騙されたあなたにも責任がある 脱原発の真実

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021679

作品紹介・あらすじ

この国に、もはや安全な食べ物はない。原発即時全停止しても電力不足にはならない。3・11から1年、次なる放射能拡散の危機が迫る。政府・保安院・東電の隠された大罪を信念の科学者が告発。

感想・レビュー・書評

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  • 「騙されたあなたにも責任がある」小出裕章著、幻冬舎、2012.04.10
    199p ¥1,000 C0095 (2018.03.12読了)(2014.08.30購入)(2012.04.20/2刷)
    副題「脱原発の真実」
    今年も3月がやってきました。東日本大震災から7年が経ちました。
    あの日を忘れないように、3月には震災関連の本を何冊か読むことにしています。
    この本は、福島原発と原発関連の事項について述べた本です。震災1年後に出版された本ですので、いろいろ切実な疑問に答える形で述べられています。
    余白が結構あるので、ページ数の割には、どんどん読めます。話が一部極論になったり、他の本で読んだ話と違っていたりする部分があるので、ちょっと割引して理解したい気持ちです。
    放射能は、いくつまで浴びても大丈夫という基準はない、とのことです。できるだけ浴びないに越したことはない。
    原発は、安全と宣伝されてきたけど、安全ではなかった。原発は、火力発電や水力発電に比べて安いと言われているけれど、本当は高い。
    福島第一原発は、廃炉に向けて作業が進められているけれど、原子炉内の様子がわからないので、どれぐらいの年数がかかるか、全くわからない。場合によっては、チェルノブイリと同様封じ込めることになるかもしれない。
    放出された放射能は、世界中に広まっている。もちろん、日本中汚染されたと考えた方がいい。原発の事故後、東京都の水道が汚染されているニュースが流れ、静岡のお茶の汚染のニュースが流れたことを思い出します。
    福島の農作物は、廃棄するのはむなしいので、原発事故の責任の重い人たちに食べてもらうのがいい。たとえば、コメは東電の社員食堂や国会の議員食堂で食べてもらうのがいい。
    福島の原発事故の際、東電側は現場からの撤退を検討していたが、管首相が乗り込んで止めた、というようなことが述べられていますが、東電側は、そのような事実はなく、管首相によって、事故対応が遅れてしまったと言っているように聞いています。

    【目次】
    まえがき
    1 なぜ東電と政府は平気でウソをつくのか
    No.01 安定的な冷却を達成!?しかし冷やすべき燃料はすでにない?
    No.02 千葉にも立ち入り禁止レベル。汚染は首都圏まで広がっている?
    No.03 4号機は危険な状態が続く。影響は横浜まで及ぶ可能性も?
    N0.04 西日本も汚染されている。文科省は、なぜデータを公表しない?
    No.05 基準の100万倍! ストロンチウムが海を汚染している?
    ほか
    2 さらなる放射能拡散の危機は続く
    No.19 広島原爆の100発分を超える放射性物質が放出された?
    No.20 事故後の「最悪のシナリオ」はなぜ隠ぺいされた?
    No.21 米軍には9日も早くSPEEDIを提供していた?
    No.22 「個人の責任追及はやめて欲しい」原子力学会はどこまで無責任なのか
    No.23 「もう帰れない」ことを国は伝えるべき?
    ほか
    3 汚染列島で生きていく覚悟
    No.35 今すぐすべて廃炉にしても生活レベルは落ちない?
    No.36 原発は電力会社が儲かるだけ。やめれば電気代は下がる?
    No.37 汚染のない食べ物などない。責任に応じて分配すべき?
    No.38 体内に取り込んだセシウム、そのエネルギーはすべて体内に?
    No.39 緩すぎるコメの規制基準値。子どもに食べさせて大丈夫?
    ほか

