非戦

  • 幻冬舎
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本棚登録 : 195
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344001442

作品紹介・あらすじ

全世界が切望する「希望ある未来」のために、戦争という暴力は認められない。世界の深い亀裂を埋める平和の種子を集めた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • この本は、911テロに対して、根拠なくアフガンに報復戦争を仕掛けるのは反対、ということから始まったのだと思う。「本当の勇気とは報復しないことではないか」、アメリカのこれまで他国にしてきたことが返ってきた、といった言葉はおそらくブッシュ(息子)にも多くのアメリカ人にも届かなかったな、と今は知っているけど、当時にあって声をあげたということに着目。しかし、この頃は、20年後にロシアがウクライナに侵攻するだなんて思いもよらなかった。攻め込まれたウクライナにしてみれば、本当の勇気とは…という言葉はきっとまったく耳に入らないだろう、と。◆非戦闘員の大量虐殺を生んだゲルニカ爆撃(1937年)に対し、アメリカ大統領ルーズヴェルトは「非戦闘員の殺傷が不正であること」を再確認する書簡を発表したそうだが、その頃にはまだ「非戦闘員の大量虐殺」を許せないという共通認識があったんだな、と思った。◆断じて音楽は人を「癒す」ためだけにあるなどと思わない。同時に、傷ついた者を前にして、音楽は何もできないのかという疑問がぼくを苦しめる。p.21(坂本龍一)◆「人を殺すな」「生き物を自分の利益のために殺すな」「子供たちの生きる権利を奪うな」という思いだけは共有しているものと信じますp.401(坂本龍一)

  • ※2001.12.29購入@読書のすすめ
     売却済み

  • 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を巡り交わされた論考、記事をまとめたものです。筆者の信条は異なる所がありますが、「生きる権利を奪う」ことへの危機感は共通しています。テロが根絶されていない今日、この本はまだ「過去形」ではなく「現在形」です。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 多くのアーティスト達のメッセージを集約した本。
    事前知識のなかった自分には難しかった。

  • この本ではじめて、「足ることを知る」という言葉を知りました。今でも十分に足りているのだ、と考えて今を幸せに感じ、生きていっても良いのだと教わりました。それは、現状に甘えたり、努力しないこと、向上心を持たないこと、と同義ではありません。

  • ニュートラルなところに自分を持って行ってくれた気がする。

  • 「非戦」という言葉、この本で改めてその強さを感じた。
    多くのアーティストがこのようなメッセージを打ち出すことは、良いことだと思います。

    多くのきっかけを作りだす書籍。

  • あれからどれだけの時間が流れただろうか
    そして世界は何が変わったのだろうか
    同じ繰り返しをしてるのではないかと思ってしまう。
    少しでもいいから前に進んで欲しい。

