明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

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著者 : 山田詠美
  • 幻冬舎 (2013年2月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344023376

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明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたちの感想・レビュー・書評

  • まさか山田詠美にここまで泣かされるとは思わなかった。
    読み終わるとただただ呆然としてしまい、しばらくたっても思い返すと涙がにじんでくる。
    彼女の作品は今まで恋愛ものしか読んだことがなかった。
    インテリな女と肉体派の男の恋愛を書く作家という勝手なイメージを持っていたので、家族を扱ったこんなにまで胸を打つ作品を描き出すとは。
    私が今年読んだ本の中で一番の作品といってもいいほど。

    物語は二つの家族が親の再婚により一つになり、さらに新しい命も誕生し新しい家族としてスタートした澄川家。
    それは誰もが羨むまさに幸せを絵にかいたような家族だった。
    しかし、長男の不運の死によって家族の様相は一変し、息子の死を受け入れられなかった母はアルコール依存症となっていく。

    長女、次男、次女のそれぞれの視点から物語は語られるが、とりわけ次男の創太が絡んだ場面になると、もうだめだ。
    涙腺決壊。胸がキューンと苦しくなってくる。
    次男は父の連れ子で母とは血がつながっていない。
    その彼が母と出会った時からずっと一貫して、母が壊れてしまってもなお母に愛されようと寄り添い続ける姿はなんとも切ない。
    決して愛情を平等に分け与えるような聖母のような母ではないのに。

    ただ、この物語は単なる継子のお涙ちょうだいではもちろんない。
    幸せの象徴だった長男の死が重要なファクターだ。
    死を抱えながら生きていたらこの母のように精神が徐々に壊死してしまう。
    それをどうやって家族は乗り越えていくのか。
    決して暗い話ではない。
    死者への執着よりも、生きている者が一番大事なんだという作者のメッセージが強く感じられた。
    血よりも濃い家族の絆、そして家族の再生。
    ラストは希望に満ちた素晴らしい終わり方だった。

    新聞や雑誌、各所で取り上げられ、気になっていたこの本。
    普段だったら山田詠美は積極的には読まないけれど、読んでみて分かった。何しろ傑作である。
    もちろん文章の綺麗さ、巧さは間違いない。
    山田詠美と聞いて尻込みする人にも是非読んでもらいたい素敵な作品である。

  • 先日終わったソチオリンピック。
    ヨーロッパでの開催だと、なかなかライブ映像を楽しむのは難しかった。
    録画して見ると、民放の番組の前半は感動的な取材映像で埋め尽くされ、背中に背負うストーリーでお腹がいっぱいに・・・。
    確かに葛西選手の今までのオリンピックシーンや新聞の記事くらいは興味深く見ているけれど、真央ちゃんや高橋大輔くん、弓弦くんの取材映像を見ていると、今回のオリンピックは以前にもまして過剰になっていた気がした。
    彼らの競技だけに没頭できる環境を静観できるいいのだけど、マスコミに取り上げられるのもある種仕事だと思えばバランスが大事というところか。

    で、この本。
    ステップファミリーのたいへん魅力的な長男(ちょっとしたしぐさや行動が人を惹き付けずにはおかない!)が不慮の事故で亡くなってしまう。
    溺愛していた息子を失った母親は精神的に大きなダメージを受けアルコールに依存症に。
    母親の精神的なバランスをぎりぎり保とうと家族は全力を尽くすのだが・・・。
    母親が実の兄を溺愛していたのを客観的に眺めながら何事にも踏み込めない長女。
    兄に向けられていた血のつながらない母親の愛情を今こそ、手に入れようとする次男。
    血縁のうえで両親を繋ぐ次女は、兄と過ごした時間が短かったにもかかわらず、学校や家庭に兄が遺した思い出に絡め取られそうになりながら、反発し、苦しんでいる。

    ギリギリのバランスの上に成り立つ家族。
    はた目から見ていると、母親がこれ以上壊れないように子ども達が自分を殺し我慢を重ねて成立しているのがわかる。
    自分が自分らしく生きようとすることは、この家族を離脱し、自分というピースを取り去ることになり、バランスが崩壊することを意味すると考えている。

    人のために生きることで、自分は今まで以上に強くなれたと感じる人がいる。
    何もかもそぎ落として、自分という芯だけを頼りに生きる人もいる。

    いろいろな事情に、物語が絡まってしまった家族関係。
    苦しいね・・・。
    シンプルに居心地のいい、帰ってくる場所としての『家族』とはもはや異なる世界。
    そんなことを考えた1冊。
    傍観者たちによって、勝手にストーリーを背負わされてしまったオリンピックの競技者たちに対してなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。

