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この作品からのみんなの引用
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「……だからね、ほんとうに小さい頃に見えなかったから、なんにでも触れたくらいでは安心できないの。特に疲れて五感が鈍っていると、目を閉じて強く押しつけたり、強くつかんだりしていないと安心できないの。時々びっくりする人がいるんだけれど、ごめんね。」
― 20ページ -
気をつけて見ていくと、街でも、もうすぐ死んでしまう人は体が黒くて、でも最後の数日間は透明になる。肝臓が悪ければ、肝臓のところが黒っぽく見える。肩こりだと肩がグレーに詰まって見える。そういうのがじょじょに見えるようになってきた。思春期には見えすぎておかしくなりそうだったのでダンスを続けていたけれど、やっと今バランスを見つけた。あなたと知り合って満たされたから。それで、天職につくことができたみたい。
あなたの中の不思議な暗さが、私の最後の最後の引っかかったところを癒したんだと思う。
― 64ページ -
だからね、誰か神様みたいなこの世の決まりごとの担当の人がいて、これはあんまりだから絶対あってはいけないことだ、とか、この人はいい人だからひどい目にあわせないであげよう、とか、この人はここまでなら大丈夫だろうとか、見ててくれればいいのに。でもいないの。もしもいるなら、止めてくれればいいのに。でも止めてはくれない。自分でやるしかないのね。どんなひどいことを見ても、なんでも起こりうるって思うしかないのね。
― 88ページ
みんなの感想・レビュー・書評
『過去のつらい体験にとらわれ、心に傷を抱えながら愛しあう2人。深い闇で起きた、たくましい生命の復活を描いた、「祈り」の物語。14年前に書いた小説「とかげ」をリメイク。「とかげ」も併せて収録する。』
『とかげ』を著者自身でリメイクした作品。
巻末にはその『とかげ』も収録されている。
”癒し”の物語で、過去に負った心の傷に対する”時間”や”運命”といったものが主体か。
私自身は『とかげ』未読だったが、巻末の原作を読んだ後、リメイクでとかげの人物像が深く濃くなってとても良くなったと感じた。
『今夜、どれだけの悲しい人がこの世にいるんだろう? 身内を亡くした人。病気の人。 心の地獄をさまよっている人。 殺される人。 現実に、たった今。』 太ももに小さなとかげの刺青を持つ彼女は、 壊れそうにちいさな身体で、 人々の命を癒そうとする。 自分の罪を、ひたすらに責め続けながら。 正直ハードカバーにするには 内容が少なすぎるかもしれない。 ... 続きを読む »
とかげよりも、「私」が大人の男性であるけれど、彼女を想うと思春期の男の子みたいになってしまう、その感じが伝わってきて、こっちもいいなぁ、と思った。
かわらないしずかなふたりの雰囲気がすき。最後の一行とか。
ざらざらと傷口に触れた。忘れていたことを思い出した。そうやって生きてゆくのだ。ふたりと、そして自分の子供時代を思って、少し泣いた。
「ひとかげ」の元となった作品「とかげ」との2編いり。
暗い過去を背負いつつ精神科医(ひとかげでは保健師?)になっている「私」と同じく暗い過去を持つ「とかげ」という女性の過去に向き合いながら進むお話。
「とかげ」と「ひとかげ」ストーリは変わらないんだけど、文章のディテールをほんの少しいじっただけで持つ雰囲気がより濃く感じた。
よしもとばななさんの作品は作品そのものよりも文章を読んでて感じる「あれ、この人もしかして死んでる?」ていう感覚に出会えるとこが好き。
とかげのリメイク、ひとかげ。さすがに「ひとかげ」の方がスムーズな流れ。でもどうして「とかげ」は下書きの物語になってしまわないのだろう。ザラザラした独特の魅力を「とかげ」は放ち続ける。
「とかげ」のリメイク。
心に傷を負ったままのとかげと、とかげに恋する主人公。
すんなり読めたけど、テーマのわりにパンチが足りないかんじ。
まずいまずいまずい。
相手を好きな気持ちがこれ明確にストレートに伝わってくる。
どうしてもどうしてもさわりたくて、気が狂うほど、もういてもたってもいられなくて、彼女の手に触れることができたらもうなんでもする、神様!
きゃーーー
読んでるこっちがどきどき致します。
実際に文章化するとこっぱずかしいけど、ガチで恋してる時って頭の中はこんなんだよね、多分。知らんけど。←
この小説は、14年前に出された「とかげ」のリメイク版です。(今回出された「ひとかげ」の後半に、当時出された「とかげ」も収録されているので読み比べが出来ます) 「とかげ」は確か、高校生の時に読んで、とても衝撃的だったことを覚えています。 今回の「ひとかげ」の前書きでよしもとさんが、リメイクして書きたかった理由を述べているのですが、やっぱり若かった頃と少し年を重ねた今では、表現したいことが違うのだ... 続きを読む »
「とかげ」より好き。
「とかげ」の時は、取材不足な気がする。自閉症児のクリニックなのに?って思う部分があったけど、「ひとかげ」では直されていたから、スムーズに読めた。
とかげとひとかげ。
うーん、私はとかげのほうが好きかも知れない。
好きな一節。
どうしてもどうしてもさわりたくて、気が狂うほど、もういてもたってもいられなくて、彼女の手に触れることができたらもうなんでもする、神様。(中略)
それが恋だった。思い出した。
とかげもすきでした。読んでみて、どこが変わったかというのは巻末の元版をつきあわせないと分からなかったけど、主人公たちの思いや人間のぐちゃぐちゃした部分、というところはより伝わりやすくなったように思う。私がそれを理解できる経験が増えたのもあるけど。とかげ、はそれはそれでよかった、過不足ない、と巻末を読んで思った。内容も、だけど同じくらいの強さで気になったのが装丁。表紙の絵も、中の絵も、とかげ元版の紙の色も、すごい気になった。どういう意図?絵は私のとかげのイメージと違ったので、正直とても違和感があった。もっと細身な人をイメージしていたけど。絵に影響されすぎるのもよくないが。装丁も面白かった(新鮮だった)し、自分の手を離れて表現されて戻ってきた作品に対して作者がアタックした気持ちを感じた。
いかにも当事者らしい目線で書かれているのに、登場人物の発言は須らく他人事のように薄く、白々しいお芝居を見ている気分。
とりあえず、「私」の考え方に微塵も共感できなかったのが致命的。
これは、あえてこういう無神経なキャラクタを用いているのですか?
そうでなければ、こんな繊細なテーマを扱うべきでない。人の生死の問題は、自傷の世界に飛び込む人間の心理は、こんな安易な物語には到底行き着かない。私自身の整理が行き届かない点もあるが、それにしても。
自閉症という言葉の遣い方が間違っている点で、急速に心が冷えた。
ときにはこういう読者もあろうな。
2006.09読了。依存を依存と自覚し、それを別の何かに置き換えられることを祈りながら寄り添って生活=人生をやっていくことは、とても息苦しくてそれでいてほっとするものなんだろうなと思いました。
「とかげ」と読み比べてみて。
作者も設定も話の展開も同じなのに
受け取るイメージが随分変わった。
「とかげ」の方が率直で荒削りという感じ。
「ひとかげ」はやわらかな印象。

妙に洗脳されるような感じがあります。





