55歳からのハローライフ

著者 :
  • 幻冬舎
3.55
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本棚登録 : 1525
感想 : 279
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022867

作品紹介・あらすじ

人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。「結婚相談所」
生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢を見られるかも知れない。「空を飛ぶ夢をもう一度」
お前には、会社時代の力関係が染みついてるんだよ。「キャンピングカー」
夫婦だからだ。何十年いっしょに暮らしてると思ってるんだ。「ペットロス」
人を、運ぶ。人を、助けながら、運ぶ。何度も、何度も、そう繰り返した。「トラベルヘルパー」

ごく普通の人々に起こるごく普通な出来ことを、リアルな筆致で描き出した村上龍の新境地

感想・レビュー・書評

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  • 人間50歳を過ぎると、誰もがその後の人生についていろいろと考えるようになる。
    というのは嘘で、そもそも私は50歳以降の人生など考えてもいなかった。
    というのも50歳過ぎたら楽しいことなど殆どないのじゃないか?
    と思っていたからだ。
    だから、50歳ぐらいまで生きられればいいやと思っていたのだ。
    でも実際にその年齢に達すると、死ぬのがそう簡単ではないことに気付く。
    なるべく他人に迷惑をかけない方法で自殺したいが、簡単ではない。
    一番楽なのは、眠剤を飲んでそのままあの世生きというのだろうが、致死量がよく分からないので失敗するとこれまた格好悪い。
    というわけで、いまだに生き長らえている。
    まあ、まだ生きていて楽しいこともそれなりにあるので、慌てて死のうとも思わないが。
    しかしながら、これからの人生で希望とか目標とかというのも、それほど思い浮かぶわけではないので、なんとも悩ましい。

    この「55才からのハローライフ」は定年間近になり、第二の人生について考える人や、すでに新しい人生を送っている50代から60代の人間が主人公だ。
    みな、それまでの人生を振り返り、反省や後悔、或いは楽しかった思い出を振り返る。
    富裕層、中間層、或いはさらに底辺の生活を送っている人など様々だ。
    特に心に残るというほどでもないが、村上龍の小説の上手さを味わえる中編集だ。
    これからさらに進んでいく少子高齢化社会において、中高年から老年に差し掛かりつつある人々なら一度は読む価値のある作品かもしれない。
    あまりに身につまされすぎて、明るい気持ちになれないところもあるけれどね。

  • 村上龍の作品はあまり読んでいない。
    おそらく、通読したのは、この作品が初めてではないのか。
    55歳に近くなった自分には、すんなりと入っていきやすい作品であった。

  • NHKでテレビドラマ化されたので、小説の1ページ目からではなく放映順に読んでいった。
    1.キャンピングカー(小説では3話目)
    2.ペットロス(小説では4話目)
    3.結婚相談所(小説では1話目)
    4.トラベルヘルパー(小説では5話目)
    5.空を飛ぶ夢をもう一度(小説では2話目)
    村上龍は若い頃はとてもエモーショル文章を書いていたような気がする。やはり還暦も過ぎたの非常に落ち着いた感じとなっている。5編とも良かった。ペットロスで「死の間際にでも他の人に勇気と感動を与えることができる」どうせ先に死んじゃうペットを飼う気持ちは正直理解できなかった。しかしそう単純な事ではないんだなと合点した。
    空を飛ぶ夢をもう一度は声をあげて泣いてしまった。あまりにも悲惨な話だが、最後は希望は少し見える終わり方に救われる思いだった。
    各話毎に違った飲み物が扱われている。
    コーヒー、プーアル茶、紅茶、日本茶、水
    テレビドラマでは前話の主人公が顔見せしている。

    • 小枝さん
      チョクさん、ご無沙汰しております。T-SlTE、およびTwitterではお世話になりました。
      フォロワーの皆さん方と楽しい交流が出来ていた...
      チョクさん、ご無沙汰しております。T-SlTE、およびTwitterではお世話になりました。
      フォロワーの皆さん方と楽しい交流が出来ていた頃を、時おりふと懐かしく思い出したりしております。

      こちらに移行後、なかなか皆さん方のレビューを拝読しに伺えず申し訳ございません。
      自身のブログを開設し2年2ヶ月。記事制作に試行錯誤しながら続けています。

      本作は私もNHKのドラマ版にて観ました。大好きなイッセーさんと火野さんの共演、素晴らしかったです。
      火野さんが失禁してしまうのをイッセーさんが優しく対応するシーン。
      私の中で、映画『真夜中のカーボーイ』のホフマンとヴォイトがリンクしてきました。どのお話も心に一石を投じられた作品です。

      時間を見つけては、また本棚の作品を拝読しにお訪ねしたいと思いますので今後もよろしくお願いいたします。
      この場をお借りしてのご挨拶、失礼いたしました。

      2015/03/18
  • 副題には「Llfe Guidance for the 55-year-olds and all triers」とある「55歳からのハローライフ」の英訳なのだろうが、この題名はよくない。誤解を生んでいると思う。著者には「13歳のハローワーク」というベストセラーがあるので、てっきり中高年からの再就職活動の小説かと思うのである。それに似た話も一編あるのだが、テーマはそこではない。いわば「55歳からの再出発日記」なのである。となれば、「再出発日記」というブログを立ち上げていて、そういう年代になってしまっている私には、とても切実で共感出来る話ばかりになっていた。