    ●管理は300年(52頁)
    今、青森県六ケ所村に埋め捨てにしている原子力発電所からの、低レベル放射性廃棄物といっているものは、管理が300年となっています。
    ●原爆と原発(95頁)
    広島の原爆の場合には、ウランが800グラム燃えました。
    原子力発電所の場合には、1日に3キログラムのウランを核分裂させます。
    つまり広島原爆の約4発分のウランを毎日核分裂させながら電気を起こして、海を温め、そしてできた死の灰は原子炉の中に溜まっていく。原子力発電所とは、そういう機械なのです。
    ●原子力損害賠償法(101頁)
    (原子力発電所で事故が起きた場合の被害の試算結果が)あまりにも破局的なために、電力会社だけでは補償できない、だから、原子力損害賠償法という法律のもとで、電力会社を免責し、ある程度以上の被害は国家が、国会の議決を経て、面倒を見るという法律をわざわざ作ったのです。

    ☆関連図書(既読)
    「プルトニウムの恐怖」高木仁三郎著、岩波新書、1981.11.20
    「食卓にあがった死の灰」高木仁三郎・渡辺美紀子著、講談社現代新書、1990.02.20
    「マリー・キュリーが考えたこと」高木仁三郎著、岩波ジュニア新書、1992.02.20
    「原子力神話からの解放」高木仁三郎著、光文社、2000.08.30
    「原発事故はなぜくりかえすのか」高木仁三郎著、岩波新書、2000.12.20
    「私のエネルギー論」池内了著、文春新書、2000.11.20
    「原発と日本の未来」吉岡斉著、岩波ブックレット、2011.02.08
    「激変する核エネルギー環境」池田清彦著、ベスト新書、2011.05.05
    「福島原発メルトダウン-FUKUSHIMA-」広瀬隆著、朝日新書、2011.05.30
    「原発社会からの離脱」宮台真司・飯田哲也著、講談社現代新書、2011.06.20
    「福島原発の真実」佐藤栄佐久著、平凡社新書、2011.06.22
    「原発の闇を暴く」広瀬隆・明石昇二郎著、集英社新書、2011.07.20
    「内部被曝の真実」児玉龍彦著、幻冬舎新書、2011.09.10
    「原発・放射能子どもが危ない」小出裕章・黒部信一著、文春新書、2011.09.20
    「ホットスポット」ETV特集取材班、講談社、2012.02.13
    「脱原発を決めたドイツの挑戦」熊谷徹著、角川SSC新書、2012.07.25
    「死の淵を見た男」門田隆将著、PHP研究所、2012.12.04
    「亡国の宰相-官邸機能停止の180日-」読売新聞政治部、新潮社、2011.09.15
    「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
    「知ろうとすること。」早野龍五・糸井重里著、新潮文庫、2014.10.01
    (2018年3月12日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    この国に、もはや安全な食べ物はない。原発即時全停止しても電力不足にはならない。3・11から1年、次なる放射能拡散の危機が迫る。政府・保安院・東電の隠された大罪を信念の科学者が告発。

  • 2012年刊行。地域的な差があるが、食べ物は全て汚染している。電力会社の収益構造には注意。非独占へ向うべきか? 原発利権、立地自治体のみ利得。内部被曝はβ線に関わる。基準は要るが、厳密には影響は確定できない。しかし、影響がないというわけではないが…。また、全域の除染、瓦礫処理は非現実的、ないし著しく困難。汚染物質拡散は避け得ないのか?

  • 著者は京都大学の原子炉実験所助教である。助教というのは序列でいえば講師より下だ。著者はずっと原発に反対していた為、原子力のアカデミズムの中では当然出世は不可能だ。しかし、今まさに著者が危惧していた事態となったわけであり、従って原子力御用学者やマスコミが垂れ流してきた、「原子力は安価(火力・水力より高い)でクリーンで安全(今でもそう主張する人が多い)なエネルギー」というデマに対して、ほぼそれを受け入れてきた国民にも責任がある訳だ。もはやこうなってしまった以上日本は放射能と共に暮らしていかなければならない国となったため、国内で採れる全ての食品に対して放射線検査を実施し、放射線量の低い食品のみ子供は食べるような体制を作る必要があると著者は言う。しかし現在のようないい加減な検査体制(魚は頭と内臓を取り除いたものを検査している)、諸外国に比べゆるすぎる基準、未だに放射線を封じ込められないばかりか、原子炉内の様子さえ正確に把握できない東京電力・・・すべてこれからの日本に深刻な影響を及ぼすであろう。福島の処理すら満足に進められていないのに、大飯原発を再稼動する決定は実に迅速であった。原発マネーが未だに日本人を奴隷にしている。

