- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344029842
作品紹介・あらすじ
横浜DeNAベイスターズが、5年間最下位争いでも連日満員だった理由。
感想・レビュー・書評
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現代の再建屋 池田純氏の横浜ベイスターズ経営再建の物語
氏曰く、山本七平の「空気の研究」を参考に、目に見えない、自分ではコントロールできない空気を、どう味方につけるか。
空気は良くも悪くも人を支配している、その空気を味方にすべく、改革をおこなってきたのは本書「空気の作り方」です。
空気のつくり方 それは、企業を、商品を、自身の成し遂げた仕事を、世の中に「成功」と認識してもらうための秘訣といっています。
マーケティングによりデータを集める。だが、データはあくまでの確認作業といっています。確かめるものなのです。
人間が数字にとらわれるようでは、人間が数字に操られるようではいけません。ほんとうに魅力的なものは人間のハートが生み出すのです。
わかりやすく平易な文、事例をうまくつかっての表現方法など、コミュニケーションにこだわった氏ならではの表現になっています。
気になったことは以下です。
・ベイスターズがなかなか勝てない中、何が、多くのお客様がハマスタに来てくれるきっかけになったのか
①コミュニケーション 横浜市、神奈川県のファンにあらゆる情報をお届けし、コミュニケーションを重層的に積み重ねてきたこと
②経営の革新性、透明性 横浜スタジアムの友好的TOBを含めて既存の概念にとらわれずいろいろな新しいことに挑戦してきたこと
③ブランディング 「日本一の街・横浜」という街のブランドにシンクロさせるために、広告をふくむすべてのデザインにこだわりおしゃれでかっこいいと感じてもらえるように横浜密着のブランディングを進めてきたこと
・ハマスタをどうにか買収して、球団と球場の一体経営を実現しなくてはならない、と目標を決めていました
・私が一体経営の必然性を当初から強く認識していた理由は、①ファンサービスのため、②黒字経営のため、③チーム強化のための3つです。
・商品そのものだけでなく、その商品にまつわるさまざまな要素やストーリーがつたわらなければ、自社の商品を積極的に選び取る動機が希薄で、顧客はより価格の安い似たような商品を選ぶでしょう。
・クラスター分析:顧客を、年齢、性別、職業、居住エリア、家族構成、収入、行動、考え方など、何がしかの共通する属性で分類するマーケティング分析の基本です。クラスターとは、群れや集団を意味します
・当初のクラスター分析では、「アクティブ・サラリーマン」という戦略ターゲットを導き出し、そのターゲットを想定したさまざまな施策を行い、成果を上げることにたどりついています。
・マーケット拡大志向:一般的に重要なのは、常に、できるだけ広くマーケットをとらえておくことができるかどうかです。
・ストーリーとは、商品と顧客をつなげるものです
・SNSの活用、自社のオフィシャルな媒体であるFacebookは媒体にコストをかけることもなく、こちらが発信したいことを自由に発信できる貴重なコミュニケーションの手段です。
・短文や写真で表現しなければならないタイプのSNSは、おもしろくなければ、拡散も限定的で、SNSのオープンな特性を生かし切れないからです。
・一見、自分のいる業界とはかかわりのない世界でも、役立てられるヒントはいたるところに眠っています。近視眼的な視野でモノゴトを考えるのではなく、常に広いアンテナを張り、そして、自らさまざまな場所に出向いて肌で感じることが大切です。
・人の心がいかに移ろいやすいものか
・本は出合うべきときに出会ったりするものです。いつも必ず、何かが発見できます。
・一流の人とのお付き合い:特定のジャンルに精通し、実績も残している一流の人の知識やものの考え方や見通す力は確かなものであり、しっかり耳を傾ける価値があります。
