往復書簡

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著者 : 湊かなえ
  • 幻冬舎 (2010年9月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018839

往復書簡の感想・レビュー・書評

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  • 『告白』で、これ以上ないというくらい秀逸なタイトルを冠した各章の構成の見事さ、
    心理の最深部にまで踏み込んで抉り出すような冴えた筆致に目を瞠ったけれど
    私の脆弱な精神ではついていけないなぁと思ってしまった湊かなえさん。

    この『往復書簡』は他の作品に較べると、心温まるエピソードも救いもあるとの評判に
    「今度こそ好きになれるかも?!」と勇気を振り絞って挑戦したのですが。。。

    どうしてどうして。
    遠くも近くもない絶妙な距離から、人間を残酷なまでに観察する視線も
    登場人物のなにげないひと言からじわじわ滲み出る毒も
    語られるエピソードが一見優しげに見えるだけに、かえって深々と胸を刺します。

    1篇めの『十年後の卒業文集』では、
    「文章の上手さに定評のある湊さんなのに、どうしちゃったの?」と
    どうしようもなくざわざわした違和感を抱かせる、
    冒頭での「~わね」・「~なの」・「~かしら」連発の、
    昭和初期を思わせるような不自然な文体こそが謎解きの要となっていたり

    「楽しい青春時代でしたね」というありきたりなひと言で、
    冷え冷えとした余韻を生んでしまうあたりに凄味を感じたけれど

    2篇めの『二十年後の宿題』では、
    次々明かされる残酷な真実にクラクラしながらも、最後の手紙にほっとして
    「大場くん、梨恵さんと結ばれたのね、よかったよかった」と思った次の瞬間
    「え?これって。。。大場くんの文章じゃないし!」と愕然とし、
    気を抜いた分、冷水(しかも真水ではなく泥水)を浴びせられた気分になって

    3篇めの『十五年後の補習』では
    主人公のふたりにとっては愛に満ちていて美しいけれど
    時効では拭いきれない罪を抱えた結末が、どうにも割り切れなくて

    湊かなえさんは凄くて、達者で、素晴らしいけどやっぱり、
    「同じクラスにいても、きっと友達にはなれないクラスメイト」
    のような作家さんなのよ、と自分に言い聞かせるのでした。

  • 『十年後の卒業文集』
    高校で放送部だった男女。十年ぶりの再会。
    大ケガを負って行方不明になったはずの千秋。
    十年前の思い。

    『二十年後の宿題』
    定年を迎えた女教師がかつての教え子に頼み、
    二十年前の事故にかかわった生徒を探らせる。
    世界は狭い。

    『十五年後の補習』
    中学生から付き合っている男女。
    海外ボランティア先にいる男と日本にいる女。
    十五年前の事故の記憶。

    -----------------------------------------------

    湊かなえさんの作品スタイルはひきょうさを感じるほどに読みやすい。

    今作は一人が延々としゃべるスタイルではなく、手紙スタイル。
    往復する手紙のなかで謎が解けていくのは、かゆいところに手が届く感じに似てる。

    3つの作品全てに最終的に明るいオチがついていて、救いがあるというか、ハッピーエンドだと思う。

    でもやっぱり毒もある。小中学生でもいける読みやすさだけど、内容的にまずい部分もあると思う。
    大人の楽しみ。人生甘さ控えめ。

  • 語る人によって見方はこれほど変わるのだということが、手紙を通して伝わってきました。みんなで笑い転げたという記憶は、別の人にとっては疎外感を感じる記憶であったり、自分がとても気に病んでいたことは、相手にとってはなんてことなかったり。第三者として読んでいると、自分の持っている価値観や思い込みによって物事を判断することがいかに曖昧で、歪みが生じているかがよく分かりました。気にすることないよ♪と言った感じの本はたくさんあると思いますが、また違った角度からその思い込みを説明されたように思いました。

  •  図書館より
     手紙のやり取りから徐々に過去に起こった事件の真相が明かされていく趣向の短編が三編収録されています。

     自分のことから書くと手紙を書いた経験は数回くらいしかありません。手紙以前に文字を書くことが嫌いという体たらくぷりです(苦笑)論述の試験でも「文字を書かすなよ、キーボードを打たせてくれよ」と思ってしまいます(笑)

     理由としては手が疲れる、字が汚い、時間がかかる、といろいろありますが、何より大きいのは書き直すのが面倒、ということがあります。論述試験の途中で論理がおかしいことに気が付いたときの絶望といったら……。序盤なら消して書き直すことも可能ですが、後半だとそのままつっきってしまうことが多いです。消した後の文字がうっすら残っているのもなんだか気に入らないですし……。で、そのたびに思うのが手書きで何か書くときは思いつきで書くと後が大変になるかもしれない、ということです。

