きみの隣りで

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 412
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344029088

感想・レビュー・書評

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  • 益田ミリさんの絵って、一見、誰にでも書けそうに見える普段着なシンプルさなのに、何故こんなにも心を動かされるのかというと、私たちの内に抱えている、言いたくても言えないリアルで繊細な思いを、そっと何気なく登場人物たちの言葉や台詞に変えて吐露してくれる、そんなところにあるのだと思いました。

    「週末、森で」から約7年後に発売された、この続編は、前作の二番煎じではない、新たな登場人物とテーマが印象的であることに加え、前作でメインだった、早川さん、マユミちゃん、せっちゃんの三人娘の森林浴で癒やされる心地好さと、人生への悩みに活路を見出す要素は健在で、更なる木々や草花の雑学によって、それがもたらされるのは、人間より遥か昔からそこにある、生きることにかけて大先輩である、自然への感謝と敬意の念を感じさせられて素晴らしいですし、『実がならない木はあっても、花が咲かない木はないんだよ』の早川さんの台詞は、決めつけられた価値観に縛られる人を、きっと解き放ってくれる、そんな希望を感じさせられました。

    また今作は、早川さんが一児の母となっている点も印象的で、時に悩む息子の「太郎」に対して、『お母さんは太郎がよその子と違ってもいい』や、『生きがいはひとりひとり自分の中にしかない』といった、親は親の人生、子どもは子どもの人生と、そこは親子であっても、きっちりひとりの人間として見てくれている、これは厳しいようでもありますが、いつかそれを実感する日が、きっと来ることを知っているからこその(ちょうど早川さんが都会から田舎に住もうと思ったように)、母親としての思いだったのであろうと感じましたし、この思いを抱えながらの、終盤に於ける早川さんの意外な胸の内は、普段の明るい雰囲気とのギャップもあり、より心に響くものがありました。

    それから、タイトルの「きみの隣りで」には、今回、登場する皆が皆、共に生きていることを実感させられて、そこには誰かが(人とは限らない)、必ず側にいてくれて、中々言葉にしづらい思いをそっと聞いて、それに応えてくれる。それが人から人へ少しずつ繫がっていくことで、新たに生きたいと思わせてくれる輪が広がっていき、やがては温かみの輪に変わる。そんな始まりのきっかけを表している、素敵なタイトルだと思いました。

    そして、私が思う益田ミリさんの最も凄いところは、作品への評価の良し悪し関係なく、いきなり私の心の隅に隠しておいて見て見ぬ振りをしてきた部分に優しく触れてくれる点にあり、今回はそれが、子離れ出来ない母親に悩むヒナちゃんの思いと共鳴したことで実感し、それは彼女自身、母親を思いやっているだけに、尚更辛い部分があるのもそうだし、それでも早川さんの言葉を必死に手繰り寄せての、『飛べ、あたし、飛べ!!』は、私も心の中で一緒に叫んでいたし、その後の『傷ついたって生きていけるように、わたしは生まれてきたんでしょう?』には、少し前に仕事で傷ついた思いに、そっと寄り添ってくれたようで、思わず涙が出ました。

    • たださん
      いえ、最初はあまり積極的に接しようとしなかったのもありましたし、行動範囲が広いのか、タイミングが悪いのか、実はそんなに会わないのですよ。

      ...
      いえ、最初はあまり積極的に接しようとしなかったのもありましたし、行動範囲が広いのか、タイミングが悪いのか、実はそんなに会わないのですよ。

      それから、なおなおさんのスキー場の思い出、懐かしいですね~(*'▽'*)
      ちなみに、今年もスキーは行かれるのですか?
      今度こそ、程良い感じに雪が積もって欲しいですよね。
      2023/05/21
    • なおなおさん
      たださん、もちろんスキーに行きます。
      今年(来年!?)こそ、堂々と「空を飛んでる!」と言い放ちたいものです。スノーマンも作りましょう(笑)
      たださん、もちろんスキーに行きます。
      今年(来年!?)こそ、堂々と「空を飛んでる!」と言い放ちたいものです。スノーマンも作りましょう(笑)
      2023/05/21
    • たださん
      では、またお祈りします(^^ゞ
      今度こそ、なおなおさんの願いが叶いますように。
      では、またお祈りします(^^ゞ
      今度こそ、なおなおさんの願いが叶いますように。
      2023/05/21
  • 以前読んだ、『週末、森で』の続編です
    益田ミリさんの本の中でいちばん好きな本
    早川さんが、結婚して子供を産んでいた
    自然で柔らかく、自分を持っているままの早川さん
    マユミちゃんもせっちゃんも、ちゃんと歩んでいた!
    涙が出るくらい良かった。優しかった。
    昨日の夜中に読み終わって、ジーーンとして
    益田ミリさんを教えてくれたお友達に思わずLINE
    彼女も、読んで「しみじみするね~」と感想を教えてくれた
    そう、しみじみするのですよ

