(日本人)

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著者 : 橘玲
  • 幻冬舎 (2012年5月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344021761

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(日本人)の感想・レビュー・書評

  • 人に薦めてもらった本。
    書店の検索システムに全然引っかからなくて苦労しましたが、『かっこにっぽんじん』と読むんですね。

    「日本人は礼儀正しい」「日本人は意思決定ができない」「日本人はマナーがいい」…。
    私たちの周りにはたくさんの日本人に関するイメージが溢れている。
    しかし、それは本当に日本人の特徴と言えるのだろうか。
    日本人は特別、という視点から離れて、もう一度客観的な評価に立ち返り、再定義してみよう。
    日本人を( )に入れて、国家や国民などの規制の枠組みから開放されたとき、この世の中で起こっている様々な問題点と正面切って向き合い、解決の糸口を分析し、未来に向けて歩けるようになるはずだ。

    世間一般で通用している「日本人は○○だ(、だから〜)」について、それが正しいのかを検討しながら、純粋な日本人性を洗い出していこうとする試みが斬新です。
    どんな事案にも共通することですが、人間の性質や考え方に物事の原因を見出してしまうと、それ以上の進歩は望めません。
    知らず知らずのうちに、行動するorしない理由のひとつとして日本人性をこじつけている自分を、本書を読むことで発見できたように思います。
    ステレオタイプは物を考えなくていいので当座は楽なのですが、理論的な反論に対処できない(そもそも対処することを放棄している)と実感できます。

    余談ですが、先日読んだ『読んでいない本について堂々と語る方法』なる本の実践型を本書で垣間見ました。
    著者は恐らく経済学、心理学、文化人類学、哲学といったすべての学問に精通しているわけではないのでしょうが、全体体系を理解していることによって非常に説得力のある意見を述べることに成功しています。
    専門家の本を読むのも楽しいですが、広く浅い知識を有している方の本もまたおもしろいものですね。

  • 「(日本人)」橘 玲
    思想書。クリアグレー。

    いわゆる日本人論ですが、政治学、社会学、経済学などに立脚して書いています。
    論点があっちゃこっちゃ散在していて非常に読み辛い。起承転結のない本なので、全体の要点が掴みづらい。
    でも、ひとつひとつの考えは、個人的にしっくりくるものが多くてオモシロいです。
    あと、ある程度の章ごとにまとめを入れていただいているのは分かりやすい。

    「(日本人)」が世間との協調を美徳とし、権威・権力を嫌うのは、実は突出した世俗個人主義によって、
    ①原理主義を持たず、〈水〉の中に生きていて
    ②私の自由権を制限する政府、官僚、大企業…を憎悪する
    から。という解釈でいいのかな。

    ばっさり感想を一言で言いますと、明治以降の西欧近代化の歪みを戻そうとする国民性の力をさらに抑え付ける道徳論という、二重の歪みを感じますー。

    本書の最後で示される自由のユートピア、徹底的な世俗-合理的:自己表現優位社会は、既得社会をバージョンアップさせる世論形成がなされれば、容易く日本に根付くでしょう。とな。
    何となく、グローバル化した江戸元禄文化をイメージ。鎖国の下で花開いたこととの矛盾がありますが。(3)

    以下メモ
    ----------
    p31.タイ社会は、つねに"ガイアツ"を必要としている。

    p50.貨幣空間の拡大(市場原理主義)というのは、世界の歪みを平準化する運動のことだ。

    p112.それぞれのデフォルト戦略が異なるのだ

    p135.イングルハートの価値マップ。所得/文化-{合理,自己表現}空間

    p160.日本は本質的に「無縁社会」だった。

    p168-172.経済学における自由貿易の余剰の話。分業化の高度化の度合いを「生産性」という。

    p207.正義をめぐる四つの立場

    p216.もしそこがグローバル空間であれば、好むと好まざるとにかかわらず、誰もがグローバルスタンダードに従うしかないというだけのことだ。

    p263.すなわち官僚制とは、日本においては、社会諸集団の結節点として機能しているのだ。

    p282.そのため過当競争と過剰設備でどこも利益をあげられなくなってじった。

    p288.日本がグローバルスタンダードの国に生まれ変わることはものすごく難しい。それは、日本の社会に〈他者〉がいないからだ。

    p317.フリードマンがネオリベの元祖だ。

    p329.ネオリベがグローバル思想だからだ。

  • 僕も最初にこれを読んだときにはかなり衝撃を受けました。日本人とはいったい誰なのか! ?従前の日本人論をすべて覆すまったく新しい日本人論!ということで、いままで我々が「常識」としてきた事を覆してくれます。

