山女日記

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026018

作品紹介・あらすじ

私の選択は、間違っていたのですか。真面目に、正直に、懸命に生きてきたのに…。誰にも言えない苦い思いを抱いて、女たちは、一歩一歩、頂きを目指す。新しい景色が、小さな答えをくれる。感動の連作長篇。

感想・レビュー・書評

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  • ドラマ版では女性山岳ガイドが主人公の話だったような気がするが、原作本は連作集。
    デパートに勤める女性たち、お見合いパーティーで出会った男女、長年ギクシャクしてきた姉妹を中心に様々なドラマが交錯する。
    連作なので登場人物同士の繋がりを見つけるのも楽しい。

    白馬岳や槍ヶ岳、妙高山など名だたる山々が舞台なので登場する女性たちも元山岳部や体力に自信がある人が多い一方、これが初めての登山という人も。初登山で宿泊しての縦走にチャレンジするなんて驚いた。

    山に登る理由は様々。一目惚れした登山靴を使いたくて登るという形から入る人もいれば久しぶりに山と向き合う人もいる。
    だがそこは嫌ミスの湊さん、皆何か抱えている。
    結婚に迷う人、不倫状態の人、夫に離婚を切り出された人、自分を偽っている人、コンプレックスを抱いている人…腹を探りあったり相手へのモヤモヤを抱えていたり、ハラハラさせられる。
    しかしきつい登山の果てに山頂に辿り着けば。

    登山で問題が解決するわけではないが、気持ちの持ち様は変わる。その結果、新しい道を選ぶこともあれば今ある場所で頑張ることにすることもある。旅のパートナーの新たな一面を知って関係が良くも悪くも変わったりもある。

    この作品が書かれたのは2013年とのことだが、登場人物たちがやたらと結婚に執着しているのが印象に残った。好きな人と一緒にいたいというよりは結婚そのものにこだわっているようで、昭和の時代ならともかく、2013年当時にそういう考えの女性たちはそんなにたくさんいたのだろうか。
    帽子作家に転身した女性のように自らの足で道を切り開いていくなら結婚にこだわらなくても良いのに…と思うのだが。

    自分の足で登った人にしか見えない、その人だけにしか見えない景色が山にはあるのだろう。だからきっとまた登りたくなる。
    続編もあるようなので読んでみたい。

  • 山について語っている湊さんをテレビで観て借りた本。
    ミステリーの要素はゼロです。
    妙高山、槍ヶ岳など、7つの山をテーマに語られる短編集。
    それぞれの語り手が別の山の語り手と繋がっていて
    山をめぐって、広い範囲の人間模様が描かれています。
    そしてタイトル通り、語り手はすべて女性。
                                                                                                                                                          
    この作品の中には、様々な人間関係が描かれています。
    同じ職場の気の合わない女性同士。
    婚活パーティーに出かけた女性と、そこで知り合った男性。
    群れることが嫌いで、一人で山頂を目指したい山女。
    ギスギスした関係の姉と妹。
    過去の栄光と夢に縛られる女性と、その恋人未満の彼。
    そして最後は、旅行会社を辞めて独立した帽子デザイナー。
    15年前の過去を引きずったまま、トレッキングツアーに参加します。

    昔、友人とテントを担いで登った穂高登山の記憶が甦りました。
    大自然の中で、身も心も解放された とても素敵な時間でした。

    心を動かされたところが二つ。
    ひとつは、関係の良くない妹に 姉が言った言葉。
    「晴れた日は誰と一緒でも楽しいんだよね。でも…」

    雨が降っても一緒にいたい人でいられるって素敵ですね。

    もうひとつは、帽子デザイナーの昔の彼の話。
    自由に人生を楽しんでいるかに見えた彼。
    ところが、降ろすことのできない荷物を背負っていたのです。
    「自由を愛する彼がいちばん自由じゃないなんて」

    人が抱えている荷物の重さは、本人にしかわからないものです。
    荷物の数と重さに押し潰されそうになっていた過去の自分が
    今の自分にウインクしたような気がしました。

     

                                                                                                                                                                                                              

  • ずっと前に一度読んでいたのだが、最近BSでドラマ化されたものを見て、『あれ?こんな内容だったっけ?』と思い再読。
    記憶では、いろんな事情を抱えて山に登る人達の話がオムニバス形式で繋がっていたはず…だったが、やはり記憶は間違っておらず、ドラマに出てくるツアーガイドが主人公ということはない。
    ただ少し設定が似た人が最後の方の話に出てくるだけだ。決まった人を真ん中においた方がドラマ化しやすかったのだろう。

