骨を彩る

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著者 : 彩瀬まる
  • 幻冬舎 (2013年11月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344024908

骨を彩るの感想・レビュー・書評

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  • 完璧な人間なんていない。
    だれもがどこか欠落している。
    その喪失感を抱えながら生きている。
    その喪失感を必死に埋めようとするのも人間だし、欠けた部分を受け止めるのも人間だと思う。

    五編からなる連絡短編集に登場する人々は、それぞれがそれぞれの喪失感をもって生きている。
    それぞれの痛みが、美しい情景とともに鮮やかに浮かび上がる。
    降り注ぐ銀杏の葉っぱや、色とりどりの千代紙、降りしきる雪。
    巧みな言葉遣いによって静かに心に迫る。

    とても良かった。
    誰からも好かれるなんて幻想だ。
    でも自分の立ち位置はそう簡単に変えられない。
    与えられた、もしくは自分の作った役を必死に演じるだけ。
    前半はそんな取りとめのない感想を持った。

    そして圧巻の最終話。
    母親の記憶がない小春。
    幼いころから同情されることに反発心を抱いてきた。
    普通とは何なのか。
    自分とは違うものを認める恐怖。
    他人の痛みを分かち合う難しさ。
    大人になっちゃうと、前半に出てくる女性たちのように“関わらない”という選択をする人が多くなると思う。
    それを敢えて一歩踏み込むのが若さだな。
    最後に中学生を主人公にしたことは大正解だと思う。

    連作短編集も良いけれど、つながりとしては無理矢理な感じもしなくもない。
    ちょっと惜しい感じ。
    一歩踏み込んだ長編を是非とも読んでみたい。

  • ようやく読めた。「喪失」をテーマとした連作短編集は、どの話も心にずしりとくるものばかりだった。
    家族、恋愛、友情…いつだって順調な関係を育んでいけるわけではない。心のすれ違いで自然と距離が生まれてくることもあれば、何らかの事情で別れを余儀なくされることもある。わかり合いたいのに、傍に寄り添いたいのに、どうしても壁を越えられない。どうすることがよかったのか、何がいいか悪いなんて簡単にジャッジできるものではない。その「グレー」な部分を静かに掬って描くのが、彩瀬さんはたまらなく上手いと思う。簡単には触れられない、痛みや苦しみや哀しみに向き合いつつも、どこかに作者の視線のあたたかさを感じる描写。そんな彩瀬さんの真摯な姿勢が本作からも感じられた。
    どの話も好きだけれど、一番印象に残ったのは最終話の「やわらかい骨」だ。女子中学生の小春が主人公なだけに、その時期特有のデリケートな空気感が、何ともリアルで息苦しいほどだ。父子家庭に育ったという彼女の事情、そして転校生のクラスメートが背負うハンデがクロスし、クラスメートとの交流を通して、小春が悩みつつも前に踏み出そうとする過程が丁寧に描かれていてとてもよかった。小春は第一話の主人公、妻を亡くした男性・津村の娘だが、ここで物語がぐるっとつながったのもまた見事だった。
    ☆5つ付けてもいいほどですが、惜しむらくは…宮城観光のシーンや小学校生活を語るところで若干首を傾げたくなる部分が…。それ以外は文句なしです。
    イチョウの葉が降るシーンが本当に美しくて、丁度イチョウの季節にこの本を読めてよかったなと。街路樹の傍を歩くたび、その場面を思い出します。
    じっくり噛みしめるように何度も読みたくなる、著者の想いがあたたかく心に沁みる一冊。

  • 骨とは…その人の根幹をなすもの…という意味なのでしょうか。
    骨へと染みる色なんて、今まで出会わなかった表現でした。

    登場人物がつながっている5つの物語。

    誰しもが持っている、他人と比べたときに思うこと。
    自分は足りてないんじゃないか、
    何かが抜け落ちているんじゃないかということ。

    そのスカスカな部分をどうにか隠そうと
    手当たり次第埋め込んでは苦しくなり、
    結果、立っていられない場所に追いやられていたりする。

    でもふとした瞬間、
    こうすればいいんだとわかったり
    あの時はそうだったんだと理解したり
    今までとは違う目線の一歩を踏み出す時
    気持ちが満ちてぱぁっと色が散るように鮮やかな瞬間が下りてくる。

