リーダーの教養書 (News Picks Book)

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031074

感想・レビュー・書評

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  • 本書はその分野において参考とするべき本を紹介した「本のガイドブック」だ。
    題名には「リーダーの」と書かれているが、その分野を勉強してみようと思う人にとっては、誰にでも参考になる本が紹介されていると思う。
    【歴史】【経営】【リーダーシップ】【日本近現代史】【コンピュータサイエンス】【経済学】【進化生物学】【数学】【医学】【哲学】【宗教】の11分野114冊(帯などでは130冊と書いてあるが、上下巻などを1冊とすれば114冊)の本が紹介されているが、自分が読んだことがある本は6冊しかなかった。しかし、その6冊についてはいずれも納得のいく選書であったので、他の選書についても間違いはないのだろう。

    この本の良いところは、1人選者が11分野の本を紹介するのではなく、その分野の専門家がそれぞれのおすすめ本を紹介しているところだ。
    専門家の本の紹介はそれぞれ説得力がある。やはり、どうしても一人の人間が薦める本というのは偏りができてしまうし、誰にでも不得意な分野があるはずだから、この本のように1人1分野の紹介という形式は非常に良いと思う。

    自分としては、全く門外漢の分野である数学、哲学や宗教の分野で読んでみたいなと思った本が結構あった。

    以下、分野ごとに選者のプロフィールと紹介された本の一覧を作ってみたので参考まで。

    【歴史】
    選者―出口治明
    (実業家。ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO)
      ・ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』
      ・イマニュエル・ウォーラーステイン『近代世界システム(1・2)』
      ・フェルナン・ブローデル『地中海』
      ・アントニー・ビーヴァー『第二次世界大戦1939-45(上・中・下)』
      ・半藤一利『昭和史』
      ・ヘロドトス『歴史』
      ・司馬遷『史記列伝』
      ・チャールズ・C・マン『1493――世界を変えた大陸間の「交換」』
      ・ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上・下)』
      ・更科 功『宇宙からいかにヒトは生まれたか: 偶然と必然の138億年史』
      ・永川玲二『アンダルシーア風土記』
      ・中村愿、 安野光雅『三國志逍遙』

    【経営】
    選者―楠木建
    (経営学者。一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。専攻は競争戦略)
      ・イアン・カーショー『ヒトラー(上・下)』
      ・サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち(上・下)』
      ・若桑みどり『クアトロ・ラガッツィ』
      ・サマセット・モーム『サミング・アップ』
      ・アダム・スミス『道徳感情論』
      ・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』
      ・エドマンド・バーク『フランス革命の省察』
      ・井原西鶴『日本永代蔵』
      ・ハロルド・ジェニーン『プロフェッショナルマネジャー』
      ・石原 莞爾『最終戦争論』
      ・『古事記』

    【経済学】
    選者―大竹文雄
    (経済学者。大阪大学教授、社会経済研究所教授。専門は労働経済学、行動経済学)
      ・ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』
      ・ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上・下)』
      ・センディル・ムッライナタン、エルダー・シャフィール『いつも「時間がない」あなたに』
      ・ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト『その問題、経済学で解決できます。』
      ・鈴木 亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』
      ・坂井豊貴『多数決を疑う』
      ・齊藤誠『経済学私小説〈定常〉の中の豊かさ』
      ・レイ・フィスマン、ティム・サリバン『意外と会社は合理的』
      ・ルイジ・ジンガレス『人びとのための資本主義』
      ・鶴光太郎『人材覚醒経済』
      
    【リーダーシップ】
    選者―岡島悦子
    (経営チーム強化コンサルタント。ヘッドハンター、リーダー育成のプロ)
      ・ジョン・P・コッター『企業変革力』
      ・野田智義、金井壽宏『リーダーシップの旅』
      ・ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー2』
      ・ラム・チャラン『徹底のリーダーシップ』
      ・冨山和彦『結果を出すリーダーはみな非情である』
      ・内村鑑三『後世への最大遺物』
      ・クレイトン・M・クリステンセン、ジェームズ・アルワース、カレン・ディロン『イノベーション・オブ・ライフ』
      ・リンダ・A・ヒル『ハーバード流 逆転のリーダーシップ』
      ・ラズロ・ボック『ワーク・ルールズ!』
      ・リンダ・グラットン『ライフ・シフト』
      
