ポロメリア

著者 :
  • 幻冬舎
3.46
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本棚登録 : 905
感想 : 123
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018358

作品紹介・あらすじ

過去も未来も愛してるけど、"今"が要らないんだ-。朝一番グランドの隅っこで校舎の4階から飛び降りた私は地べたに転がって、まだ生きている。その花の香りと、二度と戻らない日々の記憶。アーティストCocco、初の小説。

感想・レビュー・書評

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  • アーティスト・Coccoの自叙伝的小説。
    沖縄に生まれた少女の、小学生から中学生、子どもから大人への過渡期の物語。
    あぁ、Coccoだなぁ…という感想。彼女のファンで彼女の楽曲を聴いてきた人にしかわからない感覚かもしれないけれど。
    これまでの曲の歌詞のフレーズが含まれている文章があったり、「あの曲はこの場面のことなのかな」と思うシーンがあったり。

    思春期の複雑な感情。
    私も感じた、「押し出されていく感じ」。
    望んでいないのに卒業や入学で環境を変化させられて、望んでいないのに身体はどんどん大人になって。
    ひとつひとつの変化に心がついていけないまま、押し出されるみたいにして、次の変化を突きつけられる。

    沖縄らしい、光に溢れた美しい感じや、バレエ教室のことや家族や友だちとの何気なく楽しいシーンも織り込まれているのだけど、全体には思春期独特の閉塞感や焦燥感が流れている。
    何か、自分の思春期のときのことを思い出した。
    教室に詰め込まれて「どうして私はここにいるんだろう?」と思っていたこととか、結局はいろんな変化にうまく対応しきれなくなって一時不登校になってしまった幼い自分のこと。
    その中には楽しい思い出もあるはずなのに、思い返すとやはりそこを閉塞感や焦燥感が覆っているような感じ。

    「女になっていくことの嫌悪」を表現している最終章はとくに、男子禁制、かも。男の人は読んでいられないかもしれない。
    自分が女であること、女であることを異性に意識されること、を嫌悪すること。
    それでも時には女であることを使ったり、そうして生きていかなければならないこと。

    「今がいらない」という痛々しい思い。
    自分の意思とは裏腹に、置いてきぼりを食らうみたいにして、変わっていく世界。それにうまく対応する術は、もしかしたら今もわからないままなのかもしれない。
    そんなことを思った。
    ファン以外の人が読んだらどうなのかは、私はファンであるのでわからないけれど、この小説を読んだあとに楽曲を聴いたら、また違う印象を持つかもしれない。

  • 本全体がCoccoのrainingみたいな世界観だと思った。腕を切る話は載ってないのだけれど。
    主人公の突拍子もない行動はいまいちよくわからない、わかるような気もするけど。でも、主人公を取り巻く世界は限りなく美しい。そういう世界観。
    飼い犬にあのような行動をとった理由を勝手に想像してみる。
    飼い犬は「3姉妹」の末っ子のような存在だったのだろうか。女でいることを疎まれている自分。そんな自分にお構いなく勝手に女になっていくジョン。それが憎かったのかな。
    私も経験があるような気がする。母親にいつまでも子供でいてほしいという圧力をかけられて育った。私に彼氏ができたら物凄いショックで怒りに震える母を見た。妹が生理になった時、彼氏ができた時、私には隠されていた。そんなに仲が良い姉妹でなかったし、というか、姉妹の仲も子供時代のままでいないといけないような気がしていたから、いわゆる「女」の話はお互いしたことがなかった。まあとにかく、隠されていたそれらの事実を知った時、なんだか無性に腹が立ったんだよね。理由はよくわからん。何であんたは怒られないんだ?かな。あんたいつまでも子供のくせに何で女になってるんだ?かな。私がそういう反応をしそうだから妹も隠してたんだろうけど(笑)

    Coccoは家族も友達も賑やかで優しくてとても恵まれてるように思える。あんな病んだのはやはり「性高」だからなのか。と、思ったけど、この後両親が離婚したり、あんなに憑かれてたバレエで挫折したりがあるんだね。この話はCoccoの始まりの物語なんだ。

