アズミ・ハルコは行方不明

著者 :
  • 幻冬舎
3.20
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  • (7)
本棚登録 : 681
感想 : 94
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344025103

作品紹介・あらすじ

地元で再会した3人組が、遊びではじめた人探し。彼女はどうして消えちゃった?大丈夫、わたしが見つけるから。『ここは退屈迎えに来て』で注目の新鋭が書き下ろす、ポップでミステリアスな無敵のガールズ小説!

感想・レビュー・書評

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  • 今時も若者はこんなに静かに暮らしてるのだろうか。
    あまりお金のない若者でのレス・ザン・ゼロだったらこうなるのだろうか。
    (レス・ザン・ゼロ観たこと無いけど)

    とても寂しく、物悲しさすら漂うくらしの若者たち。
    でもよく考えたら自分もそうだった気がする。
    四半世紀前の若者は、もっと景気良くお金をつかってはいたが
    心中はこの小説で描かれるより貧しかった気がする。
    貧しかった自分に気づけないほど貧しかった。

    この小説に登場する若者は、今の息苦しさにうすうす気付いてなおもがく。
    もがいてるつもりはなくても、居心地が良くなりはしないかと目配せくらいする。
    ただ、状況が悪く、お金もあまりない。

    昔の若者のとても馬鹿だけど金がそこそこあって、物欲に長けてるのと
    どっちが不幸だろう。

    失いかけている「何か」を感じてどうにかしようとする若者は
    辛いだろうけれど、よく見えているし、幸せに近いところにいる。

    女の子が元気で救われる。
    女の子があまりに救われないと、見てられない。

    とはいっても劇中の男連中のダメさ加減も大概だ。

    しかしこのダメさも生き抜くための最低限の強かさの発露だろう。
    もっとダメな人だと酷く引きこもるだろう。
    やりがいを求めたり、昔の恋を引きずるなんて
    まだ生の力が残っている。
    残っている力であの通りというのが切ないのだけれど、まあしかたない。

    恋愛体質の男の子は一人くらいしか居なかったようだけど
    男の恋愛体質は多くないのだろうか。
    昔は男女両方、だいたい恋愛体質だったように思っている。
    そうでなかったとしても性欲か世間体で、ほぼ同じ動きをしていた印象だ。

    今の子は、自分も他人も今もそれなりに見えてしまってるんだろうね。

    そこはかとない諦観の物語。

    このままでは終わりたくない。
    終わりたくない物語。

    昔とは様変わりした茫漠とした未来が
    昔よりも、夜は冷たく昼は灼熱の、茫漠たる日々が押し寄せる。

    終わらないロストジェネレーション。
    踵を返すきっかけはまだ見つからない。

  • いろいろあれなところはあるけど、こういうのをわたしも書きたいです。

  • 優雅な生活が最高の復讐である

    って言葉好きなんだけど、スペインのことわざだったって初めて知った〜

  • 2.0

  • イマイチよくわからなかった。夢ランドで春子の幻と会話する愛菜のシーンは良かった。
    いなくなった女の子たちが少女ギャング団になってたらいいなと思う。
    登場人物がテンション高い時のノリがしばしばうざかった。
    私には理解しきれなかったけどなんかロマンチックな感じがする小説だなと思う。

  • なんともイマイチでした
    残念

  • 地元で再会した二十歳の三人。
    バンクシーに影響されたユキオと学はグラフィティをスプレーすることに熱中する。二人は交番の前に貼ってあったアズミ・ハルコの顔をステンシルにして街中にスプレーしていくが、話題になり過ぎて警察にマークされてしまったようなので一旦グラフィティは休止となる。
    愛菜はユキオとセックスしたり、学の性器を咥えたりしていた。

    安曇春子は地元でつまらない職場で働いていた。幼馴染の男が初恋の女と不倫したり、職場の先輩が結婚して退職した影響で仕事が忙しくなったり、色んなことが重なって姿を消した。

    少女ギャング団に襲われて気を失っていた学は、様子を見に来た警察にスプレー缶が見つかって落書き犯だとバレてしまう。
    しかし、アズミ・ハルコのグラフィティの話題性から学は地元のアートフェスに誘われる。
    地元で一瞬有名になった学とユキオに嫉妬した愛菜は深夜のアートフェスに忍び込み、泥酔して寝込んでしまう。愛菜を起こしたのはキャバクラ時代の先輩、そして安曇春子だった。離婚した先輩、先輩の娘、安曇春子の三人で暮らしているらしい。そこで一緒に暮らすことになった愛菜はハッピー!

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    中学時代の地続きの世界で暮らす若者たちの喜劇、という感じかな。少女ギャング団についてはよく理解できなかったけど、初恋の相手のことを知りたがる曽我への、安曇春子の複雑な心境には見覚えがある気がした。

    ”いつまでも思春期恋愛を引きずるのは心地いい。自分の青春が、まだ終わっていないような気になるから。恋愛だけじゃなくて、自分の可能性が丸々残されているような気にすらなれるから。
    けれど目の前に、まだそんなところにとどまっている人間がいるとなると、なんだか急にバカバカしくなるのだった。自分のことは棚に上げ、その成長のなさにやるせない思いでいっぱいになった。”(P135より引用)

    的確な心理描写だなあ。全くもって安曇春子さんの思う通りだ。
    学とユキオの、なんか面白いことして有名になりてーんだよ!という感情も大いに理解できた。理解できなかったのは少女ギャング団についてだけだ。

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    何年も前に連絡を取り合っていた人が”アズミ”という名前だった。スマートフォンにアズミと入力するたび、「アズミ・ハルコは行方不明」と予測変換で表示されていたことを思い出した。
    アズミさん、元気かな。「アズミ・ハルコは行方不明」の映画、観たのかな。もし観ていたとしても、少女ギャング団はアズミさんも理解できなかっただろうな。

  • 読みやすく、面白かったけど、地方に暮らす地元を出ないで暮らしてる人をかなりディスってる。このディスり方、いいのかな?
    ここに出てくる登場人物達は、別に田舎にだけいる訳じゃない。
    地方と都会ってデジタルに分けるのは分かりやすいけど単純過ぎる。田舎で暮らしても都会に出てても、ほとんどの人は実現できそうな夢もなく、自分の人生こんなはずではないと燻ってる時代を経て大人になる。特別じゃなくても、立派でもじゃなくても、自分を受け入れ自分の居場所を見つけて歩きだす、若者の物語。
    若い女の子には、もっと自分のこと大切にしてあげてって言いたい。

  • 先に映画を観て、少女ギャングの意味がよくわからなくて、でもなんとなく気にはなってた。
    原作は山内マリコさんだったんですね、と今更知って読んでみたんですけど、面白かったです。
    地方都市の何者にもなれない若者の鬱屈は、すごくよくわかる。誰かがどこか高いところへ連れて行ってくれないかと夢見るけど、そんなうまい話はないんですよね。

    テンションの高い作品紹介は違和感ですけど、結末は力強い女の子の明るさがあって良かったです。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山内マリコの作品

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