アネイリンの歌―ケルトの戦の物語 (Y.A.Books)

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制作 : Rosemary Sutcliff  本間 裕子 
  • 小峰書店 (2002年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338144063

アネイリンの歌―ケルトの戦の物語 (Y.A.Books)の感想・レビュー・書評

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  • 伝説を今の言葉で伝えるならこの人をおいて他はないというローズマリ・サトクリフによるケルトの叙事詩「ゴドディン」を元にしたケルト人とサクソン人の戦の物語。
    正直に言えば「メリダとおそろしの森」を見て、改めてケルトの世界を感じたくなって読んだ訳だけれど、今もなお残るローマ人の残した壁や街道がどのように使われていたのか、ローマ人の去った後にやってきたサクソン人との関係はどうなのか、小さな領主の連合だったケルトはどうサクソンと対抗していたのか…そんなことがわかる話だった。
    それにしてもサトクリフはもっと知られていてもよさそうなものだけれど…。

  • 児童文学作家として知られるローズマリ・サトクリフ。
    これも男の子を主人公にした作品ですが。
    ある村で男の子プロスパーが育っていく様子や、付け人として与えられた奴隷の少年コンと次第に友情をはぐくんでいくのは他の作品と似ています。
    史実に基づき、戦いの様子が絶望的なので、万人にはお勧めできません。
    本人は生き残るし、戦いはあっという間だけど。

    ゴドディンの国。
    少年プロスパーは、三つの郡を治める領主の次男。
    12度目の命名日、付け人として買われた奴隷コンを父に与えられます。
    親戚で幼なじみのリネットと三人で、仲良く暮らします。
    あるとき兄の犬が帰ってこないのを心配して3人で探しに行き、森で白い雄ジカを見かけ、神秘的な思いにうたれます。
    評判を聞いてウルヴァイ王の王子ゴルシンが狩りに来ますが、目の前に白い鹿を見た王子は狩りをやめるのです。
    鹿が犬たちに狩られるのを止めようとついてきていたプロスパーは王子の思いを知り、いつか仕えたいと望むのでした。
    2年半後に、待望の迎えが来ます。

    アネイリンとは、実在の吟唱詩人の名。
    ただ歌うのではなく王に仕えて、記録の意味もある歌を作った竪琴弾きの華だった。
    ゴドディンという国の戦いを勇壮に歌い上げた歌が残されている。
    古ウェールズ語で現存する最古の長編詩だそう。
    紀元600年の頃、ローマ帝国の支配が終わり、今のイギリスの地には、大小いくつもの国が割拠していました。
    ケルト系のブリテンやピクトの民族がゲルマン系のサクソン人やアングロ人の国々の隆盛に押され始めていた時代。
    かってケルトの王アーサー・ペンドラゴンがサクソン人を破ったことも語り伝えられていた。
    ハドリアヌスの壁の北にはゴドディン、ストラクスライド、レゲドの三つの国があった。
    ゴドディンのマナゾグ王の呼び出しに応じて、首都ダン・エイディン(今のエディンバラ)に300人の騎士が集められて同胞隊(カンパニー)を作り、1年間の訓練の後に戦場へ向かった。
    小さな国の王子の一人ゴルシンも召し出されたので、プロスパーを従者に加えたのだ。
    騎士一人に従者が二人ついて主人の背と互いを守り、矢型隊形を作るのが基本なのだ。

    黄金王と呼ばれるマナゾグ王の豊かな暮らし。
    仲間達とは次第に友情が生まれ、まだ戦争は素晴らしい物としか考えていなかった。
    コンが鍛冶に興味を持っていることを知るプロスパーは弟子入りを勧める。
    奴隷はそういう修行は禁じられているためコンはためらうが、ここならコンが奴隷と知る者はいない。今がチャンスだと。付け人が欲しいと思ったことはなかった、これで友達がいるだけになったと思うプロスパー。