・組織の中にいい空気が満ち溢れ、全社一丸となった戦う組織ができてはじめて、外に向けてホンモノの空気を作りだしていくことができます。
・組織づくりを担うのは当然、トップであり、リーダーです。
・もっといい仕事にするために何をすべきだったか。掛け値なしに評価できるのはどんなところか、すべて具体的に伝えたうえで、次に進んでもらえます。好かれるマネジメントは会社をダメにします
・経営について端的でわかりやすく、私自身の言葉ですべて説明しました。
・モノゴトは戦略的に進めるべきが経営の常であり、それはマーケティングにおいてもおなじです。戦略的に取り組むべきターゲットを絞り込むことがまずはすごく重要です。
・ブランドはつくれない:ブランドと認識するのは、あくまでも顧客の心です。ブランドは、なれるか、なれないかであり、こちらの意図によってつくることができると考えるのはあまりにも傲慢です。
・もっとも大切なことは、「変えるべきもの」「変えてはいけないもの」を整理することです
・伝えたいことはいっぱいあると思いますが、削ぎ落しまくることが大切です。削って削って削りまくって、残ったものだけが伝えるべきものです
・いまの世の中、すべて伝える時代です。すべてを正しく理解してもらえるように伝えることは本当に大変です。伝えても伝えてもすべては伝わりません。
・世の中でかっこいいと言われているもの、かわいいと言われているものを片っ端から見まくって、どういった世界では何がかっこよくて、それはどういうった部分がかっこいいと感じさせている要素なのか、そうしたことを感じ取る経験と訓練を積み重ねることで養われていくように思います。
・ロゴデザイン1つにも、こだわり抜いたつもりです。
・細部にこだわる:ここぞというときには、細かいところにまで気を配り、細やかな指示を出し、こだわり抜くことがとても大切だと思います。
・逆境がセンスを磨く:逆境をたくさん経験することです。これがうまくいかなければ、自分で自分をくびにする、絶対に5年で黒字化させる、と自ら退路を断ったりして、ぎりぎりの情況に自分を追い込むと人は強くなってきき、センスも磨かれていきます。
・「勝てる」と思ったら、あとはやるだけです。そして勝つだけです。
・負ければまた、出直せばいいだけです。やるだけやって駄目だったら、ほかに誰ができるのか、という自負もありました。
・経験や瞬時に判断するセンス、それらを総動員すると、やるべきことはいくらでも出てきます。そうなれば、目の前にあるものすべてに集中して、使えるものは何でもつかってやろう、吸収できるものは何でも吸収してやろうとい姿勢におのずとなっていきます。
目次
はじめに
第1章 最下位なのに満員なのはなぜ?
第2章 顧客の空気を知る
第3章 世の中の空気を知る
第4章 組織の中に戦う空気をつくる
第5章 コミュニケーションの作り方
第6章 センスの磨き方
おわりに
ISBN:9784344029842
出版社:幻冬舎
判型:4-6変
ページ数:288ページ
定価:1400円(本体)
発売日:2016年10月20日第4刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ここ数年、マーケティングは疎まれる傾向にあったと思いますが、組織を前向きにさせるのは、結局は集客の力だということが、USJはじめさまざまな事例からわかると思います。
ドラッカーが言った「顧客の創造」。
これを可能にするのは、やはりマーケティングの力なのだと思います。
いわゆる「これをやったら売上が上がる」という小手先の話ではな
く、どんな手順を踏んで真因に迫っていくか、どんな手を打つか、
どう実行させるかというプロセスの話が中心に書かれています。
優れたノウハウがあっても、それを実行に移す段階でマネジメント
の壁にぶち当たってしまう、というマーケターやコンサルタントに
は、学ぶところの多い内容だと思います。
「集客はすべてを癒す」