    この本は書店で目にして以来、ずっと気になっておりましたので手にとって読んでみることにいたしました。甚大な被害をわれわれにもたらした「3.11」から国内外を問わずさまざまな「日本人論」が発信されて参りましたが、筆者にいわく、
    「日本の被災者は世界を感動させ、日本の政治は国民を絶望させた」
    ということなのだそうです。まさしくそのとおりだな、と。

    その一文からかなり衝撃的な日本および日本人観が全編にわたって展開されていきます。いわく、日本人は「神」というものをほぼまったく信じず、長年重要視されているとされた世間(ムラ社会)ではなく、世俗(神を信じずに功利的に生きる)の方にある。と説きます。はじめてこの一文を読んだときには本当に衝撃を受けました。彼は日本人性の謎を解くカギは、巷間いわれているような「空気=世間」ではなく、「水=世俗」にこそあるのだ、のだそうです。

    これについては1章1章のエピソードも非常に面白く、3章の『「愛の不毛」を進化論で説明する」では男女の分かり合えない理由を
    「異なる生存戦略をもつ男女は“利害関係”が一致しない」
    というあまりにもあまりな言葉でばっさりと言っていたり、社会に関しても「政治空間」と「貨幣空間」から構成され、政治空間とは家族や恋人、友人や知人などの人間関係でできた共同体とし、貨幣空間は他人同士がモノとお金のやり取りでつながる世界であると捕らえており、それはほぼそのまま日本における都市圏と地方ではないか、などと考える自分がおりました。

    さらに「ハシズム」半ば揶揄されながらも「大阪都構想」などの政策を立ち上げ、日の出の勢いである橋下徹知事にも触れており、彼の「思想」の根幹を閉める「ネオリベ」が実はアメリカのそれこそ世界のトップクラスの頭脳が長い時間をかけて編み出した「思想」であり、彼の「ツイッター」を引き合いに出して、その懐の深さを見せるなど、最後まであきさせない展開でございました。これを読み終えるのは本当に時間がかかるかとは思いますが、よろしければひとつ機会を見て一読をされてはいかがでしょうか?

  • この本のいたるところで今までの固定概念を考え直させる著書でした。
    内容に触れてしまうので、少ししか書けませんが、これだけでも考えさせられます。

    従来の日本人論で「日本人の特徴」とされていたことの大半は、ヒトの本性か農耕社会の行動文法(エートス)で、世界の至るところで見られるもの

    日本人性の謎を解くカギは、「空気=世間」ではなく、「水=世俗」にある

    日本人はアメリカ人よりも個人主義的(自分勝手)

    日本人は世界でも突出して世俗的な国民である
    「空気」の支配は個人主義の結果だ(拘束が強くなければ共同体を維持できない)

    <この本から得られた気づきとアクション>
    ・この本をまたいつか読み返すときがきたら、日本はどうなっているだろうか。

    <目次>
    ほほえみの国
    1 LOCAL(武士道とエヴァンゲリオン
    「日本人」というオリエンタリズム
    「愛の不毛」を進化論で説明する ほか)
    2 GLOBAL(グローバリズムはユートピア思想である
    紀元前のグローバリズム
    「正義」をめぐる哲学 ほか)
    3 UTOPIA(「大いなる停滞」の時代
    ハシズムとネオリベ
    電脳空間の評判経済 ほか)

  • 選挙前に読んだので、政治信条の下りは大変勉強になりました。
    この方の本大好きです。
    話はあちこちに飛ぶけれど、引用が多彩で面白い!

