土漠の花

著者 :
  • 幻冬舎
3.72
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本棚登録 : 1770
感想 : 328
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026308

感想・レビュー・書評

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  • 大満足の一冊。立て続けに読んできた月村さんの、決定版な一冊に感じた。ソマリア、自衛隊、紛争地域、戦闘地域。深刻なテーマを扱いながらも、まさに息をもつかせぬエンターテイメントに仕上げているこの力量はものすごい。
    月村さんは機龍警察でも一貫してテロの時代を描いている。イデオロギー云々ではなく、溢れる武器と憎悪、奸智を描いている。これを読んだ僕たちは、しょせんそれが世界の在り方だ、とあきらめてはいけないのではないか。

  • ソマリアの乾いた大地。どこまでも青い空。子どもたちの頭の上では、竹とんぼが自由に空を飛ぶ。そう、竹とんぼが自由に空を飛ぶ景色を、ずっと守って行きたいものだ。超ド級のエンターテイメント。この使い古された言葉がバチっとはまる。序盤から一気に引き込まれ、そのテンションのまま読了。この感覚は久しぶり。

  • 終始銃撃戦。ソマリアで日本の自衛隊が孤立してしまい、戦闘に巻き込まれたらというテーマ設定。高野和明氏の「ジェノサイド」を彷彿させる内容だった。
    最後の話のまとめ方が、理不尽であり、非常に現実的。日本人が日常生活していく上で縁のないソマリア、そこで起きていることを知ることができた。
    ただ、絶えず戦闘シーンであり、話の展開自体はわりと単調であることと、本の表紙に著名人?のコメントがつらつらと書かれているデザインはうけつけなかった。
    本の厚さの割には意外とサクサク読めたのは行間の広さなのか、戦闘シーンばかりで流し読みとなってしまったところが多少なりともあったからなのか…
    色々もう少し作りようがあったんじゃないかと思うような本でもあった。

  • 紛争地帯にあるソマリア国境付近で、一人のソマリア女性の駆け込みにより、海賊対処・捜索救助の目的で配置されていた陸上自衛隊が現地武装勢力に襲われた。圧倒的に不利な状況で決死の撤退劇が始まる。

    ついつい目を背けたくなる戦争モノだけれど、読んでみたら一気読みだった。途中、苦しくなりながらも読み進めずにはいられない。現状で自衛隊が紛争地帯に派遣される危うさをひしひしと感じてしまった。平和維持活動に日本も参加する、せざるを得ないのも理解できるが、ならば現行法のままではあまりにもリスクが大き過ぎる。現実として、この本で描かれたような事態は十分に起こり得るだろうから。最後のアメリカの思惑もリアル。平和日本にいながらとやかく言える立場ではないが、先進国から食い物にされているアフリカの現状を見た気がする。安保法案に対し、絶対賛成・絶対反対というわけではないが、せめて日本国民の命を守るためにある自衛隊方々の誇りある活動を、どこぞの思惑によって隠蔽せざるを得ない状況にはなってほしくない。

  • ソマリアで任務にあたっていた日本の自衛隊が偶然にも現地の抗争に巻き込まれ、一人の女性を守るため命を賭けた戦闘を繰り広げる。
    背表紙に書いてあった通り、本当に一気読みしてしまった。
    たった一日の争いとは思えないほど、濃密に戦闘シーンが描かれる。
    日本の国会での机上の空論がバカらしく思えてくるほど、現地での自衛隊の活動は誰にも予測が出来ない危険を孕んでいるんだと思った。
    2016/03