  • 50の質問形式で読みやすい。タイトルは最後のコメントより。これからも必ず人災は起こり得る。原子力はその時の被害が大きすぎるという事。201409

  • 騙された人には、騙された責任がある。経済的なことをはじめとして、あらゆる不利益をこうむりつつも、脱原発を訴え続けた信念の学者である筆者が説く日本国民が今知るべき脱原発の真実がここには記されています。

    これを書いている現在、民主党から自民党への大規模な政権交代が起こり、本書が記されている民主党政権は跡形もなく瓦解しておりますが、原発問題に関することは、ほぼ一切焦点にはされず、今現在も、そしてこれからも、大きな問題として横たわっていくことでしょう。本書は3.11以降、その発言が俄然注目される筆者が、経済的なことをはじめとするあらゆる不利益をこうむりつつも、「原子力発電所の事故を未然に防ぎたい」と41年間、切に願ってきた信念の科学者の叫びは、届かぬままレベル7というチェルノブイリ原発と同じランクに位置づけられる原発事故を迎えることになったのです。

    他の文献を見ていても、日本政府の混乱振りはすさまじく、当時、彼らの判断ミスや、隠してきた情報のおかげで、余計な被害をこうむってしまったということは現在では常識なのかもしれませんが、まだまだ明らかになっていない『事実』は明るみになっていないかと思われます。ここでは政府、東電のみならず、『騙された』我々にも責任がある、とも説いております。この中に書かれていることは、今の日本人が原発事故に関して疑問に感じていることがほぼすべて明らかになっていて、その中には目を背けたくなるようなことが少なくありません。

    ただ、今後も何十年と『事故処理』や『放射能』と付き合っていかざるを得なくなっているからこそ、読んでみる価値はあるかと思われます。

  • 騙された責任。重く引き受けたい。

  • 原発が破壊され放射能というとんでもないものが外に漏れてしまった。その状況に関して専門家が語る真実はあまりにも救いのない現実。この先の明るさ(解決法など)が見えない。それほど、シビアなことだったのだとあらためて気づく。

  • 原子力の研究者でありながら反原発を唱える姿勢には共感するが、汚染された食物を責任に応じて食べると声高にいうのは、あまり科学的でないような・・・。

  • 日本全体が汚染の現実を直視すべし。仕方がないと言ってしまうと、また騙されるだけ。騙されたことの意味を考えて欲しい。

    耐放射能な生物への進化って、できないのだろうか。
    どのくらいの時間がかかるのだろうか。

  • 大人は汚染されたものを食べるべき、というのはチョット賛同はできないのですが。。
    でも、その他のことは小出先生の言っていることはもっとも。
    騙された人も責任割合に応じて責任を取るというのは納得です。しかし、一番大事なことは、「騙されたらもう二度と騙されてはいけない」ということです。

    昨年発刊された原発関連の本(小出先生のものに限らず)は若干古いデータになってしまっていますので、2012年の春の今この時点で一番新しいデータをふまえての内容になっているので、おすすめです。
    わたしはこれを実家の父親に送ろうと思います。

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著者プロフィール

元京都大学原子炉実験所助教。工学修士。
第2次世界大戦が終わった4年後の1949(昭和24)年8月、東京の下町・台東区上野で生まれる。中学生のとき地質学に興味をもち、高校3年までの6年間、ひたすら山や野原で岩石採集に没頭する。68年、未来のエネルギーを担うと信じた原子力の平和利用を夢見て東北大学工学部原子核工学科に入学。しかし原子力について専門的に学べば学ぶほど、原子力発電に潜む破滅的危険性こそが人間にとっての脅威であることに気づき、70年に考え方を180度転換。それから40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続ける。2015年3月に京都大学を定年退職。現在は長野県松本市に暮らす。著書に『隠される原子力・核の真実─原子力の専門家が原発に反対するわけ』(2011年11月/創史社)、『原発のウソ』(2012年12月/扶桑社新書)、『100年後の人々へ』(2014年2月/集英社新書)ほか多数。

「2019年 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】 The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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