     ここで話は戻ってこの本の形式についてです。この本の手紙のやり取りを読んだとき、この手紙たちは書き直した後の残っていない綺麗な手紙たちが自然と想像できました。

     それがなぜなのか考えてみると、登場人物たちが手紙の内容について、思い付きなどでなく、真剣に向き合って書いたということが伝わってきたからだと自分は思います。

     手紙は手間がかかる分、いろいろな思いも文字の上に乗っかるような気がします。三編すべてある事件に対しての新たな考察が加えられるわけですが、対面では話せない、話にくいことではあるし、かと言ってメールでは手紙のような思いを支え切れないように思います。そういう意味ではこの手紙で過去の事件の真相が明らかになるという趣向は、新しくもありながら、ある意味では書かれるべくして書かれた作品だったのかもしれません。そして真相が明らかになった時、手紙を書いていた人の真の思いがようやく読者の前に表れてきます。これを知った時、こういう伝えたい思い、真剣な思いがあったから、この手紙は書き直しのない、きれいな手紙で脳内に再生されたのだなと納得できました。

     内容としては湊作品らしいひやりとした人間の見方が描かれるところもあるのですが、それ以上に温かさに包まれるものも多くて読後感はいいものが多かったです。『告白』のような悪意の突っ切った作品も湊さんの味だと思いますが、温かい作風も決して苦手ではないのだなあ、ということが分かりました。

     このような作品レビューも公表することを前提で、手書きで書くとするとまた違った内容になるのかもしれないとも思いました。別にこのレビューを真剣に書いてないというわけでもないですけど(笑)

  • タイトル通り、手紙で構成された本。短編が3つ。どこかで繋がりがあるのかな~と最後の最後まで期待しつつ読みましたが、別作品でした。
    湊さんの話といえば、後味の悪さというイメージでしたが、これは思いの外、ハッピーエンド!? と少々戸惑っています(笑)
    勿論、湊さんらしい仕掛けも随所にあり、結末まで一気に読ませてしまうところは流石です。
    今は手紙を書くことも貰うことも滅多になく、メールにも言えることですが、残ってしまうもの、消せないものというのは、こわいなーと思います。書き手の思惑と受け手のとらえ方が違うかもしれず、その場で誤解を解くことが難しいから。
    でも手紙はまだよいかもしれません。多少気を遣って書きますから。 しかし、この本の中の人たちは、結構、ズバリと言い難いことを書いてきます。お話だから、そうしないと伝わりにくいという側面もあると思いますが、ズバズバと書いてくることに違和感というか、怖いというか、かえってこちらがドキドキしてしまいました。

  • 途中で止められなくなり、一気読み。
    読後感は、もやもやと爽やかがmix。
    救われなさそうで救いのある終わりでよかった★
    湊さんの話はやっぱり面白いっっっ!

  • 手紙のやりとりで物語が構成されているチャレンジ作品、3つの短編。
    手紙のやりとりをするシチュエーションをなんとかつくりだしているけど、さすがに無理だわ。あーんな長い文章、いくらなんでも今どき手書きで書かないっしょー。どうがんばっても、あまりにも非現実的。そのせいで、物語の非現実性にも拍車がかかってしまい、入り込めない。読んでいて、「所詮、作り話」と心のどこかでブレーキがかかってる。
    著者の他作品に比べてミステリ要素も薄っちい。

  • 手紙ならでは伝わるものがあることを改めて感じ、時には手紙を書いてみるのもいいものだと思った。
    しかし、1作目の十年後の卒業文集にあるように、相手の顔が見えるわけでもなく、巧みな言葉を使い受け取り側を騙すこともできる。
    もっともらしく丁寧に書き綴られた内容に、どうして嘘があるだなんて思うだろう。
    そんな落とし穴に少し寒気も感じつつも、じっくり考え、言葉を選びながら人と会話をすることが今の時代だからこそ大切でもあると思うのだった。

  • 湊さんの作品って、次どんな転回になるのかと思うと、
    1文1文がドキドキワクワクしてしまう。

    友達の結婚を機に10年ぶりに再会した放送部の仲間たちの往復書簡。

    昔の恩師から頼まれた何年も前の卒業生との往復書簡。

    中学からの付き合いの恋人同士が、彼が異国に行ってしまってからの往復書簡。

    それぞれが、昔なんらかの出来事に巻き込まれていて、
    それぞれがどう解釈しているか。どう人生で引きずっているか。

    やっぱり人って自分が感じる事がまず1番で、
    でもって、相手に対するちょっとした事が、自分じゃそんなつもりはないのに、
    相手にとったら不快に感じられたり、その逆だったり。
    まったく同じように感じるなんてない事なんですよね。
    同じ事を話していても感じ方の違いっていうか。

    自分の人生でももちろんそういう事ってあるし、
    そんな心情を表現するのが湊さんは本当にうまいし、
    それがサスペンスチックで読むのが止まらなくなる。

  • ここのところ少しハードな作品を読んでいたので、その息抜きにと思って読みました。湊かなえさんらしい無難な作品といって良いと思います。
    個人的に雰囲気が一番好きなのは、はじめの作品です。が、3作ともなんとなく(とくに1作目)先が読めてしまい、オチがわかってしまうのが少し残念でした。ただ、私が湊さんの作品を読むと、あまりに登場人物が多く、伏線も複雑で、混乱してしまうこともしばしばあるので(笑)、比較的登場人物が少ないこの作品は読みやすかったと感じました。
    しばらく、湊さんを読んでみることにします。

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