女性たちの貧困 “新たな連鎖"の衝撃

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344026810

感想・レビュー・書評

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  • NHKの「クローズアップ現代」で特集された『女性の貧困』をテーマにした番組を書籍化したもの。若年層の所得が年々減少し、将来に希望が見いだせない若者が増えている。そんな近年の社会情勢の中、日々の生活すら儘ならない困窮した女性たちが居ることは明確で、明日は我が身的な気持ちで手に取った。
    例に挙がっているのは「奨学金の返済に追われるOL」を始めに、「親の育児放棄をきっかけに中学生の頃から家庭を支えることになったOL」「キャバクラで働きつつ高卒認定を目指すシングルマザー」「父親が分からない子供を妊娠し母性を感じない女性」など、自身の親やパートナーに問題を抱えている女性が主となっている。そのセーフティーネットとして利用される風俗業の実態も綴られている。
    後半につれて“衝撃度”が増す一方、随分と極端な例が取り扱われている印象を持った。もしここに書かれていることが一般的な現実かつ日常であれば、世の中は相当荒れた状態になっている。
    数々の事例を紹介し、あくまでも問題提起に留まった本作。自分のこれからの生き方を考えさせられる。

  • 貧困と言う問題は、今の時代におこったわけではない。
    このレポートの切り口は、シャープである。
    年収 200万円という 女子の貧困世帯の実態。
    シングルマザー、離婚、夫の死亡、母親の病気。
    様々な形で、貧困が引き起こされる。
    『連鎖する貧困』という言葉が 衝撃を与える。

    ネットカフェで、生活する 母親と子供二人。
    不思議な 生活だ。よく考えると 18万円にもなる。
    それならば、アパートを借りることもできると単純に
    考えるのだが、生活を確固たるものにしようとしない。

    愛媛県の大学生で、東京に出稼ぎする女子。
    自分で、学費を稼ぎだすと言う意気込みはすごい。

    大学を卒業したけれど、アルバイトの職しか得られない。
    奨学金返済が 500万円が 重くのしかかる。
    普通の生活をしたいよねと言う。

    シングルマザーで、娘のために 
    なんとかしたいと思っている。
    自分の能力を引き上げようとするが、
    生活保護の範囲は限られている。

    ドキュメントのつくり方の巧みさに、感慨深い。
    繁栄して、豊かになったと言われる日本の底部に、
    光をあてることで、本当に 日本は豊かになったか?
    と言うことを、問いかける。

    • hs19501112さん
      レビューを拝見し、この本が読みたくなりました。
      レビューを拝見し、この本が読みたくなりました。
      2017/08/03
  •  数々の貧困例が淡々と紹介される中、ネカフェ暮らし一家も印象深かったが、もっとも圧倒されたのは、第5章「妊娠と貧困」。
     妊娠しても子供を育てることのできない未婚の母が出産まで寮に身を寄せ、出産後は子供を養子に出す。この仕組みを運営しているNPOが現代日本にあるという章。衝撃を受けた。
     「マグダレンの祈り」というノンフィクションで読んだ過去のアイルランドにあった未婚の母収容所を思い出した。日本のNPOは善意で運営されているので、かの悲劇的な収容所とはまったく逆の存在だが。

      そこにいる女性たちの、貧困、孤独、あくまでも一時期のみの妊娠と寮住まいの中で揺らぐように出た表情、言葉が克明に語られる。妊娠より借金返済のスケジュールが大事で早く生んでしまいたいので激しいウォーキングに精を出す人や、高給のキャバ嬢だったが妊娠のため辞めざるを得ず、所持金が数千円になってしまい、産んだ後はまたキャバ嬢に復帰し彼氏との日常に戻っていく人など。

     このような場所はどこかにあるのかもしれないと想像はできたが、詳しく紹介されると動揺せざるをえない。
     妊娠可能年齢の女性であればだれでもあり得るかもしれない状況だ。
     私だって、もしも閉経までに何かの間違いで未婚で妊娠したら頼るのかもしれないのだ。
    その時は仕事を辞めるほかないだろう。もしくは休職するのに「出産」という証明書を出す?真面目に考えると可能かもしれないが、未婚の母ということへの偏見に対し強くなれれば。やればできそうだな今の環境だと。それでも派遣社員だから簡単に体裁よく別の理由を付けて契約を切られるかもしれない。ではそれで失職後、貯金などないから、生保か。そこでも役所方面に対して強くならなくては。へとへとになりそうだな。
     (もう2つルートはあるね。①相手と結婚、費用は男性持ち。②中絶する。
     ①に行けばどうにか?甘いか?②中絶は体壊しそうだし出来たなら産んでみたくなるかも、と想像する。かといって産んでみたいなら育ててもみたくなるのかもしれず、結局このNPOのお世話にはならないのかもとか気づく。またできたのが好きだった人間の子供なのか、犯罪に巻き込まれたりやけになったときの事故で、好きでもない人間の子供であるかにより分かれ道。生命を選別しますね。そんなもんだ、どんどん選んでいこう、これを決められるのは哺乳動物であるだけではない現代文明人のあかしだと思う。神も長老も決めるところではない)
     便利に制度や機械を使い、人生日常のコントロールをできるかぎりして、つつがなく進行しているつもりだったところで、尾骶骨がしっぽの名残であるかのような、哺乳動物であったことを思い出させるのが生殖だと私は思っている。未婚で性交することはあっても避妊をすれば回避できるのに。知恵で回避できなかった結果の妊娠は、正直恐怖だ。計画のできる人間ではなく哺乳動物として一時的に生きなければならない。なんで妊娠なんかするのか。私はだから人形になりたいんだ。
     ネカフェ難民、生活保護は他のルポ本でも扱われているが、貧困と絡めてのこのテーマは知る限りこの本にしかない。このページを通りかかったすべての方に強くご一読をお勧めしたい。

