蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
4.35
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本棚登録 : 20408
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • 分厚い…!しかも単行本で1ページ2段…!!
    と、おののきましたが、「ラスト手前まで」は興奮しながら読めました。

    そして先日の藤井風さんのライブが、登場人物の風間塵のピアノ演奏と重なって、不思議な感覚でした。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    芳ヶ江国際コンクールを舞台に、それぞれの背景をもつコンテスタントの4名、風間塵、栄伝亜夜、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石を主軸にした物語が始まる…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    この物語は、最後の方から開いてはいけません!
    最後にはこのコンクールの順位が掲載されていますので、そこを知りたくない方は始めから順番に読むことをオススメします。

    最初の方に、主軸となる4名の、コンクール本選までの曲目が並べられていたので、「えっ、4人とも本選までいくのがわかっちゃうやん?!」と思ったのは、わたしが浅はかだったからです…すいません…
    そんな簡単な問題ではありませんでした…
    曲目を見せたくらいで結末がわかるようなお話ではありませんでした…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    正直、この小説は誰が主人公なのか、よくわかりませんでした。
    4人が4人とも主人公で、それぞれの歩んできた道がしっかりとあり、その道は似ていないにも関わらず、このコンクールにそれぞれが立っていることを納得させるだけの人生でした。

    ピアノの演奏表現は、奏法の描写ではなく、その「音」がもつ情景を書き出す方式だったので、4人それぞれの演奏から見えるものがそれぞれに違った魅力があることが、一「読」瞭然でした。
    それにしても、マサルの人物像の完璧さ…こんな19歳いる??というくらい、スター性をもった人格者でした…いやでも、この広い世界、わたしが知らないだけでこんな人もいるんだろうな実際。

    正直、小説が終わる直前まで、わたしの中の☆は4つでした。
    でもあと数ページで物語が終わる、というあたりの話運びが腑に落ちなくて、☆をひとつ減らしました。
    盛り上がりに盛り上がったところで、全開だった扉が一瞬で閉じられたというか…閉まった扉の前で茫然と佇む感じというか…
    そして次のシーンでは、もう次に話がうつっていて、置いてけぼりをくらった感じでした。
    本選の結果自体は、最後の審査結果一覧でわかるのだけれども、この順位をみてもイマイチ納得できず、だからこそこの順位である理由を、物語の中でつかみたかったなと思いました。

    余談
    本書を読みきってすぐの2021年9/4に、藤井風さんの配信ライブを見ました。
    そのときの藤井さんの姿が、わたしが「蜜蜂と遠雷」で想像していた風間塵の姿に重なり、驚愕しました。
    風間塵は作中で「閉じ込められた音楽を元いた場所に返そう」として生きている人物なのですが、藤井さんのライブでは、本当に「音楽が空にはなたれて、いろんな場所に戻っていく、広がっていく、溶けていく」感じがしました。
    YouTubeの藤井風さんのチャンネル(公式)にライブアーカイブがありますので、興味のある方はぜひ。

  • 今までタイトルは知っていた。
    映画化されたことも知っていた。
    ピアニストたちがコンテストに出る話、というのは知っていた。

    まさか、本当にそれだけを描いた話だとは思ってなかった。
    これだけ分厚い大作なのに、エントリーから予選、本選まで、ただ一連のコンクールのこと”だけ”を書いた話だなんて。


    プロを目指す芸術家はすごい。
    私は素人だから、演奏を聴いて森羅万象を感じるだとか、演奏だけであの詩の一節が流れるだとか、同じ曲でも演奏者によって全然違う曲になるとか、演奏者と会話をするとか、正直よくわからない世界だった。
    クラシックについてもからっきしだ。曲名を聞いてもぴんとこない。頭にメロディが流れない。

    ただ、そんなわたしでも、
    「音楽の神様に愛された」それぞれの才能、心情の変化、演奏の個性、人間関係がわかったし
    音楽の世界で生きる人たちのすごさもわかった…ような気がする。

    一通り聴いてみたいな。
    大勢が出るコンクールを聴きに行って、「こいつはすごい、只者じゃない」っていう感覚を体験してみたい。

  • 分厚くて手に取りづらかったけど、評価が高いから思い切って読んでみた。
    中盤まで面白く読んでたけど、本パラパラしてたら最後に結果が書いてあってがっかり。ネタバレしてから読む気力がなくなってしまって最後だけ読んだ。
    でも確かに本から音楽が聞こえる。面白かった。

    個人的にはマサルよりも風間塵派。
    マサルはコンクールのことが分かってるから合格向けの演奏だけど、自分が好きなように音を奏でている塵の音楽はきっと聞いてて気持ちがいいと思う。革命的というか。いいなぁ。ほんと。

