女の子は、明日も。

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344025929

作品紹介・あらすじ

妻子のいる男を略奪し結婚した満里子。企画が通らない女性誌編集者の悠希。不妊治療をはじめたマッサージ師の仁美。売れたことで嫉妬をかう翻訳家の理央。経済的安定。仕事での成功。愛する人との結婚、そして、妊娠、出産。どうして私より先に、あなたが"それ"を持っていく?

感想・レビュー・書評

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  • 自分はいくつになっても、こういう女性の生き方模索群像ものが好きなんだなぁとつくづく思う。
    高校時代の同級生4人組の、アラサー既婚女性の連作短編。歯科医の妻・満里子、出版社勤めの悠希、マッサージ師の仁美、翻訳家の理央。それぞれがままならない現実に翻弄され、満たされない心を持て余し、自分が求めるものを手に入れている相手に嫉妬する。
    テーマ的には新鮮味はないのだけれど、それでもページを繰るたびに心がざわざわする。できれば見たくないであろうどす黒い本音。頑張りが虚しく空回りすることに耐えられず、時には醜い嫉妬心をむき出しにして八つ当たりし、夫との関係もぎくしゃくしたものになっていく。いつだって女性は「隣の芝生は青く見える」のだ、「どうして私より先に、あなたが“それ”を持っていく? 」という思いから逃れられない。
    月に一度の4人での食事会を楽しみにしながらも、相手の持っているものをそれぞれに羨む4人。そこに高校時代のエピソードを絡めることで、4人が抱える心の闇が浮かび上がってくる。
    飛鳥井さんは本作で心の葛藤のみならず、女性特有の体の問題も躊躇なく描いている。特に不妊を扱った章は色々と考えさせられた。婦人科系の不調と向き合うことが怖いというのも本音だし、うすうす感じながらも忙しさを理由につい目をそらしてしまうということ、多いのではないだろうか。登場人物らの悩みを通じて、自分の体と向き合うことの大切さも教えられた気がする。それは心と向き合うことにもつながるのだと。
    最終章、翻訳家の理央の夫・真也の言葉が印象的だった。「誰にでも、どれだけ欲しがっても、どうしても手に入らないものって、きっとあってさ。そういうものがあるってことにおいては、誰でも平等だと思うんだけど、俺は。」そうなのだ。そうわかっていても、受け止めきれない時がある。そんな思いを、誰かを攻撃することではなく、もっと違う方向に昇華させることが出来れば。それぞれぶつかりつつも、そのぶつかりの過程で「隣の芝生が青くなかった」ことに気付き、少しでも前向きな方向に歩き出そうとする4人の姿が清々しい。決して泣かせる展開ではないはずなのに、ラストは涙があふれた。「女子」「女の子」を多用する世の中に食傷気味だったけど、(本書を手にした時もタイトルだけはどうよと思っていたのだけれど)読み終えて、「女の子」の意味するところに納得。
    飛鳥井さんはマンガ家の表紙イラストとの相性が抜群だと他のレビューでも書いたのだけど、今回の谷川史子のカバーもまた最高に素敵!芯の強さを感じさせる凛としたまなざしに、ぐっときました。
    私がこれまでに読んだ飛鳥井作品の中で、今のところ一番に好きかも。

  • 登場人物が素敵な人ばかりで、読んでいて楽しかったです。こんな友達やパートナーに出会えたら幸せだなと思いました·͜·

  • あのね。良かった。
    こ~ゆ~立ち位置を変えて展開してくの、好きだぁ!
    そして、それぞれの女の子特有の色んな悩みね。
    結婚の形やら、仕事のことやら、子供のことやら…ね。
    自分が思ってる自分の姿と、
    友達から見た姿と、
    そのギャップがリアル…。

  • 満里子・悠希・仁美・理央の四人は高校の同級生。
    千葉の片隅の町にある公立高校で共に過ごした。
    14年振りに東京で再会した四人が、月に一度食事会をして
    交流を深めてる連作集。


