ようこそアラブへ

  • 国書刊行会
3.21
  • (1)
  • (6)
  • (4)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 80
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336061010

作品紹介・あらすじ

人格まで透視するような鋭い眼力を持つ、と思えば、物を順番に揃えることさえ覚束ないアラブ人、無計画なまま長期間放っておいても最後には超スピードで成功に導くアラブ人、毎日5回神に祈りながらも大っぴらにズルをするアラブ人。遠い異国の異教徒である彼らの価値観や倫理を、どうやったら日本人は理解できるのだろうか。
人間世界は不平等と最初から謳うクルアーンは、神の創る絶対的に平等の来世で天国へ行けるように、苦しい現世を全力で精進せよ、と人間に説いている。でも人間はいつだって愚かで間違いを犯す存在だ。その不完全な人間をいかに許し、慈しみ、共存していくかがイスラームの命題である。また人類共通の問題であり、未来への鍵でもある。
内戦がくすぶる中東社会で、燦然と輝き続ける未来都市ドバイ。高賃金、安全、宗教的な保護を求め世界中から集まる人々は、自らの能力を頼りに未来を摑もうと凌ぎあっている。その姿はまた未来の世界の縮図でもある。
世界人口の四分の一となったムスリムの思考や価値観を、日常生活を綴った身近なエッセイの中で解き明かす本著。そこに見えると必然は、新鮮な驚きに満ちている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アラブ人と結婚し、嫁という立場でUAEに長く住んでいるハムダなおこさんという方の目からみたアラブ世界。

    この間読んだイスラム世界のエッセイが主にエジプトとアジアを舞台にしていたのに比べると、ぐっとコンサバなイスラム社会という感じ。

    あくまで旅人として滞在していた女性の書いた本と、家族としてイスラムのルールに縛られて生きなければいけない女性の書いた本では、やはり目線も感じ方も違う。改めて、アラブにはアラブの不平等や生きづらさがたくさんあるのだなと感じた。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50036188

    2017年度の「世界の宗教と国際情勢」でも取り上げられました。

  • アラブ首長国連邦(UAE)の日常を紹介したエッセイ。
    ・単純作業が苦手だがここぞという時の実行力はすごい
    ・学校の儀式等で男女が同じ空間にいることになった場合、男性は決して女性をじろじろ見ないよう行儀よくふるまう
    ・好成績をとったなど、栄誉をもらう側が周りにお祝いを出す習慣
    ・学校のイベントでも当然のようにある不平等
    ・母親にだけは逆らってはならない。母親や女の親族の名誉を傷つけられたら激怒

  • 著者はUAEの男性と結婚した日本人の方。
    UAEに暮らしているらしい。

    日本で暮らしているとわからないアラブ世界の生活様式。わたしたち(特に女性)からすれば不便極まりないように見える。
    また、アラブの人々の考え方にはどうにも理解しがたいところもある。

    著者は、まさに毎日そういう「不便(にみえる)・理解しがたい」世界で生活している。
    著者はそういう不便さや理解しがたいところを「良い・悪い」と一刀両断しない。
    自分の価値観を常に疑っているというか、「そういう世界もあるんだ」ということを素直に受け止めてうまく消化しているというか。
    「自分の価値観だけで決めるのが正しいとは限らない」ということを知っているのだと思う。

    そういう感覚でないと、暮らしていけないというのもあったのだろうが。

  • UAEに嫁がれた日本人女性の視点で見た、アラブ人社会の生活に関するエッセイ。

    アラブ社会のルールを日本人的な感覚/常識と対比させながら冷静に分析していく視点が非常に面白い。

    また、日本/アラブを平等に扱ったうえで、その視点から生まれる日本へのアラブ社会の批判には日本人として学び・考えされられる点が多い。

    著者の文章も簡潔でありスピード感をもってぐいぐい読める良書であった。

    以下、備忘メモ

    ・UAEは人間的な繋がりを基盤とした社会であり、ビジネス・日常生活をするうえでもその点を重視する必要がある事。そしてそれは日本人が軽視しがちな点である事。

    ・"インシャラー"は決して無責任な放棄を意味しない事。人間的な誠実さを前提にした、神の思し召しを意図している事。そしてその帰結として、性急な問題解決を求めないゆっくりとした時間軸でもの事を考える事。

    ・儀典においてはクルアーンの朗誦の良しあしが重要視さえる事。そのため、学校等では朗誦が上手い生徒が学校の隠し玉的な存在になる事。

    ・UAEでの名誉(=エレガンス)とは、自分の名誉を守り、他人の名誉を汚さず、他人との距離を縮めずに、貸し借りをつくらずに振る舞う事。そして、エレガンスは国によって違う事。

    追記:

    エレガンスの章のP.59-60にある子育てに奔走する著者自身の描写する記述は本書の笑いの白眉と思う。

  • UAEに嫁いだ女性のエッセイ。

  • 受け入れるって簡単なようでむずかしい・・・

  • 図書館

    同じコミュニティの中の施しだけで、ロールスロイスを買ったというおばあさんの話に一番びっくり。
    とても興味深く読めて面白かったので、著者の別の本も読んでみたい。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

日本UAE 文化センター代表、エッセイスト。
1989年早稲田大学文学部文芸科卒。
1990年、UAE 男性と国際結婚し、UAE に移住。3 男2 女をもうける。
2005~09年、アラブ・イスラームの生活について勉強会を主宰。
その後、日本人に向けて講演、エッセイなどでUAE 社会を紹介し続ける。
2008年、日本UAE 文化センターを創設。日本文化をUAE 地域社会に、UAE 文化を日本社会に伝える活動を続けている。
著書 『アラブからこんにちは』(国書刊行会、2013年)、『アラブからのメッセージ』(潮出版社、2015年)、『ようこぞアラブへ』(国書刊行会、2016年)
翻訳書 『シャヒード、100の命』(インパクト出版会、2003年)
2012年、第8 回「文芸思潮」エッセイ賞受賞
2015年、第3 回「潮」アジア・太平洋ノンフィクション賞受賞

「2021年 『アラブに自殺、イジメ、老後不安はない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハムダなおこの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
平野 啓一郎
辻村 深月
エラ・フランシス...
三浦 しをん
森 絵都
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×