  • ★★★★世界的規模の価値観調査基づくネオ日本人論。日本人は世俗的-合理的な価値観が高く、自己表現の価値観が相対的に低い(うんうん!)。一方、欧米人は自己表現の価値観は高いが、以外と日本ほど合理的ではなく、伝統的な価値観も尊重している(へ~)。また、日本人は自分の生き方は自分で決め、自分らしくありたいと強く思っている。個人主義も強い(一人暮らし等)。これで自己表現が高まれば、超越者のいない世界で最も世俗的・合理的な日本人こそ自由のユートピアに辿り着ける。。。かも?
    要再読。

  • マットリドレーの「繁栄」以来、面白い本に出会いました。

    この本は、日本人論というより、日本人をベースにしながら、人間の本性や人間社会の原理を、時系列な切り口も踏まえながら論じた文明論的な本です。

    もともと、機会平等自由競争を信望する自分としては、リバタリアン的考え方親近感を感じているので、ピュアなリバタリアン的方向性と、日本人の特性を絡めて論じられた本書は、自分にとって説得力のある、かつ興味深い内容が多くて、とても参考になりました。

    ◯権力ゲームがゼロサムなのに対し、市場ゲームは、プラスサム
    ⇨まさにその通りだ。分業と交換が進めば進むほど、人間社会は、文明的に繁栄する。克服困難と言われた戦後の南北問題も、市場がグローバル化することによって、今後30年間で大きく前進しそうだ。

    そして、これだけ世界の相互依存関係が進むと戦争することによるリスクも大きくなる。グローバル市場が浸透すればするほど、戦争もおきにくくなる。

    つまり、平和を望むのならば、グローバル化による世界の自由競争を徹底させることだ。

    ◯市場原理主義の逆説は、先進国の豊かさを奪うことで、世界全体をより豊かにして行く。

    ◯長い進化の過程で、因果論を神経系に組み込んだ生物が、このプログラムを持たない生物よりも子孫を多く残すのに有利だったからだと考えられている。

    ⇨つまり、人間含めた生物は、因果論で物事を考えるようにできており、そこから外れると不安になるということだ。この原理から、決して因果論では成立していない世界を、因果論で説明しようとするために、宗教や科学のようなものが発展したということだ。

  • 大好きな、橘玲の本。★★★★★★★★★★!
    コレは、ホンマに良書。読み終えたくなくなる程に吸い込まれる内容。

    日本人やからとか、ではなく、「何で現在の日本や日本人マインドが培われ、今もなお生き続けているのか」を紐解いてくれる。

    政治的そして経済的、思想的に多方面からの視点で切り込んでる内容。

    僕のような、あほぅな20代のぺーぺーはホンマ必読。

  • 示唆はたくさんありましたが、やはりポイントは、「日本人」の性向を、水=世俗と見たところ。この視点は新しい。あまりに、世俗的で個人主義的だからこそ、共同体をやむを得ず形成する。古い共同体が消えた後は、会社etcがイエ化し、フラット化でそれもぶっとんだ後に無縁化するのは必然だ、とつながる。なるほどなと。たとえば、世俗的だからこその「安全保障装置」として、「朝活」「婚活」をとらえてみると、別の視点も開けてくる。スキル獲得や結婚という成果よりも、「○活」というプロセスそのものが持つ、「孤独」を撥ね退けるが、私的領域には深入りしない「安全保障」。そういう見方もできると思う。トンデモ未来予測でもよいけど、「承認」を商品にする「承認保険会社」が出てきてもおかしくないと思った。「つながりが切れた時には、保険金をお支払いしますよ」ってな感じで。
    いずれにしても、「日本人論」再考のために一読の価値はあると思った。

  • 一言で言うと、
    「日本人は、とっても世俗的で、血縁・地縁を嫌うとっても個人主義的な生き方をしている」
    と要約されるようです。


    本書では、

    日本人の特性というと、「和をもって貴しとなす」といったものが象徴的だけど、それはなにも日本特有のもではないという。そもそも、所謂日本人特有と言われている基質は、洋の東西を問わず、あらゆる農耕社会に共通な特質だといいます。