    妻子のいる15歳年上の医者を略奪した満里子。
    女性誌編集者の悠希。
    不妊治療を始めた、マッサージ師の仁美。
    売れ始めた途端に周りから嫉妬にさらされる翻訳家の理央。

    高校時代大親友達では無かった四人。
    それぞれが、それぞに感じる微妙な感情も、うんうんあるある
    良くわかるーって感じで親近感を抱く事が出来た。
    立場や環境は違っても、共通してるのは結婚してるけど、
    四人とも子供がまだ居ない事。
    一見、何の不満や悩みがなさそうだけど、それぞれ
    他人からは窺い知る事の出来ない、自分の内に抱える
    夫婦の関係や女性ならではの身体の事・仕事の事
    悩みや不安や葛藤を抱えてる。
    他人と比べて焦ったり、苦しかったり、悔しかったり、卑屈になったり…。
    そして、それぞれが自分自身の問題にしっかりと向き合って
    乗り越えてゆく姿が良かった。
    また、全てを包み込んで支えてる夫たちの姿もとっても良かった。
    それぞれ最後には希望の光が感じられて温かい気持ちになりました。

    女性ならではの微妙な心理や揺れる気持ち、弱さや脆さを
    表現するのがとって上手。
    四人それぞれの様々な感情に共感出来ました。

    仁美と理央の章が良かったなぁ。
    理央の夫の言葉
    『誰にでも、どれだけ欲しがっても、どうしても手に入らないものってきっとあってさ。
    そういうものあるってことにおいては、誰でも平等だとおもうんだけど、
    でもそういうことを受け止められない人がいる。そういう人が、子供が手に入らない
    ものを欲しがって泣き叫ぶみたいに、嘆いたり、人に攻撃したりするんだろうな』
    この言葉がとっても印象的
    こんな言葉を言ってくれる旦那様って素晴らしい

  • この作家の作品は「タイニー・タイニー・ハッピー」しか読んだことなかったけど、その時と同じ、優しい読後感で好き。そして表紙のイラストの谷川史子さんも好きだから一話ごとに挿絵が欲しかったな。

  • 高校時代は知り合いだったが大して仲良くなかった女子4人。ひょんなことからつながり、定期的に会っている。楽しみ、成長しあえるいい関係を作っている。

    この話ではみんな32歳?で、21の私からすればお姉さん。

    10年経ったら結婚とか妊娠とか、そうだよなー。
    大学でいつまでもフラフラしてらんないよなー。

    大丈夫かな、私?
    怖いなぁと思っちゃった。
    時間に流されることが寂しい。

    多分また10年後に読んだほうがいい。
    10年後も大学の友達と仲良しだったらいいな




    とりあえず勉強するか

  • 誰にでも、どれだけ欲しがっても、どうしても手に入らないものってきっとある。そういうものがあるってことにおいては、誰でも平等。
    共感しました。

    どうしても人と比べてしまうこともあるけれど、人それぞれ、生き方も悩みも違うんだから比べられないよね…と、
    自分の生き方についても考えさせられました。

  • 飛鳥井さんの描く女性は、それぞれ違っているのにそれぞれにどこか共感してしまう。
    たとえ外からは見えなくても、みんなどこかもどかしい何かを抱えているはず。人生ってそういうもの。それを客観的に見つめて、認めて、少しでも気持ちを穏やかにして生きていけたらいなと思う。
    間違っても妬んだり嫉んだりしないで。


  • 4人それぞれに共感できるところがあって、身につまされたり慰められたり。何を選んでも選ばなくてもちょっと大変でちょっと幸せな毎日になるもんだと癒された。

  • 同世代の女子4人の話はとてもリアルに感じた。友達には話せないこと、旦那さんに本音を言えないこと、やっぱりみんな抱えて頑張ってる!

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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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