  • 一時期狂ったように詠美さんにハマって
    熱狂信者みたいに作品を読み漁り、突然腹いっぱいに
    なって勝手にやめて…あれから20年(くらい)
    本当にお久しぶりです、詠美さん。

    タイトルに惹かれて勘で借りてしまった…。
    勝手に震災とかそういう系の話だと思っていただけに
    この読み終えた時の何とも言えない気持ちを
    どう書いたらいいのだろう。
    親のアル中と離婚、家族崩壊とかぶることが多すぎて
    これはキツイな…と読み切る自信がなかった。


    ママはたぶんずっと前からどこか欠落していた人なんだろうと思う。
    澄生が誕生する前から、たぶん機能していない家族
    だったんだろうと思う。
    澄生はACでいうなら“スーパーチャイルド”
    または“ヒーロー”の役割を割り振られて…家族
    みんなそれぞれ必死に役を演じていたんだろうな~。
    切ない…というかなんというか…。

    こういう内容だとは思っていなかっただけに意外でした。

    機能不全家族とかACとか共依存とか
    こういう家族ものを読むと、すごく心がモヤモヤする。
    でも本を閉じて返却させないのは詠美さんの
    うまさがあると思う。すごいと思った。

    感情なく淡々と読めるから楽なんだけど
    内容が内容だけにしんどかったです。

    西原さんが言う「アルコール依存症は病気なんです」
    という言葉が何度も何度もよみがえった。
    男アル中は暴力とかそういう行動に走りやすいけど
    女アル中は…乙女になったり子供になったり…
    本当に周囲が大変そうだ。
    それでいて母な時は母なのだから、やり場がないし
    たまらない気持になった。
    未熟な母というのは罪なものだな…と。
    だけどアル中ママには、アル中ママでそれにはそれの役割があるのかとも思ったのも事実で…。

    感情移入せずに淡々と読んでいるつもりだったけど
    創太についつい感情移入してしまい
    創太の章、特に「わ…わーい、わーい」の
    あの場面では泣き出しそうになってしまった。
    それでいて最後は爽快な涙が止まらなかった。
    なぜだろう。

    みんな仮面をつけて仮面の下は悲しみで
    澄川家族喜劇団みたいだと思った。

    ハッピーエンドではないけど、こうやって進んでいく
    ことが新しい一面の始まりなのかな、と思った。
    みんな何かを抱えて支えあって生きていくんだな~と。
    そしてそれが出来る間は不完全でも機能不全でも
    まだ“家族”だと思う。

    突然ありもしない奇跡が起こったりせずに
    自然に普通に終わったので良かった。

    人生すったもんだがあっても
    「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう。」
    と思うと、きっとそうなんだよね。
    そう信じたいです。

    落ちるとこまで落ちたけど家族で踏ん張りきった
    澄川家にブラボー!

  • 何事にも特別に秀でた長男 澄生を筆頭に、綺麗で特別で完璧な幸福に満ちた澄川家。

    両親の子連れ再婚は成功し、新しい家族にも恵まれたのだが…。澄生が落雷に打たれて17歳という若さで命を落としてから、拠り所を失った一家はどう生きていくのか。

    久しぶりのエイミーさん。卒論のテーマに山田詠美さんを選んだので、一通り著作は読んできたつもりですが「風味絶佳」以来かな…3.11以後に書かれた作品ということで、、、

    テーマは家族の喪失と再生かな。

    澄生を失い、アルコール依存症になるまで追い詰められてしまう母親、大切な人を突然失うのが怖くて恋愛に向き合えない長女、自分を素通りする母の愛を求めて年の離れた未亡人と付き合う次男、誰よりも愛された兄を死んでしまえばいいと憎みもした次女。

    一人っ子の私には親の愛情を巡る兄弟間の争い、みたいなものはよく分からないけれど、大事な人は出来れば独り占めしたいし、されたいのが人の性。

    不在なのに誰よりも色濃くその存在を感じさせる澄生に、他人ながら嫉妬します。

  • 「明日会えるって信じていた人が、もう戻ってこないことがある」

    言っている意味は分かるし、言葉にするのは容易い。
    でも実際にその瞬間を体験した人とそうでない人では、この本の感じ方が違うのではないでしょうか。

    たわいもない話で笑いあっていた相手が、次の日には会えなくなってしまう。
    「ショックで食べ物が喉を通らない」なんていうことが現実に起こり得るんだということを知り、世界の色が一瞬にして変わってしまうことを知りました。