  • 図書館の順番待ち期間がものすごく長かった。
    しかし読み始めると2段組だし、なかなか手強いしで、いつも以上に遅読になりそうな気配。
    読むのやめちゃおうかな、せっかく回ってきたけど読まずに返却しちゃおうかな。
    これは返却して、買おうかな、でも買うと結局積読になっちゃうんだよな。
    と、ごちゃごちゃ考えながら読み進めた。

    クラシック音楽も結構好き。
    自分には好きな曲もいっぱいあるし、CDも何枚か持っている。
    昔はクラシックコンサートも結構行った。
    でも、誰々の何々と番号で言われても、覚えようとしたことがないから、わからない。
    どの作曲家がどこの国の人かもあんまりわからない。
    そういう程度の読者である。

    しかし今の時代は便利。
    読みながら、出てくる誰々の何々という曲を簡単に検索して聴きながら読んだ。

    音楽を文字で表現できるのは本当に凄いと思う。
    これ、本当に音楽に携わっているプロが読んでも納得し賛同するのかどうか、聞いてみたい。
    凡人の私は、亜夜と塵が「月の光」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「月光」「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」をセッションして月まで飛んで行ってしまったシーンにはゾクゾクしたけれど、「月の砂漠」も入れて欲しかったなと思っちゃったり、第三次予選の塵の演奏で観客全員がアジアやグラナダや北フランスやアフリカに飛んで行っちゃったけれど私には全くできなかったから。(塵の演奏じゃないから?)

    個人的には、「むつかしい」という言葉につっかかり、「あたし」という表現が気に障り、1ページの内に何ヶ所出てくるんだよ!と嫌気がさすほどの「コンテスタント」という単語の乱用が苦手だった。

    ただ、原作を先に読んだ後に映像を観ると大抵がっかりするタイプの自分が、これは映像を観てみたいと思う珍しいパターン。

    追記:映画を観たが、私にとっては結局いつも通り、原作が素晴らしくて映像はがっかり、のパターンだった。

  • 音楽を文章だけで表現するのはとても難しいと思いますが、恩田さんの表現は伝わりやすく比喩も美しいので、読みやすかったと思います。

    しかし、登場人物がほぼ全員天才で、なぜ天才なのかの説明も薄く、描かれている舞台はピアノコンクールで、ちょっと凡人が感情移入したり共感したりは難しい作品だと感じました。

    各登場人物が過去に味わった苦労や、成長のステップの描写等がもっとあれば、もう少し感情移入して読めたと思うのですが・・・

  • なんとなく気になる作品でしたので
    昨年上演された映画をWOWOWで観ました

    感想は「なにか物足りない」

    映画のレビューでは否定的なものが目につき
    小説の素晴らしさが全く表現されていないという
    多くの意見が気になりましたので
    読んでみることに

    3次審査までは一気に読み進めてしまいましたが
    本戦あたりから ちょっとお腹いっぱいに

    それでも言葉で表現された音楽の素晴らしさ
    コンテンスタントや審査員それぞれのストーリー
    久々に楽しい読書でした

  • 大長編!ボリュームたっぷりでした

    本作では、一大国際コンクールにおいて、予選から優勝者が決まるまでが綴られています。

    まず、物語が始まる前からピアノコンクールの課題曲、主人公のそれぞれのプログラムがびっしり書かれていて、作り込みのすごさに驚き。

    そして、なんといっても、演奏の表現が素晴らしい。
    語彙力がすごいし、とっても美しかったです。美しい音色が聞こえました。
    クラシック音楽には疎いので、調べて演奏を聞きながら読みました。
    たくさんの美しい音楽に美しい表現!幸せでした〜〜!!

    誰が優勝するのかハラハラしながら楽しめたのも良かったです。

  • 文字から音楽が鳴る。脳内は音でいっぱいになる。本なのに、音楽を聴いているような不思議な感覚。
    恩田陸さんの言葉の並べ方に脱帽する。
    恩田陸さんと同じ言語の元に生まれて良かったと思う。

    この文章を直接理解できることに感謝する。

  • 第136回直木賞受賞作の今作は、有名ピアノコンクールに参加した4人をメインにしたストーリー。それぞれの事情も描かれていた。

  • 「ピアノの森」が大好きだったので
    この小説もすごく気になっていて
    図書館でようやく借りられ
    読み始めたものの。。

    次へ次へ、という読みたい気持ちがなかなかうまれてこなくて、
    読み終えるのに時間がかかってしまった。
    最後まで登場人物に引き込まれることもなく、、。

    なぜだか時々こうなる時がある。

    恩田陸作品はずいぶん前に
    「麦の海に沈む果実」を読んでいて、
    その感想を読み返してみたら
    今回と同じような気持ちだったので
    相性があるのかなと思った。

    目に見えない音楽という世界を言葉で伝えることの
    難しさを感じた。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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