    あと、沖縄の文化を知れる本は内地にはなかなかないから、資料としても結構参考になった。
    ウチナーグチを少し知ってないと本文中の言葉が時々難しいかも。

  • 自分の性についてあれこれと考えてしまうことは、恐らく男性よりも女性の場合の方が多いのではないかと思う。この物語の主人公である由希子も、自分の性を受け入れられずに生きる。そうでありながら、美しい外見をもつ自分の母親に対しては強烈なまでの憧れをもつ。汚いものを受け入れられずには大人になれない、というか、時間とともに汚いものを受け入れられるようになるのが人間だけど、由希子の場合はそれがどうしてもできない。その思春期特有の矛盾を孕んだ心理がものすごくよく表現されてる。それから、沖縄人がどうしても切り離して考えられない、戦争や家族に対する気持ち。これが話をうまく盛り上げている。

  • Coccoの本。すごく良かった。胸がきゅってなった。こんなに感受性強かったら生きづらいだろうなぁ。
    でもそれだけ違う世界を見てるんだろうなぁ。

  • 歌手のCoccoによる小説。

    Coccoが作った歌の数々を思い起こさせるシーンが出てきて、この世界観は長い時間をかけて確固たるものとして作り上げられていることがうかがる。

    もちろん実体験がベースになっているのだろうけど、それに彼女の空想が加わって、独自の色彩を生み出している。

  • Coccoの自伝。と言っていい本だと思う。

    一番好きなアーティストが本を出す。
    ということで、あたりまえのように買って読んだけど

    正直読みたくなかった。

    私は彼女の作品には興味があるけど、
    生い立ちとか、彼女自身に興味がある訳じゃないんだなあ
    と実感した本でした。

    考えさせられるワードはいっぱいあった。
    けど、どこかしらじらしかったかも

    やっぱしCoccoの音が好き!!!!!

  • 「叶わない夢は、もうある。」

    子供の頃は、大人になることが夢の叶う条件のひとつだと想っていた。
    憧れだったものに手が届く半面、無縁でいたかったものに身を浸している今、
    大人を羨むのが"こども"なら、子供を羨むのが"おとな"なのかと想う。

    写真がどんなに鮮やかでも、その瞬間はもう、記憶の中でしか息づかない。

  •  歌手であるCoccoの初小説とあるが、正直なところ、物語というよりは、当時の日記というか、自伝というほうが正しくこの本を説明できると思う。

     内容としては、中学生になった女の子の頭の中をのぞいてみたような、そういう印象を持った。自分は男だが、「あぁ、そういえばそんなことで悩んだりしたなぁ」と思い出した。当時の気持ち、思春期と呼ばれるころの気持ちがありのままに書かれていて、登場する人物や風景は非常に魅力的に見えた。
     仲良し3人組のうち、2人がバレーを習っていて、バレーの会話ばかりしていたら話に混ざれなかった子が、突然持っていたかばんを地面にたたきつけ、「おまえらバレーの話ばっかりすんな!」と叫ぶ。そして、その場で泣き出して走り去ってしまう。小さな疎外感から、感情を表に出してしまう、そういう時期の人間を、きれいに、素直に書いているなぁとおもう。
     また、歌手Coccoらしさ、という点も、彼女が今までに歌ってきた歌詞の一部がひっそりと登場するくらいで、前面に出てきていない分、読み物として非常に面白かった。正直、歌詞を前面に出してきていたら、物語としては読みづらいものになったと思ってしまう。
     また、言い方を変えれば悪い点になる(実際、悪い点にも書いた)が、選択や思考には、かならず裏打ちされたエピソードがある。なぜ、彼女は想思ったのだろう?という疑問には、その後すぐに始まる過去の物語が答えてくれる。すごく斬新で、それがゆえに主人公をよく知ることができる。心の動きが鮮明になることで、読み手が感動できる。よく書き込まれた物語だ。

