僕らのご飯は明日で待ってる

著者 :
  • 幻冬舎
3.78
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感想 : 406
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  • / ISBN・EAN: 9784344021709

感想・レビュー・書評

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  • 「僕らのごはんは明日で待ってる」というタイトル
    この日本語、おかしいよなと引っかかっていたが、最後まで読んだら、 このタイトルの意図するところが分かった

    思ったようにいかないことも多い人生だけど、ごはん食べよ、しっかり足踏ん張って生きていこうという瀬尾さんのエールを込めたメッセージのような気がする

    各章のタイトルも、首をかしげたくなるものばかり
    「米袋が明日を開く」
    「水をためれば何かがわかる」
    「ぼくが破れるいくつかのこと」
    「僕らのごはんは明日で待ってる」

    大切な家族を亡くし、人との交流を拒み、いつも黄昏ていた葉山亮太と両親の顔も知らない上村小春、重い背景を背負っている二人。
    米袋ジャンプがきっかけで付き合い始めた二人の軽妙なちょっとトンチンカンな会話がまさに瀬尾ワールドでおもしろい。
    いつも強気で男前、高ビーな上村、しばらく人との交流を絶っていたので付き合い方が分からない葉山が、オタオタとついていく名コンビ
    葉山は、いつの間にか、人の意見に反対することなく、自分を主張することなく、すべてを受け入れるので、イエス・キリストのようだと、イエスのニックネームまでついた

    言わば、各章のタイトルは、二人が相手を理解し、自分にとってなくてはならない存在だと確認していく過程のように思う

    甘酸っぱい初恋を成就させ、ゴールイン

    両親の愛に恵まれなかった上村は、絵に描いたような幸せな家庭を築きたいと願う。生まれてもいない子供の名前を夏生と育生とゆり子と決め、その日を待つ二人なのに、神様は何て残酷なんだろう

    4章の婦人科の病室の描写、次々と転移を繰り返す山崎さんが薄味で量ばかり多い白飯にふりかけをドサっとかけてくれるシーン
    上村が手術室に入っていくのを葉山が見送るシーンなど、胸が締め付けられた

    退院して二人で帰る道すがらの小春の言葉
    もう小春は、自分の子どもを抱くこともできない
    「とりあえず、誰かの子どもを育てるのも誰かに子どもを産んでもらうのもしない。猫も犬も飼わないし、金魚もインコも世話しない。本来三人の子どもに注ぐはずの愛情を、イエス一人に向けるんだから、イエスは重くてうんざりするだろうし、そのせいで何回もどろどろするだろうし。・・・そのうちはげるし太るしだらしなくなるし大変。だけど、それでも、イエスだけに気持ちを注いだっていいんじゃないかって思う。そんなことを手術中ひたすら考えていたんだ」

    「入院して思ったんだ。会いたい人とか一緒にいて楽しい人って何人かいるけど、でも、いろんなことを平気にしてくれるのはイエスだけだって。イエスがいたから点滴なんて朝飯前になったし、あんなに恐ろしいって思っていた手術も余裕だった。なんでも大丈夫にしてくれるのは、イエスだけだよ。そう思ったら十分一緒にいる意味がある」

    わあ、読んでいて、恥ずかしくて頰が赤くなりそう
    北川悦吏子さんのドラマのセリフみたい
    でも、おばちゃんはこんなのに弱いんだなあ
    何歳になっても、こんな言葉を信じたい乙女でございます

    ☆とりあえず俺は、道頓堀川みたいになろう。見たこともない川だけど、濁っていてもよどんでいてもかまわない。どんなややこしいことでも飲みこめる水をたたえられるようになりたい
    この言葉も沁みる

  • 2人の会話のやり取りが、特に上村さんの返しがいつも斜め上を行っててすごく面白い。
    読んでいくうちに色々な事が分かってくるんだけど、サバサバしたやり取りや素敵な登場人物たちで重苦しくならずに読みやすい。
    お互いがお互いに、こんなふうに思い合える関係があったらいいのになと思えた。

  • 青春恋愛小説…確かにそう。
    確かにそうなんだけど、3つのお話を読んだあとの4話だからこそ、青春以上のお話に心がふるえて景色がにじむ。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    最愛の兄を亡くし、周りをよく見ずに生きるようになった葉山亮太。