    だからこそ、「明日死ぬかもしれない人々に囲まれて、だた、生きていた」という真澄の言葉が重く感じられ、
    今、大切な人との時間をどれだけ大事にしているのか、分かっていたはずなのに忘れてしまっていたことがとても悲しかったです。

    読後はなんともいえない温かな気持ちにもなりましたが、それではいけないのだと思います。

    「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」というタイトルの通り、いつ終わりがきてもおかしくない。そんなとき「まだ、もう少しだけ、このまま楽しませてはくれないか」といっても容赦なく今までの時間から切断されてしまいます。

    まだ、もう少し、と言うことなく「ありがとう」で終えられる人生のために、今を一所懸命過ごしていこうと思わずにはいられませんでした。

  • 「今日という日が残りの人生の最初の一日。」
    まさしくそう思わせてくれる素晴らしい本でした。

    書名を見て、エッセイ?小説?
    詠美先生も年を重ねて『死』というテーマについにランクアップ?
    など、勝手に思い込んでしまってすみませんでした。

    これは最良最高の『愛』の話です。
    愛っていう言葉は世界中の人達の使っている万能薬のような言葉ではありますが(創太くんのセリフから)一概にそれだけではなく、家族に対しての愛、連れ合いに対しての愛、兄弟同士の愛、友達同士の愛(歪みがあってもなくても)様々な愛がこの本には満ち溢れています。

    しみじみと、言葉の流れに身を漂わせて詠美先生って本当にイイなぁ~と
    再確認したのでした。

  • 子連れどおしの再婚。末っ子の誕生。長男の死。アル中の母。
    語り手を長女、次男、次女で語り継いでいくところや、家族の死をテーマにした部分が朝井リョウくんの「星やどりの声」を思い出させたのだけど、すぐさま消し去られましたね。こっちはもっとヘヴィ。

    特に次男の創太に対する母親のひどい言動には読むたびチクリと胸が痛みました。
    もうこの歳になれば、完璧な親ばかりではないのは重々承知してますが、それでもこの母親はひどい。
    とは言え、私は子供もいないし、子供を亡くしたこともないので、環境が違っていたら、きっと感じかたも違うのかなと思う。同情の余地はありました。

    そして皮肉なことに、この母親の存在があって、血の繋がりのない継父と長女が、そして長女と次男が本当の家族になっていくんですよね。苦しみを共有して。戦友のように。
    最後のあれは正直どうなの?って思ったけど、ある意味ハッピーエンドでよかったよかった。でした。

  • 二組の合成された新家族が長男の突然の死によって、幸せとは一見違う表膜に長いこと包まれてしまいます。普通なら、年月と共に昇華されていくべき死者の魂が、精神を病んでしまった母親の強い想いによって、どこまでも傍から離れずに、呪縛のようにこの家族を捉え、苦しめていくお話です。
    中盤までは、読んでいても辛く感じてしまいましたが、読み進めていくうちに次第に自分の中で納得できる要素が見つかり、最終章「皆」に至っては意外なサプライズにささやかな希望を見つけることも出来ます。よかったのは親も性格も皆違う3人の子供たちの視点から、それぞれが家族以外の他者との関わりの中で「死生観」に対する考えを自分自身のこととして咀嚼していったことです。
    遺された家族の軌跡。想像以上に、読み応えあった作品でした。

  • 最後に山田詠美を読んだのはいつだったか思い出せないくらい久しぶりの山田作品。
    再婚同士の二つの家族が、新しい家族になるべく共に暮らし始めた。ある死の影を背負い続けた家族の再生の物語。

    子どもたちの独白という形で進むストーリーは、悲惨で切なく、愚かしくもあり、そして温かくもある。一つの家族の物語だけれど、そこにはたくさんの人々の人生が映し出されているようにも見える。
    だって、人はいつか必ず死ぬ時が来るのだからね。すべての人に平等に、生きることの隣にはいつも死があり、死を描くことで、残された者の生が浮き彫りにされる。

    実は結末はちょっと私が想像していたのと違っていた。う~ん、あれはあれでよかったのだろうけれど、少し違和感を感じなくもない。
    最終章の千絵のくだりは必要だったかな~、なくてもよかったような気がするけど、好みの問題?