  •  思わず泣いてしまった。"予期せぬ妊娠"で出産を選択した女性達の様々なエピソードを聞いて、心が痛み、久々に本という媒体で心がえぐられる感覚があった。読んでてかなりしんどかった。話作ってない?って何度か思いもした。だが、ノンフィクションなのだ。

     衝撃だらけの内容だったが、その中でも強烈に心に刺さったこと。それは、貧困女子が最後に行き着く「性風俗店」のビジネス形態だった。会社が託児所と連携し、お子を預けることができる。そして住む寮も用意してくれる。おまけに副業まで紹介してくれる。貧困シングルマザーにとっては願ってもない話だ。国ではなく、性風俗業界が貧困女子を守っていた。

     社会的にみて、底辺の仕事だといっていい"性風俗"。ここまで落ちたくないと、誰しも思うのではないだろうか。失礼ながら軽蔑の眼差しでみていたこの業界が、貧困で悩み苦しんだ女性の最後の受け皿になっている現実。自ら深く掘らないと、知り得ない世界を見た。思ってた以上に歪みまくっていた。

    【一言感想】
    衝撃すぎて、これほんまなん?と疑いの目を向けてしまう自分がいた。追記:この本、8年以上も前⁈

  • 3.64/297
    『働く単身女性の3人に1人が、年収114万円未満といわれる日本。
    中でも深刻化しているのは、10代、20代の貧困だ。
    本書では、親の世代の貧困が、子の世代へと引き継がれ、特に若い女性に重くのしかかっているという衝撃の現実を丹念に取材。
    2年以上もネットカフェで暮らす10代姉妹とその母、
    奨学金返済で500万円の借金を背負った四大卒・24歳アルバイト、
    家事を担い家計を支え通信制高校から進学を目指す19歳……。
    厳しい生活にあえぐ若い女性たちの、決して「他人事ではない」実態とは?
    膨大な取材とデータに基づいた、現代の階層化社会に警鐘を鳴らす一冊。』(「幻冬舎」サイトより)

    『女性たちの貧困 “新たな連鎖"の衝撃』
    著者:NHK「女性の貧困」取材班
    出版社 ‏: ‎幻冬舎
    単行本 ‏: ‎254ページ
    発売日 ‏: ‎2014/12/16

  • 少し前の本ですが、元になった番組シリーズも観ていたので「あ、あの話だ」と気づくことも多かったです。
    何年かたってもかなり鮮明に番組内容を覚えているということは、それだけショックを受けたということなんだと思います。

    数年たったいま、事態は上向きになるどころかコロナ禍でさらにしんどい状況になっていると感じます。
    女性であることで就職差別も受けた世代だし、職場での評価や給与面で理不尽な扱いをうけた経験があるがゆえに、今は自分がその渦中になくてもそのことを「良かった」とは素直に思えずにいます。
    女性が活躍する社会、って言葉だけはキラキラして持て囃されてるけど、具体的にはなんなんでしょうね。
    そんなことを思いながら読みました。

  • 貧困連鎖、シンマ・非正規は困窮し易い&抜け出せないという問題提起が主。自分の知っているシンマは養育費&国の手当貰って超余裕(※実際養育費が支払われるシンマ割合は20%)、非正規は裕福実家暮らしや円満既婚者ばかりでギャップを感じた。貧困率にスポットをあてる際この層まで低所得層に含むのは疑問。中絶不可月齢で妊娠発覚(性暴力や風俗含)→NPOで出産→即養子のケースが年間数百件と有りそうな事が最も衝撃的だった。背景含め世間はもっと知るべきでは。連鎖絶ちにあたり保育福祉職を選ぶ女性の多さには、いやググれよと思った。

  • なんという地獄。地獄すぎて。
    見えない、見ないふりをされている女性たち。男性の影に隠れて見えていなかった女性たち。ぱっとみただけでは気づかれない女性たち。
    風俗店が女性たちのセーフティーネットになってるこの国。。本当に一体何なんだ。。。