  • 年明けの頃、話題になっていたので内容も知らずに図書館で予約した本。
    図書館で約10か月待って手元に届いたが、数10ページ読んだところであまりに衝撃的な展開に、読むのを止めようかと思った程。。。
    でも結局、最後まで読んでしまった。
    読み始めると止まらなくなるんです。
    土地柄、自衛官の知り合いが数人いるため、この本の中の登場人物に彼らの顔を重ねてしまう。
    読み始めた時期に奇しくもパリで多発テロが起きた。
    この本で起きている出来事を「作り話」と割り切って読むことができなかった。
    戦争しようと思わなくても、人の命をなんとも思わない輩や組織が存在する限り、何かの些細なトラブルに巻き込まれた末に大きなテロ行為につながる可能性がある。本当に恐ろしいと思った。
    本来なら★★★★つけたいところですが、武器名や格闘技の専門用語多発で頭が混乱しそうだったので★3つで。そう、こんなにもたくさんの訳の分からない武器がこの世の中に溢れてるんだなぁ。。。何の知識もない人たちにこうゆう武器を持たせたらどういう事になるか??考えれば分かるようなことだと思うが。。。
    それと余談だが、「機関銃」と言われると、どうしても、セーラー服姿の薬師丸ひろ子が頭に浮かんで困った(;一_一)

  • これは本当に読むのが止められませんでした。止めるタイミングも分からない程、のっけからクライマックス…。残虐な表現に眉間に立て皺も作りましたが、乗り越えろ!生きろ!とずーっと思い続けながら読了です。これが現実なのか、と思うとタイムリーに強行採決された安保法案に首を傾げる角度が増します。もちろん、非現実な部分もあるので、この1冊をもって何かを論じるのは軽率なのでしょうけれど。一人の女性を助けたことが全ての始まり。こんな風に知らされない事実は今までもこれからもあるのでしょうね。映像化されそうな気もします。

  • 「ソマリア派遣の自衛隊の話、おもしろいよ。」と言って夫から渡され読み始めた。…うーん、アドベンチャーエンターテイメント?もう少しソマリア内戦の実情に触れられるかと思ったのに、最初から最後までドンパチドンパチ。敵に追われながら濁流あり灼熱地獄の砂嵐あり、次から次へと難題が襲い掛かる。いやはや、男性が好む話でありますな。
     ただ恥ずかしながらこの本を読むまでは自衛隊が遠いアフリカソマリア沖へ海賊対策のために派遣されてるなんて知らなかったのです。それも2009年から。もう6年目になります。なんでそんなところに日本人が…と不審に思ってネットでいろいろ調べてみた。
    世界で最も貧しい国のひとつソマリアに海賊が発生したのは必然的だったということがよくわかった。もちろん、人のものを盗んだり殺したりは罪深いこと。でも海賊せざるをえない状況に追い込んだのはだれかということをみんなもっと知るべきだ。内戦で国内がむちゃくちゃになっているため、資源豊富なソマリア沖はそれを守る自警組織がなく、それを知る欧米・アジアの国々がこぞって密漁し、根こそぎ持っていってしまうのだ。それだけでなく有害な産業廃棄物を持ってきては捨てて帰るというとんでもないことまでしている。2004年の大津波で不法廃棄物がソマリア沿岸に大量に打ち上げられ、その事実が発覚した。そりゃあ怒るわな。国として機能してないソマリアには海賊という手段しか術がなかったのではないだろうか。
     海賊を取り締まるのもいいけれど、密漁や不法投棄をしっかり取り締まることも必要ではないだろうか。密漁している国の中に日本も入っているらしい。情けない…。
     先日国連防災会議で安倍総理が、これから4年かけて防犯対策費として40億円の拠出をすると発表した。私たちの血税、ぜひぜひ本当に必要なことに役立ててほしい。
    まあいろんなことを考えさせられただけでも、この本を読んだ価値はあったかな?