  • 家族を失う。その意味を、残された家族のそれぞれの物語として描いた小説。

    食わず嫌いというわけでもなく読む機会を逃してきた同世代の作家。同世代の作家を読みたい時期になったのかもしれない。書かれていない行間に、好きとか嫌いとかを越えた心地よさを感じてしまう。

    長兄を失ったある家族の物語。残された弟と妹たちの一人称による語りは
    微妙なニュアンスの差を含み、人はそれぞれ同じようで異なるのだという
    ことを、新鮮に描き出している。陰影という言葉が似合う。

    私は次女にもっとも共感する。その投げやりな感覚は、全共闘世代よりも
    後の世代が持つ『遅れてきた者』特有の醒めた目と、前の世代の挫折を
    引き受けない覚悟とを共有している。「俺はあんたらが嫌いだよ。あんた
    らとは一緒にしないでほしいもんだ」という運命を共にせざるを得ない暗黙の憎しみと自立に根ざしている。

  • 久々◎な作品に出会えた。
    幅・厚み・深み
    どれをとっても申し分なく(*^^*)
    風味絶佳以来、山田さんの作品は
    読んでなかったけれど、これはお勧めです。

  • 突然の愛しい家族の死からの残された者たちの混乱と再生の物語。(まだ再生したとは言い切れないかもしれないけれど。)物語の最後、亡くなった澄生の誕生日パーティー。予期せぬ登場人物に落涙。そう来たか!

  • 澄川家のかけがえのない存在だった長男澄生の突然の死、その喪失感から、アルコール依存症になってしまった母と、それを支えて暮らしてきた家族。

    今の私には、実感としては感じることの出来ませんが、ものすごく辛く悲しいことだと思います。子が親よりも先に逝くなんてことがないといいのに。

    残された子供たちの、心の傷や痛みも、想像以上だと思います。
    家族の太陽たるべき母の崩壊をもってしても、3人がきちんと大人になれたのは、多く書かれていないけれど、父親の力もあったとのだと思います。

    最後のサプライズ?
    一瞬、え?となりました。
    その後は、ハッピーエンドという方もいたようですが、私は、違う解釈をしてました。
    どれが正解なんでしょうか??

  • 昨日からこの本を二日で読み上げました。


    さすが大好きな山田詠美さん
    と思ったり、
    少し描写が古臭くなったな…

    と悲しかったり



    でもやっぱり、
    ベッドタイムアイズでデビューして

    50代になった作家が行きついた
    深みもちゃんとあります。


    温か下町みたいな感じじゃなくて

    ちょっと向田邦子さんみたいな
    家族を冷静にみられる世界観なので、

    こういう本を読むと
    あーやっぱり私の落ち着く世界は
    ここだわ


    と山田詠美さんの世界からは

    かけ離れた場所で
    陳腐な渡鬼状態に
    心を砕き
    疲れ果てている身体には


    本当に安心させてもらえるので、
    ありがたいです。

    特に誰かの死に向き合った事が
    ある人、あるいはそういう事を考えなくては
    いけない時に読んでみるといいかもしれません

  • 図書館にて。
    この人の描く家族の物語って、ものすごく新鮮だと思った。
    突然主要な登場人物が亡くなるシチュエーションは、西加奈子の「さくら」や、桜庭一樹の「無花果とムーン」などにもあり珍しいものではなかったけれど、同様に家族が崩壊寸前まで追い込まれる状況なのにラストは軽やかだった。
    血がつながっているかどうか、家族内での立ち位置、そして母親の言葉というものはやはりとても重く、でもどうしたって逃げられないものだからこそもう気にしないで生きていけないだろうか。
    生きているのに死んでいるような母親と、死んでいるのに大きな在感がある兄から独立して、それぞれ軽やかに歩んでいく兄弟たちとそれをずっと見守ってきた兄。
    最後の最後で兄の目線が出てきて、急に世界が開けていくような気がした。

  • 両親の再婚の元、一致団結して非の打ち所のない家族を作ろうとした幸せそのものの一家に起こった悲劇が全てを変えてしまった。母の連れ子の姉、父の連れ子の次男、父と母、両方の血を持つ末っ子それぞれの視点から悲劇の前と後の家族の姿を描いた物語。

    身近な人間の死がもたらす影響力って、ほんと当事者にならないとわからないものだよなあ。どうしても囚われてしまう。それぞれが、それぞれの形で囚われているけど、進もうとする力に溢れた力強い物語だと感じました。互いに違う方向性で、同じように思い合っている家族の姿も、とても普通でとても尊い。

  • 暗い。でもちょっと軽やかで、甘いものが広がるような感じ。
    最後のみんなが集まる五月のシーンが、最高にきれい。
    映像化したら・・・ってずっと考えてる。

