- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344027909
作品紹介・あらすじ
仕事も恋も上手くいかないつき子は、ある日、道に迷い、一軒の骨董品屋に辿り着く。そこは、モノではなく、ガラクタに秘められた"物語"を売る店だった。古い時刻表、欠けたティーカップ、耳の取れたぬいぐるみ…。がらくたばかりの「河嶋骨董店」を、今日もまた忘れてしまった大切な何かを探しにお客たちが訪れる。トランクいっぱいに、あなたへの物語が詰まっている。「河嶋骨董店」へようこそ!
感想・レビュー・書評
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主人公・つき子。
お月さまの月ではなく、ついてる人生を送れるようにとの両親の願いもむなしい毎日。
飲み会の帰りに道に迷いこんだ児童公園で、
ガラクタのようなものが入ったトランクを広げた老人に出会う。
どうやらそのガラクタには「物語」がついているらしい…。
そのガラクタ、プロカントともいうそうで、アンティークほど古くない品のことをいうみたい。
「トーマス・クック社の時刻表」
「ヨーロッパの貴族たちの身を飾ったメヘレンレースの端切れ」
「美しい彫刻のはいった椅子の足」
「ワンちゃんの首輪につける”ドッグタグ”」
「つき子が持ち続けていたサファイアとパールの指輪」
「ドイツの伝説上の角ウサギ、ヴォルペルティンガー」
その品々にまつわる素敵なお話が語られる。
なかでも「青い地球儀と月のお話」がとても好き。
この主人公・つき子、自分と重なる部分がかなりあって、
こうして客観的にみると、私ってこんなに面倒くさいんだと…。
老人の息子・天地とのめぐり会いもよかった。
一緒にいて、重いものが軽くなる人っていいですよね。
一概に”がらくた”と言うなかれ。
それに価値と意味を見いだし宝物になることもある。
物を大切にと育ったせいか、なかなか捨てられないことが悩みです。
捨てるのではなく、役目を終えたのだと考えればいいのかな。
落としたものが見つからなくても、そう考えればあきらめもつくし…。
自分にとって意味のあるものと、そうでないものを
見極める目を持ちたいです。
読んで”鈴カステラ”が食べたくなったのは、私だけでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルと表紙になんとなく惹かれて手に取った本。
これも出会いだなー。
すごくすごく素敵なお話しだった。
不思議な始まりで淡々と読み進めていってたのにいつのまにかポロポロ涙が止まらなくて
後半は一気に読んでしまった。
その後の2人が気になるな。
ガラクタみたいな物に
それぞれの物語が宿ってるって
そういう風に心を寄り添える感性がとても素敵。
この方の他の作品も読んでみたい。 -
本物かどうかよりも、その物に対しての愛着や思い入れによって、その人にとって唯一無二のかけがえのない宝物になるっていうのがすごくいいなと感じた。
値段や他者からの評価じゃなく、自分自身にとっての価値あるものこそ宝物だよなぁとしみじみ感じる。
自分の身の回りの物たちが、そういうお気に入りで囲まれていくような生活をこれからしていきたい。
100年経過していない美しいガラクタ『ブロカント』
その物が語る物語に、問題解決の糸口を見出す構図はなかなかおもしろかった。 -
ガラクタとそれに纏わるお話を売る。
全体的に優しいお話だけれど、
押し付けがましくなくて良い。
主人公と周りを取り巻く人々も好印象。
特に椅子の話が最後じーんと来た。
この後主人公と天地さんがどうなるのか…
ちょっと気になるところ。 -
ガラクタ同然に見えるもの達が語る思い出話にとても感動しました。全てのものにも人にも歴史があるんだな〜。
全6話で1話1話が短いのでとても読み易かったです。つき子と天地がだんだん近づいていく様子は読んでいて微笑ましかった。続編も読みたいけれど、難しいかな…。 -
雰囲気のあるタイトルと装丁に惹かれて手に取りました。
「思い出のとき修理します」シリーズの著者さんだ!と気付き、即購入。
思い出シリーズの持つ雰囲気が大好きなんですが、本作も通ずる部分があって、とても好きでした。
物が語る物語…もっともっと聞いてみたいと思いました。
そして、自分の周りにあるお気に入りの物をもっともっと丁寧に大切にしようと思いました。
優しい気持ちになれるステキな本でした! -
自分のことをついていない人生だと思うつき子。飲み会では人数調整とはいえ、盛り上げ役をやるのはえらいと思う。その飲み会の帰りに迷い込んだ先は・・
谷さんの作品だと思って、ちょっとハードルを高くしすぎていたかも。最終話に向かって、読むスピードが上がった気がする。ファンタジーではないのだけれど、本当にあったものなのか幻なのか、迷っていしまうような読後感。河嶋さんは幸せだったかな。みんなに幸せが訪れるといいな。 -
思い出のとき修理します、異人館画廊、そして今回の作品で、この作者さんはものに想いを込めるのが上手だなぁと思った。そっと隣に添えられるような優しい物語でした。欲を言えばつき子と天地さんの続きが読みたい…!
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ヨーロッパのフリーマーケットではガラクタにしか見えないものたちが雑然としかし堂々と売られており、それをブロカントという、という話を聞いたことがあります。本来の用を足さないけれど、年月を経た味わいが愛されている、と。月の夜の公園で、それこそが河嶋さんが語る物語を生むのでしょう。挿入された「タイムテーブル」「メヘレンのレース」「チャーチチェア」「ドッグタグ」「地球儀」「ヴォルペルティンガーになった野うさぎ」どの物語も切ないですね。
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昔の雑貨『ブロカント』とそれにまつわる物語を売る老人のお話。どのブロカントにも素敵な思い出が込められていて、心が暖かくなりました。
図書館でなんとなく手に取ってみたら、なんと、表紙が中村佑介さん(私の愛読書『謎解きはディナーのあとで』や『夜は短し歩けよ乙女』の表紙を描いた方)でした。なんだか縁があるなぁと思い、借りて読んでみたのですが、とても素敵な本でした。もしかすると、私とこの本の出会いも一つの物語なのかもしれません。