    "イヤミスの女王"と評される湊かなえさんの作品だが、これはイヤミスではない。
    悩みを抱えた人が山に登ることで自分を見つめ直したり、気付きを得たり、新しい一歩を踏み出す話だ。
    山に登る人は、キツい大変だといいながら、また登る。それだけの魅力が山にはあるのだろう。
    迷ったとき山に登る。そんな選択肢があってもいい。体力に全く自信はないので、私には無理かなw

  • ミステリー作家の湊かなえさんが山ガールだったと知り興味が湧いて読んでみました。山岳小説って凍傷になったり遭難したりと身震いしながら読むのが嫌いだし危険を冒し限界を超えてまで何故登るのか的な話はさっぱり理解できないのだけど、ごくごく普通の女達の山行中のドラマが素敵に描かれてました。作中にでてくる山は登ったことあるところが多くあのルートで登ったのかってところが追体験できて味わい深かったです。
    気の合わない女同志で目指した頂きも達成感に仲間意識が芽生えたり、その場の成行きで槍ヶ岳を目指すことになった3人とか、結構あるあるなんで頷くこと多いのですが、マウント獲りたがる人とか、ペースのあわない人と同行することになるとストレス溜まる一方なので私はサラーっと受け流してフェードアウトすることを心がけてるんですけどねww 
    道中、職業とか連れとの関係とか聞かれたことはないです。そんな野暮なことわざわざ山にきてまで詮索する人とかいないんだけど、訪ねてもいないのに自分語り始める人はいるかな。
    普通は挨拶と軽い会話ですれ違うだけですが、そこらへんはミステリー作家の洞察力が許さなかったのかなww
    それとも私の思い込みで山に登る人はみなコミュ障だと思ってるからなのかww

    利尻島の
    雨の日に登りたいって思う人ってちょっとズンときました。近くの山ならまた今度ってなるけど遠征だと日程調整効かないしで無理して登ったりあるんですよね。
    特に3人以上の多人数になると自分だけ止める訳にもいかないのでズルズル行っちゃったりとかあったりで、ソロならきっぱり判断できることができなかったりと集団の意思で動くとなると複雑なので苦手だからソロがいいと思うんですけど。

    トンガリロの話はツアーなのか、ペアの話なのか、そこらへんが映像化できなかったので振り回されてしまいました。私の読解力がないのが原因なんでしょうが

    婚活パーティでトンボ玉作ってた二人、彼女が火打山の山頂でなんて叫んだのか気になってたんですがこのツアーに参加してるとかで嬉しくなりました。

    自分の被ってる帽子のデザイナーさんとバッタリ会えただけでも興奮するよね。
    最後に、ここにくるの2度目なんですかってところでピンときましたww

    ここが人生の分岐点だったんだって素敵すぎるww
    目指す頂が違ってもそれぞれの想いを胸に秘め見つめる風景は最高に気持ちよさそうな話でしたww

    • つくねさん
      下りの方が膝に負担かかりますね。私も下り苦手なのでわかります。
      で、こちらこそよろしくお願いします♪
      ミステリーとかホラー小説はダメなんです...
      下りの方が膝に負担かかりますね。私も下り苦手なのでわかります。
      で、こちらこそよろしくお願いします♪
      ミステリーとかホラー小説はダメなんですがそれ以外で推し本とかあれば教えてください w
      2023/02/15
    • yyさん
      おやおや、ミステリーはお好きではないのね。
      (ホラーは私も苦手です)
      人にお勧めできるような立場ではないのだけど…。

      本棚を拝見す...
      おやおや、ミステリーはお好きではないのね。
      (ホラーは私も苦手です)
      人にお勧めできるような立場ではないのだけど…。

      本棚を拝見すると青山美智子さんはお好きのようですね。
      町田その子さん はいかがでしょう?
      「うつくしが丘の不幸の家」や「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」
      お好きかも。
      宇佐美まこと さんの「羊は安らかに草を食み」も心温まるお話です。