    単純に、ネグレクトをする母親や子どもを虐待する母親たちを叩いているだけではなんにも変わらん。根本を見ないとなんにもならん。
    結局のところ彼女らを助けられるのは、行政であり、政治なんだと思う。。でもすくえてない。その意味では報道という役割の大切さを知るし、もっと知られなければならない現実だと思う。
    政治を担っている人たち、どれだけこの現実を知っているんだろう。恥ずかしく思ってくれ。。 

    国の将来を憂いている風俗店のオーナーの話から、「国力」ということばが出てきて(あんまりすきなことばではないんやけども)でもたしかに、このままではどんどん脆弱な国になっていくだろうなと思わざるを得なかった。

    こんな国で子どもを産んで育てたいと誰が思えるだろうか?私は全然思えない。全然他人事ではない。
    あまりにもお金がかかりすぎる教育、のしかかる奨学金。働く場所がない母親、特にシングルマザー。さらには働こうにも子どもを預かってくれる保育所がない。妊娠させても知らんぷりな男たち、養育費を払わない無責任な父親たち。年金はもらえるかどうかわからない。風俗店の方が充実しているこの国の社会保障。親から子へ断ち切れない負の連鎖。子どもの貧困、あまりにも壁壁壁壁壁。現実現実現実。

    困っている人たち、なかなか辛い日常から抜け出せない人たち、夢も希望も持てない人たちを引っ張り上げることなしに、国の発展はないように思う。見えやすいとこだけを一生懸命なんとか取り繕っても土台がもろければ崩れるだけだ。
    逆にしっかりしたセーフティネットがあれば、もっと安定した社会になるんじゃないのかなあ、と思わずにはいられない。

    見ないふりをしてはだめだ。。

  • NHKの特集番組をまとめたもの。個別の事例を掘り下げて取材しているのはよいが、問題提起で終わっている。それはそれで現実を知る意味ではよい。

  •  「クローズアップ現代」「NHKスペシャル」の「女性の貧困」シリーズを書籍化したもの。
     NHKならではの機動力と資金力(一つの取材に潤沢な手間ヒマをかけられる、という意味)を駆使して、丹念な取材・調査がなされた労作だ。

     「貧困に苦しむ女性なんて、日本にだって昔からたくさんいたではないか。なぜ最近になって急に『貧困女子』が騒がれているのか?」――各種メディアの「貧困女子」特集などを見て、そういぶかしむ人は多いだろう。
     本書を読むと、その理由がよくわかる。

     まず、昔の「女性の貧困」は「結婚をするまでの、一過性のもの」としてとらえられていたから、深刻視されなかったこと。
     だが、未婚化・晩婚化の進展や離婚の増加、男性側の収入の不安定化などがあって、「結婚をして貧困から逃がれる」という選択肢を持たない女性、または「結婚しても貧困から逃がれられない女性」が増えた。そのために「女性の貧困」が可視化されたのだ。

     また、男女間の賃金格差も、いまなお根強く残っている。
     たとえば、「同じ非正規雇用であっても、女性は男性の八割程度の賃金にとどまっている」という。非正規雇用の拡大が貧困層を拡大させた中にあっても、とくに女性の非正規雇用者は困窮に陥りやすいのだ。
     そうした賃金格差の背景には、「『長く働けない女性労働者は人材として活用できない』という考え方が定着している日本の企業文化」がある、と分析されている。

     データ/解説部分と、貧困女性たちの声を捉えた取材部分のバランスがよい本である。

     取材部分でとくに衝撃的なのは、10代の姉妹とその40代の母が、2年間もネットカフェで暮らしていたという事例。
     もっぱら貧困女性が宿泊に使うネットカフェ(利用者の約7割が女性の長期滞在者)が新宿にはあるそうで、そこに3人が一部屋ずつ(といっても、一部屋が一畳程度)を借りて暮らしていたという。
     いわば“ネカフェ難民家族”であり、「貧困の連鎖」をそのまま可視化したような事例といえる。

     また、シングルマザーが性風俗の世界に入る事例も、一章を割いて紹介されている。
     風俗店側もシングルマザーを貴重な労働力と見なして優遇しており(子どもたちとの生活がかかっている分、独身女性より真面目に仕事に取り組む傾向があるから)、独自の託児所をもうけるなどして彼女たちの生活を手厚くケアしている。

     社会保障の網をすり抜けてしまった貧困女性を、性風俗がセーフティネットとなって「救って」いる――そのことを、番組のコメンテイタ-となった専門家は「社会保障の敗北」と表現したという。

     「妊娠と貧困」の章では、予期せぬ妊娠によって自分では育てられない子どもを産んだ女性と、養子を欲しがる夫婦を仲介するNPO「Babyぽけっと」の活動が紹介される。
     この章はすこぶるドラマティックで、1冊の本に広げてもよいと思った。

     衝撃的な事実の数々を冷静な筆致で綴り、「女性たちの貧困」を多角的に浮き彫りにした好著。

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