往復書簡

著者 :
  • 幻冬舎
3.52
  • (207)
  • (670)
  • (713)
  • (130)
  • (21)
本棚登録 : 4305
感想 : 669
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018839

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  図書館より
     手紙のやり取りから徐々に過去に起こった事件の真相が明かされていく趣向の短編が三編収録されています。

     自分のことから書くと手紙を書いた経験は数回くらいしかありません。手紙以前に文字を書くことが嫌いという体たらくぷりです(苦笑)論述の試験でも「文字を書かすなよ、キーボードを打たせてくれよ」と思ってしまいます(笑)

     理由としては手が疲れる、字が汚い、時間がかかる、といろいろありますが、何より大きいのは書き直すのが面倒、ということがあります。論述試験の途中で論理がおかしいことに気が付いたときの絶望といったら……。序盤なら消して書き直すことも可能ですが、後半だとそのままつっきってしまうことが多いです。消した後の文字がうっすら残っているのもなんだか気に入らないですし……。で、そのたびに思うのが手書きで何か書くときは思いつきで書くと後が大変になるかもしれない、ということです。

     ここで話は戻ってこの本の形式についてです。この本の手紙のやり取りを読んだとき、この手紙たちは書き直した後の残っていない綺麗な手紙たちが自然と想像できました。

     それがなぜなのか考えてみると、登場人物たちが手紙の内容について、思い付きなどでなく、真剣に向き合って書いたということが伝わってきたからだと自分は思います。

     手紙は手間がかかる分、いろいろな思いも文字の上に乗っかるような気がします。三編すべてある事件に対しての新たな考察が加えられるわけですが、対面では話せない、話にくいことではあるし、かと言ってメールでは手紙のような思いを支え切れないように思います。そういう意味ではこの手紙で過去の事件の真相が明らかになるという趣向は、新しくもありながら、ある意味では書かれるべくして書かれた作品だったのかもしれません。そして真相が明らかになった時、手紙を書いていた人の真の思いがようやく読者の前に表れてきます。これを知った時、こういう伝えたい思い、真剣な思いがあったから、この手紙は書き直しのない、きれいな手紙で脳内に再生されたのだなと納得できました。

     内容としては湊作品らしいひやりとした人間の見方が描かれるところもあるのですが、それ以上に温かさに包まれるものも多くて読後感はいいものが多かったです。『告白』のような悪意の突っ切った作品も湊さんの味だと思いますが、温かい作風も決して苦手ではないのだなあ、ということが分かりました。

     このような作品レビューも公表することを前提で、手書きで書くとするとまた違った内容になるのかもしれないとも思いました。別にこのレビューを真剣に書いてないというわけでもないですけど(笑)

  • タイトル通り、手紙で構成された本。短編が3つ。どこかで繋がりがあるのかな~と最後の最後まで期待しつつ読みましたが、別作品でした。
    湊さんの話といえば、後味の悪さというイメージでしたが、これは思いの外、ハッピーエンド!? と少々戸惑っています(笑)
    勿論、湊さんらしい仕掛けも随所にあり、結末まで一気に読ませてしまうところは流石です。
    今は手紙を書くことも貰うことも滅多になく、メールにも言えることですが、残ってしまうもの、消せないものというのは、こわいなーと思います。書き手の思惑と受け手のとらえ方が違うかもしれず、その場で誤解を解くことが難しいから。
    でも手紙はまだよいかもしれません。多少気を遣って書きますから。 しかし、この本の中の人たちは、結構、ズバリと言い難いことを書いてきます。お話だから、そうしないと伝わりにくいという側面もあると思いますが、ズバズバと書いてくることに違和感というか、怖いというか、かえってこちらがドキドキしてしまいました。

  • 途中で止められなくなり、一気読み。
    読後感は、もやもやと爽やかがmix。
    救われなさそうで救いのある終わりでよかった★
    湊さんの話はやっぱり面白いっっっ!