      でも、気が向いたらということで
      参考程度にしていただけたらと思います。
      2023/02/15
    • つくねさん
      探偵ものがダメなんですよ。殺人とかダメだし、変死体なんかだとさらにダメダメで、関係者が集められ探偵が悦になり語り出すとか最低で、追い詰められ...
      探偵ものがダメなんですよ。殺人とかダメだし、変死体なんかだとさらにダメダメで、関係者が集められ探偵が悦になり語り出すとか最低で、追い詰められた犯人は自害するとかは最悪のパターンで耐えられません。たとえ悪人でも逃げ場を用意してあげないとイジメのような気がして滅入たりです。

      本棚見てくださってありがとうございます。町田その子さんも読みやすい文章だったのでお気に入りです。
      教えてくれた本、今度、図書館行った時探してみますね♪
      2023/02/15
  • 湊かなえさんの作品を読むのは、初めて。
    ブクログのレビューで良く見かけるので、著者に興味をもちました。

    ウィキペディアを見ると、湊かなえさんは、次のように紹介されています。

    湊 かなえ(みなと かなえ、1973年1月 -)は、日本の小説家。広島県因島市中庄町(現・尾道市因島中庄町)生まれ。武庫川女子大学家政学部被服学科卒業。2007年には金戸 美苗(かなと みなえ)の名義で第35回創作ラジオドラマ大賞を受賞した。
    現在、兵庫県洲本市在住。

    趣味は登山。大学時代はサイクリング同好会に所属して自転車旅行で日本各地を旅し、社会人になっても続けられるアウトドアスポーツとして登山を勧められ、大学4年の時に登った妙高山で登山の魅力の虜になる。1999年夏から12年間のブランクを経て2010年に登山を再開。家庭、仕事、趣味を自らの三本柱としている。


    で、作品の構成は、GINGER L.(ジンジャーエール)という幻冬舎発行の季刊文芸誌に、2012~2013年にかけて書かれた作品群をまとめたものになっています。
    なお、GINGER L.(ジンジャーエール)という雑誌は、休刊になっています。

    作品群は、

    ・妙高山
    ・火打山
    ・槍ヶ岳
    ・利尻山
    ・白馬岳
    ・金時山
    ・トンガリロ


    山好きの方には、興味深い内容と思われますが、私のように不活発な人間には、面白味がなく、20頁まで読んで終了。

    • seiyan36さん
      ゆうママさん、コメントありがとうございます。湊かなえさん、おすすめですかあ。私は、『山女日記』を手にしただけで、他の作品は読んでいません。こ...
      ゆうママさん、コメントありがとうございます。湊かなえさん、おすすめですかあ。私は、『山女日記』を手にしただけで、他の作品は読んでいません。この際、少し読んでみようかと。ちょっとだけですが、、思うようになりました。どうもどうも。
      2021/07/06
    • アールグレイさん
      seiyan36さん
      昨夜は大変失礼致しました!
      なのにお返事を頂き、ありがとう御座います。
      湊かなえさんは代表作は「告白」だと思います。又...
      seiyan36さん
      昨夜は大変失礼致しました!
      なのにお返事を頂き、ありがとう御座います。
      湊かなえさんは代表作は「告白」だと思います。又は「リバース」。
      駅伝はお嫌いでしょうか。夢中になれるのは、三浦しをんさんですが「風が強く吹いている」
      面白さを求めるようでしたら、柚木麻子さん「私にふさわしいホテル」seiyanさんは面白かったり、夢中になる本が途中でやめてしまうことなく読めるのではと思います。
      私のようなものが、目上の方にアドバイスなど恐縮致します。
      seiyanさんが本を読みながら愉しそうにしていることを願っています!
       ̄( ^-^)_
      2021/07/06
    • seiyan36さん
      ゆうママさん、再度のコメントありがとうございます。
      湊かなえさんの代表作、『告白』、高評価される方が多いですね。
      読んでみようかと思って...
      ゆうママさん、再度のコメントありがとうございます。
      湊かなえさんの代表作、『告白』、高評価される方が多いですね。
      読んでみようかと思っています。
      やはり、コメントをいただくと、刺激になります。
      2021/07/07
  • 湊かなえのある意味での衝撃作。
    なんと、今回はミステリーとイヤミスを完全封印しています。

    各章の登場人物が絡まり合いながらたどり着くゴールはスッキリとしています。
    シンプルに山の良さと、著者の質のいい文章と、山頂にたどり着いたような読後感が味わえます。