横浜DeNAベイスターズ初代社長に就任し、4年間で観客動員数65%アップ、売上80%アップを達成した著者が、企業再生を実現するマーケティングノウハウを提供した一冊。
本書には、このマーケティングについて、主にDeNAベイスターズが実際に行ったことを紹介しており、戦術と、マーケティング施策をどう実行に移して行ったかというマネジメントの視点が書かれています。
そのことを実感させてくれる内容でした。
さっそく、気になるポイントをチェックしてみましょう。
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たとえベイスターズが試合に負けたとしても、球場を訪れたこと自体で満足できるような「ボールパーク」にするのが集客の王道です。
最高に楽しいボールパークで非日常の雰囲気を味わってもらう
コントロールできる領域は完全にコントロールし、勝敗や天気にすら左右されない“空気”をどれだけつくれるかが、スタジアムが連日連夜満員になる鍵
「チケットが入手困難らしい」という空気が醸成されるにつれて、チケットを早期に購入できる特典が付与されたファンクラブの入会数も増えていきます。二〇一〇年の時点で約五〇〇〇人だった会員数が、二〇一六年現在、なんと一五倍の七万五〇〇〇人を超えるまでに膨らみました
MLBのように、それぞれの球団が地域に密着し、地元チームのファンでホームスタジアムを埋め尽くすという文化が存在してこなかった
ベイスターズの場合、ファンクラブ会員数が急増し、ベイスターズファンがどんどん地元に増えていることもあり、ハマスタのスタンドの半分ではホームチームであるベイスターズのファンが入りきれません。そこで、オレンジ色(読売ジャイアンツのチームカラー)
だった三塁側の座席を順次、横浜ブルーの座席に取り替え、ホーム側、ビジター側という区分けから「スター・サイド」「ベイ・サイド」という名称に改めることにしました
過去の例、過去の数字にとらわれるとビジネスはスケールしません。大切なのは今流れている空気です
ベイスターズにおいては、私はある時期、球団HPのDAU(Daily Active Users=1日にHPにアクセスしたユニークユーザー数)
をもっとも重要な指標としていました(中略)KPIは会社の空気を元気にし続けるためにもっとも重要な数値
センスのよいクラスター化は、次なる施策を講じやすくすることにつながります。私はハマスタ来場者のデータを分析するにあたり、「ライト層」と「ヘビー層」に大別するところから始めました
私は、プロ野球のビジネス拡大余地はそこにある、と考えました。
映画館やコンサートといった娯楽と横並びに、野球観戦も選択肢の一つに加えてもらえるようになればいいのです
「結果」を見せる、勝つ力を示すのが、本物のリーダー
会社の発するメッセージは重要です。人に任せてはいけない仕事です
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プロ野球球団なのに、なぜ勝つことよりも集客することを優先する
べきなのか。
その答えは、当初「俺たちは野球をやるんだ。経営なんて関係ない」
と言っていた選手たちの変化を見ることで、理解できました。
「満員のホームスタジアムでプレーするのは最高です」
「次は俺たちの番ですよね」
「チームが成長しているとはいっても、これまでは結局五位とか六位で悔しい。絶対に勝ちたいんです」
「勝ちたいと心底思わなきゃいけないのは、実際にプレーする選手たち」なのです。
従業員にやりがいやモチベーションを与えるためにも、経営者は積極的にコミュニケーションに関わって、集客を実現しなければいけない。
長らくサボっていた土井に、強烈なインパクトを与えてくれました。
すべての経営者、マーケターにおすすめしたい一冊です。
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◆目次◆
第1章 最下位なのに満員なのはなぜ?
