もういちど生まれる

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 2017
感想 : 329
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021051

感想・レビュー・書評

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  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
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  • 桐島の大学生バージョンみたいな感じ。ただ桐島よりも暗めで読んでて苦しい気持ちになる。ただ最後には自分と向き合って前向きになろうとする終わり方はしている。朝井リョウさんは若者の内面の痛みを描写するのがうまいとおもう。5つの短編からなるけど、後ろ暗いものと向き合って乗り越えてくようなことがテーマになってるように感じた。

  • これから大学生になるのが不安で手に取って読んだのだが、特に後半の主人公たちがリアルで共感ばかりだった。この本に出会えてよかった。

  • 天才と言われるような飛び抜けた能力がある人がいて、それによっていろんな人が生まれる様子がよく見えた。
    「すごい世界に入る/入らない」の選択、きっと誰もが持っていた(る)何者かになりたい願望に対して「自分の凡庸を認める/認めない」の選択で分かれる。

    ①【入らない+認めない】すごい人に憧れて比べて自分は足りていない、あるいは凡庸だと苦しむ人
    ②【入らない+認める】自分の凡庸を認め、すごい人をちやほやして意識的にも無意識的にもエンタメ化し、凡庸の世界を歩ける人
    ③【入る+認める/認めない】すごいと言われたけど、すごい人が集まる世界の中では凡庸な自分に気づき苦しむ人
    ④【入らない+事実凡庸でない】すごいけど、あえてすごい世界には入らず、凡庸の中で光る「特別な人」になる道を選ぶ人
    ⑤【入る+事実凡庸でない】すごい人(本当の意味で理解してくれる人がどのくらいいるのかと孤独と自分の価値判断に苦しむ人も)
    (+α:⑤を支える手段に迷う人)

    自分も周りの人もそれらのうちの一人で、なんだか切ない。
    ②の人は、世界や自分に期待しすぎていなくて、スムーズだと思う。ただこの人たちのせいで凡庸か否かという問題を人々は重要視してしまうのであって、問題の根源であって、でも何も罪はない。
    一番生きるのが上手なのはたぶん④の人。頭がいい。
    ①②③の人は、⑤はあくまでも人間なのに人間でないかのように扱い、⑤を傷つける。ネット社会のあれこれも、特別っぽい人間を人間と思わないから起こる問題なのかなと思う。
    結局のところ、【他者の評価じゃなくて自分がどうしたいか】、【自分がそれをやっていて楽しいの気持ちいいのどうなの】というところを軸にしないとどうあがいてもしんどいんじゃないかなと思った。
    他人は常に思い通りにはいかないのだから、他人軸はつらいに決まってる。


    ハルは凡庸で努力も足りない自分を認めたくなくて、でも認めなきゃいけないと思って切羽詰まって最後の行動に出たとして。
    ハルの「せめて兄貴だけは、本当の私の姿を描いて。ステージの最後列、左端で必死にみんなについていく姿を、兄貴だけは逃げないで見つめて。私も逃げないで見つめる。兄貴のこともちゃんと見つめるから、だからおねがい」という痛切な叫びは「せめて大切な人には、凡庸な自分であっても価値を見出してほしい」ということなのかな?「現状自分が凡庸だということを私は認められなかったけど、先に進むために兄貴だけでも認めてほしい」?少し違うような…
    兄視点を見ていると、兄はハルのことを理解しようとしているし、凡庸でもきっと気にしないし、でも純粋にすごいフィールドの人間として応援しているんじゃないかなと思うんだけど。天才としての苦しみを背負いながら、すがるように作ったものを壊されて、傷つく兄がどうしても可哀想だ。
    でも兄が「将来この子は凡庸じゃなくなる」と心から信じていることがハルにはダメージになったことは間違いない。「逃げないで見つめ」た先に凡庸じゃない未来があるかもしれないのに、と未だに夢見がちな私は思ってしまうが、そんな未来はないのが事実なのかもしれない。そう思うとハルの痛みは生々しい。
    自分を見つめた先で、このあともハルがこの道を進むのかどうかはわからないところが、深みを感じて好きだった。