    【日本近現代史】
    選者―猪瀬直樹
    (作家、元政治家。地方分権改革推進委員会委員、日本文明研究所所長、元東京都知事)
      ・司馬遼太郎『坂の上の雲』
      ・石光真清『城下の人』
      ・『橋川文三著作集』
      ・参謀本部編『杉山メモ(上・下)』
      ・菊池寛『話の屑篭と半自叙伝』
      ・松本清張『半生の記』
      ・小島信夫『抱擁家族』
      ・大宅壮一『無思想の思想』
      ・柳田國男『明治大正史 世相篇』
      ・三島由紀夫『金閣寺』
      ・三島由紀夫『鏡子の家』

    【進化生物学】
    選者―長谷川眞里子
    (人類学者。総合研究大学院大学学長・教授、国家公安委員会委員。専門は行動生態学、自然人類学) 
      ・カール・ジンマー、ダグラス・J・エムレン『進化の教科書』
      ・マット・リドレー『進化は万能である』
      ・サイモン・レヴィン『持続不可能性―環境保全のための複雑系理論入門』
      ・フレッド・ピアス『外来種は本当に悪者か?』
      ・ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄(上・下)』
      ・ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊(上・下)』
      ・ジャレド・ダイアモンド『昨日までの世界(上・下)』
      ・スティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能(上・下)』
      ・スティーブン・ピンカー『暴力の人類史(上・下)』
      ・海部陽介『人類がたどってきた道』
      ・イタイ・ヤナイ、マルティン・レルヒャー『遺伝子の社会』

    【コンピュータサイエンス】
    選者―中島聡
    (コンピューター技術者、プログラマー。UIEvolution(スクウェア・エニックスの子会社)のチーフソフトウェアアーキテクト) 
      ・ジェフリー・ムーア『キャズム』
      ・ドラッカー『明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命』
      ・ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ』
      ・木下是雄『理科系の作文技術』
      ・リチャード・A・ブリーリー『コーポレート・ファイナンス』
      ・クレイトン・クリステンセン『イノベーションのジレンマ』
      
    【数学】
    選者―森田真生
    (数学をテーマとした著作・講演活動などを行う日本の独立研究者) 
      ・スタニスラス・ドゥアンヌ『数覚とは何か?心が数を創り、操る仕組み』
      ・斎藤憲『ユークリッド「原論」とは何か』
      ・ジョセフ・メイザー『数学記号の誕生』
      ・アミーア・アレクサンダー『無限小 世界を変えた数学の危険思想』
      ・ジョージ・ダイソン『チューリングの大聖堂 コンピューターの創造とデジタル世界の到来』
      ・アポストロス・ドクシアディス、クリストス・パパディミトリウ『ロジ・コミックス:ラッセルとめぐる論理哲学入門』
      ・伊達宗行『「数」の日本史 われわれは数とどう付き合ってきたか』
      ・マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』
      ・ティモシー・ガワーズ『プリンストン数学大全』
      ・高瀬正仁『岡潔 数学の詩人』

    【医学】
    選者―大室正志
    (大室産業医事務所代表。産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務) 
      ・ダニエル・E・リーバーマン『人体600万年史』
      ・フランク・ライアン『破壊する創造者』
      ・多田富雄『免疫の意味論』
      ・櫻井武『睡眠の科学』
      ・名郷直樹『「健康第一」は間違っている』
      ・岩田健太郎『ワクチンは怖くない』
      ・サイモン・シン、エツァート・エルンスト『代替医療のトリック』
      ・斎藤環『承認をめぐる病』
      ・ジェローム・グループマン『決められない患者たち』
      ・森健『脳にいい本だけを読みなさい』
      ・アトゥール・ガワンデ『死すべき定め』

