腐った翼: JAL消滅への60年

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018495

感想・レビュー・書評

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  • 一昨年に購入し1度読んだが、ふともう一度読んでみたくなり手にとった。
    JALという国策会社において経営陣は派閥争いに奔走しながら、一方で組合問題や隠れ赤字のような重要な問題からは目をそむけ、そこに政治が我田引水を目的にJALの資産を食いつぶそうとしていく、その流れを書いている。
    いろんなことを書いているが、基本的には経営者をはじめとした役員が自分のことではなく、会社のため、ひいては顧客の為の経営判断をしっかり行うことがまったくできていないことにつきる。

    経営の内容や決算数値、航路別の収支等具体的な経営指標はほとんど書かれておらず、経営者を始めたとした「人」の面だけクローズアップしており、かつ、かなり各人に対し人間的な批判をしながら書いているので、これがJAL問題のすべてだとは思ったら間違うと思う。
    しかし、経営者とは・・という意味では非常に勉強になった。

  • JALの倒産は、「翼は腐っていた」という第10章のタイトルに尽きると思う。

  • 『魚は頭から腐る』と言われるが、
    まさに JALの60年の歴史は、
    アタマが 腐り続けた ことだった。

    丹念に インタビューし、実名で 書かれているところに
    好感が持てる。JALの本当にあるべき姿とは?
    何のために JALが、存在し、そこでなぜ働くのか?
    そのことが 痛いほどわかる。
    経営者の資質、経営判断、失敗を覆い隠そうとして
    さらに 負の遺産を積み上げていく。
    『沈まぬ太陽』のなかでの 石坂浩二は、すばらしい役割をしたが、
    ここでの カネボウの伊藤淳二は、ちょっと、情けない。
    労使協調路線をとり、『機長組合』をみとめ、団交権さえも認めた。
    ストライキを恐れるあまりの 労働組合への弱腰。

    為替損、燃料の先物買い。
    政治家との癒着と便宜。国交省の能力のなさ。
    銀行の バンカーとしての矜持のなさ。
    沢山の戦犯が 存在しているのだね。
    『親方日の丸』の安易さ。
    自民党政権が 民主党政権に変わることで、
    やっと 日本航空は 倒産することができた。

    とにかく、真正面に立ち向かわず、権力闘争に明け暮れてしまう。
    本当に、これだけの様々な 問題が あって、倒産したのは
    必然的であるが、JALが 短期間で 再建し、
    現在は どんな問題を抱えているのか?
    この著者の視点で 『腐った翼』その後 を書いてほしいなぁ。

  • 2010年刊行。テーマはタイトルから看取できるとおり、JALの衰退過程とその要因を解説。レベルは良質なドキュメントといってよいかと(ただし、一読すれば内容把握は容易なので、再読の価値があるかは…)。

  • 2015/6/24読了。
    前半戦、歴代社長&役員の説明がきつかった…
    中盤からは対外的な話も多くて飲み込みやすかった。
    これを読むまでにJALは苦しい会社という程度の認識しかなかったけど、JALには乗りたくないな、という気持ちになった。
    国も国民も見限って潰れたほうがみんなの為にいいと思う。

  • JALの再生に、向けて銀行団が支援をしているが、国際化競争、LCCが増えていることから、再生は難しい。お役人達が無料及び半額券を使い乗務していたり、地方の空港を作ったから飛行機を飛ばせとか経営がメチャクチャであった。
    そのことをふまえてもいずれ、淘汰される会社だと思う。

  • 沈まぬ太陽の後も沈み続けるJAL。
    最近の報道ではこれまでで最もうまく行った再建と言われているが、この本を読む限りそう簡単に体質が変わるとは思えない。ググってもリストラの効果や、不採算路線からの撤退の効果がイマイチわからない。
    何だかスッキリしないのです。

  • JAL設立から経営破綻までを、時系列的に記した一冊。為替予約や燃油ヘッジで大損したという財務的内容から、官僚に無料航空券を配布したり、議員お気に入りのキャバ嬢を裏口入社で客室乗務員にしたりといった政界との裏の繋がりまで、テーマが多彩で読んでいて飽きない。今後JALが如何に再建していくのか注目したい。

  • ザ・ノンフィクション。2010年に読んだ本の中で、3本の指に入る程の衝撃本でした。

    超大企業・元国営企業ならではの派閥抗争、放漫経営等々。

  • 2010年1月に2兆3000億円もの負債を抱えて倒産し、現在は必死の再生をしている途上であるJALの 59年間にわたる堕落ぶりを描いたノンフィクションです。ここまでの魑魅魍魎が渦巻く世界があるとは。

    この記事を書いている際にもJALは大きな動きを見せているようですが、ここで描かれているのは国策会社から『民間化』され政・財・菅の思惑の舞台となり、内輪では内輪で強力な労働組合と社内政治と権力闘争に明け暮れる幹部をはじめとするJAL職員や大小さまざまな不作為などが前編にわたってまさに魑魅魍魎の伏魔殿の様相を呈しており、最終的には2010年1月とうとう2兆3000億円もの負債を抱えて倒産した59年間にわたる堕落ぶりでありました。

    京セラの稲盛和夫を迎え、経営の建て直しがスタートし一定のめどが立ったと世間では報じられていますが、これを読む限りでは、59年以上にわたって醸成された腐食の企業文化がここ数年で一気に刷新されたとはどうしても思えないのです。勿論、現場で『日本の空の安全』のために日夜業務に励んでいる社員はいらっしゃるのは重々承知の上ですが、メガキャリアと化してしまったJALが問題の先送り先送りの果てに『戦後最大の倒産』と巷に報じられるまでのプロセスは時代と場所を問わず、とこにでも起こりうることなんだ、と言う意味でここで描かれたことは『普遍の真実』なのかな、と読んだあとに思ってしまいました。

    今後のJALの動向にはこれからも目を離せませんが、『これまでの経営は知りません』と言っていた社長が、今後どのような舵を切っていくのか?強大な力を持つ労働組合とどう対峙していくのか?見守って生きたいと考えております。

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお) 
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』など著書多数。


「2022年 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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