絶対正義

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030251

感想・レビュー・書評

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  • 正義を重んじる、とても正しくて頼もしい女友達。なのにそれも度を過ぎるととんでもなく鬱陶しくって、危険なものになってしまう……というドロドロの嫌な雰囲気が漂うサスペンス。
    正しいというのは大切なことだと思います。だからこそ、範子の行動は誰も批判することができないのですね。それでも普通はある程度のゆとりというか、暗黙の了解というものがあるものだけれど。それすらも許さない「正義」には息が詰まるような苦しさしか覚えられませんでした。法律やルールだけでなく、「思いやり」という名の正義があってもいいと思うんだけどなあ。諭すだけならまだしも、いくらなんでもこれはやりすぎ。
    そこで起こってしまうのは圧倒的に「正しくない」事件なわけだけど。むしろ範子に苦しめられた彼女たちに同情するしかありません。そりゃああんな目に遭わされたら耐えられないわ……。徹頭徹尾、怖気を感じさせられる作品でした。

  • 高校時代の同級生を協力して殺した4人の女性。
    彼女たちはその同級生の女性ー範子にそれぞれ苦い思いをさせられていて、それは同窓会で出会った今も続いていた。
    範子という女性は正しい事を絶対としていて、少しでもそこから外れると人情も何もなく追及するという人だった。
    その異常な正義感に苦しめられた4人は偶然に条件が整った時に彼女を殺してしまう。
    それから数年。
    もう犯行の発覚はないと安心していた矢先、彼女たちに殺したはずの範子から招待状が届く。

    大体の筋書は予想していた通りだった。
    それに、設定としてどうかな・・・と思う面もあった。
    だけど、「へぇ~。そうなのか」と思うような事も書かれていた。
    脳の機能で正しさを遂行する事を快感とする部分があるとは知らなかった。
    それで言えば、殺された女性は病気だったと言えるかもしれない。

    読んでいてもとにかく、その異常な正義感(?)は頭がおかしくなりそうだった。
    こんな女性がグループの中で一種尊敬される存在としていられた事が不思議。
    まず、グループから外されてクラス全体から仲間はずれにされてもおかしくないと思う。
    変なヤツとされていじめられる存在だと思うし、こんな人がよく結婚できたよな・・・。
    この人の夫や子供ってどんなん?と思ってしまう。
    でもそういう所をかわした設定だからこそ、この話はありえたと思うけど・・・。
    もし、彼女がはじかれる存在ならここまで4人の女性は追い詰められて殺意まで抱かなかった訳だから。

    ここまで異常じゃないにしても、正しさを強要する人はいるし、そういう人のその時の顔は恍惚感を感じているなという顔をしている。
    そういう人の脳は快感に満ちているんだな、そして、また同じことをするんだな・・・と思う。
    それにしても、この女性は生きていて一度も間違った事をしてなかったのかな?
    もし、人にこれだけ厳しい人が自分が間違いをしたと気づいたら自殺したいくらいの気持ちにならないかな?なんて思った。

  • 範子の正義とは法や規則でガチガチに固められたもの。私たちが想像する社会通念上の倫理や道義的なものではないので、その正義のもとまわりにいる人間をじわじわと追いつめていく。本人に悪気がないだけに怖すぎる。読んでて「怖っ」となった。

  • 母親の影響から『正しいことをすることが正しい』と疑わない範子。正義を愛するが故に、友達、自分の子も法を犯すことをすれば迷わず警察に通報するような人物。
    本当にいたら、確かに感情を知らないサイボーグだなと思った。かなり厄介な人物。

  • 正義のためならばどんな手でも使う。相手が例え友人だとしても容赦しない。全く情の通用しない感じが恐ろしい。

  • 人に押し付ける自分のモラルや振り回す話は読んでいて心が押しつぶされる。でも湊かなえ氏や明野照葉氏の作品は好き。他人を蹴落とす話ではないのに初作家なので読み慣れていないからかも知れないが入り込むのに苦労した。

  • −正義こそ、この世で1番大切なもの。
    −100%正しい、ということは、それだけですでに大きな欠点。
    正義、というかモラルとかマナーは必要なことだけれどそれを完璧にこなすのは難しい。正しいことは正しいことであるのだけれど、固執してしまったらそれは自己満足であり周囲は息苦しさや堅苦しさを感じてしまう。こう、なんというか、うまく折り合いを付けられたら、ね。

  • 読みやすいです。正しいことはいいことですが、確かにここまで正義に拘ると恨みを買いそうだなあと思いました。娘も実はそんな母親のことを恨んでいて、殺されて内心喜んでいたというのは想像できましたが、そんな娘さんの心にも悪を捌く正義の心が芽生えてたという締めくくりにわくわくしました。

  • 正しい事を主張するって、一見とても良い事だと思うけど、人には感情という物があるのだから、その辺は臨機応変に対応しないとね。範子みたいな子がまわりにいなくてよかった。ずっとイライラし通しでしんどかったけど、一気読みでした。

  • 正しいこと、正なることの暴力性を考えさせられる。

    清濁併せ呑むみたいなことがみんな当たり前と思ってるけどどうなんだろ

    正しいことをするってことで反省的でないのは本当に正しいことなのかを考えさせられる

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学院で映画・TV製作の修士号を取得。2008年、短編「雪の花」で第3回「Yahoo!JAPAN文学賞」を受賞、翌年、同作を含む短編集『雪の花』で作家デビューを果たした。ダークミステリー『暗黒女子』は話題となり、映画化もされた。他の作品に『絶対正義』『サイレンス』『ジゼル』『眠れる美女』『婚活中毒』『灼熱』などがある。

「2021年 『息子のボーイフレンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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