第2章 顧客の空気を知る
第3章 世の中の空気を知る
第4章 組織の中に戦う空気をつくる
第5章 コミュニケーションのつくり方
第6章 センスの磨き方 -
この本が出版されて、横浜が初めてのクライマックスシリーズを戦い、そして社長交代。予定調和としてではなく、結果が次々繋がっていく、その流れが、本書で語られている今を大切にしながらストーリーを作っていく経営の象徴に感じました。自分の"空気"も変えてもらったような気がします。
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今季で球団社長を退いたばかりの、前横浜DeNAベイスターズ社長・池田氏の著作。
マーケティング本として売り出しているが、中身は池田氏の経営哲学本と言える。本人がマーケティングこそ経営の神髄と考えているからこそ、両面的な性格を有した一冊となっている。
DeNAに経営母体が変わっても、チームは相変わらず最下位争い。にも関わらず、前代未聞の勢いで来客数を伸ばし続け、球団財政を健全化し、球場のTOBまで成功させた池田氏の、経営に対する考え方が実例を交えて縷々語られる。
具体的な手法も参考になるのだが、それ以上に経営と言うものをどう捉え、どのように社内外と・仕事と向き合ってきたかをひしひしと感じられる。
漲る自信が文章を通じて伝わってきて、とにかく勉強になるだけでなく、勇気と元気が貰える良書。 -
横浜DeNAベイスターズ社長・池田純氏による、球団経営の産みの苦しみや奮闘を綴った書。
万年最下位。閑古鳥が鳴く本拠地。膨大な赤字。得体の知れない企業という偏見。
球団買収からわずか5年で、ハマスタのチケットはプレミアム化し、経営は黒字。何よりチームは初のAクラス入りで、クライマックスシリーズ出場を果たす。
ここまでの様々な創意工夫を描いた。 -
マーケティングの本質を突いていると感じた。それを実際にベイスターズで実現出来ていることに感心した。
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野球経営の本のようにみえて、実はわかりやすいマーケティング入門書。スタジアムにはビールを飲みに来てもらい、ついでに試合も楽しければという「野球はつまみ」理論は、どこに期待値をセットするかをパラダイムシフトした典型例。ブランディングの軸の見つけ方も、ひとつひとつが理にかなった構築。小難しいマーケ本よりはこちらをおすすめ。
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DeNAベイスターズ初代球団社長の池田氏が自らのマーケティング論を振り返った本。球団による球場体験づくりや地域を巻き込んだマーケティングがまだ一般的ではなかった頃からスポーツビジネスの未来を解像度高く描けていたことが尊敬に値する。常に越境をして「楽しい」「カッコいい」の感覚を磨き続ける姿勢が、自分が求める姿勢に酷似していてとても共感したし、うまくロールモデルにしていきたいと感じた。
解像度を高めるには、ビジネスそのものを広く深く見渡して構造化することが大事と言われるが、池田氏は知識の深堀りと顧客目線の収集、そして課題や世界観の言語化という王道をいって愚直に形にしたからこそ、人気球団としてのベイスターズを作り上げられたと感じる。クラフトビール開発や市と全面的に連携したブランディングなどを見ても特にそう思う。
「過去の例、過去の数字にとらわれるとビジネスはスケールしません。大切なのは今流れている空気です」という記載に特に共感。今の会社がいまいちイケてないのもスピード感が遅いのも、この感覚がないからだと強く感じる。
メモ
・エンターテイメントやストーリーは人間が創造する
→これはなにもAIと人間の線引きに留まらず、読書量や勉強では測れないセンスや感覚がものをいうとも捉えることができる
・自分の領域の外にあるもの、楽しいものや美しいものやかっこいいものに触れる努力をし続けてこそ、新しい何かを創造できるようになっていく
・ネットの言葉ほど、世の中に流れる空気やその温度を把握するのに適したツールはない
・わからないものは一流の人に教わるのが一番。だが、彼らに時間を割いてもらうのに相応しい魅力を自分にも蓄え、気軽に頼り合える関係を作る。困ったときに頼れる一流の友人・相談相手がいることは何よりも強い武器になる
・優秀な人材には早いうちに勝ち癖をつけさせる。スキルとマインドの高い人材と連携させ、自分もフォローしてやる。成果を挙げる喜びを知れば信頼関係も生まれる
・ぶれない。やっていてきつくなって方向転換したくなっても撤回しない。簡単に撤回するようでは信頼を失う
・関心の対象となる世界を多く見つけ、感じ取れる幅が広くなることは大きな武器になる。丁寧にものを見る目が養われ、おのずと日常生活を丁寧に送るようになる。
・いつ挑戦と勝負をしなければならなくなるか、何がどこで参考になるかはわからない。だからこそ普段から、あらゆる世界のかっこいい・かわいいに触れて理解しておくことが、勝負を決するカギとなる。