- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344013759
作品紹介・あらすじ
九年間の英国留学の中で少年はいかにして人生のプリンシプルを身につけ"白洲次郎"となったのか。白洲家に遺された一冊のアルバムを手がかりに、孫の信哉が祖父の足跡を訪ね歩く。
感想・レビュー・書評
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白洲信哉(1965年~)氏は、専修大卒、細川護熙首相の公設秘書を経て、現在は執筆活動のほか、様々な日本文化に関するイベントのプロデュースなどを行う。父方の祖父母は白洲次郎・正子、母方の祖父は小林秀雄という、友人の茂木健一郎によれば「日本文化のストレートフラッシュ」のような家系である。
本書は、GHQから「従順ならざる唯一の日本人」と言われ、「吉田茂の懐刀」とも呼ばれた、白洲次郎(1902~1985年)が、1919~1928年(大正8年~昭和3年)にロンドンに留学していた際の足跡を、孫の白洲信哉が辿った記録である。
初出は、男性向けファッション月刊誌「MEN'S EX」(メンズ・エグゼクティブ)の、2004年10月号、2005年1~6月号、2006年1~6月号。
前半では、次郎が卒業旅行と称して、1925~26年の冬に12日間、英国人の親友ロビンと一緒にW.O.ベントレーを駆って、欧州大陸を旅したルートを追う。ルートは、ケンブリッジ→ロンドン→サウサンプトン→(船)→ル・アーブル→ル・マン→トゥール→ボルドー→ビアリッツ→サン・セバスチャン→マドリッド→トレド→グラナダ→セビリア→ジブラルタル→(船)→マルセイユ→ジュネーブ→ディジョン→パリ→ブーローニュ→(船)→フォークストン→ロンドン→ケンブリッジである。
後半では、次郎が過ごした英国で、次郎がスーツを仕立てたロンドンの老舗洋服屋、次郎が愛飲したスコッチ・ウイスキーの故郷であるスコットランド・アイラ島とスペイサイドの蒸留所、次郎が学んだケンブリッジの街などを巡る。
本書には、次郎が残したセピア色の写真と、今回著者が撮影したカラー写真が、いずれも多数掲載されているのだが、80年を経ているとはいえ、次郎がその目で見た景色と、著者が目にした風景は、おそらく写真で見るほど違った風景ではなかったのではあるまいか。(ヨーロッパでは建物にしても80年くらいではあまり変わらない)
そう考えると、ページをめくりながら、日本では大正後期から昭和初頭、ヨーロッパでは第一次世界大戦の直後という時代に、次郎はこの風景を見ながら、どんなことを感じ、何を考え、そしてそれが、後に日本の政財界の中枢で活躍した次郎に、どのような影響を与えたのだろうか、と思わずにはいられないのだ。
孫が自分の祖父の辿った道を追体験するというだけでもなかなかできない素敵なことと言えるが、その祖父が白洲次郎となれば、読者の我々にとっても貴重な体験である。
(2020年5月了) -
ふむふむ、例のベントレー、ルマン二十四時間耐久レース優勝のレーサー(兼ディーラー)から直接購入していたとは。。。
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白洲次郎が留学時代に友人のロビン(7世ストラッフォード伯爵ロバート・セシル・ビング)と愛車ベントレーのジブラルタルまでの旅を、孫である白洲信哉がたどるという旅行記です。
(Winter Vacation 1925-1926 ヨーロッパ大陸12日間の旅)
白洲次郎は本気で好き。
愛してる、って人前で叫んでも良いくらい好き。
彼の姿形も考え方も行動も、何もかもが大好き!
…………、というぐらい大好きな彼のエピソードがたっぷりつまった1冊でした。
今まで紹介されてきた白洲次郎は一人の立派な大人としての行動ばかりが(もちろんヤンチャな部分もありますけど)強調されていたように思えます。
が、これは旅行記であり、お孫さんが書かれただけあって等身大な白洲次郎の姿が見えてくるのが嬉しかったです。
彼のライフスタイルのエピソードもたっぷり。
言動一致しているのが、超カッコイイ。
やっぱ有言実行だよな〜〜〜!(うっとり)
やっぱり英国留学が彼の基礎を形作ったのでしょうか。
とてつもなくダンディで、粋で、ユーモアがあるんですよね。
これぞ紳士(ジェントルマン)。
少年のように真っ直ぐな正義感を一生心に持てた人でもあり、それを行動に出来る勇気ある人でもありました。
彼に続くような男性(といより『殿方』とお呼びしたい)がたくさん居たら、日本はもっともっと変わっていただろうなぁ…………