  • 手紙のやりとりで物語が構成されているチャレンジ作品、3つの短編。
    手紙のやりとりをするシチュエーションをなんとかつくりだしているけど、さすがに無理だわ。あーんな長い文章、いくらなんでも今どき手書きで書かないっしょー。どうがんばっても、あまりにも非現実的。そのせいで、物語の非現実性にも拍車がかかってしまい、入り込めない。読んでいて、「所詮、作り話」と心のどこかでブレーキがかかってる。
    著者の他作品に比べてミステリ要素も薄っちい。

  • 手紙ならでは伝わるものがあることを改めて感じ、時には手紙を書いてみるのもいいものだと思った。
    しかし、1作目の十年後の卒業文集にあるように、相手の顔が見えるわけでもなく、巧みな言葉を使い受け取り側を騙すこともできる。
    もっともらしく丁寧に書き綴られた内容に、どうして嘘があるだなんて思うだろう。
    そんな落とし穴に少し寒気も感じつつも、じっくり考え、言葉を選びながら人と会話をすることが今の時代だからこそ大切でもあると思うのだった。

  • 湊さんの作品って、次どんな転回になるのかと思うと、
    1文1文がドキドキワクワクしてしまう。

    友達の結婚を機に10年ぶりに再会した放送部の仲間たちの往復書簡。

    昔の恩師から頼まれた何年も前の卒業生との往復書簡。

    中学からの付き合いの恋人同士が、彼が異国に行ってしまってからの往復書簡。

    それぞれが、昔なんらかの出来事に巻き込まれていて、
    それぞれがどう解釈しているか。どう人生で引きずっているか。

    やっぱり人って自分が感じる事がまず1番で、
    でもって、相手に対するちょっとした事が、自分じゃそんなつもりはないのに、
    相手にとったら不快に感じられたり、その逆だったり。
    まったく同じように感じるなんてない事なんですよね。
    同じ事を話していても感じ方の違いっていうか。

    自分の人生でももちろんそういう事ってあるし、
    そんな心情を表現するのが湊さんは本当にうまいし、
    それがサスペンスチックで読むのが止まらなくなる。

  • ここのところ少しハードな作品を読んでいたので、その息抜きにと思って読みました。湊かなえさんらしい無難な作品といって良いと思います。
    個人的に雰囲気が一番好きなのは、はじめの作品です。が、3作ともなんとなく(とくに1作目)先が読めてしまい、オチがわかってしまうのが少し残念でした。ただ、私が湊さんの作品を読むと、あまりに登場人物が多く、伏線も複雑で、混乱してしまうこともしばしばあるので(笑)、比較的登場人物が少ないこの作品は読みやすかったと感じました。
    しばらく、湊さんを読んでみることにします。

  • この話のどこが「北のカナリアたち」に変換されるのか。
    ん~~~絶対みてみなきゃ、映画の方。

  • 三作品全てがタイトル通りの手紙のやり取りで構築されています。湊さんはこういう一人がずっと話している・書いているという構図がお好きみたいですね。会話が少ない分、字がつまってて読みにくそうな印象を受けがちですが、実際読んでみると全然。むしろ読みやすいぐらいにすいすい読んでいきます。これも湊さんの力でしょうか。

    本作は三作品。「十年後の卒業文集」はこの中で一番ぞくっとしました。友情のもつれ、人の価値観…私のような学生にも身近に感じる亀裂がテーマだったからでしょうか。でも最後ぞくっとはしましたが、安心できる終わり方だったと思います。
    「二十年後の宿題」は映画化された話ですね。この人が吉永小百合さんかーと思いながら読んでました(笑)子どもにとっての大人は常に正しく見えている…でも、それがもし違っていたら。“不信感”という言葉が出てきます。これは、大人になるにつれて膨れ上がっていくものだと感じました。映画も観たいです。
    「十五年後の補習」はこの中で一番すいすい読めたと思います。邪念が込み上げることもなく、ただ真実は何なのかと気になってどんどん読み進めていきました。そして最後の終わり方が私は気に入っています(笑)このあとどうなるんだろう、という期待もありつつ迎えたエンド。私は好きです(笑)

  • ストーリーテリングのうまい人だと思った。
    私は、『十五年後の補習』が一番好きだった。離れたくないのに離れなければという場面での純一の心が、痛くて苦しかった。

全669件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

湊かなえの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×