嫌われ松子の一生

著者 :
  • 幻冬舎
3.66
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344002852

作品紹介・あらすじ

三十年前、松子二十四歳。教職を追われ、故郷から失踪した夏。その時から最期まで転落し続けた彼女が求めたものとは?一人の女性の生涯を通して炙り出される愛と人生の光と影。気鋭作家が書き下ろす、感動ミステリ巨編。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルだけしか知らなかった作品をやっと読んだ。読む前は、なんだか任侠道に生きた女傑の話なのかと勘違いしていたけどまったく違い、ひたすら真の愛を探し続けたけれども しかし哀れで悲しい愚かな道を歩んでしまった可哀想な女「松子」の話だった。ちょっとタイトルが一人歩きした感がある作品だけど、福岡県人としたら馴染み深い地域や界隈や言葉がいっぱいあり親近感が持ててウンウンと頷きながら読了。

  • 若い頃の浅はかとも言える行動で自業自得とも思い読んでいたが、それだけでもなく。

    ただそれだけの判断ミスがあれよあれよと地の底に転がっていく人生は他人事ではなく当に誰にでも起こりうるんだよなぁとも思いながら読んだ。

    場当たり的な行動をしたりするが松子のスペックはとても高いから少し違うだけで劇的に人生は変わっただろうに。

    最後まで本当に救いがないがなんだろう、またいつか再読したい、そう思った。

  • 果てしなく要領が悪くて、場当たり的に取り返しのつかないことをしてしまう人生。
    そのせいで実家にも一生帰れず、新しい家族を作ることも叶わず、本当に救いがない。

    やっと立ち直って明るい人生が見えるかと思ったところで、見知らぬ若者たちにリンチされて死んでしまうなんて…

    でも、死ぬ前に本当は妹のことが大好きだったことに気づいて、その妹が待つ天国へ旅立っていけたのはせめてもの救いだろう。
    それに、死後ではあるが愛して信じてくれる甥っ子がいて、何十年かぶりに川尻家の一員となった実感があったのではないかと思う。

    松子自信の人生は余りにも悲惨なものであるが、甥っ子がその人生を追う構成のため、松子の人生が肯定されるニュアンスもあって、読み手としては暗い気持ちになりすぎずに読み終えることができた。

  • ダメな男としか付き合えない女とはよく聞く。そんな女の人生を描写した作品。

    真面目な中学教師から転落に転落を続け、気付けば、風俗譲、更にダメ男に誘われて雄琴にうつり、ジャブを覚え、ロクデナシを殺してしまう。

    こうも落ちるものかと、更に落ちる早さはとても早いと教えてくれる。

    松子の人生は、選ぶ道はいつもイバラの道ばかりで、悪い方へ進んでしまった。

    たられば論になるが、龍くんが盗らなければ、哲也が自殺しなければ、赤城さんを選んでいれば、小野寺についていかなければ、龍くんと再び出会わなければ、出所の龍くんが逃げなければ、松子の人生は、全く変わっていたはず。

    松子自身は、ただ、ただ、真面目なだけなのに、こうも裏目に出ると、哀れの一言。

    結局、ダメな男に惚れる女は、幸せになれないと痛感させられる話だった。

    話的にはテンポよく進み、だれることなく読めた作品で、松子とともに、もう一人の主人公の笙の精神的成長を感じた作品。

  • 「男に流されて仕事をやめ、体を売るわクスリは打つは。ソープ嬢のときヒモを殺して投獄、脱獄未遂あり。」
    概略だけまとめると、とてもまともな人とは思えない、そりゃ一族の面汚しと言われるのも仕方ないと思っちゃう。

    けど、遺品整理を進めながら、松子を知る人の話を聞いていくと、どうもそんな簡単に片づけられる人生ではなかった気がしてくる。とんでもない人生だし、成功した人生でもないけれど、少なくとも一人の人がこの世に生まれて、自分なりに苦しんでもがいて立ち上がって、必死に生きた一生であったことが見えてくる。
    そうして男子大学生は、見知らぬ叔母さんの人生を通して、初めて自分の人生を考え始める。
    という感じのストーリー。

    感想としては、もう、怖いですよね、人生。
    山田詠美「学問」を読んで以降の僕の圧倒的な人生の実感は、「青春は綱渡り、死と隣り合わせ」である。これを大人はみんな(ほとんどそれとは知らないうちに)死に物狂いで向こう岸に渡り切ってきたのだ。奇跡的に。

