海に降る

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 354
感想 : 73
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021174

感想・レビュー・書評

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  • 夜にページをめくり始めたら、朝になってしまった。
    ここ最近で読んだ小説の中で、いちばんに面白い。

    有人潜水調査船の女性パイロット候補生、という主人公の葛藤と成長を通じて、マニアックになりがちな有人潜水調査の世界が、いきいきと胸に迫ってくる。
    何よりもこの小説が素晴らしいのは、日本を囲む海の謎と可能性にスポットライトを当てている事。

    「全海洋のわずか一割にも満たない日本近海が、生物のホットスポット。日本列島はあらゆるタイプの海に囲まれている。そういう希有な環境が世界有数の生物多様性をもたらしたんだ」

    このエピソードを知って、わくわくしない人なんているんだろうか。
    深海が宇宙よりも謎に満ち、しかも日本人が、その謎にいちばん近いところにいるなんて。
    一人でも多くの人に読んでほしい。この小説に、そして深海という存在に、胸を躍らせてほしい。

  • 朱野帰子さんのお仕事小説にはまる。

    以下、本文より
    入ったばかりの新人が改善点を指摘したりして、反感を持たれないだろうかと私は思ったが、高峰はそのあたりのバランス感覚にも優れているらしい。先輩たちに意見を請い、素直に聞きいれる姿に、好感を覚えこそすれ、反感を持つ人などいないようだった。即戦力で、完璧主義で、謙虚だというイメージをあっという間に植えつけてしまったようだ。

    「深海はいつも食糧難ですからね」

    深海生物は、かつて浅海での競争に敗れ、暗い海の底へ追われたものたちだとも言われている。

    「深海生物がこんな奇形をしているのはね、極限環境に適応するためなんだよ」
    「大事な部位は最大に、要らないものは切り捨てて、徹底的に効率化をはかってるんだ」

  • 大きな憧れはいつの日か呪いに変わり、そして正面から自分のものとして向き合うと夢に変化する。
    夢や情熱を向ければ向けるほどそれは大きな呪いになって、
    深雪も高峰さんも父を信頼してたのと同じくらい不信感を持っていて、だからこそ呪いに追いかけ続けられる。
    深雪が高峰さんに見る薄暗い光の瞳は、きっと鏡ごしに自分を見ているような気がする。
    深雪がその薄暗い光の呪いの中に埋もれそうになった時は高峰さんがすくい上げ、
    高峰さんが同じようになった時には深雪が大きく手を伸ばすのが良かった。

  • 深雪と陽生の姉弟、深雪と高峰さんの触れあいもあったかくて素敵♪閉所恐怖症と・・というよりは諸々の思いやしがらみと立ち向かう人たちの姿がそれぞれ描かれていて、目が離せない感じでした。それ以上に海に感じる神秘と、新しい発見に立ちあうワクワク感に引き込まれるように読んだ。この話フィクションだったことにもびっくり。こんなに深くなくてもいいから、海に潜ってみたいなぁと思った。

  •  天谷深雪は,独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の,世界一の潜航深度を誇る有人潜水調査船しんかい6500の操縦士の訓練生である。
     そのしんかい6000は,既に母親と離別し,アメリカで研究職に就く父も開発に関わっていた。

     だが,アメリカから来た異母弟の陽生の一言がきっかけで,しんかい6500のパイロットたちが乗る耐圧殻の中で閉所恐怖症となってしまった。そのことから有人探査機のチームから外れることになってしまう。
     深雪の思いとはかけ離れた広報課への異動となる。
     深雪,それから広報課に中途入社してきた高峰の,それぞれ父親との関係が話に影を落としていて……。
     
     はまりました。物語そのものもいいのですが,海洋研究開発機構(JAMSTEC)のことが本当にくわしく書かれていて,朱野さんどんだけ取材をしたのかと驚きました。
     深海の,マリンスノーの降る情景とか,深海底にうごめく様々な生物がリアルでオイラ大好物。
     フィクションとはいえ,本当に「よこすか」や「しんかい6000」それからJAMSTECの研究探査活動についてとても詳しくて,深海好きにはたまらないです。
     深海底にはセンジュナマコも出てくるし。この長い小説の中で2回だけですけれど。

     参考文献を見ながら,次に読んでみたいなという本を4,5冊チェック。これでも絞った方。

  •  私的に言うと、有川さん的ラブコメ風味と、海猿的青春風味をミックスした感じ?早い話が当りでした。

     ドラマ化されるって話ですが、何でWOWWOW?地上波でやって欲しい・・・

     FBのタイムラインに流れてきた幻冬舎の発言で知った作品でした。宇宙飛行士よりも少ない「深海潜水艦パイロット」を目指す主人公と、深海の研究者を父に持った青年の話。(省略しすぎ・・・)

     深海について、知らなかったことばかりでした。登場する生態の名前をいちいち検索し、その姿に衝撃の連続。

     水深200m以上のエリアを深海と呼び、海全体の95%をしめ、そのほとんどが研究が追いつかない未知の世界らしい。著者がどう言った理由から深海をテーマに選んだのか、調べていませんが、これは面白く好奇心の湧く小説でした。

  • 海にはロマンがある!
    この本が学生時代に発刊されていたら、進むべき道を見出だせたかもしれない。自分は「研究者タイプ」ではなかったからこの世界から身を引いたが「技術者」としては残れたのではないかと考えてしまった。

  • 面白かったです。とある深海展の会場で売られていて、読んでみて納得。深海について知ることができます。それも生物だけではなく、どんな研究が行なわれているのか、研究を行なうのはどんな人たち/組織なのか、どんなしがらみがあるのかなど、本当に色々分かります。ストーリーも面白く、読んでいてワクワクしました。ヒロインとヒーロー、そしてヒロインの異母弟による一種のバディものであり、成長物語でもあると思います。

  • 深海好きにはたまらない、新種の深海生物に魅せられた人々の物語。

  • おもしろかった!一気に読んじゃった。
    文書の運びも素晴らしい。無駄がない。

著者プロフィール

東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、『マタタビ潔子の猫魂』(「ゴボウ潔子の猫魂」を改題)でメディアファクトリーが主催する第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。13年、『駅物語』が大ヒットに。15年、『海に降る』が連続ドラマ化された。現代の働く女性、子育て中の女性たちの支持をうける。主な作品に『賢者の石、売ります』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『真壁家の相続』『わたし、定時で帰ります。』など。

「2022年 『くらやみガールズトーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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