    南方のデイラ王国の王が死に、サクソン人が乗っ取りに掛かった。
    同胞隊はついに出陣するが…
    サクソンは強力で、カトライスに駐屯する同胞隊が待てど暮らせど援軍を寄越すと約束した国からは、ついに援軍が来ない…
    王の息子である将軍はついに勝利を諦め、サクソン人の兵を少しでも減らし、痛手を与えてすぐには侵攻してこないようにすることを目的に、突入する。

    300人の名前すべてが詩に歌われ、残っているというのは感動的。
    300人のうち、ただ一人の生き残りはカナンという騎士。
    カナンはもともと王の信頼篤い家臣の息子で、親衛隊の中でも際だった三兄弟の一番美しい長男だった。
    アネイリンの詩の中では美しく称えられるが、ただ一人の生き残りと言われ続けるのは耐え難いと国を離れることを決意。
    プロスパーはカナンについてコンスタンチノープルを目指すことに。
    300人というのは騎士なので、従者は勘定に入っていないというのがサトクリフらしい視点。
    1990年発表の作品。
    92年に亡くなっているので、晩年の作品になりますね。
    死後に発行された作品もあるので、初出あるいは書かれた時期はもっと前なのかも知れませんが。

  • 戦にむかった三百人の兵のうち、生き残りはただひとり―。吟唱詩人アネイリンによる、いまも伝わるケルトの叙事詩「ゴドディン」。紀元六〇〇年のブリテンを舞台に、少年プロスパーの半生とともに、ゴドディンの世界を物語る。

  • KiKi が高校時代の世界史で学んだ英国史では、ほんの数行で語り終えてしまっていたケルト民族(ブリトン人やピクト人)とゲルマン民族(アングル人やサクソン人)の戦い。  多くの戦の結果とその後に続く歴史以外には目を向けることさえなかった KiKi は不勉強のためこの物語のベースになっている「ゴドディン」という叙事詩の存在さえもこの本を読むまでは知りませんでした。  これで「大学時代は英文学を専攻していました。」な~んていうことは、恥ずかしくてとても言えないなぁ・・と反省することしきりです ^^;  この物語の主人公は「ゴドディン」を歌ったアネイリンでもアネイリンが歌った歌に登場する同胞隊300人の中の1人でもなく、その300人に付き従って戦場に赴いた従者のプロスパー。  この当事者でもあり傍観者でもある主人公が語るという体裁がまずは凄い!!  ある時はちょっと引きの目線で、そして又別の時は出来事真っ只中という目線で語るこの悲劇の全貌は力強いながらも、どことなく淡々としており、必要以上に感傷的にもならず、かといって他人行儀でもない不思議な魅力の文体と相まって胸に迫ります。

    そしてもう1つ。  この物語の魅力を増しているのが、そのプロスパーと彼の付人奴隷、コンとの関係です。  この時代のちょっと落ちぶれたとはいえ村長(むらおさ)の息子に生まれながらも、付人奴隷と親友関係を築き、彼の口には出せない胸の奥に抑え込んだ「刀鍛冶」への道を勧めるエピソードには思わず胸が熱くなりました。  もっともこれはある意味で、プロスパーのような中途半端なポジション(付人奴隷を持ちながらも自身も300人の騎士の1人にはなりえない)に生きる者だからこそ持ち得た一種のバランス感覚の成せるわざだったのかもしれませんが・・・・・。

    (全文はブログにて)

  • 現在もケルトに伝わる「ゴドディン」という叙事詩が
    ベースになっているお話。
    実際にゴドディンに語られている人ではなく、
    従者であるプロスパーという少年の視点で話は進みます。
    凛とした力強い文体は読んでいて気持ちがいい。
    全体的に悲しいけれど、
    未来を感じさせる終わり方は好き。

  • サトクリフは好きな作家の一人です。歴史に名を残したような人物ではなくごく普通の人が主人公であることが多いような気がします。その人物とその世界を一緒に体感できるような描写が魅力です。

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