  • 自衛隊の行動綱領が大きく変わりそうな懸念がある今。
    一息に読んでしまった。
    この本で戦って散ったものも、生きて残ったものも
    みな素晴らしい男たちである。

    ソマリアの人道支援に赴いた自衛隊の隊員たちが
    一人の現地女性を保護したことで
    民族紛争の只中へ放り込まれ、
    欧米各国や中東の政治組織とつながる
    武装部族に狙われることとなる。

    かくして、生還をかけた戦いは開始され、
    彼らは圧倒的な戦力差の中を生き抜こうとする。

    12名いたはずの隊員のうち、帰投したものは3名。

    しかしその決死の行動の全容は、
    アメリカとの政治的パワーバランスの前に
    なかったこととして「処理」される。

    筋立ては確かに、アメリカや日本のよくある
    アクション映画さながら。
    ヒロインも確かに「よくある」

    でも、読ませてしまうパワーがこの本にはある。
    面白かった。キッチンを磨かなきゃ、と思いながら
    ページを捲る手は止められなかった。

    海外で国際紛争に巻き込まれ、
    我が国の人々が命を落とす。
    そんな事態はもうお話ではない。

    自衛隊の方々も、私達が知らされていず、
    小説にも出来ない、当事者じゃなくては
    理解できないようなご苦労があると思う。

    実際公僕というものは、
    「有事の保険であり平穏時はあって当たり前の
    日常を維持する」から公僕なのである。

    公務員や自衛官バッシングは後を絶たないが、
    敢えて言う。

    公僕に存在感はいらない。

    存在感がないということは
    そこが平穏だからだ。

    皆忘れているが、公僕の担っている職責も
    仕事である以上

    「普段から仕事していなければ回らない」

    おまけに

    有事になってから準備しても間に合わないものだから
    ぶった切ればいいというものではないのだ。

    また、逆に、公的機関であれば、
    自衛隊の活動がいるほどの状況に
    一般人が巻き込まれたら、あれこれ言わずに
    助けるべく行動すべきなのだ。

    だって公的機関は、税金で賄われ、
    法治国家である以上、個人の責任の上をはるかに
    超える事態には、やはり動くのが責務というもの
    だからだ。

    話がそれたが…
    自己犠牲と勇気と鍛錬と…命への執着と。
    そして誇りと。

    一体いくつの物があれば困難は越せるのか。

    弱さを越えたところの極限の姿は、
    なんだかんだ言っても
    感動するし心は震える。

    困難な任務につく人々に、
    安易に戦争行為を求めることは、
    だからこそしたくない。

    自分達は一発の銃弾も撃てないのに
    ひとを戦争に駆り立てることはしてはいけないし、
    同時に自分以外の誰かなら、
    無抵抗で傷ついてもいいわけじゃない。

    言えないことの重み。
    知らされていないことの重みを、
    下手な報道以上に考えた
    そんな本だった。

    私自身が元公僕であるゆえに、
    多少ラジカルな事も書いたが
    これは小説としても非常に面白い。

    小説だからこそ、ソマリアの大地を私自身も必死で
    逃げて、帰投後の主人公たちと涙できたのだ。
    陳腐というならば言え。

    読みきって、夢中になってこその小説だ。
    2冊めは人の生き残るお話を、
    ガラリと空気を変えて
    描いていただきたい。

    (確認すると、すでにシリーズ作なども上梓されている。
    アニメの脚本家でもあられるそうで。

    上に「陳腐」と書いたが、
    決してこの方は下手なのではない。
    感情に訴えるツボを、

    「知っている」

    と思いながら押される。
    そんな文章なので、読む方によっては、

    「どこかで見たことがある感じ。」
    「こう言うと思った。」

    と感じる人がいるだろう。

    でも、決してそれはつまらない、
    というのとは違うのだ。
    かと言って時代劇風のお決まりではなくて…。

    知っているけど、そう来られると心のほうが反応する。
    そんな感じなのだ。

    それが好きか、残念か。それは人による。
    それを言いたくて「陳腐」と書いた。

    ちなみに私は他の作品も予約をした。
    つまり、否応なく面白かったのだ。

  • #読了。ソマリアに派遣され、墜落ヘリの捜索活動にあたっていた陸上自衛隊の前に、命を狙われ助けを求める女性が。氏族間の争いの為狙われた彼女を守り、また自らの命を守るためい武器を取り戦うが・・・戦闘シーンは迫力あり臨場感も抜群。一気読みだった。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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