チャ-シュ-の月 (Green Books)

著者 :
  • 小峰書店
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本棚登録 : 234
感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338250108

作品紹介・あらすじ

六歳の明希が「あけぼの園」にやってきたのは、うすい雪が舞う二月のはじめだった…。"児童養護施設"で暮らす子どもたちの姿を、たしかな目と透きとおった感覚で紡いだ渾身の書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 児童養護施設で暮らす美香が主人公。施設を舞台とした物語。美香と家族との離別が忘れられない新入りの明希との関わりが中心的に描かれている。

    集団生活の制約から受けるストレス、被虐待経験が彼らの強さの元になっている。問題行動につながることも多々あるが、行動するだけのパワーがあることを示していると思う。

    2020年現在、児童養護施設の数は増加、入所児童数は減少傾向にあり、施設の質の向上が目指されている。現在の施設では2012年発行の本書より暴力的な場面は少ないと類推する。しかし、この本からは入所児童のこころの動きを知ることができて良かった。

    最後、辛い思い出を楽しいものに変えようとする場面で(墓石をキリンに見立てるなど)子どもたちの内的な豊かさを感じた。

    日本の社会的養護が社会を明るくするものでありますように(◍•ᴗ•◍)✧*。

  • 今年の中学の課題図書という事で読んでみました。児童養護施設の子ども達の現状が美香や明希や周りの子ども達を通して伝わってきます。正直子供が読むには過酷ではないか、とも思ったが施設に暮らす子供が3万人もいると聞き、半分大人への階段を上りつつある中学生に、こんな現状もあり、そこで彼らなりに親や環境を乗り越えようと頑張る仲間がいることを知らせる事は大切な事かとも思った。全ての子どもが愛をいっぱい受けて育つことを願いつつ・・。

  • 児童養護施設 家族 寄り添う
    小学校高学年〜
    第59回読書感想文課題図書

  • トラブルや小さい子への嫌がらせに、つい手や口をだしたくなる気を沸々させながら読んだ。でも、小さい明希の問題に簡単に手も口もをださず、ずっと一緒に暮らしながら決して見捨てずそばに居る主人公美香、先生達や他のこどもたちとの社会に、ほんの少し寄り添い考える時間をもててよかった。
    いまの自分に何ができるか、というと、一時の何かでは迷惑にしかならず、長期的に何かできることがあるのだろうか、今は想像してみることしかできない。
    ただ少なくとも、目の前に一緒に生きる子と大事に関わり、”自分で自分の人生を選びつづけていく。自分で選びとったきょうを重ねてあしたを創っていく。””自分を照らす力”を信じられる子が多く過ごせる社会を作りたい。

    エビフライの章 「おぼえときな。人のためにいっしょうけんめいになると、けっきょく傷つくよ。ー」と明希をつかまえて言った場面が印象に残っている。人に心をかけて関わることを忠告する言葉だけど、この一声から美香はこの子に心をかけて関わることを決めて口を出したのではないか、と思える。人に心から関わる、ということは、簡単でない。
    一方、著者の他作「あららのはたけ」で、部屋からでなくなった同級生を訪ね、部屋に土つきジャガイモを放り込んでいくシーンも、あわせて印象的。

  • 「この本は、ドキュメンタリーではありませんが、いまも日本のどこかの施設で起きている出来事を紡いだものでもあります」(あとがきより)
    「本書は、児童養護施設に暮らす子どもたちの日々を描く。ー「どの子おみんな、だれがあきらめようと自分だけはけっして自分をあきらめないという生命力の強さとプライドをもっています。」「自分で自分の人生を選び続けていく。自分で選びとったきょうを重ねてあしたを創っていく・・明るい希望、それは他者から手わたしてもらうものではなく、自分を照らす力のことだと、どうかあなたも信じてほしい」。村中さんは、子どもに寄り添うということの問い直しを迫る。」
    (『子どもの本から世界をみる』かもがわ社 の紹介より)

  • 物語としてありがちないい子ではなく、妬んだり、いじめたり、叩いたり、嘘をついたりといった描写がしっかりとなされていて、作者の方は本当に児童養護施設と関わり合いがあるのだろうと感じられました。方言が強いですが、小学生にも読みやすい、易しい文章でつづられているので、ぜひ家族で読み、意見を交わすきっかけになればと思います。

  • 予想以上に重いままで、いま、ズーンと沈んでいます。

  • 児童養護施設の子どもたちを描いた物語。安易なハッピーエンドにはせず、浮ついたところはないのに勇気づけ、希望の見出せる作品。
    養護施設の子どもたちが、自分ではどうすることもできない厳しい事情を抱えながらどうにか希望を持ち続けて生きようとする姿、職員がなんとか子どもたちに子どもらしい生活をさせてやりたいと毎日心を砕く姿は、きちんと取材したから描けるリアリティがある。

    しかし、どんな親に生まれるか子どもに選択できるわけではなく、職員がどんなに親身になろうとも本当の親の代わりにはなれず、ろくでもない親だとわかっていながら、どうにか子どもと生きていく方法はないものかと苦労するところは切ない。

    大抵の親は子供を引き取っても幸せを感じさせることはできないわけで、だったら、もっと予算を上げて、職員を増やし、一人一人の子どもが自立できるまできめ細やかに対応できる施設を作った方がいいだろうと思う。また、子どもを育てられない親への教育も必須だろう。こういうことに税金を使ってほしい。

    登場人物は多いが(児童養護施設が舞台で誠意をもって書こうと思えば多くなるのが当然)、初めに丁寧な人物紹介表があるので、読みなれていない子どもにも安心。
    しかし、実際養護施設に暮らす子供に手渡すのは勇気がいるし、タイトルとこの表紙絵だけでは内容がわからないから自分から手に取るのも難しいだろう。どこかでこういう内容の本だという情報を仕入れれば自ら読むチャンスもあるだろうから、これが読書感想文の課題図書になったのは良かったのかなと思う。

  • ふむ。時代だな。

  • 泣ける

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著者プロフィール

ノートルダム清心女子大学人間生活学部児童学科教授
児童文学作家・児童文学者
保育園・幼稚園・図書館・児童養護施設・老人保健施設・刑務所など様々な場所で絵本の読みあいを続ける。
『チャーシューの月』(小峰書店)で,日本児童文学者協会賞。
「長期入院児のための絵本の読みあい」(西隆太朗と共同研究)で,日本絵本研究賞。
『あららのはたけ』(偕成社)で, 坪田譲治文学賞。『こくん』(童心社)でJBBY賞。
主な著書に、『感じあう 伝えあう ワークで学ぶ児童文化』『「こどもの本」の創作講座』(以上、金子書房)、『保育をゆたかに絵本でコミュニケーション』(かもがわ出版)、『幼児理解と保育援助』共著(建帛社)など。

「2024年 『立ちあう保育 だから「こぐま」にいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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