    農耕社会では、その特性上「土地(なわばり)への執着」が生まれます。バブル経済全盛に流行った「土地神話」も日本に特殊な現象ではなく、全ての農耕社会は1万年前から土地神話に呪縛されていたと言います。
    また、「島国根性」という言葉も、囲いをつくって敵から土地を守るというという農耕社会の基本原理で(例: 万里の長城)、「開放的な農村」は原理的に存在しないと言います。
    そして、農耕社会における最も重要な特徴は「退出不可能性」=「ムラ社会」で、その共同体の一員としてずっとその土地に住み続けなければいけない社会であると解きます。そういった閉鎖空間では、共同体のなかで対立が生じたときに行う政治は、「妥協による全員一致」以外にあり得ず、「身分」=「各自の社会的な役割」の固定(「分」を守って生きる)が起こるそうです。

    ちなみに、タイは日本以上にものごとの白黒をはっきりさせることを好まず、面子と気配りを重要視し、政府は日本以上に何も決められず(無責任社会、責任回避社会)、位階(ヒエラルキー)社会だと言います(ラオスはタイに輪をかけてそういった傾向が顕著らしい)。

    それじゃあ、日本人固有の特性とはなんなのかというと、それは、世界でも稀に見る高い「世俗性」だそうです(ダントツでNo. 1に世俗的)。これは、ロナルド・イングルハート(アメリカの政治学者)の価値マップから明らかにされたといいます。また、世界価値観調査では、日本人は、ダントツで国にために戦う気がなく、ダントツで日本人としての誇りがなく、ダントツで権威や権力を毛嫌いする特徴を有するという結果が示され、日本人の極端な世俗性と整合します。さらに、日本、中国、韓国、アメリカの四カ国中で、日本は最も個人主義的な生き方をしているという調査結果もあるそうです。
    ちなみに著者は、大伴家持の句であったり、オリジナルの仏教を世俗化した日本式インスタント仏教、戦前戦後における日本人の変わり身の早さなどを例に挙げて、日本人の世俗性は伝統的なものだと主張しています。


    そして著者は、

    a) アメリカニズムは、アメリカが人種のるつぼなるがゆえにグローバルスタンダードとなり世界を浸食していき、その流れはグローバルスタンダードであるがゆえに止められない(例えば、アメリカでは人種、宗教、性別、年齢で社員を差別することは許されない。結果、定年は存在せず、履歴書には生年月日を書く欄も写真を貼る場所もない)。

    b) グローバリゼーションは先進国と発展途上国との間の格差をフラッット化する一方で、先進国内の格差を拡張する。

    c) よって、先進国はダウンサイジングを迫られることで、国民の「夢」や「希望」がない世界になる。

    d) 経済的には行き詰まりを伺わせる先進国だが、ソーシャルメディアの出現により、人は評判獲得競争(評判経済)により参入しやすくなった。そして、人は貨幣より評判を選好する。貨幣経済→評判経済への転換がポスチモダン。

    e) 社会そのものは変われなくても、伽藍(ムラ社会, 閉鎖系)→バザール(自由と自己責任が一体, 開放系)への転換は個人としては十分可能であり、バザール世界の住人の増加が伽藍世界を壊す圧力となる。

    と続け、

    最も世俗的な日本人が、自由な自己表現のできる社会を構築(伽藍→バザール)... 続きを読む

  • 帯文:”従来の日本人論をすべて覆すまったく新しい日本人論!!” ”日本人性の謎を解くカギは、巷間いわれているような「空気=世間」ではなく、「水=世俗」にこそあるのだ―。”

    目次:はじめに;0 ほほえみの国、PART1LOCAL;1 武士道とエヴァンゲリオン、2 「日本人」というオリエンタリズム…他、PART2GLOBAL;9 グローバリズムはユートピア思想である…他、PART3UTOPIA;17「大いなる停滞」の時代…他

  • いまいちピンとこなかったです。

  • 日本人の傾向。いろいろ納得することばかりだった。
    結局、人って変わらないものだ。

  • 作家による日本人論。有名なそれらと比べて新奇性はない。
    この本は、主に山本七平の「空気」論に依拠している。

    著者がはやりの学問分野に関心があると知ったこと以外には、特に感想もない。


    【目次】
    はじめに――「日本人」をカッコに入れる  [001-008]
    00 ほほえみの国 017

    PART.1 LOCAL
    01 武士道とエヴァンゲリオン 036
    02 「日本人」というオリエンタリズム 053
    03 「愛の不毛」を進化論で説明する 064
    04 「人間の本性」は進化から生まれた 081
    05 コロンブスのタマゴ 098
    06 東洋人の脳、西洋人の脳 110
    07 空気と水 122
    08 「水」から見た日本論 146