    2014年3月13日読了

  • 読み易い文章、かつ世代として興味をそそられ、ついつい読まされてしまう作品。感心して読みました。

    それぞれ55歳前後の人物の出てくる5つの中編は、実話を読んでいるようで、時に辛く時に重かった。
    誰しも思うようにはいかない人生に失敗あり、後悔あり…。
    けれど登場人物たちが、何か吹っ切れた思いになる部分に救われます。
    そこはとても良かったです。
    ただ、書かれている話にどれも現実味がありすぎて、おちおち読んでられないような、どうにも落ち着かない気分になりました(^ ^);

    考えさせられる話ではあるけれど、すごく引き込まれた読書とは言えないのが、少し物足りなかったところです。
    現実に圧迫されるような、何とも言えない読後感というのが正直なところでしょうか。読み手の年齢や立場に左右される一冊ですね。

    • じゅんさん
      これは未読なのですが、
      >>現実味がありすぎて、おちおち読んでられないような

      に、ぴぴっ!
      そうなんですよ、それがコワくて手に取れなかった...
      これは未読なのですが、
      >>現実味がありすぎて、おちおち読んでられないような

      に、ぴぴっ!
      そうなんですよ、それがコワくて手に取れなかったんだ、私、と思い当りました。
      こんな時代ですから50代にも何が待っているのか・・。
      真っ当に働いていれば明るい生活が手に入る、という社会になってほしいものですね。
      2013/08/12
    • tsuzraさん
      コワい感じ、私もありました。
      読んでいる間、コワかったのは自分の現実を直視することでした。
      ほんと、こんなご時世の憂鬱をおもいますね。

      じ...
      コワい感じ、私もありました。
      読んでいる間、コワかったのは自分の現実を直視することでした。
      ほんと、こんなご時世の憂鬱をおもいますね。

      じゅんさま、この夏の驚くような暑さには圧倒されますが、おっしゃるようにとろけそうですが、頑張って乗り切りましょう!
      2013/08/12
  • 50歳を過ぎた大人の人生の悲喜交交な短編集。
    どの話もとても良かった。
    子どものころの友人は一生物だなあ、とか、夫との関係ってこんな感じだよなぁ、など、しみじみ共感でした。

  • 親子と夫婦は決定的に違う。親子は単に親と子の関係だが、夫婦は、子供から見たら父母で、外から見たら夫と妻で、本人たちにしてみると男と女という部分があって、必ずしもいい父やいい夫がいい男であるとは限らないのだと、高校生の娘がそういうことを言ったのだった。

    お茶がその代表だけど、こんなにいろいろな飲み物を飲む味わうのは地球上の生き物の中で人間だけだという話をしてくれた。人は、何か飲み物を、喜びとともに味わえるときには、心が落ち着いているのだそうだ。

  • 著者とともに同世代なら考えさせられるあれやこれやのこと
    身につまされましたよ

    深く考えさせられたのは夫婦関係の細かな描写があった
    「結婚相談所」と「キャンピングカー」「ペットロス」

    帯に「ごく普通の人々に起こるごく普通な出来事をリアルな筆致で…」と
    これが「ごく普通の人」なのか?というつっこみをいれつつ

    著者あとがきより~
    それまでの人生で、誰と、どんな信頼関係を築いてきたか
    「信頼」と言う言葉と概念をこれほど意識して小説を書いたのははじめて

    とのこと
    「信頼関係」?これまでの人生を振り返ってみましょうか

  • 間違えた!
    タイトルから「13歳のハローワーク」の中高年版かしら、人生100年時代にピッタリね、ワクワク、と思いながら読み始めたんだけど、ぜーんぜん違うーーーぅ!!
    しょぼくれたおじさん、おばさんが、手の中にあるものの中から必死に幸せを探す、青い鳥は実は家にいました的な、新聞の人生相談欄みたいなダッサイ話でしたとさ。
    村上龍さんだから、ひとつひとつの話は面白いし、それなりに読みごたえはあったし、笑うせえるすまんの話とか面白かったけどね、だけどね、
    表1のたたずまいも「13歳のハローワーク」にそっくりだし、版元は幻冬舎だし、あえて誤認を誘ってベストセラーに便乗してる感満載。
    もしくは、13歳なら人生には希望が満ち溢れてるけど、55歳になったら人生先細りだよ、とかそういうことがいいたいわけ?感じわるーい。
    勝手に期待して勝手にガッカリした自分に★ひとつ!

  • 長編かと思いきや、短編集でした(^-^;
    やられたー。

    飲み物と物語が紐つけられているのでしょうけど、ちょっと無理やり感を感じてしまったかな?

    物語自体は非常に読みやすく、現実に起こってもおかしくないような内容で、受け入れ易かった。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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