    松子はそれを踏み外した。残念ながら。悪い人だから踏み外す訳じゃない。それが怖い。中村文則「土の中の子供」に見られるように、生い立ちが踏み外させることもあるし、絶望的な生い立ちでありながらも渡り切る人だっている。

    変な言い方ですけど、まともな両親のもとに生まれてくること、その両親がまともに育ててくれること、自分を破壊するような人が周囲にいないこと、自分自身の性格が自己破壊的でないこと。これらの確率が仮に全て8割だと、つまり8割は大丈夫だと仮定しても、これら4つの条件すべてを満たす確率は、0.8の4乗で、わずか4割程度。10人に6人は踏み外すことになる。そう考えると、踏み外さないよう導いてくれた両親に感謝するし、関わってきたすべての友人たちに感謝するし、神にも仏にも感謝するし、生きてるだけでほんと有難いって気持ちになる。

    そして、頼むから子供たちよ、なんとか、渡り切ってくれ!と願う。
    いかん、もうほとんどの作品の感想がこの切り口になってきとる。

  • タイトルの「嫌われ松子の一生」は「嫌われたがり松子の一生」の略だと思う。
    松子が愚かすぎて感情移入できないという意見も一理ある。
    しかし私は男にだまされ利用され捨てられるばかりの松子を馬鹿な女と突き放せるほど賢くも強くも正しくもなく、そうなりたいともあんまり思えない。

    人を信じては裏切られる松子の一生。

    だがもし彼女と出会った人達がほんのちょっとでもやさしくなく、彼女に情をかけなければ、松子も浅はかな期待をせず、安心して嫌われきることができたのでは?松子も嫌いになりきることができたのでは?

    嫌われたがり、愛されたがりだった松子。

    彼女の晩年の生活と最期はたしかにどん底の悲惨なものだが、きっとそれだけじゃなかったと信じたい。

    旧友と再会した松子が嘗ての勘を取り戻そうと一心不乱にカットの練習をする場面、私はそれ自体が「救い」だと思った。

    報われなければ努力する意味がない?
    成功が前提になければ耐え忍ぶ価値もない?

    そうは思わない。
    あの頃松子の中で培われ磨き抜かれた技術は、今の松子の中で確かに生きて光っていた。

    それは松子が悲惨な人生の過程で得た数少ない誇れるもので、何もかもに捨て鉢だった晩年の松子が、あの時一心不乱に鋏を握った事実、何もかもを失ってそれでもまだ残っていたモノを見出せた事実こそが、悲惨な人生に射した一条の光のごとく心に響く。

    だからこそ最後の最後に「おかえり」と笑ってむかえられたのだ。

  • 人生を一生懸命に生きた松子。
    何事にもストレートに。
    きっと、幸せな道を歩めたであろう事からも反れて、
    自分の思った通りに生きた松子。
    あなたの人生に圧倒されました。
    波乱万丈だったけど、最後は寂しすぎる。
    自分の人生って、自分しかキチンとわからないけど、
    死んでから、ちゃんと知ってもらえた事で、松子の人生は報われたのかな。

  •  平成十三年七月十日、東京都足立区のアパートで女性の死体が発見された。名を川尻松子という。
     その数日後、笙の元を父親が訪ねてくる。松子の部屋を引き払ってくれとのこと。意味がわからない。なぜ、他人同然の伯母の後始末までしなければならないのだ。渋りながらも彼女のアスカと片付けをしに行く笙だが、何故、松子が殺されたのかを追うようになる。次第に明らかになる松子の一生とは。

  • やりきれません。しかし面白かった。

  • あまりにも激動の人生。
    確かに一つ道を踏み外して、坂道をごろごろと
    転がり落ちる人もいるだろう。でもここまでなんて・・・。
    これが松子の語りだけで書かれていたら重過ぎて
    とても読んでいられないけど、昭和時代の松子の語りと
    平成を生きる甥っ子の笙の語りと入れ替わりで
    書いてあったからなんとか読めた。

    松子の一生は、自業自得という部分もあるけれど
    もう少し気を抜ける性格だったら、
    人を信じすぎてあまりにも一途に突き進まなければ
    どこかで修正出来たのかもしれないのになぁ。

    面白かったから星5つあげたいけど、松子の一生が
    無念すぎたので1つ減らして星4つ。
    色んな意味で、読み返す事は絶対にないだろう。

    映画のホームページを見たら悲劇が度を越すと
    喜劇みたいな感じになっていた。本とイメージ違うけど面白そうかも。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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