    PART.2 GLOBAL
    09 グローバリズムはユートピア思想である 164
    10 紀元前のグローバリズム 182
    11 「正義」をめぐる哲学 195
    12 アメリカニズムとはなにか? 213
    13 原発事故と皇太子狙撃事件 233
    14 フクシマの空虚な中心 243
    15 僕たちの失敗・政治編 257
    16 僕たちの失敗・経済編 274

    PART.3 UTOPIA
    17 「大いなる停滞」の時代 294
    18 ハシズムとネオリベ 313
    19 電脳空間の評判経済 336
    20 自由のユートピアへ 358

    あとがき――エヴァンゲリオンを伝える者(2012年5月)  [376-381]

  • 本書で面白いと感じたのは、世界中の人々を対象に行われた価値観についての意識調査の結果である。通俗的には、(日本人)は欧米諸国ほど個人主義的ではなく、合理性や自己主張よりも、場の空気や組織の利益を優先させる傾向が強いと考えられている。

    だが、そこで統計的に示されたのは(日本人)の意識は、民主主義や資本主義が浸透した先進諸国に比べても圧倒的に伝統的価値(権威主義)を尊重する意識が弱く、世俗的志向(合理主義)が強い。また、生存価値(食べていけること)よりも表現価値(個性の発揮)の方がとても重要だと考えていることだ。

    では、実際の(日本)は、所属する組織の方針や権威よりも個人の意見や性格が尊重されている社会といえるだろうか?

    僕が思うに、この意識調査は「あなた自身はどう思うか?」という個人的な価値観を問うたものであったのかもしれない、ということだ。もしアンケートの対象が個人ではなく、「自国や自国民についてどう思うか?」であれば、おそらく逆の結果がでたのではないか。そうだとすれば、その「ねじれ」は何を意味するのだろう?

    著者は、山本七平のいう「場の空気」(世間)と「水」(世俗)の支配に注目する。(日本人)が「場の空気」に従うのは、たんに個性を尊重しないからではなく、十分に世俗的で個人的な利害打算で行動した結果(自己保身)でもあるからだ。

    とすれば、先の意識調査の結果は、個々の(日本人)が普段は腹に収めている願望なのかもしれない(「(水を)ぶっちゃけて言えば…」というような)。一方で、現実の社会生活のうえにおいては、「場の空気」に従って大多数の人が(願望とは一見すると裏腹な)正反対の言動を振舞っている。だが、それらはなんら矛盾しないどころか、コインの表裏の顔なのかもしれない。

    「国益の確保」を理由に満州事変を熱烈に支持した(日本人)と、敗戦直後にマッカーサーに親愛を込めた手紙を送った多数の(日本人)。「日本列島改造論」に乗っかって経済大国を目指した(日本人)と、「自民党をぶっこわすと豪語する自民党総裁」を支持した(日本人)。「~ムラ」にしがみつく(日本人)と「半沢直樹」の倍返しに共感する(日本人)…。

    僕はTVドラマの「水戸黄門」で毎回繰り返されていたシーンを思い出した。印籠を見せられていったんは「権威」に平服する保身者たち。しかし、それが通用しないとなるや、自分たちの何が悪いのだと居直り出す悪党たち。普段は大人しく黙っているが、腹の底では悪を懲らしめてくれる「正義のヒーロー」を待望し続ける庶民たち。それらはすべて同じ(日本人)の顔ではなかったか?

    現実(場の空気)への同調が願望(腹のなかの水)の鬱積と誇大化をもたらし、願望の肥大がヨリ過剰な現実への追従と頑な自己保身を生む。まるで「メビウスの帯」のように、表裏が「ねじれ」によって繋がっているのだ。

    著者が本書で取り上げている例でいえば、大阪維新の会の指導者が支持された理由も、「水」がぶっちゃけられた例のひとつと言えるのかもしれない。個々人の願望(「世俗的合理性」と「自己決定性」)が、「権威を否定する強い個性的な指導者」登場の期待へと(短絡的に)結びつけられたように思われるからだ。