    【哲学】
    選者―岡本裕一朗
    (哲学・倫理学者。玉川大学教授)
      ・プラトン『ソクラテスの弁明』
      ・デカルト『方法序説』
      ・パスカル『パンセ』
      ・ニーチェ『道徳の系譜学』
      ・W・ジェイムズ『プラグマティズム』
      ・ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』
      ・ホルクハイマー、アドルノ『啓蒙の弁証法』
      ・ミシェル・フーコー『監獄の誕生』
      ・ジョン・R・サール『MiND マインド 心の哲学』
      ・トマス・ネーゲル『哲学ってどんなこと?』
      ・ハリー・G・フランクファート『ウンコな議論』
      ・ユルゲン・ハーバーマス『人間の将来とバイオエシックス』

    【宗教】
    選者―上田紀行
    (文化人類学者。東京工業大学教授)
      ・島薗 進『宗教ってなんだろう?』
      ・阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』
      ・末木文美士『日本宗教史』
      ・鈴木大拙『日本的霊性』
      ・丸山真男『日本の思想』
      ・鈴木崇巨『1年で聖書を読破する。』
      ・マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
      ・ジョルジュ・バタイユ『宗教の理論』
      ・ダライ・ラマ14世『思いやり』
      ・小池龍之介『煩悩リセット稽古帖』

  • リーダーは教養を持ちましょう。ということで、様々な教養を得る本を解説。

    ・「教養」という言葉は明治期に翻訳されて定着した日本語。もともとは「リベラルアーツ(自由の技術)」

    ・教養の定義は、人が他者に強制されず、自分自身でつくりあげていく独自の「価値基準」を持っていること

    ・人間は知りたいと思ったときが一番勉強できるし、それを人に話すことでさらに理解が深まる
    ・誰しも何らかの形でチームで仕事をする。人間最大の労働条件は「上司」
    ・トップに立つ人間に教養があれば様々な物事に理解が有るため、社員はみな元気で明るく楽しく過ごせる
    ・教養がないような「激動おじさん」だったら、部下は上司が騒ぐたびに右往左往させられる
    ・教養が無ければ人生を楽しめないので、職場を楽しくすることも出来ないし、部下も楽しく過ごすこともできない
    ・基本的には何かが起きた時に、わからないことを決めるのがリーダーの役割。
    ・リーダーが右往左往したらろくなことがない。「ゆっくり急ぐ」ための時間軸を取るだけの教養がなければいけない。
    ・普通の人間の判断は、データが足りない中でしなければならない。「要するに」と抽象化する能力で「直感」というべき「論理的な確信」が無ければ判断はできない
    ・日本では「根拠なき精神論」があまりにも多い。「若いときは徹夜するくらい仕事しないと、仕事は覚えられない」などと言うおじさんは山ほどいる。そういうおじさんには「多分、僕が不勉強なだけだと思いますので、若いときの長時間労働がその人の生産性をどう上げたかについての論文やデータでも何かあったらぜひ送って下さい」と伝えている。送られてきたことはない。
    ・ドイツ第三帝国が、自国の敗北が見えてくるにつれて精神論で突き進むようになっていった。「精神論だから負けた」が一般的な理解だが、負けがこむウチに精神論になる。

    ・人間観は2つに分けられる。「人間は愚かでどうしようもない動物だから、それほど賢い判断は不可能だ」とする考え方と、「人間はなかなか立派で賢い動物だから、ちゃんと教育して育てればリーダーは育つ」とする考え方。(筆者は前者)

    ・大脳生理学者の研究では、人間の脳の構造からしてリテラシーの高い人ほどコロコロと自分の意見を変える傾向がある。相対的に賢い人でもコロコロ意見を変える。

    ・本を選ぶ時にオススメなのは、まずは表紙のきれいな本を選ぶこと。表紙がいい本は、出版社も力を入れているので、優れた本が多い

    ・教養は、ある人の電話のとり方やご飯の食べ方、机の整理の仕方など具体的な一挙手一投足にも表れる。人のかばんの中に何が入っているのか、オフィスのデスクの上がどうなっているのかといったことからも、その人となりをうかがい知ることができる。そのような断片にも、その人がどのような人間観なり哲学を持って生きているのかが反映されている。
     なので、一挙手一投足をずっとそばで見ているというのは、学びの手法としてきわめて優れている。

