あの日、僕は旅に出た

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著者 : 蔵前仁一
  • 幻冬舎 (2013年7月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344024250

あの日、僕は旅に出たの感想・レビュー・書評

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  • あの日、僕は旅に出た

    この書名をじっと見る。そしてその言葉から広がる奥行き。
    「旅行人」の読者であった自分には、思い入れがありすぎて胸があつくなるような内容が詰まった本でした。
    自身の旅の話、日本での仕事の話、偶然の出会いから動き出す事柄、などなど興味深いこと目白押しです。
    出版社設立の経緯などドラマのよう…。
    読み終えて、感慨深いなどというありきたりの言葉では表せない気持ちでいっぱいです。

    他にはない旅の雑誌「旅行人」をつくってきた蔵前さん。
    はじめは「遊星通信」というミニコミ紙でした。創刊にあたり二つの雑誌をモデルにしたそうです。
    そのひとつが「本の雑誌」。
    多くのミニコミモデルで憧れであった本の雑誌の、本が好きで好きでしょうがないという姿勢に惹かれたという蔵前さん。

    >本が好きでさえあれば誰でも好き勝手にモノがいえるという雰囲気に満ちていた。執筆者も読者も、いろんなことをリラックスしてかたりあっているというそのスタイルが僕は好きだった。タテマエではなく本音で、金ではなく企画で勝負するという姿勢も素晴らしかった。

    たくさんの蔵前さんの旅は面白いです。
    エピソードはもちろんのこと、旅をして考え学び取る力があったのだと、その聡明さに感心します。

    >初めてインドへ行ったところから始まった僕のおよそ三〇年を、そろそろ終わりにしようと思う。僕は、わが人生の来し方を振り返って、なにかえらそうな格言のようなものを書ける人間ではない。ただ、たまたま僕はこういう三〇年を過ごしてきただけである。

    >どういうスタイルで旅をするにしても、日本ではあまり紹介されてはいないが、こういう国や地域には、こんな風景もある、あんな生活もある、こういう人々が住んでいるので実におもしろいぞ!と紹介する雑誌をつくりたかった。

    そして、「旅行人」休刊へ。
    この30年あまりを振り返り、世界の大きな変化に思いをめぐらせ、自分の人生を振り返られての心境が素直に綴られているのにじーんとしました。

    >自分もまた変わる。旅に出る前の自分と、旅のあとの自分は同じではない。そして、世界も常に変わり続けている。自分が旅立つ前の日本と、旅から帰ってきたときの日本は、すでに異なっている。だから、旅人は二度と同じ場所へ帰ることはできない。それはまるで長い宇宙旅行から帰ってきた宇宙飛行士と同じであり、浦島太郎のようなものだ。それが旅の不思議な作用だと思う。

    日本での出版社での仕事、貴重な取材と制作の苦労により形になった、価値のあるガイドブック。
    おもしろいものを世に出したいと忙しく働いた成果に、尊敬の念さえ抱きます。
    インドへ旅立ってからの30年が綴られているのを読みながら、自分自身の30年にも思いは及んでいく。
    通り過ぎてきた場所や、若かりし頃の自分を思う。
    旅先の時空と相まって、大きな流れに身を任せていることを意識できた奥行きのある本です。
    今の蔵前さんの心境が、さっぱりしていて身軽にかんじます。
    自分もなんとなくですが、こうやって日々生きているなぁとあらたまった気持ちになり、清々しくなりました。
    大河の流れを進み行くような蔵前さんと同じ時代を生きているのがうれしいです。

  • 面白かったー。もう一気読み。タイトルもいいなあ。「あの日旅に出た」蔵前さんが、その後どういう道のりを歩いてきたかを率直に綴っている。

    若い日のインドや中国への旅の話はもちろん面白いが、なんといっても「旅行人」の始まりから終刊までの顛末が最大の読みどころだろう。本や雑誌を作って売ることの喜びと苦しみが手に取るように伝わってくる。零細出版社って本当に大変だ。

    そういう意味で、蔵前さんも何度もふれていたが、本の雑誌社を作り育てた椎名さん目黒さんは、まったくたいしたものだなあとあらためて思う。「本の雑誌」が、初期のミニコミ誌的な良さを残したまま、次世代の人にバトンタッチされているのは本当に希有なことなのだと気づかされた。

    グレゴリ青山さんの本で読んでいたデビュー前後の話が、蔵前さん視点で書かれていてこれも面白かった。今のようにネットで何でもわかっちゃう時代ではなかった頃、不定期に出る「遊星通信」(「旅行人」の前身)に載るグレゴリさんのマンガを、アジアの安宿なんかで読んだ人たちはどんなに楽しんだことだろう。よく思うのだが、才能のある人は最初っからスタイルが完成してるんだよね。

