山女日記

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026018

感想・レビュー・書評

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  • これが湊かなえさんの作品?ってくらい珍しく思いました。ミステリーではなく、山を通して語られるショートショートの登場人物が少しずつ絡み合ってる素敵な物語でした。トレッキングしてみたくなりました。

  • 山に登るときにこんなに人間関係の色々を考えるのかな~と自分を振り返ってみたら、たしかに自分のふるまいに悩んだり、それを山で解消したいと願って、まさに主人公達と同じような思いで行くこともあるということに気づいた。
    自然の厳しさ、美しさ、仲間とのやり取り、無事に山行を終えた安堵と達成感に心洗われるのもわかる。
    主人公達の心の行く末が気になり、連作なので後日談も折り交ざり、読みやすい文章でスイスイ読めた。
    あまり関東圏の山に行ったことないので、登場したどの山にも行きたくなった。

  • 読後感が良い。もう体力的に山に登れないかなと思う私に希望を与えてくれました。

  • 湊かなえさんの本でミステリーの無いこのジャンルは珍しいと思います。

    登山を通してそれぞれ主人公の生活、人生を織り混ぜていきます。なにかの雑誌で読んだですが著者も作品を主筆しながら行き詰まった時に山に登るのだそうです。
    山ガールブームがまだ続いている現在、登山ブームも続いています。何故、山に登るのか…。
    山でなにを思うのか、十人十色。きっと、現実から離れた場所から自分をみつめてみたい、今を考えてみたいのでしょうか。自分で答えをみつける、一歩一歩踏みしめ歩いたら先にあるものを求めて。

    妙高山
    火打山
    槍ヶ岳
    利尻山
    白馬岳
    金時山
    トンガリロ

    どの話も様々な思いを持った女たちが描かれてて共感する部分めたくさんありました。白馬岳の離婚を切り出された完璧主婦の戸惑いとそれを思んばかる娘と妹のいたわりあう姿に泣けてきそうでした(実際、泣きました)。
    トンガリロは有名な映画の舞台にもなったニュージーランドのトレッキングコースだと初めて知りましたが歩いてみたいと思いました。
    それぞれの主人公たちは違う山で繋がっているので1冊のまとまった話になってるのもいいなあと思いました。

  • 山登りをしたことはないけど、読んでいると自分も山登りをしているように楽しかった!今まで読んだことのある湊かなえさんの本のイメージとは全然違いますが、凄く面白く、短編が繋がっているので読みやすいです。
    白馬岳での「不思議の国のアリス」のお茶会が素敵すぎてうっとり。山の上で温かいコーヒーを飲みながら、フランスパンに色々なものを挟んで食べるシーンは眼に浮かぶよう。何種類ものパテが小瓶に入れられ、アイスの木のサジがそれぞれに添えられて、フランスパンにはスライド状に切れ目が入れられて。こんなに素敵なおもてなし、私も受けたいなぁ。

  • 変則的なグランドホテル形式で、登場人物全てがいくつかの山を一緒に登ったりすれ違ったりしながら、全員がなんらかの心のモヤモヤを山で浄化していくという、かなり健康的な山登りストーリー。山に登ることで結ばれるカップルや友情、結ばれないカップルや突然夫に離婚を願われて悩む主婦、心情描写や物語に重きを置いているが、山の描写が良い量でちりばめられていて、要トレーニングなアイガーサンクションな話ではなくて、かなり薹が立った体力の無い中年でも山に登ろうかと思わせるタイプ。登場人物女性達は”山女日記”というウェブサイトで情報収集や交流をしているというのがちらほらと出てくる、そのオフにあるのが本作、というような設定なんやろかねぇ、エエ感じやと思います。
     サポイチ味噌でつくる「みそやきそば」、めっちゃ美味しそうで、つい今日はサポイチ味噌買ってきてしまいました。もやしとソーセージを山盛り入れて作ってみます。

  • いい意味で湊かなえさんらしくない、爽やかな短編集。タイトルの山女日記というサイトと、散りばめられた事柄でうっすらと繋がっている物語はいろんな縁をも思わせる。過去と今、思い通りの人生などないのだけれど、ベストはなんだろうかと模索するのに、山登り絶好のロケーションなのかもしれません。過去の悔いも受け止め、希望をそれぞれに見いだすストーリーは読後感もとてもよいです。山登りしたくなりますね。

  • 7つの山を舞台に、人生の岐路にたった女性が、山歩きをしながら自分の進むべき道を見つけていく、連作短編集。
    最後の一編で、それまでに登場した人たちのその後の姿も描かれていて、ひと安心。作者には珍しくどろどろも少なく、前向きな気持ちになれる。

    レベルは違うけれど、奇しくもこれを読んでいる最中に高尾山に紅葉狩りに行き、気のおけない仲間と汗をかきながら自然の中を歩く気持ちのよさを味わったばかり。もっともこの登場人物たちとは違い、真面目に人生について考える訳でもなく、目当ての半分は他愛もないおしゃべりと麓で飲むビールというい、ゆるい大人の遠足ではあったのだけれど…。

    と余談はさておき、本格的な登山経験のない私でも、読んでいるうちに山の空気を一緒に味わっているような気分にもなり、山歩きをしてみたいなと思わせてくれる一冊だった。

  • 登山にはまったく興味の私が、この作品を読み始めて最後まで読了できた理由は、私と同世代の女性たちの心情を作者の視点からではあるが、素直に率直な感じで描かれていたからであると、読了した後しみじみと感じているところである。

    そんな中で印象に残ったフレーズを…

    「女なのだから当然、結婚して、夫に尽くし、子どもを産まなければならない。
    世の中が姉のような人ばかりなら、国の経済はもう少し潤っているかもしれないし、晩婚化、少子化といった問題など、起こりもしないのかもしれない。逆に、姉のような古臭い考え方を持ち続けている女が常に一定数いるから、結婚しない女が肩身の狭い思いをさせられる社会がいつまでも続くのだ。
    自分がそうありたいのなら、意志を全うすればいい。輝いているわたしが素敵、などと自己陶酔しながら、そんな特集ばかり組んでちゃらちゃらした女性誌でも読んでいればいい。わたしに強要しないでほしい」(p127-p128)

    「だいたいね、お姉ちゃんも、お義兄さんも、おかしいんだよ。自分で自分でって何でも一人でやろうとするくせに、人からは頼られたいって思ってるんだから。そのうえ、ちょっとでも自分が頼らなきゃいけない状況になったらもう、ダメ人間になってしまったように思い込んじゃって。立派な人っていうのはね、自分がダメなときには、お願いします、ってちゃんと頭を下げられる人のことなんじゃないの?ダメ人間って思われたくないからって、自分から離れていこうとするなんて、間違ってる」(p195)

  • 心にわだかまりを抱えた人たちが、苦しい山道を延々と歩きながら、
    もやもやを吹き飛ばしクリアな自分を取り戻す、山が舞台の短編連作。

    何かを決断するための、あるいは何かを徹底的に考え抜くための登山。
    あぁ、そういう登り方もあるんだ。
    確かに考え事をするときは、一人で部屋に籠るより、
    青空の下で体を動かしながらの方が、絶対前向きな答えに辿り着くだろう。
    頂上から見る果てしない大空に、心が晴れ渡っていくのが分かる。

    湊さんの作品は、登場人物の腹黒さやエキセントリックさに辟易し、
    「境遇」以来長くご無沙汰していた。
    山好きなので今回久しぶりに読んでみたら、
    山から下りてきたような爽やかな読後感で、これまでの印象ががらりと変わった。
    私はこっちの路線がいいな。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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