  • 子供が生まれたらまた読みたい。
    子供と一緒に楽しみながら子育てしていくっていいなと。
    漫画だからすぐ読み終わった。

  • 「教えてあげたい人」が太郎の大好きな人なんだよ。大好きな人がいるっていいね〜

    木や草花の親も心配でしょうね。大切に育てた種も、いつかは風にのったり雨粒に弾かれたりして、巣立っていく。親がずっと見守りつづけることなんてできません。しっかり芽を出して生きるんだよって願うだけ。
    きっと期待にそえない種もいますね。
    期待は、期待。種本人には関係ないですヨ。離れていくことからでしか世界は広がらないのだし。

    お母さんの立ってる場所は、お母さんの場所だよ。種と同じで、飛んでいかないと、わたし育っていかないじゃない。

    生きがい、ではないです。
    夫婦で大切に、大切に育ててますけど子供は生きがいではない気がします。生きがいは、ひとりひとり自分の名前にしかないんだと思うんです。


    ✏️
    出産前に(予定日3日前)読めて、本当によかったかも!!!!♡

  • 益田さんの作品の中でもかなり好き。
    森と共存する穏やかな暮らし。
    「優しい木」ってすごくいいなあ。
    人よりも動物や植物のほうが分かり合えるときって本当にある。

  • 森の近くに住む早川さんと街で働くマユミちゃんとせっちゃんの話。
    早川さんが素敵。これに尽きる。お取り寄せが大好きな早川さん。わかってらっしゃるが口癖。植物の豆知識を森の中で披露してくれる。そんな知識を教えてあげたい人が大好きな人だよと諭す早川さん。森で出会う人との一期一会なやりとりの中に裏の登場人物のつながりも見える。
    たたけば埃が出てくる男など面白い表現も出てくる。

    いきがいはひとりひとり自分の中にしかない

  • いろんな読み方が出来ると思いますが、
    私自身は、この本を、対照的な二組の親子の物語として読みました。
    早川さんと、ヒナちゃんのお母さん。
    すごい、真逆。
    どちらが良い悪いというのは、一概に言えないことだと思うけど、
    早川さんは、子どもは自分の分身ではないことをちゃんとわきまえていて、その上でしっかり愛情を注いでいて、
    それは、子どもにとっては居心地の良いことだろうなぁと思いました。
    翻って、ヒナちゃんのお母さんは、子どもへの愛情に依って立っているあまりに
    自分と子どものボーダーラインが見えなくなっていて、
    同一視してしまってるというか、「自分の価値観=子どもの価値観」になってしまっているような。
    「自分が幸せ=子どもも幸せに違いない」という、子ども側からしたら、甚だしく迷惑な思考にはまってらっしゃるように思いました。
    親の期待に沿えない自分を責めるヒナちゃんがかわいそうでした。
    子離れ出来ない親は、一旦、子どもの方から捨てるしかないんでしょうね。悲しいですけどね。
    でも、それで親子じゃなくなる訳じゃない。
    ゆがんだフィルタを外した状態でお互いを見直して、改めて関係を結んで行ったら良いと思うんです。
    お母さんに対して、自分の気持ちを話すヒナちゃんを見ながら、飛べ!飛ぶんだヒナちゃん!!と、本のこちら側でも、思わず握りこぶしでした。
    そして、ヒナちゃんのお母さんにも、子どもに依らないで、自分の幸せを見つけてほしいと思いました。
    それから、ヒナちゃんが自分で見つけてきたやりがいや幸せを認めてあげてほしいな、と思いました。
    ただ、私は、子どもが生きがいでも良いと思いました。
    何を「生きがい」にしてみたところで、自分の思い通りにしようと執着したら、それが不幸をうむことだと思うんですよねぇ。

    それから。
    親子ネタとは少し外れますけども、最後のページの早川さんに、ものすごく共感。
    世界は美しい。そして人は悲しい。
    でも、美しい世界を惜しみながら死ぬことが出来るというのは、幸せな人生を送ったということなのではないかな……と、思いました。

  • 『週末、森で』の続編。
    早川さんの言葉が、しみじみと心に刺さる。

  • 働いている時、結婚する前のこと、結婚した後、子供ができる前、出来た後、私は一人なのにいろんな状況に、変化する度に私が変わっていく。
    一本芯が通ってたら…変わらないとは思うけど、その芯も何本かある。
    早川さんのように子供がいても一人旅したい、というか、してもいいと言ってくれる周りの人が欲しい。旅自体は必要なことではない。

  • どこを切っても勇気づけてくれるような名言がたくさん出てきます。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。イラストレーター。主な著書に『欲しいものはなんですか?』『みちこさん英語をやりなおす』『そう書いてあった』『今日の人生』『しあわせしりとり』『すーちゃん』シリーズ、『マリコ、うまくいくよ』『僕の姉ちゃん』シリーズ、『スナック キズツキ』『ツユクサナツコの一生』『ヒトミさんの恋』『ランチの時間』等がある。

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