    著者が登山好きというだけあって、登山工程の描写が非常に忠実に再現されていて、山を登る魅力がじゅうぶんに伝わった一冊でした。

  • 2回読んだ本。なぜ2回読んだのかというと、自分自身登山をするからこそ登場人物の心情とか景色とかが懐かしくもあり、自分の過去の引き出しを開けるきっかけになったから。読んでいるとどんどんと本の世界から自分の思い出を巡っている。そんなこんなでそっちに気を取られてしまい、本の内容が入ってこなかったからだ。笑

    2回目は「よし!集中するぞっ!!!」と意気込んで読み始め、青春時代へとタイムスリップしようとする自分を抑えに抑えて読み進めた。所々また過去に戻っていた自分。ちゃんとしっかり読めたかなーと思いながら、同時に湊かなえさんって本当に人の感情を描くのが上手いなぁーと気が付いた。
    それくらいそこに描かれていた人たちがリアルすぎたのだ。だからこそ自分が本の内容を追体験してるように思えたし、遡るスイッチになったのだろう。

    さあ次はどんな山に登ろうか。そこではどんなことを思うのだろうか。とても楽しみだ。

  • 著者の「告白」が読みやすく好印象だったので、他の作品も是非読んでみたいと思っていたところ、登山が趣味なこともありこの本をとってみた。

    ほんのりと繋がる7つの連作短編集。
    7人それぞれ日常で抱える悩みや葛藤を回想するシーンを、登山での出来事と織り交ぜながら話が展開される。なのでガッツリな登山モノではないかもしれないが、著者ならではの色々な人間模様が描かれていて、これはこれで楽しめた。各回にて7人それぞれが葛藤を乗り越え、吹っ切れたように新しいステップに進んでいく心境が清々しかった。

    それにしても、槍ヶ岳で出会うおばさんはなかなかの曲者だったな…。この回の主人公はよく耐えた!自分がもし相手をしていたら…と考えたら溜息が何度も出た。

    また著者の作品に挑戦しよう、今度はどっぷりとイヤミス感を味わえる作品を読みたいな、と思った。

  • 湊かなえさんのホワイトの方(笑)
    妙高山、火打山、槍ヶ岳、利尻山、白馬岳、金時山、トンガリロ、七つの山が織りなす物語。
    登山を絡めた人間模様を、関わりある人達で描く清涼剤的短編集。タイトルからも察するように女性達が軸の山登りなのですが、胸中に秘めたそれぞれの疑問や不安を抱えてるものが他の人と関わりながら頂上にたどり着く頃にはちよっとだけ靄が晴れ、方向性が見えてきたり肯定的に捉えられるようになるというのは、やはり大いなる山の神様の魅力も加担されているからなのでしょう。それぞれ面白かったですが、中でも「火打山」の章から目的地は過去の中にあったと気づくお話が感慨深かったです。

    このお話の女性達のように
    頂上の標柱に駆け寄りポーズを決める、遥か見渡す山々に向い大声で叫んできたくなる(笑)ずっと重いと思っていた荷物は案外、軽いかもしれない。山に置いてくるものは何だろう…山がくれるものは何だろう…
    そんな想像を楽しみながら心地よく読み終えた一冊に。わたしは山ガールではないんですけどね(笑)これを読んだら、自分の身を普段とは違った高さに置きたくなりました。見えないものがきっと見渡せそうな気がして。

  • 今を強かに生きる女達の
    悲喜こもごもがパンパンに詰まったリュックを背負わされ、
    さぁ、
    山の頂まで登るよ!
    息切らして
    汗だくで、足が棒になるまで苦しんで
    てっぺんまで行くよ。
    どんな事も
    (見下ろせば小さな事なんだ。)と自覚する為に
    さぁ、行くんだよ。

    わかっちゃいるが
    肩に食い込むリュックは重い。
    しかも、上り坂を歩き続けるという負担は相当なもの。
    そうやって
    苦しんで
    息切らして
    辿りついたゴールに何がある?
    頑張った<甲斐>は本当にあるの?

    途中、やばいくらいに
    大泣きした。

    何でだろ?

    多分、私が根性なしだからだな。(笑


    彼女達が見た、山頂からの景観は素晴しかった。
    でも、
    人生観は変わらない。
    絶対に変わらない、と思った。

    それより、
    担いできた<荷物>が、
    少なくとも<お荷物>ではなかった、と言う事に気付く事が出来て、晴れ晴れとした気持ちになれた。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

湊かなえの作品

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