たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎
4.08
  • (499)
  • (670)
  • (295)
  • (32)
  • (6)
本棚登録 : 5770
感想 : 628
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やっと読み終わった。
    読んでも読んでも内容もページも進まない感じがした。
    各単元の中で、微妙に日にちと出来事が行きつ戻りつを繰り返しているせいかもしれない。
    実際にはページが少しずつ進んでいくのだが、なんだか本当に読んでも読んでも進まない気がして、結構しんどかった。
    冗長というほどでも中だるみというほどでも退屈というほどでもないのだが、とにかく『楽園のカンヴァス』と『リボルバー』のようには読めなかった。

    『たゆたえども沈まず』という題名そのものが本書で唯一好きな点かもしれない。

  • 原田マハさん、3冊目です。
    楽園のカンヴァスと同じく、美術に関するお話し。しかも、今回は現代の話ではなく、ゴッホが生きていた、その時の話し。

    絵は素人で、ゴッホについてもひまわりの絵と自画像の印象くらいしか無いので、とても新鮮でした。史実とフィクションが混ざっているようですが、史実を知らないので全てが実際に起こったことのようにリアルでゾワゾワした。ゴッホってこんな生涯だったんですね。知らんかった。

    最初の方は、美術っぽい話が多くて、最後まで行くのに時間がかかりそうって印象。ところが、途中からゴッホ兄弟の胸がしめつけられるような展開になって結局、一気に読み終えることとなるのでした。

    とにかく、悲しい。やるせない。生きている間に、絵が評価されなかった事でなく、この2人の関係性がやるせない。お互いにお互いを必要として、ともに愛情深く思いやる2人の最期が哀し過ぎてちょっとグッタリ。

    背景を知ると、絵を見る気持ちが変わりますね。次は、暗幕のゲルニカかな。

  • ゴッホの芸術家としての「産みの苦しみ」を描いていると思いきや、兄弟の物語だった。
    きれいにまとめられている。
    ゴッホは、おそらくここで表されているよりも、凡人の想像の域をはるかに超えた壮絶な人生をおくったのだろうが。魂に合掌。


    読後、表紙にもある「星月夜」が違って見える。
    あの絵の中には、三日月のテオと糸杉のフィンセントがいたんだな。

  • リボルバーを読む前に読んでおけばよかったー( ノД`)…
    ゴッホの弟のテオと、フランスで日本美術を扱う加納重吉。
    その2人の視点で話が進む。

    ヨーロッパで流行した浮世絵。
    そこから刺激を受けた印象派の画家たち。
    その中の一人である、ゴッホ。
    ゴッホの孤独から生まれる作品たちの話だけでなく、
    テオとゴッホのお互いを思いやりつつも、
    それが濃すぎて負のスパイラルになってる感じとか
    ありそうな感じの話だった。

    史実をもとに、原田マハさんらしいフィクションで
    読んでて面白かったし、勉強になったよー。
    ゴッホが亡くなって、テオも若くして亡くなってたんだね。
    異なる2人だとリボルバーを読んでるときには
    思ってたけど、似ているところがあるんだなーって
    感じたよ。
    兄弟だもんね。

    たゆたえども沈まず、とはパリのこと。
    セーヌ川があるパリは氾濫とか疫病とか起こりやすいけど
    それでもパリは華麗なる復活をとげる。
    なんか、響きがステキだなぁー(*´ω`*)

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた―。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

    大胆な人だなと思っていましたが、夢枕獏さんに近い位に大胆です。
    何しろゴッホの人生と、当時現地で日本美術を輸入していた人物とを結び付けて、現実と溶け込んでどこが区分けか分からない小説を書いてしまうんですから。
    そもそも絵画に素養が無い僕のような人間を、毎回楽しめる本を書いてしまう原田さんの筆力は尊敬に値します。都度絵を確認しがら読むのですが、本物を見てみたいと思わせる熱があります。
    暗幕のゲルニカや楽園のカンバスは、現代からの視点と当時の視点の2つが交差して、現代の物語でカタルシスを得ていましたが、今回は兄フィンセント(ゴッホ)と弟テオの死によって終わる事があらかじめ分かっていたのでなんだかとってもメランコリックです。
    ゴッホと日本の関わりをここまで見せられると突然親近感が沸いてきます。これ読んでいると現実と虚構の狭間が分からなくなって脳内で新たな真実が産まれそうで怖いです。この大胆な書きっぷり好きです。

  • 正とその弟子加納広重は日本芸術を世界に広げるために、芸術の都パリへと向かう。
    そこで出会ったのは、画商のテオとその兄で画家のフィンセント・ファン・ゴッホであった。

    今となっては有名なゴッホが日本の浮世絵に影響を受けていたとは知りませんでした!
    試しに「ゴッホ」とインターネットで画像検索すると、日本の掛け軸の模写なのか見返り美人の画像が出てきたので、彼は愛日家だったようです。

    そして、本作の見所は兄フィンセントと弟のテオのたとえ、神であろうとも間を入ることさえできぬ兄弟愛である。

    「なぜ世間がフィンセントの絵をなかなか認めようととしないのか。そしてフィンセントの絵が、ほんとうに『認められる』ものなのか。そもそも、何をもって世間に『認められる』ことになるのか。」