    そんな5人の瞬間に立ち会うことができました。

    またモノクロの日々に戻ったとしても
    こんな瞬間をより鮮やかにしてくれるならば
    それはそれで大切なんだと思います。

    彩瀬まるさん、初めて読みました。
    表現する素敵な言葉をたくさんもっていらっしゃる作家さんですね。
    私にはどれも新鮮で、的確で、好きな表現でした。

    今年の最重要チェック!!作家さんとなった一冊です。

  • 今の季節に読むのも良い。
    秋の終わり、一つの季節の臨終の象徴的なシーンがこの連作集の始めと終わりを満ちてゆく気持ちと共に飾る。
    タイトルの意味するところも的確にはわからない、また深く追うつもりもないけれど、小さな再生と希望を暗示しているように思われる。
    大きなことは出来なくていい。気付けたことが未来を照らす第一歩だから。

  • 綾瀬まるという作家を初めて知ったのは「王様のブランチ」だった。
    そこで紹介されていたのは「桜の下で待ってる」
    かなり興味をそそられ、手帳の読んでみたい作家欄に ”綾瀬まる”と書き込んだ。
    不思議なもので、手帳に書き込むとほどなくその作家の本と出会うことが多い。
    本屋さんや図書館が充実しているわけではないバンコクでは本を特定してしまうと難しいので、まずはその作家さんが書いた本ならどれでも良いから読んでみよう的なゆるいスタンスでいることが大切。
    で、私がであったのが【骨を彩る】
    何やら不思議なタイトルで、微妙に怖さも感じるけれど、とにかく読んでみることにした。
    その結果は、面白かった!
    タイトルが示すように、ちょっと不思議な感じはあるのだけれど、つい引き込まれて読んでしまった。
    他の作品もぜひ読んでみたい。

  • 「やわらかい骨」が一番好き。

    人と違う「当たり前」を感じたとき、その違いにいらだったり、かなしくなったり、そして距離を感じてさみしくなったりする。
    でも、どの「当たり前」も正しい、と考えたとき、そのあと私はどう行動したらいいのだろうと悩む。
    責めるでもなく、変えようとするでもなく、受け入れるとは?
    自分がどう変わったら、こころはおとなしくいてくれるのだろうね。

  • 読了後、静寂の中に銀杏の葉が降りつもる音だけが聞こえているような感じ…。

    後悔、喪失感、葛藤…
    心の奥の触れてほしくない部分を、やさしく撫でられたような気持ちです。

    ”みずみずしい葡萄の実へ歯を立てた瞬間に似た、甘いさわやかさのにじむ笑い方”
    彩瀬まるさん、本当に素敵な美しい表現をされる作家さん。
    幾度も目を閉じ、情景を思い浮かべながら読みました。

  • 日の当たらない地下水脈に光をあてているような小説。
    劇的な変容ではなく、見えないものを静かに彩っている。
    自分の「芯」が問われるからこそ、気持ち悪さと期待が混じり合い、曖昧さが漂う。
    骨は蝕むことも、彩ることもできるのだ。

    2015.2.3

  • 「あのひとは蜘蛛を潰せない」の文章の持つ繊細さや表現がとても好みだったので、さっそくこちらも読んでみました。
    この作品では、一組の父子を最初は父の視点、最後の短編では娘の視点で描き、合間を父子と関係する人々の数編でつないでいます。それぞれは別のお話ですが、目にできないつかむことのできないものに対して、あがいたり悩んだり想いを抱いたり、といった心の動きを丁寧にすくいあげて描かれている、という共通点を感じました。そのどれもがかけがえがなくて、大切なものであるというとらえ方は、素敵だと思いました。
    喪ったものは戻ってはこないけれど、在った、という事実そのものは未来永劫消えることがない。
    その暖かな希望をじわじわと感じさせてくれる、表現豊かで細やかな文章がとても巧いです。というか、やはり好きです。「指のたより」でのラストのモノローグはとても美しいことばだと感じました。

    装丁に使われている綺麗な銀杏の葉。読めばその意味は分かるのですが、本当にあの表現を表したかのようなデザインで、これもとても良い!です。

  • すごく、好き。
    「骨を彩る」ってタイトルが綺麗で、短編それぞれのタイトルも素敵。
    「指のたより」の父の話と「やわらかい骨」の娘の話の繋がり方が好きです。
    綺麗な文章って、装飾過剰な場合も多かったりするけど、これはちょっと生々しかったり暗かったりを文章の美しさがカバーしていて、飽きずに最後までとても読みやすかった。「ハライソ」と「やわらかい骨」がとくにお気に入り。

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骨を彩るの作品紹介

どうしようもない、わからない、取り戻せない、もういない-。なかったことにできない、色とりどりの記憶が降り注ぐ。最大注目新鋭作家、書き下ろし。

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