    それで言えば、宮田珠己さんもその一人だ。「旅の理不尽」が元は自費出版だったとは知らなかった。旅行記を自費出版する人は多いが、読むに堪えるものはほとんどないそうだ。そうした本がたくさん送りつけられていた蔵前さんの目を留めさせ「家に持ち帰り、ベッドでこの本を読みふけると、もう止まらなかった。笑いも止まらなかった。めちゃくちゃおかしい」と言わせたのだから、さすがタマキング。

    皆さん肩肘張らないごく自然な感じで、とても好ましい。決して楽な道を歩んでいるわけではないけれど、自由な風が吹いていて、そこが何よりもいいなあと思う。

  • 読み進めていくうちに、旅行人の誌面が甦ってきました。執筆者の方々との出会いのエピソードや旅行人発行のいきさつなど、旅行人の読者だった私にはとても興味深かったです。なんとかかんとか旅行人の経営をしている様子を読み、蔵前さんがいたからこその旅行人だったのだなと改めて思いました。月刊誌のファンだった私にはたまらない一冊でした。

  • 「旅行人」を購読していた。「ゴーゴーインド」でインドにハマってしまった友人に誘われてインドに行ったのが1992年。深夜特急、印度放浪に影響を受けていた20代前半。いつの頃から購読していたのが「旅行人」だった。その発行人である蔵前仁一さんのこの本を図書館で見かけて手に取ったのが今年の春先頃。たまらない懐かしさ、こうして出会えたうれしさ。夢中になって読みふけった。「旅行人」の復刊号が届くを楽しみに待っている。

  • バックパッカーの憧れだった方で、旅行人という雑誌を立ち上げた方だという事も全く知らず、装丁と題名で思わず購入しました。海外渡航が盛んになり始める前にインドを旅行し、好きになった訳ではないのにインド熱のような不思議な感情のゆさぶりに負け、とうとう何年も旅に出て帰って来ないような生活に突入する。そんな旅行についてのミニコミ誌を細々と作り始めるが、それがいつしか旅行人という出版社を作る事まで続いていくのでした。
    僕は昔1回日本国内をさまよい歩いただけで、あまり海外に行きたい欲求もないのですが、紀行文やエッセイは大好きでわくわくしながら読んでいます。
    この本はその漂流するような人生が丸ごとつまっていて、読み終わる事がとても残念で、この方の存在を20年早く知りたかった。
    残念ながら5年前に休刊してしまったそうですが、経営不振では無く、限界を感じて計画的に休刊したそうなので、きっと今も好きな旅をしているのでしょう。
    この本には僕の読んだ本の数々や、本の雑誌、椎名誠さん等、ぐっと来るワードも多数含まれていて読んでいてにやにやが止まりませんでした。

  • 2014/08/10

  • ずっしり面白

  • 著者の来歴を語る。手作りから始まった出版業を手掛けていく経験談が読みどころ。未知の世界を歩む点で起業も旅のひとつかも知れない。

  •  思いついてふらりと海外へ旅に出る。そんな気軽さを「バックパッカー」という。そんな旅の先駆けだったのが、著者。この本の冒頭には「よけいなことを心配するな、とにかく旅にでろ!」という先駆者トニー・ウィラーの言葉が記されている。そうして帰れた人もいるし、旅先で沈没した人もいる。住みついた人のことだ。
     著者は「旅行人」という旅の雑誌も創刊した。30年のアジアの旅の、総まとめ。出会った人たちも普通ではない。 (№29 2013.12)
     

  • 規模を追わず自分のやりたいメディアを貫く喜びと厳しさ。身につまされる。

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蔵前仁一の作品

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あの日、僕は旅に出たの作品紹介

バブル前夜、グラフィックデザイナーだった著者は、そのあまりの忙しさ(朝4時に仕事の依頼が来て、正午に締め切りとか日常茶飯事)に嫌気がさし、インドへ飛び出した。もう二度と行くものかと思った最悪の旅がすぐに繰り返され、なぜかその面白さにとりつかれて、雑誌「旅行人」を創刊し、とうとう30年間も旅を続けることになった。アジアに向かって、スピリチュアルなものを求めた旅の時代、ゲーム的な楽しみとしての旅の時代、逃避としての旅の時代など、さまざまな旅のスタイルの変遷を著者はずっと見てきた。その間、日本も世界も大きく変わっていった。バックパッカーの教祖が、30年間、世界中を旅して見つけたもの、旅の果てにつかんだものとは?

あの日、僕は旅に出たはこんな本です

あの日、僕は旅に出たの文庫

あの日、僕は旅に出たのKindle版

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