聖ペテロの雪

  • 国書刊行会
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336059529

作品紹介・あらすじ

ある小村に村医者として赴任したアムベルクは、亡父の旧友フォン・マルヒン男爵とその養子の不思議な少年と出会う。帝国復活を夢みる男爵の謎の計画に次第に巻き込まれていくアムベルク。夢と現実、科学と奇蹟の交錯がスリリングな物語の迷宮を織りなす傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 読んで良かったです。
    小説でないと、表現できないことがあると思いますが、この本もそういうものではないでしょうか。
    心に残った言葉は、“我々の時代の信仰”。
    我々の時代の信仰というのは存在すると思います。
    宗教という狭いくくりではなくて、その時代に流れる思想というもので、少しずつ変化していくものです。

  • 読書メーターから移記

    内容に全く踏み込めないのが残念だけど、とにかくこの本は一気読みをお勧めします。入れ子の物語が現実なのか夢なのかは永遠の謎。解説者の指摘通り、恋愛の出だしに違和感があるのも事実だが、それはペルッツの仕掛けとしか思えず、記憶の曖昧さとしてしまえば、どのようにでも説明がつく。再読に耐えうる価値ある逸品。何れにしても読後感の素晴らしさという観点で、ペルッツの小説はピカイチ揃いと思う。

  • よくわからなかった。主人公らしき人物がある日病室にて目覚める。自分はどの位前からここにいるんだ?と聞いても、皆が5週間というのに納得きかない。いや、自分の記憶の中では雪が積もってたから、それから数えて現在雪が積もってるわけない。えー、それってどの記憶のことなんですかあー?なんかね小柄なギリシャ人の女がいてね、といくつか時代を挟んでその女性がちびちび乱入してくる。最後に知り合いの奥さんとして、女性が紹介され、うっかり名前で話しかけてしまう。同級生でしたから。確かにそうだったわね。ううーん。スパイなのかな?

  • 主人公の経験が真実なのか、主人公が目を覚ました病院の人々が言うことが真実なのか…私には後者に思えます。
    ビビッシェへの恋情を拗らせている姿は読みながら不気味に感じていたので解説を読んで腑に落ちました。

  • 国書の本は惹かれるものは多々あれど、読破できるかとなるとなかなか手を出しづらく、観賞用の本というのもまぁ悪くはないけれど、そればかりというのも著者にとっては如何なものか。というわけで実際新刊書籍として買うのはあまり多くはない。
    けれど、こちらはまず手にとって「厚くない!これなら読める気がする!」手に取った大きな一因は秋屋さんの表紙なんですが、帯もこんな感じなので↓

     神聖ローマ帝国復興を夢見る男爵の秘密の計画とは?
     夢と現実、科学と奇蹟が交差する時、
     めくるめく記憶の迷宮がその扉を開く。

    …今思えばこの帯、結構ネタバレてるけどいいのだろうか。ともあれ購入してみたわけです。

    そもそも翻訳物自体が、装丁やらあらすじやらは気になっても、どうしても独特のリズムなのか言葉の変換の微妙な齟齬なのか感覚表現の差なのか、なかなか受け入れ難い体質なもので、はっきりと「探偵物」とか「歴史物」とか「刑事物」とか大筋が通ってないとなかなか楽しむというところまで辿りつけない。
    で、こちらはその対極にありそうなんですが、冒頭からしてもう「おおおきたきたこの夢か現かわからない設定…大丈夫かな…」と思いながら読み進める。結果としては、やっぱり翻訳物独特の空気感は感じるのだけど、思ったより読みやすく、話の流れも所々飛んではいてもそこまで気になるほどでもなく、一連の流れとして捉えられたので、飽きること無く最後までスラスラと読了。

    何より自分がもやもやとしたところを全て最後の訳者の解説で触れてくれたので「自分の感覚は間違ってなかったんだ!」と腑に落ちて、稀に見るスッキリとした読後感。というか今まで自分が感じてきた翻訳物に対する「飛んだ」感とか「どっちつかず感」とかも実は間違ってなかったんだろうか。もしやそういう書き方がよくあるだけ?
    その上で再度冒頭からさらっと見返して、ようやく〇〇物としてとかではない「物語」として1冊読み終えられた満足感。

    その「物語」としては、やっぱり結構帯でネタバレてる気がするけど(苦笑)、タイトルとなっているものといい、かなり面白いネタの絡め方だとは思う。その分もう少しクライマックスあたりでは盛り上がりが欲しかった。せっかくいいネタなのに、尻すぼみというか、もう1発くらいどんでん返しなり大団円なりあったら引き込まれるのだけど、そこをあえてこのもやもやに包んで終わらせるのが意図的なのか。
    うーんでもネタ的には本当に面白いと思うので、嫌いにはなれない。

    というわけで、さらっと読めて面白いけどちょっと消極的…けど国書がさらっと読めるって凄くない!?というあたりでこの本を推したいです。
    この作者でこの訳者なら、他の3冊も読めるだろうか。

  • 国書刊行会のレオ・ペルッツ・コレクション4冊目。巻末の訳者あとがきによると、国書からの刊行は、ひとまずこれでおしまい……らしい。短編集も邦訳して欲しかったのだが、仕方ない。
    さて、本書は、『信頼出来ない語り手』を主人公にした幻想的なサスペンス。果たして主人公の体験は事実なのか、夢なのか、はっきりとしたことは解らない。主人公が体験した出来事は生々しく描写されているが、言動が何処かおかしいからだ。個人的には妄想説に1票なんだけども……。

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著者プロフィール

レオ・ペルッツ(Leo Perutz)
1882年プラハ生まれ、ウィーンで活躍したユダヤ系作家。『第三の魔弾』(1915)、『ボリバル侯爵』(20)、『最後の審判の巨匠』(23)、『スウェーデンの騎士』(36)など、幻想的な歴史小説や冒険小説で全欧的な人気を博した。1938年、ナチス・ドイツのオーストリア併合によりパレスティナへ亡命。戦後の代表作に『夜毎に石の橋の下で』(53)がある。1957年没。

「2022年 『テュルリュパン ある運命の話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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