敗と約束された別れまで含めて、あたかも美しい悲劇のように思われてくるのに怖気をふるう。読者は自身の良識(=社会一般の規範)とリュシアンの愛(=社会に抑圧される自由)の間で宙づりになる趣。もしいずれ墜ちるとして、落ち着く先はどちらだろう。そんなふうに危ぶみたくなるのも、この本の黒い物騒さの一部であるかもしれない。禁忌と、禁忌に背く自由として屍体性愛を描くという挑戦に脱帽。これが読める自由に感謝。
    根付師の名前らしい「コシ・ムラマト」が気になる。架空か実在か。実在であれば是非作品を見てみたい。

  • 蚕蛾のかおり

  • ネクロフィリア

  • 題名も、題材も、冒頭の一行目も、何一つ私の好みに引っかからないのに、何となく気になって手に取ってしまう作品に出会うことが時々あります。
    本作がまさにそれでした。

    読んでる最中ただただ不快を感じるようなテーマの筈なのに、何となく仄暗い疼きを掻き立てられるこの感触は何と呼ぶのでしょう。痒いところを掻いても掻いても収まらないあの感じに近いかな。

  • 他の性的偏向については、おおよそ想像力の及ぶ範疇にあると思うのだが、ネクロフィリアとなると、もはやその限界の外に存在すると言わざるを得ない。しかも、本書で初めて知ったのだが(あるいは、それはこの小説の主人公リュシアンの特殊性なのかも知れないが)、死体愛好者たる彼には老若男女の区別がないことに、あらためて驚く。しかも、発覚するという怖れは持っても、腐乱を恐れないというのは、さらなる驚きだ。カイコ蛾の芳しい死の香と、体温を喪失した死者の身体―生々しいリアリティに満ちた現代ゴシック小説というべきか。

  • 屍体愛好家の独白を日記風に落とし込んで描かれる。
    フランス発祥のこの本は、まるで黒くて少々粘性を持つ液体のたゆたうような趣を感じさせる。
    猟奇的なものではなく、至って純粋な屍体への愛を綴っている。

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