    著者は最後に、世俗主義と個人主義が「ストレート」に現実化する社会の可能性について語る。もし著者の言う「グローバル(公共)性」や「ユートピア」 が、その「ねじれ」を解消するものであるなら、次はそこへ至る理路をもっと読んでみたいと思った。

  • 日本人、日本社会、グローバルスタンダードを捉える新しい観点を提供してくれる本。
    なぜ日本人は最も世俗的になったのかということについては疑問が残った。

  • 空気を読む,様々な意味を持つ笑顔,面子を重んじるといった価値観は,人間に普遍的なもの又は,せいぜいが東洋的なモノに過ぎず,日本人の特殊性を裏付けないという。
    その上で,日本人の特殊性を,他国と比較して突出した世俗性(損得勘定)と「自分らしさ」へのこだわりに見いだす。

    特に面白い部分は2つ。
    1つ目はは、情緒的な道徳に基づく政治評論が幅をきかせ,政治哲学の影が薄い日本において「正義」論は成立しづらいことを指摘し,正義に関する政治哲学を整理した部分。

    2つ目は、政権交代前の民主党が示した理念及び(太陽の党と合併する以前の)橋下徹が掲げた新自由主義の正しさに言及した部分。これは、民主党政権が崩壊し、橋下徹がが迷走し挫折した(少なくとも、当初のもくろみほど成功しなかった)いま読むからこそ面白い。

    本書の結論として,著者は,他の自由主義と異なり独自の価値観を打ち出すことができる「リバタリアニズム」に依拠しながら,世俗性と自己表現に重きを置く社会への移行を解決策として提示している。
    なお,著者は,リバタリアンであるウォルター・ブロックの著書『DEFENDING THE UNDEFENDABLE』を「超訳」した『不道徳な経済学』を出版している。

  • 「菊と刀」以来、日本では日本人論が百花繚乱であったが、個人的にはこの日本人論が一番「正確」なような気がするねぇ。ちょっと橋下氏への評価は首を傾げるところはあるけど、別にヨイショしているわけではないからいいか・・・・

  • 日本人を語る以前に、世界における人間とは何か。どこかで読んだような文化人類学の話題がてんこ盛りだが出典が章ごとに明記しており、元ネタをちゃんと開示するところは良心的。話題になったサンデルの命題から、ハネケの映画『白いリボン』を例に挙げるなど分かるひとにはさらに分かりやすくなる工夫も多いが、この著者の親切な解説も、前提となる知識がある程度は要求されているようである。
    敗戦後、マッカーサーに当てた日本人たちが、過去を悔いて、救い主を期待する内容の手紙が興味深い。わたしたちは日本人であるかもしれないが、日本人であるという枠組みは必要としていない。

  • 「日本人」という大きなテーマを様々な切り口から展開している。各章で展開されている説はそれぞれ素晴らしいのだが、読み終わった後は「それで、結局何が言いたいのか?」

  • 特にアメリカにおけるオリエンタル研究の中でレポートされた「武士道」や「菊と刀」が、現在の日本人による日本人観の基礎となっていることの妥当性の検討から幕を開ける橘劇場。

    特定の目的のもとに描かれた上記の日本人観が、日本人の特異性をテーマとしているのに対し、日本と世界との共通性を構造的に明らかにすべく、タイなどのアジア諸国文化との共通性、明治期における西欧研究史などが展開される。

    本書を読んで、サンデル教授の正義論や、マスコミ主体のケシカラニズム丸出し報道の需要に、不思議と納得がいくようになった。

  • 日本人は特殊なのかなあと思う。

  • 日本人の本質について、興味深く読むことができました。詳細を記述するのは長くなるのでやめますが、本音ー建前の社会が、今の理想-現実のギャップに苦しむことに繋がっているような気がしています。

  •  学説や実証されてきた論理をまとめ、日本と世界を捉えている。データや事実に基づきまとめられている。日本人が持つ感覚を感じたいという一冊だった。

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これまでの日本人論で「日本人の特殊性」といわれてきたことは、ほとんどが人間の本性にすぎない。世界を覆い尽くすグローバリズムの中で、日本人はまったく「特殊」ではない。従来の日本人論をすべて覆すまったく新しい日本人論。

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