    ・皆が入社年次に応じて「さん付け」や呼び捨てを徹底して使い分けていた。30年近くこのルールでやってきたが、ゼロから会社を作ったときに、年齢フリーで定年のない会社にしようと決めたので論理必然的に全社員を「さん付け」で呼ぶことに決めた。一度決めてしまうと、苦労なく呼べる。

    ・特に若いビジネスパーソンは「何をするか」と同時に「何をしないか」をよく考えるべき。

    ・色々選択肢がある時は、できるだけ一つに絞ったほうが良い。これも正しい、アレも正しいと考えてしまうと、結局何もできなくなってしまう。

    ・ビジネスを成功させる上でも、上司や部下との関係構築のためにも、リーダーには歴史の教養が不可欠。人間観の洞察に長けた人が職場にいれば、きっとその職場は楽しい雰囲気になる。歴史における様々な人物の立場を勉強してきたリーダーであれば、他社の立場に立って物事を考えることが出来るようになる。
    ・人間の脳は1万3000年前から変わっていないことが、科学的に証明されている。

    ・単なる情報と教養の違い。情報はそれを得た後の「行動」に繋がらない。
    ・今日の円ドルレートが昨日よりも円高に動いていた。「ああ、今日は円が少し高くなったな」情報が示せるのはそこまで。そこから先、何を考えてどう行動するかは情報を受け取った人の知的能力に依存する。同じ情報でも、受けての知的能力によってその後の成行はまるきり変わってくる。

    ・プレゼンテーションの教科書に書いてあるノウハウは、定型的・標準的な知識。「人ができることを自分もできる」は仕事においてゼロに等しい。
     標準を知っているというだけでは、知的な活動で独自の価値を生み出せない。
     教養は「その人がその人であるため」の知的基盤
    ・世界的に見ても、明治期の日本ほど金融資本主義的で労働流動性の高い社会はなかった。「アメリカのように長期雇用で労使一体の体制を作らなければ日本の重工業は発展しない」というのは当時の日本での典型的な「日本的経営」に対する批判だった。今とまるで逆の話なのが面白い。

    ・選択肢A、B、Cがあり多数決でAに決まるとする。しかし、BとCを足した「Aに反対する」意見が「Aに賛成する」よりも多いという矛盾が発生する。
     より優れたものとして「ボルダルール」を勧める。選択肢が3つあれば、1位に3点、2位に2点、3位に1点で投票させ、特典の総和で選択肢を順序付ける。

    ・組織を解凍するには「フォロワー」を増やしていくことが肝要だが、この好例がJAL入社時に現場のメンバーに感謝の手紙を書いた稲盛和夫氏だ。

    ・ビジョンは、組織を動かすリーダーが「フォロワー」を作っていくときの「共通言語」になる

    ・リーダーとは、自らが組織を先導して引っ張っていくというよりも、構成員それぞれがイノベーティブに活動できるような環境を整える「羊飼い型」であるべきだ

    ・むしろ書籍は、エンジニアとして長続きするために大切なことを教えてくれる。それは、そのプロダクトをなぜ作るのか、どんな価値を提供するのかといった「哲学」の部分
    ・受託する仕事だけ行っていてもエンジニアとして食べていくことはできる。しかしそれでは、成長機会が限られているだけでなく、そもそも造り手としてモチベーションが上がらない。仕様書だけをもらって「このとおり作って」と言われることほどつまらない仕事はない

    ・文章はものを伝える道具だ。「まずは結論を示す」「一文はできるだけ短くする」「必要以上の修飾語は排除する」といった、構造的な文章を書くべき

    ===
    ・「リーダーシップの旅」リーダーシップについて、体系的に習得できる
    ・「結果を出すリーダーはみな非情である」これからのリーダーが読むべき、30台からの鍛える意思決定力
    ・「理科系の作文技術」
    ・「睡眠の科学」原理的に睡眠の解説をしている。