    「だからさ、みんな葉山くんとペアになるのを嫌がってさ。だからわたし、体育委員ださらしかたなく、組むことになったんだ」

    そうして上村小春は突然、葉山の隣に立った。
    それが青春の始まり。
    そして青春以上の始まりだった。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    葉山と上村、2人を主軸とした連作短編4話です。
    1話ごとに時間も少しずつ前に進み、2人の関係の変化もむずかゆく、せつないお話たちです。

    そして最終話の4話は、3話までの話の流れから想像もできないところから始まり、読んでいて「えっ?!」となってしまいました。
    でもこの4話は、1~3話を読んできたからこそ心に響くお話なので、ぜひ最初から1話ずつ、じっくりじりじりもどかしくなりながら、読んでいただければと思います。
    ちなみにわたしは葉山みたいな男の子も上村みたいな女の子、どちらもすごく好きです。

    表題の「僕らのごはんは明日で待ってる」は、初見で手に取らせるための本タイトルとしてはインパクトに欠けます。
    しかし4話を読んでからあらためてその表題を眺めてみると、納得してしまうタイトルなのでした。

    • たけさん
      こゆきうさぎさん、おはようございます。
      僕もこの本読んだばかりなので、うれしくなってコメントしてしまいます。

      確かに4話にはびっくり...
      こゆきうさぎさん、おはようございます。
      僕もこの本読んだばかりなので、うれしくなってコメントしてしまいます。

      確かに4話にはびっくりしましたね。異質感がハンパなくて、物語がぎりぎり破綻しないで留まっているような印象でした。

      でも、1〜3話の葉山と上村の信頼感の構築があるからこそ、4話が心に響くんですね。
      こゆきうさぎさんのレビュー読んでなるほどな、と思いました。
      2021/05/07
    • こゆきうさぎ148さん
      たけさん
      コメントありがとうございます!
      なんと!奇遇ですね!
      そういうタイミング、ありますよね(^-^)

      1~3話を読んだからこその4話...
      たけさん
      コメントありがとうございます!
      なんと!奇遇ですね!
      そういうタイミング、ありますよね(^-^)

      1~3話を読んだからこその4話で感じる異質感ですよね…
      でもだからこそ、4話がより、染みます。。

      4話だけでも読めるけれど、やっぱりこの物語は、この1冊で読みたいお話です(^-^)
      2021/05/07
  • 瀬尾まいこ にハズレなし!ですね。葉山くんと上村さんの高校時代から新婚さん時代の少し甘酸っぱく物悲しく でも楽しい物語でした♪ ポカリスエットが結ぶ愛、心がいつもホンワカ温かくなります。とりわけ上村小春さんがとても良い上手い設定になっていて、相当に男前だけど凄く女性らしいところとか....いいなぁ(笑)
    4つの短編がみんな繋がって行くのが楽しいね。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
    • ありが亭めんべいさん
      めっきり秋めいてきた昨日今日ですね。昔の九州場所は随分寒かったのですが、近頃は暖かい九州場所が増えました。それでも鍋物が旨い季節です(^^)
      めっきり秋めいてきた昨日今日ですね。昔の九州場所は随分寒かったのですが、近頃は暖かい九州場所が増えました。それでも鍋物が旨い季節です(^^)
      2019/11/16
  • 兄を亡くした葉山亮太は高校生活の大半をたそがれて過ごしている。そんな彼にずかずかと入り込んできた上村小春。

    米袋ジャンプをきっかけに近づいていく2人の距離。交際がスタートしてそれから…瀬尾さん特有の淡くさっぱりとした言葉で紡がれていく物語。

    小春と対象的な鈴原えみり、彼女はいわゆる「女子力高い」タイプで料理もうまく、可愛げがあってついでに胸も1.5倍。昔ちょろっとデートした相手に「隙がない、強い、1人で生きていけそう」と三重苦のダメ出しをされた私は当然小春に肩入れしてしまう訳です。

    そりゃ、プラス要因に惹かれて好きになるよりもマイナス要因ごと受け入れる方が愛だよなぁ。

    でもえみりもちょっと可哀想…。彼女にも幸せになってほしい。

    病気になって、思い描いていた未来を諦めなくちゃいけなくなって、それでもなんとか前を向いて、他の誰かに優しくなれる2人。明日を迎えられるうちはこうありたいなぁ。

  • 僕らのご飯は明日で待ってる?

