朱日記

著者 :
  • 国書刊行会
4.41
  • (8)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 85
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336058911

作品紹介・あらすじ

鏡花の絢爛華麗な幻想美と、ノスタルジー溢れる和ポップ絵が渾然一体となった文芸絵草紙。朱文字で書かれた日記、少年が握る紅いグミの実、魔人の羽織る赤合羽、城下を焼きつくす紅蓮の炎。あやかしの色彩が乱舞する幻想世界。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 中川学さんの挿画を見る為の本。それに尽きます。泉鏡花の紡ぐ物語は、古い城下町•透き通るような白い肌の美少年•紅い簪を下げた姉さん•緋色の衣を着た大入道•数えきれないほどの猿、猿、猿…。そして城下を包む紅蓮の炎、と、読む者のイメージを刺激しまくります。そのイメージを掻き立てて止まないのが中川学さんの挿画の素晴らしさです。文体は難しくても、挿画を見るだけで買う価値があります。
    個人的には明治期の木造校舎の絵に惹かれました。なんなんだろう、この既視感は。

  • 泉鏡花の短編を絵本仕立てにした一冊。短いのだけれど読みごたえはたっぷり。そしてこれ、二色刷りなんですけど。たった二色だなんて思えない……! 鮮烈で美麗な一冊です。
    不吉な予兆が次々迫りくる序盤からしてすでに取り込まれます。泉鏡花は文章が難しいと言われがちだしそうかもしれないのだけれど、しかしじっくり読めばとにかく綺麗なんですよね。それがこの絵とも相まって、なんともいえない魅力。人外のものもまた美しく恐ろしく、終盤は壮絶でありながらもどこかしら静謐さを感じさせられました。

  • イラストがとても好きです!
    とても泉鏡花らしい作品だと思います。
    避けられない災害を怪異と重ねる、そして艶やかな美女...。鏡花の作品の特徴がしっかり現れた作品だと思います。

  • 鮮やかで幻想的な朱と赤の使い分け。

  • 装丁が素敵すぎる。透かした紙で朱をのせた扉がいい。
    解説を読んでやっと話が掴めました。たしかに、理不尽な災害など自分の力じゃどうにもならない災難に見舞われている現代にこそ、読むべきお話なのかも知れない。

  • 『絵本 化鳥』に続く中川学による泉鏡花絵本。
    ごく短いお話ながら、場面を効果的かつふんだんに絵に起こしているため、実際以上のボリュームで味わえる。基本となる朱と墨の2色が終始映えて、どこか寂しげに物凄い。
    紙がしっかりとしていて適度な重厚感がある。普通のハードカバーより少し大きい程度のサイズ(A5変型判)は「絵本」らしくはないのかもしれないけど、そもそも大人向けと思えばこれは絶妙な落としどころかも。大きすぎず小さすぎず、薄くなく軽くなく。

    雑所先生の語り口が演出する緊張感が良い。はじめはなかなか本題に触れられなかったのが、次第に滔々と流れるようになり、最後には焦りと不安に大いに荒れる。浪吉の語る「姉さん」がどんどん予兆を裏打ちしていくのに、最後まで動けなかった彼がかわいそうで、でも仕方ないとも思えてやりきれない。浪吉の言うとおりにしたところで、火事が防げたわけでもないのだろうけど。
    「姉さん」と赤合羽の坊主の間に何があったのか、判然とせずに終わるのもまた良かった。そもそも雑所先生は例の予兆を偶然垣間見てしまっただけで、事態に関わる役どころとしては端役もいいところなんだろうな。そこがこのお話の面白さでもあると思う。逆に浪吉は、実はもう少し詳しく話をほのめかされて、あるいは察してでもいるのかもしれない。
    語り部になりそこねた源助は惜しかったような、結局雑所先生が足踏みするための人材としてそこにいたような……「人」文字のくだりの心理といい、人間臭くはあった。「緋の法衣」や「城下の寿命」と確信的に言っていたのに、あの直後にどーんと猿の絵だから肝が冷えた。

    絵本で読むのと普通に小説として読むのとでは、だいぶ印象が変わりそう。

  • 絵が綺麗で絵本としてはいいと思います。ただ小説としては他の泉鏡花作品と比べると少しおちるように思います。しりすぼみな終わり方でしたが、謎を謎のままに残したのは意図があってのことなんでしょうか。

  • 鏡花の絢爛華麗な幻想美と、ノスタルジー溢れる和ポップ絵が渾然一体となった文芸絵草紙。朱文字で書かれた日記、少年が握る紅いグミの実、魔人の羽織る赤合羽、城下を焼きつくす紅蓮の炎。あやかしの色彩が乱舞する幻想世界。

  • うーん、冊子にある通り、モノクロと赤なのに、美しい絵でした。
    雑所先生渋くて素敵。
    これからも鏡花作品が絵本化等して広まると良いです。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泉鏡花の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ウンベルト エー...
小川 洋子
ルイス・キャロル
トーン・テレヘン
村上 春樹
エラ・フランシス...
ホルヘ・ルイス ...
泉 鏡花
宮下奈都
江戸川 乱歩
ヨシタケ シンス...
アンナ カヴァン
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×