     総じて、面白い作品ではあったけど、不満はいくつかある。
     ひとつは、取り止めがないこと。物語中の実時間は、入学してからほんの1週間程度の時間しかない。が、物語の大半は、この1週間の中ではなく、彼女がこれまでに経験してきた「過去」に割かれている。もちろん、この「過去」がないと、「いま」彼女がなぜそう思っているのかにつながらないし、結果として「未来」につながっていかないことになる。だから、過去の話は必要ではあるのだが。その過去の話が唐突に始まりすぎる。大雨の中、父に車で迎えにきてもらい、母とともに乗り込んで家路に着く。窓の外を眺めながら、父と母の会話に耳を傾けている。と突然ここで時間が過去に飛んで、保育園くらいの頃の話が始まる。いったい、いつ過去に飛んだのか、非常にわかりづらい。そして、ひとつのエピソードが終わっていまに戻ってきても、いったいいつ戻ってきたのかわからない。いきなり、過去に飛ぶ前の会話にリンクする。
     最初のうちは、このリズムが理解できなくて、行間を飛ばしたのだろうか?ページを飛ばしたのだろうか?と思ったが、そういう風に書かれていた。慣れてしまえば何のことはない、あぁこれは過去の話なのか、とすぐjにわかるようになるし、人によってはこれがいいんだ!という事もあるとおもう。あくまでも、自分には理解しづらかったという話。
     あとは、この過去に飛ぶ時間が長すぎる。過去のエピソードが多すぎて、いまの時間が短いから、なんだか取りとめがないように感じてしまう。ただ、さっきも書いたが、この過去のエピソードがなければ、いまの物語を理解できない。なぜ、主人公たちはそういう思考にたどり着いて、いまこの決断を下したのか。それは、過去に起きた物語からしか読み解けない。しかし、エピソードが多すぎる。そして先にも書いた、始まりが唐突過ぎる。いいたいことが多すぎてうまくいえないといった感じはでているが、取り止めがなさ過ぎる気もした。


     ここまでが、この本の感想です。ただ、私にはこの物語の結末が理解できませんでした。なぜ、彼女があれほどまでに月経を忌み嫌うのか。汚い!と叫び飼い犬を蹴り飛ばし、いざ自分にそれが始まってしまうと、突然校舎から飛び降りる。物語全体のいいたいことはよくわかるのに、最後の結末だけがどうしても理解できなかった。
     また、どうしても少女の心の中を細かく書いた物語であるがゆえに、男から見た場合に、理解しづらい場面が非常に多かった。だから、結末も理解できなかったんだろうか?そう思うと少し悲しくなる。
     もしよければ、この本を読んだ方で最後のシーンが理解できた、共感できた方に、教えていただきたいと思う。

  • Coccoの小説ははじめて。というか、Cocco自身も長編小説ははじめてですが・・・。
    日頃からCoccoが好きで、歌やエッセイ、雑誌でCoccoの発する言葉を読んでいたけれど、「ポロメリア」はもっと本質的で深い感情が読めました。
    もし、主人公のゆきこがCocco自身の分身なら、感受性が尋常ではないくらいに強いと思った。
    誰もが感じるところから、もう一歩、進んで感じ取ってしまう。
    (一歩手前の感情なら、私も共感できる部分が多かった。)
    それが良くもあり、悪くもあるのかもしれない。
    でも、Coccoがたくさんのすばらしい曲を産み出せるのも、この感受性があるからなんだろうな・・・。
    お母さんとの関係は、少し切なく思った。
    大人になって、うまく生きて行けるようになる。
    そうであって欲しい。

  • 小説というかたちであっても、彼女の持ち味はかわいらしい毒っ気。
    少女時代の心情としてはとてもリアルなんじゃないでしょうか。なかなか共感度が高かった。
    主人公と同じくらいの年代の頃に読んでいたら、きっとぐさぐさと心につきささって
    読むのに痛みを伴ったんじゃないかと思う場面がたくさん。
    やっぱり「子供時代は夢だ」なんていうのは"過去"の"やさしい想い出"にすがりたい大人の嘘っぱちなのだから、これを読んで「かわいらしい」と思える自分も嘘つきな大人になったってことか。

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著者プロフィール

1977年、沖縄県那覇市出身。アーティスト。
シンガーソングライター・女優・絵本作家・エッセイストなど多方面で活躍。透明感のある独特な存在感を持つ。
絵本には『南の島の恋の歌』『南の島の星の砂』(共に河出書房新社)が、エッセイ集や小説『ポロメリア』(幻冬舎)などもある。

「2019年 『みなみのしまのはなのいろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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