    うーむ。今でもわからん、このタイトルの言葉の意味が。
    ぼくらの ご飯は 明日で 待ってる わけですよね。
    日本語として理解できず……。誰か分かる方いたら教えてください。
    喉の奥に魚の小骨が突き刺さったままのようで、気になって仕方がない。
    註:今、引用文を書いていたら、41Pに「むなしい思いってどこかで待ってるの?」という台詞がありました。おそらくや、この表現のイメージだと思うのだが、それでもまだ分からん。

    ま、それはそれとして。期待を裏切らない瀬尾さんの最新作でした。
    主人公が章ごとに年齢を経て成長していくというスタイルは初めてなのでは?
    高校三年の体育祭、兄の死によってたそがれていた葉山君に『米袋ジャンプ』で学校生活の楽しさを思い出させ、好きなことを告白する上村さん。
    この二人がどんどん大人になっていく過程での話だが、ウイットとユーモアに富んだ二人のさりげない会話のやり取りが読んでいてとても楽しい。
    とくに、天然のようで、でもしっかりしている上村さんの個性的な台詞が魅力的。
    どこから、こんな言葉返しの発想が生まれるのだろうか、と思わせる。
    註:あまりに面白いので、引用にいくつか掲載しておきます。

    この小説、不思議なことに主人公二人の容姿や服装などに関する表現、描写、記述が殆どない。
    二人のみならず、途中で現われストーリー的には重大な位置をしめる鈴原さんにしても。
    普通、女の子だったら、髪が長いとか鼻が高いとか、どんな洋服を着てとかいう描写が何かしらあるものだが、この作品では、おそらく意図的に一切そういう表現がない。
    ある意味、小説の基本をぶち破っている。
    “読者にイメージさせるために登場人物のある程度の容姿や服装などは書くべき”というのは、小説を書く時の指南書では決まりごとだ。
    にも拘らず、敢えてそこを書かなかったのは“読者の皆さん、自由に脳内イメージしてください”ということなのだろう。
    どこかの小説の賞とかに応募する作品だったなら、下読みの段階で撥ねられるだろうけれど。
    この作品のすごいところは、それを省いてるにも拘らず、二人の会話のやりとりだけで、二人の人柄はもちろん、容姿、服装なども自然に想像できるところだ。
    特に、これまで瀬尾さんの小説を読んでいる人なら、二人の姿はかなりイメージできるのじゃなかろうか。
    私で言えば映画を観たせいもあるのだろうが『幸福の食卓』の北乃きいちゃんと勝地 涼君のイメージで読んだ。あの二人がそのまま大きくなっていく姿を思い浮かべて。

    大人になった二人は結局つらい現実に直面するのだけれど、それでも「 明るい明日に向かって僕らは生きていくんだ。二人で力合わせて」と前向きに考える姿が微笑ましい。
    人間はこうでなければいけない。
    本当に好きなら、恋人同士なら、若い夫婦なら、こうあってほしい。
    素直な気持ちでそんなことを思わせてくれるような、しんみりしながらも感動する作品です。
    一見ありふれた日常に見せながらも、重いテーマをすんなり入り込ませ、それでもさらに前向きな明るい未来を呈示する。
    瀬尾さんの本領を発揮した良作だと思います。
    ちょっと気分が落ち気味なときなどに読むのがいいかな。

    • まろんさん
      引用の、「飛ばすからつかまりな」のセリフだけで、読みたくなりました!

      主人公たちに関して、身体的な描写が一切ないって、革新的ですね~。
      瀬...
      引用の、「飛ばすからつかまりな」のセリフだけで、読みたくなりました!

      主人公たちに関して、身体的な描写が一切ないって、革新的ですね~。
      瀬尾さん、新しい試みにどんどん挑戦してるんですね!

