ウツボカズラの甘い息

著者 :
  • 幻冬舎
3.61
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  • (2)
本棚登録 : 922
感想 : 171
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344027718

作品紹介・あらすじ

家事と育児に追われ、かつての美貌を失った高村文絵。彼女はある日、出掛けた先で見覚えのない美女に声をかけられる。大きなサングラスをかけたその女は『加奈子』と名乗り、文絵と同じ中学で同級生だというのだ。そして文絵に、あるビジネス話を持ちかけるが-。この再会は偶然なのか、仕組まれた罠か!?鎌倉で起きた殺人事件を捜査する神奈川県警捜査一課の刑事・秦圭介と鎌倉署の美人刑事・中川菜月。聞き込みで、サングラスをかけた女が現場を頻繁に出入りしていたという情報が入る…。事件の鍵を握る、サングラスをかけた謎の女とは!?日常生活の危うさ、人間の心の脆さを圧倒的なリアリティーで描く、ミステリー長篇。

感想・レビュー・書評

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  • 柚月さんの作品は、やはり面白い。
    そして担当刑事が魅力的。
    事件を解決へと導くのは、
    いつものように現場が命で 勘に長けた武骨な刑事。
    相棒が機転の利く若い女性刑事なのは ちょっと新鮮。

    各章で物語の視点が代わる。
    ひとつは、やがて事件に巻き込まれていく主婦の話。
    もうひとつは、事件後の警察内部の捜査の話。
    時間軸を前後しながら
    ハラハラしながら成り行きを見守ることに。

    ところが、途中から予想が裏切られる。
    え~~っ? どういうこと? という展開に。
    謎が深まっていくにつれ、途中で辞められなくなる。

    そして、最終章の謎解き。
    一気に語られ過ぎて、少しもったいないかな?
    ここは含みを持たせておいて
    別の物語として一冊書き上げてもらったら
    もうひとつ、楽しみができたかも。

    主人公の文絵は、
    美への執念と甘い言葉に踊らされてしまう。
    理性を持って行動しているつもりが
    あるとき壁が崩壊して、感情の花畑へと突入。

    人ってそんなに強くない。
    弱みを上手に操られたら、相手を信じてしまう。
    文絵の気持ちが分かる気がする自分が 怖~い!
    気をつけなくちゃ。

  • プロローグが暗い感じだったので、ずっとこのままなのか?と思った。でも、このプロローグが重要だと思い読み進めた。嫌な気持ちになるところもあるけど、面白くてサクサク読めた。

    鎌倉の貸別荘で1人の男性が殺されたところから話が始まる。刑事の秦の視点の話と、高村文絵の視点の話が交互に綴られている。この2人が出会った時が楽しみだった。どういう風に結末を迎えるのか?キーパーソンの杉浦加奈子とはどんな人物なのか?早く知りたいと思ってたのに、出会ったらますます謎が深まって、私は?????だ。二転三転するけど、ページ数もうそんなにないよね…、これ本当に事件解決するよね?と余計な心配までしてしまった。無事解決してときは良かったー、と心から思った。犯人はどうしようもない人間なんだけど、そうするしかなかったんだろうなー、と少しの同情もある。
    この作品も騙された感がすごいある。そして面白い。

    この作品も詐欺の話。最近詐欺の話ばかり読んでる気がする。ランダムに選んでるつもりなんだけど。詐欺の話を読んでると本当に許せないと思う。詐欺師は人間の弱い部分に上手く入り込む。そして騙す。辛い思いをしていた分、優しい言葉に騙されちゃうんだろうな。

    物語を読み終わり、アガサ・クリスティの『殺人は容易だ』を思い出した。内容は悲しいけどあまり覚えてない。でも犯人が今までしてきた事を思い出している場面でなぜかそう思った。違ってたらごめんなさいだけど。

    表紙の絵が物語そのものでした。

  • 「ウツボカズラの甘い息」に誘惑された虫たちが、自ら中に飛び込み、養分となって死んでいく。
    それって宗教やマルチ商法に騙された人間の姿と、どこか似ていないだろうか?

    犯人は精神的に弱ったところにつけ込んで、金を絞れるところまで搾り取る。
    利用された側も騙されたことを知る頃には、多額の借金を抱えて、死を選ぶまでに追いつめられる。

    犯人は直接手を下さずとも、自らの罪を知るものを消すことができるという完全犯罪に近いものを感じた。

    ————-


    この物語の主人公は、主婦の高村文枝。
    解離性同一性障害という精神疾患をもち、美人でもてはやされていた過去の面影もなく、太ってしまった自分を隠すように生きていた。

    そんな文枝が変わったのは、趣味の懸賞で当てたディナーショーで、文枝の高校の同級生だという加奈子と会ったことだった。

    彼女に勧められた化粧品販売の仕事は、主婦にしては多く月50万円という報酬が得られる。
    文枝はどんどん昔のように綺麗になり、生活も豊かになった。

    全てが順風満帆に行っている矢先、突然 加奈子と連絡が取れなくなってしまう。
    どうしたことか、顧客からも詐欺師扱いされる電話がかかってくる。

    わけもわからずパニックになっていると、ついに警察が家に来た。
    取調室で、ことの全てが明るみになると、文枝は知らない間に詐欺の片棒を担がされていたことを知った。
    後悔しても、もう遅い。