  • 読みやすかった。人一人亡くなっているけど、不思議と暗い雰囲気不幸な雰囲気が漂ってなく、それが又良いと感じました。
    最後の澄夫の誕生日良かったです。

  • 家族とは血のつながりをささないものでもある。連れ子がいる再婚者同士、そこに二人の血がつながった娘が生まれる。
    異様なほど濃密な家族関係(きょうだい関係)が危うさのなかで形成され、そのバランスを司る長男が不慮の事故で亡くなる。母は神経を病みながらも家族の中心であり続ける。
    ここには震災後に私たちが感じてしまった身近な「死」が充満している。死んだ長男は家族の中で曖昧に生きつづける不幸がある。
    亡くなった日を思い出すよりも「そうだ!バースディパーティをしよう」・・。そこで死者も生者と共に歳を重ね、心の中で動き出し生きだすのだ。愛する人は死んでも心の中で生き続けるのだ。
    涙が出て止まらなかった。

  • 表現力と言うか文章力に、思わずうなってしまう。そして作者に引き込まれてしまう。

  • たまには新刊を読むなど。

    最初のほうは、初期の「風葬の教室」や「蝶々の纏足」を彷彿とさせる雰囲気が漂う。でも、もっと秀逸で、ずっと温かい、素敵な作品だった。

    子どもが持つ、大人の一挙手一投足に対する敏感さや感受性の強さにはすごいものがあって、作者はいつもそれを容赦なく描く。繊細と呼んでしまうには、あまりに鋭く必死な子どもたち。そして、大人は、その子どもが大きくなっただけのもの。

    「人生よ、私を楽しませてくれてありがとう」。死ぬときはこういう言葉で締めくくらねば、という観念から始まる家族のストーリー。でも、頁をめくっていくと、楽しいことと苦しいことや、苛立たしいことと愛おしいことのあいだに、そんなに違いはないんじゃないかという気持ちになってくる。

    「人を賢くするのって、絶対に人生経験の数なんかじゃないと思う。それは、他人ごとをいかに自分ごととして置き替えられるかどうかの能力に掛かっているのではないか」。わがまま末っ子が放つ、好きな語りのひとつ。

  • このタイトルそのものを、あの日以来みんな、強弱はあるだろうけど感じながら生きるようになった。ふと隣を見て、ああこの人がここにいてくれることがどんなに心強くてうれしいんだろうとおもえることが、生きることのとても大事な意味なんだ。家族でも恋人でも友人でも。失って、初めて気づくことのないように、山田詠美が教えてくれた。いつものように、とても美しい日本語を綴って。

  • このような話を、回想しつつ現代に戻りつつ、その章の語り手の心理を交えつつ、他の登場人物の心理を考察しつつと、読み手に混乱させることなく綴って行くのはかなりな至難な業なのではないかと思われます。

    語り手を章ごとに変える構成、どのような人物との関わりが出来てきて深まっていってそれで家族のどこが変化するのか、あるいはしないのか。

    とてもよくかんがえられて書かれているなあと。さすが山田詠美先生。
    あまりたくさんは実は読んだことがない御作品ですが、いつも
    すごいなぁ、と思います。

    ひりひりと痛い。でも涙はでませんでした。
    私にもこのミカママのような壊れた人格の家族がかつていました。
    してあげられなかったことばかりを思い出しながら読みました。

  • 誰でも生まれた瞬間から死に向かって生きてる。
    わかってる事なのに、大切であればあるほど受け入れがたい事実。
    血のつながりや、親等で括れるものでも、距離や時間で測れるものでもなくて。
    ただ静かに毎日を愛しく生きようと思った。

    失う怖さを感じながら、そう感じられる人と。
    絶対に自分を大切にしようと思わせてくれる人と。

    それってとても幸せな人生なんだと思う。

  • 突然、そこにあったものをなくすということのつらさや、そのつらさからはじまる数々の問題、生々しい。崩壊と再生の物語、かなあ。強固な関係を持っている家族でさえ、1つのピースがなくなってしまえば簡単に崩れてしまう。そのピースを埋めようとしても、それは本物ではないんだよなあ。うまく埋まったとしても、偽物なんだと。そこのところの埋め合わせを、再生と呼ぶのかなあ。元には戻らない。むずかしいものだ。ひととひとの結び付きって、血がつながっていようがいまいが強固なものはあるわけで、でもその強固さと脆さは表裏一体なんだなあとしみじみ思った。
    最後の章で、いままでそんなに入り込めてなかったから、そのままのテンションで読みつづけていたら、そういうことかと軽く衝撃を受けた。この最後、とてもよかった。

    (241P)

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明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたちの作品紹介

ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、さらにその後、千絵が生まれる。それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた“ある死”をきっかけに、澄川家の姿は一変する。母がアルコール依存症となり、家族は散り散りに行き場を失うが―。突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす。愛惜のモノローグ、傑作長篇小説。

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