ぽろぽろドール

著者 :
  • 幻冬舎
3.61
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本棚登録 : 657
感想 : 130
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013414

感想・レビュー・書評

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  • ミステリアスでどこか怖い、気味が悪くなるような情景。それでいて繊細でか細く、きれいな文章。後味が決していいとは言えないがどんどんと読み進めたくなり、読んだ後も思い出してしまうような、人形にまつわる短編集。数年ぶりに豊島さんの本を読んだが、この独特の世界観が以前の私も好きだったのだと思う。

  • 人形に切ない思いを託す人々の物語。

    装丁がきれいで思わず手に取った本だったが、物語は妖しく、恐怖すら感じるものだった。子供のおもちゃに過ぎないはずの人形。一方で人の形をしているが故に、人々は人形を特別な存在としてとらえることもあった。人形は憧れや憎しみ、愛情といった現実世界で叶わない思いを解放する対象であり、心のバランスを保つための存在であるとも言えるのではないだろうか。そしてそれに強い思いが込められた時、まるで命を持っているかのように人間を魅了し、心を支配していく。

    表題作「ぽろぽろドール」で主人公の少女は涙を流す人形をぶつことを、学校で降りかかった嫌なこと、不条理なことの捌け口にしていた。しかし主人公の少女が思いを寄せる男子が自分の意のままにならないと悟った時、人形は自分の為だけに涙を流してくれる存在として、主人公にとって唯一無二の存在となる。それは人間側の勝手な思いである。ただの物体であるはずの人形に、人間を対象にする以上の強い思いが込められた時、そこに狂気を感じた。しかし同時に、その思いは心からの願いであるにもかかわらず人間相手には叶わなかったものであり、思いを込めた人間の悲しみも感じられた。

  • 装丁が可愛くて借りた。人形に魅入られた人たちの短編集。お人形のお洋服を作る地味な女の子のお話とマネキンを作るおばあちゃんのお話が良かった。万人には理解し難い世界観だろうけど、私は結構好き。小川洋子の小説のような世界観だった。2011/607

  • しっとりした文章。
    いかがわしくはないのに濡れたような色気。

    表紙は一見メルヘンなようでグロテスク。
    中身は可愛らしいようでとってもロマネスク。


    女性的、だと思いました。
    「人形」という題材がではなく、その捕らえ方が。
    こどものおもちゃではない人形。
    その意味。
    ある意義。

    licoシリーズ、イメージはSDです。

    私にとって人形は「怖い」ものだったけれど、読んで少し変わりました。
    自分を写すもの、というか・・・
    隙間を埋めるもの?

    自分であって、自分でない。


    どれも好きだけれど、1番を決めるなら『ぽろぽろドール』です。
    1番どきどきしたから。

    書き下ろしの『僕が人形と眠るまで』もたまらない。
    完全な世界。
    完璧に、美しい世界。
    なんというか、思春期特有の自意識と排他的な感情。
    「いじめ」と「同情」の残酷さ。同じ物が根にあっても現れ方が違う。
    外見ってそこまで大事かな・・・大事か。
    大事さの種類は違う気がするけれど、いくつであっても大事かも。

    そういう意味では人形って完全な世界に住めるのね。

  • 人形に関した話が盛りだくさんで興味深かった。

  • 「ぽろぽろドール」「手のひらの中のやわらかな星」「サナギのままで」は好きだが「めざめる五月」「きみのいない夜には」「僕が人形と眠るまで」は好きになれなかった。

  • 小さなわたしの大きな秘密。たとえば朝霧の森のなかに小熊が見つけたアカシヤの蜜や、あるいらママがパパにないしょで買った野薔薇の金細工が入った万年筆。そういうものよりずっと、違う、その類のものを全部かき集めて、甘みだけ取り出して結晶にしたものよりずっと、私の胸をぐっとつかんで中身をしぼり出す秘密。

  • 「人形」を題材にした短編集。恋愛小説にこんな表現を使うのはアレかもしれませんが、萌えます。大人向け少女漫画が好きな人には是非読んでほしい一冊。


  • 長井朋子氏の表紙に惹かれて購入★★★★★

    人形特有の怖さ、人間の怖さ
    秘密にしておきたい黒い部分を見た気がします★★★★

  • ドールをテーマにしたちょっと豊島ミホらしくない短編集でしたが、ピンと張り詰めた空気感もらしくないながら、いい作品でした。

著者プロフィール

2002年、新潮社「女による女のための『R-18』文学賞」で読者賞を受賞し、同年『青空チェリー』刊行でデビュー。著作に『檸檬のころ』『夜の朝顔』『リテイク・シックスティーン』などがある。

「2010年 『神田川デイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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