    ————-

    マルチ商法の怖いところは、自分が騙されていることを知らず、他人を騙してしまうことにあるだろう。
    善意のつもりで勧めても、他人から疎まれたり、知らない間に逃れられない事態になってしまう。

    世の中うまい話には裏がある。
    苦労せず稼げる金はないと、自分に喝を入れながら誘惑に身を委ねてはいけないと思った。

  • 初読みの作家さん。
    単純に面白かったー!特に後半は一気読みで。
    大御所が書くどっしりとしたミステリーとは違い深刻なテーマがあるわけでもないので、純粋になぞ解きを楽しむ事が出来た。
    軽快なテンポで進む文章も良かったし、登場人物それぞれのキャラクターも個性があって良かったと思う。
    久々に何も考えずに読書が出来て満足(笑)

    以前の美貌を失ったひきこもり気味の主婦文絵が、かつての同級生、加奈子と出会った事によってマルチ商法にかかわることになり、いつの間にか詐欺事件、はたまた殺人事件に巻き込まれてしまうという内容。

    文絵を軸にして展開する物語と、殺人事件を追う刑事の目線からみた物語が並行して語られ最後には一つになる。
    この辺りの構成もありがちだけど面白かった。
    このまま2時間ドラマに出来ると思う。
    キャストは誰になるだろうって真剣に考えてしまった(笑)

    オチもすっきり収まって読後感も良し。
    たまには正統派のミステリーも良いもんですね。

  • 犯人探しの過程が読み応えもあって面白かったのに、事件はあっさり解決した感じがする。

  • いつもの柚木作品だった。
    第一章を読み終わったときにあれ?違うと思ったが、刑事が登場した時点でやはりその方向かと思った。ウツボカズラという植物ネットで調べてみた。読み終わって題名の根拠、なんとなくそうなんだと思った。最後に一挙に解決になだれ込む。作者は当初どういう筋書きを考えたのだろうか。読み進める中で予想範囲?わかっているようなわかっていないような感覚が読後の印象だ。

  • 二つのストーリーを並行に走らせながら描いていく手法が見事。特に警察の捜査の描写はリアリティがあっていい。

  • 柚月さんの本は7冊目。

    ウツボカズラと言えば、食虫植物。
    カップのような袋を持つその姿はどこか妖艶で…
    そんなタイトルがついたミステリー。
    からんでからんで、抜け出せない…

    柚月さんのミステリーは面白い。
    この作品も一気読みでした。

  • 柚月裕子2冊目。この作者の本を読むと、本当に女性が書いた小説なのか?と疑問に感じる。『狐狼の血』でも感じたことだが、ハードボイルドテイストで文体は男臭い。
    『狐狼の血』はヤクザな刑事が登場し、まさに自分にドンピシャな物語だったが、こちらもいい。

    昔は美人で持て囃されていたが、今は太って日々の生活に追われている冴えない主婦の文絵。夫と2人の娘に囲まれて暮らしているが、解離性障害の持病を持っている。そんな文絵が昔の同級生にバッタリ出会い、化粧品の販売をすることに。講師をすることになった文絵はダイエットに励み、昔のような美貌を取り戻した。充実した日々を過ごしていくうちに、仕事のパートナーが殺されるという事件が起こる。
    方や、物語は刑事の目線でも進む。別荘で男が殺害された事件を捜査することになった神奈川県警の秦と、相棒の女性警察官、菜月。捜査していくつちに、文絵の存在にたどり着く。そんな文絵は解離性障害を持ち、サングラスの同級生の存在を伝えるが、その女の足跡がどこにも出てこない。これは文絵の妄想なのか。

    この文絵の病気がキモとなっていて、だからこそこの物語をさらに面白くしている効果が出ている。文絵が言うサングラスの同級生を探っていくうちに、たくさんの不可解な事件が起こっていて、物語に深みを持たせている。
    とにかく、目の離せない作家であることだけは確実だ。

  • ネタバレあり。

    警察の捜査部分は面白かったので、どんどん読み進めたくはなった。



    しかし警察が地道な捜査でたどっていくうちに福井県が出てきたので、文絵が福井県出身だという冒頭の記述に関わるのかと思いきや全く関係なかった点は残念。
    ここを同じ福井県にする意味なかったんじゃないかな。
    本書の設定だと、同級生の加奈子と文絵が、共に中学入学の時期に福井県から岐阜県に引っ越したことになってしまうので、話の筋がちょっとおかしなことになってくるはずなのだ。


    一番の衝撃は、たぶん秦刑事が受けた衝撃と同じ。
    そこの仕組みはただただびっくり。



    あと、第1刷発行185ページ「加奈子はぎごちない笑みを浮かべた」とあるが、直前の描写や加奈子と文絵のキャラクターから、ここでぎごちない笑みを浮かべたのは文絵だと、つまり間違いだと私は思う。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

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