  • 歴史、経済学、進化生物学、医学、哲学など10種類のジャンルから各著名人が推薦書を紹介している。推薦書の数は120冊あり、紹介文も簡潔で楽しく読める。既読の本もいくつかあったが、興味を引かれた本の数はそれ以上。10種類のジャンルの中で読みたい本は歴史と哲学の本が多かったので、自分が読みたくなる本のジャンルが変化していると実感した。気になった27冊の推薦書を少しずつ読んでいきたい。

  • リーダーに必要な教養を、歴史・経営・数学などにわけ、それぞれに精通した人物がおすすめの本を紹介していく一冊。
    本書一文にもある、「日米エリートの差は教養の差だ!」には納得。

  • 「教養」とは人が他者に強制されず、自分自身でつくりあげていく独自の「価値基準」を持っているということ

    楠木さんの一番最初のコメントが一番印象に残った。
    「自由の技術」,言い換えれば「リベラルアーツ」ということになる。
    そうした意味では次の出口さんの「自らの選択肢を増やしてくれるもの」という定義もしっくりくる。

    なお現在
    ・半藤一利「昭和史」
    ・ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」
    ・エドマンド・バーク「フランス革命の省察」
    ・齊藤誠「経済学私小説 <定常>の中の豊かさ」
    ・リンダ・グラットン「ライフ・シフト」
    ・アポストロス・ドクシアディス「ロジ・コミックス」
    ・斎藤環「承認をめぐる病」
    ・デカルト「方法序説」
    を読みました。

  • 出口治明氏、楠木建氏をはじめ、歴史、経済、IT、医学、宗教など様々な分野の専門家が、その分野の教養書を挙げ解説している。教養の重要性の説明が簡潔明瞭で、実際に推薦されている本も今まで知らなかったものが多く、興味深く読み進められた。今後、何冊かは読んでみたいと思う。