      たぶん来週の木曜には図書館から「入りましたよー」の連絡が来るはずなので
      私も、葉山くん、上村さんのイメージを頭のなかでふくらませつつ、
      楽しみに読もうと思います。

      タイトルの謎、なにか私なりの解釈がもしできたら、レビューにがんばって書いてみますね(*^_^*)
      2012/06/03
  • 大切な人を失った喪失感を拭いきれない主人公の
    胸の中のもやもやがとてもリアルでした。
    死ぬ人が登場する本をどれだけ読み漁っても、
    死んだ人の周囲の人がどうすればいいのかは書いてない。
    普段だったら、読み流す部分かもしれませんが、
    改めて考えると、本当にそうだと思います。

    結局、人の気持ちを変えてくれるのは、人と時間。

    上村さんに出会って変わっていく主人公。
    それに自身もやや戸惑っているのがこれまたリアル。
    大事な人に出会えてよかったね。
    読み終わった後、思わず背を叩いてあげたい気持ちになりました。

  • 家族を失った痛みからずっと心を閉ざしていた葉山を光へと導いてくれた上山。お互いに悲しみを抱えた高校生の二人が成長し、彼らなりの幸せをつかんでいく話。
    瀬尾さんの本を読むと心が温かくなる。心を揺さぶられるような衝撃はないけれど、浄化される感じ。世知辛い世の中にはこういう作品が良いですね。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      瀬尾まいこさん、大好きです。
      まさに、「心を揺さぶられるような衝...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      瀬尾まいこさん、大好きです。
      まさに、「心を揺さぶられるような衝撃はないけれど、情かされる感じ」。
      この作品では、高校生時代のふたりの、楽しいやりとりも素敵でしたが
      終盤の、明日を諦めないで生きてるために、明日のごはんにふりかける
      何十種類ものふりかけを探してくるシーンが、
      瀬尾さんらしくてとても好きでした。

      簡潔なのに、その本の魅力を最大限に伝えているvilureefさんのレビュー、
      もっとたくさん読ませていただきたいなぁと思います。
      今後ともどうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/12/22
    • vilureefさん
      まろんさん、はじめまして!こちらこそフォローありがとうございます。

      まろんさんの「もう少し、あと少し」のレビューを見ていてもたってもいられ...
      まろんさん、はじめまして!こちらこそフォローありがとうございます。

      まろんさんの「もう少し、あと少し」のレビューを見ていてもたってもいられず図書館に予約入れてきました。早く順番来ないかな~。
      他の作家さんですが、陸上系の作品では挫折してしまうことが多いので今度こそ(^_^;)

      まろんさんのレビュー、まろんさんの興奮が伝わってきてとても参考にないます。なかなか新規の作家さんを探すのって難しいので、是非是非参考にさせていただきます♪
      2012/12/23
    • koshoujiさん
      コメントありがとうございます。

      この瀬尾作品も良かったですね。
      彼女独特の相変わらずの温かさがあって。

      吉田修一「路」は、なか...
      コメントありがとうございます。

      この瀬尾作品も良かったですね。
      彼女独特の相変わらずの温かさがあって。

      吉田修一「路」は、なかなかの傑作ですので、早く図書館から借りられると良いですね。
      それにしても、その前の作品「太陽は動かない」は、
      何故に彼があのようなハードボイルド風作品を書いたのか、いまだに不思議です。
      2012/12/24
  • 久しぶりの瀬尾さん。
    読んでいて、心にあかりが灯るような、温かさのある物語でした。
    神様は乗り越えられる試練しか与えない、とはいえ、なかなか人生ハードモードな二人が、壁を乗り越えて一緒に手を繋いで歩いていく様子に、思わずやさしい気持ちになりました。

    章を重ねるごとに少しずつ互いの呼び名が変わってきたり、二人の距離感がまた絶妙でくすぐったい。
    それにしても、本当に随分と試練の多い人生に思わず理不尽さを感じずにはいられないけど、実際のところ人生なんてそんなもので、ままならない。
    特に最後の山場は、読者である私ですら「なんでそうなるの」と悔しいやら可哀想やら。
    でもそんな時、彼女が一人じゃなくてよかった。大切な彼女へわくわくしながら贈る本を選ぶエピソードが好き。それから、ふりかけの話も。

    実際のところ、なんだって命ありきだよね、と改めて噛み締めながら、もし自分に何か辛いことがあったら、死にそうなくらいショックなことがあったら、もう1度この本を手にしたい。
    辛いことがあっても、翌朝の食事に楽しみが見いだせたら、きっと毎日は随分明るくなる気がします。

  • 思っていた内容と全然ちがったけど、よい方に裏切られ、すごくよかった。

    上村の素直じゃないところがスキ。
    あくまでも下の名前で呼ばないとことか^ ^
    そして葉山くんの臆病さがいい。


    ポカリ、飲みたくなる。宣伝効果バツグン⁈

著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

瀬尾まいこの作品

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