    凡庸な人に価値を見出せるか、というのは現代社会の、あるいは現代若者にとって巨大な課題であって、マンガ『ソラニン』とかにも通じるところなのかなと思う。
    作品を批判する人に対して「作った人が好きだから/作った人の努力や想いを知っているから、批判しないでほしい」「自分で見てないのに、そんなこと言うの、よくないよ」というのも「みんな、いろいろ言われることもあるかもしれないけど、生の舞台見たことないヤツには好き勝手言わせとけばいい。でも、見に来てくれた人には絶対に、すてきなものを見たって思ってもらおう」というのも、全部答えなんだろうな。
    ハルみたいな私からすると、答えを言葉にして周囲にぶつけられる翔多も有佐も眩しすぎるけど、みんな同じ人間だし、全部全部受け入れたら能力云々にかかわらずそっちの世界に行けそうな気もする。

    ーーーーーー
    「ひーちゃんは線香花火」も「もういちど生まれる」も最初からオチの予想がついていたし、個人的にはいまひとつだった。でも「破りたかったもののすべて」が好きだったので、それにたどり着くための他短編だったと思えば読んだ甲斐はあった。読めば読むほど世界が繋がっていくのも面白かったし、現実もこうやって同じ世界が一人一人別の見え方になっているんだろうな、と多視点を疑似体験できて楽しかった。
    風人とかナツとか魅力的なキャラクターが多い中で全物語がこのまま終わるのは不完全燃焼なので、ちょっと話を付け足してアニメ化とかしてほしいなと勝手に思う。ドラマだとチープになりそうなので、アニメがいい。

  • とても良かった。朝井リョウをすすめるなら、何者かこの一冊で行こうと思った。
    全ての話で登場人物が被る。

    1ひーちゃん 風人 汐梨 尾崎

    2翔太 礼生 ハル 椿 おかじゅん 結実子

    3新 ナツ ハル 結美子(おかじゅん)

    4風人 椿 梢 礼生

    5ハル 翔太 椿 ナツ 

    視点がかわると見える人物像が180度かわる。
    5の破りたかったもののすべて、ハルとナツ兄弟をめぐる話が好き。ナツがハルと向き合おうと描いたダンサーという絵。ハルは兄までもが自分の偽りの姿を見ていることを哀しく感じ絵を破く。本当の自分を偽らないで自分自身と、そして兄と向き合おうと思う。
    3の僕は魔法が使えないも好きだ。
    天才だと思っていた、まるで魔法使いのように絵を描くナツ先輩。新はそう思っていたが彼だって魔法は使えない、ただの人間なのだと知る。そして死んだ父ではなく遺された母と向き合おうと筆をとる。
    1の話も割と衝撃的、っていうかまぁ風人がしたんじゃないんだろうなぁとは思っていたけどね。ひーちゃんやるなぁ。全台的に見ると翔太と礼生コンビ、ナツハル兄弟、ハル翔太コンビが好きだった。
    この人たちの話また書いてくれないかな!!!
    朝井リョウさん頼んだぜ!!!

  • 朝井リョウさんの文章は、いつも潤っている。19歳、20歳の、子どもとも大人とも言えない微妙な時期の多感さを、瑞々しく、描く。
    誰かと比べて卑屈になったり、比べられないように必死になったり、でも無理する自分に我慢できなくなったり。
    人間を書くのが上手いなあ。朝井さんが、30代、40代、50代…と歳を重ねて、その年頃の人物をどう描くのか、ぜひ読んでみたい。

  • 結局どれも青春なんだよな、大学生

    カラフルで具体的な表現がとても好きだな
    緩やかに繋がってく人間関係も面白い

    分母と分子で1になる

  • 20歳前後の方には、主人公達に共感をもてたり、
    わかることがあったりして面白い小説なのかもしれないです。

    今回はアラサーの私には、読み進めるのがどうにも苦しい。。半分位で断念してしまいました。
    ケラケラ笑う、とか、毛先をすらすら遊ばせて、とか、
    コカコーラじゃなくてコカコーラゼロを買うんだろうな、などの表現にゾワっとしてしまい…。

  • 19-20歳の男女5人それぞれの短編。朝井さんの描く等身大の若者たちの日常や想いは、自分の過去や現在に少しずつ重なる。登場人物それぞれの弱さや情けなさに、共感してしまう。自分は30歳を越えた今でも他人の目を気にしてしまうし、ミスがバレないよう必死だし、それでもなんとか自分を肯定するのにもっと必死だし。
    そうして登場人物の気持ちとレイヤーが重なった時、ふっと泣きそうになる。

  • 星4

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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