- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344018075
感想・レビュー・書評
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永遠の0と同じ作者さんと思えないほどの狂気に満ちた作品。
女性として美貌を求めるのは当たり前。
そして、毎日社会に出て世間の外見至上主義の風に晒される……
この作品の主人公の狂気、異常だけど下手したら全ての女性が持ちうるものだよね詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ストーリー展開も小気味よくすらすらと読めて面白い。しかし、読後のモヤモヤ感はなぜだろう。主人公の生き方に、どうしても寄りそえないのが理由だろう。
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整形に対する考え方、美人が自分のことをどう思っているか、男のことをどう見ているか、こまかく、しつこいぐらいに書かれていて、なるほどなあと思いはしたが、ただ、書いてるのはやっぱり男なので、本当のところはどうなんだろうなあ、という気がしながら最後まで読んだ。
内容としては、そういう内容で、ストーリーだけをみれば、大して面白い話ではないと感じた。
読み終わって、この小説、あまり好きじゃないな、と思ったのはそのせいかも。女性心理についての本としてみれば、男が書いたものにしては、なかなか面白いね、と言える。 -
醜女の純愛物語。純愛と狂気は紙一重だと思った。純愛物語だけど、ファンタジー感なくて、とても現実的。整形手術の描写はとても具体的でゾッとした。
街一番の醜女(和子→未帆)が、初恋の男(英介)への想いを成就させていく、というシンプルなストーリーだが、その過程と過去のエピソードが壮絶。どんな過去があり、どんな人生を経ていくのか、気になって一気読みだった。また、整形で容姿が変貌していくに連れ、周囲の反応がどのように変化していくのか、といった描写が、なるほどと思うところもあり、面白かった。
ラストで最期を迎えた和子のシーンは幸せで幻想的だが、残された英介は?喪主と葬儀は?崎村?などと気になった。 -
器量が悪く小さい頃から苦労ばかりしてきた主人公。整形を繰り返し、かつて自分を苦しめてきた人々へ復讐したり、愛していたが成し遂げられなかった相手との恋愛に燃えたり。果たして整形でこれだけ人生が変わるものか、という部分は置いておいても…「人生は顔じゃない。大事なのは内面だ。」とは一概に言えないし、美しい人の方が得なことが多いというのは間違いでないと思う。ラストは読者にとってはスッキリしなくても、主人公にとっては感慨深いものなのだろう。
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中身はかなり生々しい。整形の話だと思っていたので、風俗のディープな表現にはちょっとびっくり。
男ってみんなバカじゃないの?と思った。
ただ、しばらくしたらどんな話だったか思い出せなくなりそう。読みやすくてすぐに読んじゃったけど、心に残ることも感動することもない。 -
読了して、コンプレックスにどう向かうか、という話だと思った。
完璧な笑顔のかけ引きと手練で初恋の人に、自分からアタックさせて、その人と一緒になって幸せなはずだった。
もし健康で、自分の命のタイムリミットを感じていなかったとしたら、本当は自分はあのとても醜かった幼馴染の自分だと告白しないでいたのだろうか。
例えば、小さいときに貧乏で自分だけいつも同じ服を着ていて、馬鹿にされてそれを見返してやろうと長じてお金持ちになったとして、それで何をしても自分の小さな時に植え付けられた鬱屈は消えないだろう。
整形して美人になってちやほやされても、それでは小さいときの自分に刺さったとげは無くならない。むしろ、今の状況はその小さいとげがある事をより自分に強調するかもしれない。
それを克服するには、小さい時の自分はそれとして受け入れて、それでも自分はどうありたいか考えるしかない。あの時自分が美人だったら、あんなに貧乏じゃなかったら、と思っている間はずっとそれは自分に刺さったままだろう。
整形も、風俗も、田舎に帰ってかつて酷い扱いをした人に復習する事も、とても卑俗でそこが面白いとは認めにくいし、そう感じない。主人公も自分で認めているように、綺麗な顔に整形しただけで賢くも優しくもない。だから、感情移入したくないと感じる。
それでも最後に全てを告白して散ったときに、感情が揺らされてしまうのは、きっと自分にもまだ刺さっているコンプレックスがあるからだ。だから、そのやり方じゃあ克服できないと思いながら、過去の醜い自分に向かい続けずにいられない主人公に感情移入しているんだろう。
向井敏の「文章読本」で、伊藤整の「青春について」が扱われていた。その趣旨がまた素晴らしくて、そちらには別に出会って欲しいが、文脈を無視して一部だけ引く。
「青春らしいものは、いまだ私の耳元で囁くのである。お前は、結局、お前の青春を所有しなかった。それは、もう再びお前が所有することは決してないであろう、と。私の青春は、衰え、力弱くなりながらも、私の肩の辺に腰かけている。彼は私が喫茶店の片隅でボウゼンとしている時、私が木々の緑なる水のほとりを歩く時、私が年若い学生の群とすれ違う時、私の耳に囁くのである。オレは、今までお前に付きまとってきたが、遂にそれは無駄であった。お前は、かつて、一度もオレを満足させたことがなかった、と。」
コンプレックスとは自分が“生きる事のできなかった”人生である。それは、際限無く大きくできる。まるで、そう、モンスターのようにも。
モンスターになってしまって、それに向かわざるを得ない主人公はその生きる事のできなかった青春らしきものを思い出させる。そして主人公の悲喜が自分の感情を引っ張る。それが今は時折耳元で囁く程度なのだとしても。