    「勝負に勝ち続けて、世の中をリードし、何か偉大なものを残せる人間は、「普遍的なもの」を自分の中に持っている。「普遍」のストックを自分の中に多く備えていれば、それと時代性を掛け合わせることにより、無数のアイデアが湧いてくる。しかも、普遍に基づいたものは、人間の本質に根ざしているだけに、持続性と爆発力のあるアイデアであることが多い」p6
    「ハウツーを記した、似たような内容のビジネス書を読み続けても、それは、一瞬の気晴らしになるだけで、あなたの「知の土壌」を豊にはしない」p7
    「マイクロソフトのビル・ゲイツ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾスといった米国のトップ起業家は、歴史、科学、文学に精通した教養人だ」p7
    「豊かな教養を持つのは、頭の中に多くのブレーンを抱えているようなものだ」p7
    「自分の言葉で対象をつかみ、自分の頭で考えることができない人ほど、目先の現象だけですぐに大騒ぎをする」p20
    「リーダーが経営判断をしないといけないときは、実はそれほど多くないのです。しょっちゅう経営判断をしているようにみんな思っているようですが、基本的には何かが起きたときに、わからないことを決めるのがリーダーの役割です」p22
    「(大東亜戦争での敗戦)当時の日本の状況についてもよく言われることですが、「精神論だから負けた」というのが一般的な理解ですね。ところが実際はそうではない。因果関係が逆なのです。精神論があるから負けたのではなく、負けが込むうちに精神論になってくるんですね」p26
    「未来のことがわからない以上、僕たちに残された教材は歴史の中にしかない。そして、人類はこれまでに膨大な数の歴史を蓄積してきたのだから、そうした「パターン」の中から示唆を得ることは多分に可能だろう。歴史は、おそらく、いくら勉強しても決して飽きることがないケーススタディの宝庫である」p43
    「ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』」p44
    「イアン・カーショー『ヒトラー(上下)』」p61
    「サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ『スターリンー赤い皇帝と廷臣たち(上下)』」p61
    「アダム・スミス『道徳感情論』」p64
    「鈴木亘『経済学者 日本の最貧困地域に挑む』」p80
    「「生まれながらのリーダー」など存在せず、リーダーとはあくまでも「なるもの」なのだ。例えば、社長になろうとして社長という「地位」につくことは可能だろうが、それがそのままリーダーであるというわけではない。リーダーとは、結果的に「なっているもの」あるいは「なってしまっているもの」である。かつ、リーダーになることそれ自体が「目的」であってはならない」p93
    「個性ある人間をまとめ、組織して事業を行なっていく上で、人間に興味のないリーダーにリーダーシップを発揮することは不可能である」p101
    「リーダーを目指す人間にとって、読書は不可欠だ」p103
    「読書に時間もコストもかけない人間は、絶対に出世しないと言い切れる」p103
    「歴史を学ぶ効用としては、「家長」の意識を持てるということがある。「家長」とは、当事者であり、リーダーであり、「責任をとる人間」ということだ。批判するだけであれば楽だが、家長は批判するだけではすまない。ビジネスにおいても、家長である経営者は、自分で提案し、実行し、利益を生み出さないといけない」p104
    「ナショナリズムというのは国民国家ということだ。それを踏まえないと、単なるモダニズムになってしまう」p106
    「石光真清『城下の人』」p107
    「橋川文三著作集」p108
    「人間はやっぱり下積みの生活がないとダメだ」p112
    「「各生物は、何かを行うために進化した」と考える人がいるかもしれないが、これは「進化に目的がある」という典型的な誤解だ。生物の進化は、偶発的に生じた突然変異と、どんな遺伝子がより多く選ばれるか、つまり複製率の差異という二つの要素の結果でしかない。そこに目的や意志は存在せず、その意志なき進化によってこそ強力な繁栄をもたらす。進化生物学者マット・リドレーの言葉を借りれば、まさに「進化は万能」なのである」p120
    「カール・ジンマー、ダグラス・J・エムレン『進化の教科書』」p121
    「ジェフリー・ムーア『キャズム』」p136
    「これまで私は数多くのベンチャービジネスを見てきたが、初期段階でスムーズにユーザーを増やした割に、途中で失速するプロダクトは枚挙にいとまがない。一方、最初はパッとしなくても着実にユーザー数を増やし、いつの間にか市場の中心に躍り出ているプロダクトもある。これらを分けるのは「キャズム」に関する意識の差に他ならない」p136

  • マイクリレーのごとくビジネス書から名著、古典まで独自の観点から選書されていて一気読みしてしまった。またひとつ教養についての気づきがあった。

  • 10冊のビジネス本より、1冊の骨太本!

  • 森田真生さんの本を読了後、もっと読みたくなって探しました。11人の方がお勧めする本を片っ端から読みたくなり、現在探してます!あらゆる分野を網羅するのは大変ですが、全て読んだ後はどんな気持ちになってるんでしょうか…。
    教養が無ければ奴隷になる など、心にグサッとくる言葉が沢山あって、今も私の心を揺さぶります。

  • 本好きな人にとってどんな本を読むのがいいかわからない方には非常に参考になる本である。この本はリーダーシップを養っていくための人間の根幹となる教養を培っていくために必要となる推薦書籍を11名の読書好きの有識者らのお勧めする本の概略を語っているものであり、これからたくさん本を読もうと思っている方にも良いし非常に知的能力を養っていくための参考になる本と言えるでしょう。

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著者プロフィール

出口 治明(でぐち・はるあき):立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。日本生命入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退職。同年、ネットライフ企画(株)を設立し、代表取締役社長に就任。2008年4月、生命保険業免許取得に伴いライフネット生命株式会社に変更。2012年上場。2018年より現職。著書に『全世界史(上・下)』(新潮文庫)、『0から学ぶ「日本史」講義』シリーズ(文春文庫)、『歴史を活かす力』『日本の伸びしろ』(文春新書)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『一気読み世界史』(日経BP)、『ぼくは古典を読み続ける』(光文社)等多数。

「2023年 『人類5000年史Ⅴ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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