  •  昨年九月十一日の同時多発テロは米国の報復宣言のもとにアフガニスタンへの空爆が行われ、年末にはタリバーンを軍事的に叩き潰した。この間、アフガニスタンでは多くの罪のない人々が犠牲となった。当初は誤爆を非難する報道もあったがやがてそうした声は多くの犠牲者の数の前に問題にもされなくなっていったのである。
      テロルには報復といふ良識が無辜の民らを殺戮しゆく  休呆
     この歌が示唆するように無差別殺人は米国が言う良識の名のもとに確実に実行されていったのである。米軍の使用するまさに殺人のための工夫を凝らされた兵器が紹介されるたびにいったい誰がどういう罪で殺されなければならないのか私はわからなくなっていった。この戦争で手足を失った子どもがいる。その子の人生はまだ何十年もあるのに誰がその人生を責任をもって見届けるのか。ブッシュは自らのさして長くはない政治生命のために多くの人命と数え切れない人間の人生を台無しにしたのである。ブッシュという個人の問題ではない。そうした人類に対する犯罪に荷担したのはこの報復に賛成の手を挙げた無責任な人々すべてなのではないか。我々とてその罪からは逃れられない。戦争放棄を謳った憲法を持つ日本政府は実にさりげなく自衛隊の派遣の合意を獲得してしまった。小泉政権が圧倒的国民の支持を得ているという事実から考えればあの子どものこれからの長い人生をぐちゃぐちゃの絶望の中に放り込んだ責任はともに負うべきなのではないか。もしもあなたの子どもが理不尽にその手足をもぎとられたなら…と置き換えて考えてほしい。
     しかし、微かな実に微かな希望はある。満場一致で米国下院がこの報復を決議しようとしたときただ一人反対した人物がいた。バーバラ・リーという議員だ。今、この戦争を否とする勢力は米国の議会の中ではたったの一でしかない。日本の国内ではどうなのだろうか。世論がどこで測れるのかはわからないが、無差別テロへの憎しみは語られても米国の報復を否定する意見が多数派であるようには思えない。何しろ目の前で行われた理不尽なテロに憎しみを持つことは簡単である。しかし、憎しみを新たな殺戮に転化するのではなく、その憎しみを再生産しない努力こそがいま求められているのである。私たちの問題として言い換えるならば、私たちの実践してきた平和教育がどういう実績を重ね、どういう成果を挙げているかが問われているということである。果たして子どもたちはきっぱりとこの戦争を否定するように育っているのか。これは私たち教師の平和教育に対する厳しく的確な評価である。その結果は真摯に受け止めなければなるまい。
     それはともかく無差別テロへの報復を是とする風潮の中で勇気をもって戦争に《否》を唱えたのが本書である。監修の代表名になっている坂本龍一とはあのYMOの坂本龍一である。彼が国際政治の専門家でもなく芸能という業界人であるということは何の問題でもない。インターネットを通じて世界中から戦争を否定する意見が集まり、それをまとめたのがこの本だ。sustainability for peace(平和のための持続可能性)というのはそうした平和を希求することで意志一致した人々だということである。
     だからこの本には世界中から戦争を否定するいろんな人のメッセージが寄せられている。先述のバーバラ・リーの議会演説も入っている。坂本と同じ桜井和寿、大貫妙子、佐野元春、マドンナ、TAKUROといったミュージシャンもいる。だから芸能本の感覚で読みたければそれでもいい。アフガンで名を馳せた中村哲も書いているから。梁石日、重信メイ(重信房子の娘)なんかもいる。ガンジーやキング牧師のような故人の発言も採録されている。とにかくめいっぱい「戦争が答えではない」というメッセージを徹底的に伝えようとしている。理屈はどうでもいい。国家や民族や宗教といった大義があったとしても殺人はやっぱりやってはいけないことなのだ。そういうことに徹底した実にわかりやすい本だ。平和・反戦の原点がここにあると思う。

      ★★★★
     戦争の歴史ばかりが平和教育じゃない。いま起きている戦争こそが平和教育の教材だし、いまどういう選択ができるかが平和教育の目的なのだ。十年一日の無味無臭の平和教育をやってきた人間は必ず読むべし…ってか。

  • ●未読
    ◎「音楽は自由にする」(坂本龍一/新潮社/2009)p.221で紹介。9.11について。
    《p.221【「非戦」《テロの後は、恐怖の中で必死に情報を集める毎日でした。人間、どうしても知りたくなるんです。情報を集め、状況を解釈してその意味を考えないと、次に何が起こり同行動すればいいのか分からない。どうやって生きていったらいいのかわからない。恐怖が本当に極限にまで達すると思考停止になってしまうかもしれませんが、その一歩手前の段階では、人は必死で思考するんですね。多々追えば雷が隣家に落ちたら、次はどこに雷が落ちるかという事を必死に考える。きっと、そこから科学になったり、芸術が出来たりするんだろうと思います。(中略)その中で集めた情報をEメールで交換する輪をまとめた本が◎「非戦」(坂本龍一,sustainability for peace
    幻冬舎(2001-12-20)。(中略)しかし、アレだけ多くの人々が世界各地で、おなじおもいをもってすとりーとにでたのに、アメリカは結局イラクに侵攻してしまった。あのときのアメリカに対する深い失望が、現在の世界の状況につながっていると思います。》

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著者プロフィール

さかもと・りゅういち:1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京藝術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、細野晴臣、髙橋幸宏とともにYMOを結成し、シンセサイザーを駆使したポップ・ミュージックの世界を切り開いた。83年の散開後は、ソロ・ミュージシャンとして最新オリジナル・アルバムの『async』(2017)まで無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasyo」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。「東北ユースオーケストラ」など音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動もおこなっている。2006年に「音楽の共有地」を目指す音楽レーベル「commmons」を設立、08年にスコラ・シリーズをスタートさせている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)など著書も多い。

「2021年 『vol.18 ピアノへの旅(コモンズ: スコラ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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