    テオはフィンセントの才能について考えるも、答えが出ない。

    どうにかしてフィンセントをもり立てていこうとするテオの熱意は、新しい芸術を後押ししていこうという、人生を賭けた彼の熱意の表れにほかならなかった。

    しかし、フィンセントときたらテオの稼いだ金は全て酒代に消え、自堕落な生活をするばかり。
    口を開けば口論になり、お互いを傷つけることしかできずにいた。

    絵は一向に売れる気配はなく、のしかかる兄の存在にテオは限界まできていた。
    そんな時、テオはヨーと運命の再会を果たし、結婚を決意するも、自分が幸せになることが、兄から逃れるための裏切り行為なのでは無いかと葛藤するのであった。

    互いに半身の様な存在の2人は、もはや運命共同体などという言葉では表せないほど、遠く深いところで結びついていた。

    テオには聞こえる。
    フィンセントが何かを求めて飢え、自分がここにいるのをみつけてほしくて、声にならない声で叫んでいるのが。

    この兄弟の行く末は本作にて目撃してみては

  • フィンセント・ファン・ゴッホの〈星月夜〉を表紙とする本作は、画家についての物語ではない。フィンセントの心情描写は一度も出てこないのである。むしろ、フィンセントをそばで支えた弟・テオドロス・ファン・ゴッホの物語といってもいい。テオの献身的な支えと苦悩を、日本人画商の視点から描き出すことで、フィンセントがなぜ絵を描き続けられたかを間接的に描き出すからだ。世界に認められるために悩み抜いたゴッホ兄弟に、時代は追いついていなかった。〈夜月夜〉は、セーヌに、パリに、ゴッホが受け入れられた世界を予言する作品だったのだ。

    もともとゴッホが好きで、映画鑑賞や美術館の特別展を鑑賞済みだからか、少し物足りない。ゴッホの死因も、マハさんは自殺と解釈しているが、少年たちによる他殺をゴッホが自殺に見せかけた、とする説もある。また、ゴッホが犯罪を実際に犯してしまうシーンなどは排除され、ゴッホの精神疾患もオブラートに包まれており、ゴッホの実物からかけ離れた〈いい物語〉になっているからかもしれない。ゴッホの苦悩や暗黒を私はもっと感じたかった。時代に受け入れられない天才の苦悩はこんなに生易しいものじゃないだろうから。

  • ジャポニスムの流行と、影響。
    新しい印象派の衝撃。
    時代の変化をリアルに感じられる美術小説。
    当時のパリにいるかのよう。
    売れない画家のフィンセントと、献身的に支えるテオ。
    兄弟の絆がありながら、時にすれ違い、傷つけあう。
    ゴッホ兄弟と、主人公たち日本人の、誠実な交流もよかった。

  • 並行読み、のバターが強烈だったので少しホッとしながら読了。
    週末の一気読み。美術のことにはまったく疎いが、ゴッホの名前くらいは知っていた。風神雷神以来、ほんと、これが史実??と思わせるようなストーリー展開は好き。
    もう少しゴッホが知りたくなって、カラーで絵が解説されている本を借りてきた。
    冒頭に出てくるフィンセントが、ストーリーラストにも居る赤ちゃんですよね?

  • 前に同じく原田マハさんの「リボルバー」を読んだんですが、
    同じフィンセント・ファン・ゴッホを題材にしているけど、こちらは弟のテオドスの目線なのが面白い。
    そして、結末(?)も少し違うのが面白い。
    同じ作者なのに。

    史実をよくわかってないのですが、
    原田マハさんの発想で補填されているであろう大体の部分がすごくいいですね。

    この言葉が合ってるのかどうかわからないけど、
    フィンセントとテオは共依存しているし、
    離れていても、それは同じく。


    フィンセントが亡くなる時、
    「僕たちはいつまでも、どこまでも一緒だ」
    「約束だよ」
    の言葉通り、半年後にテオもなくなってしまう。
    それも2人には幸せな事だったんだろうか?

    家族愛と一言では言えない。
    でも、友情とも言えない、この2人が天国で、
    今、この状況(のぞみ通り,日本でフィンセントの作品が評価されている事)をみて、
    幸せな気持ちになれているんだろうか?

  • パリの風景が懐かしい。字が大きく行間もたっぷりで、400ページを超える量だがすぐ読み終えられる。この人の作品を何点か読んできたが決まったパターンのものが多い印象。ルソーとゲルニカを読めば十分かも。今回はゴッホだが、浮世絵の影響はあるにしても日本、日本と何度も出てきて鼻白んだ。残念ながらこの著者もしばらく読まなくて良いかも。

  • アートを題材にした小説としては面白い。その前提であえて厳しめに批評。

    史実を基にした創作ということは理解しつつも、林忠正がフィンセント(・ファン・ゴッホ)のメンターでありフィクサーのように描かれる点に違和感を感じたり、テオとフィンセントの兄弟愛も表層的な印象を受ける。ほかゴーギャンとの関係、フィンセントの日本観など、もうひと掘りふた掘り踏み込んで欲しかった。やや辛辣だが物語が直線的で史実をご都合主義で継ぎ接ぎした感が否めない。司馬遼太郎のように創作を逆手にとって従前の人物評を一変させるような大胆な仮説を試みてもよかったかもしれない。

    ゴッホの絵は生前数枚しか売れなかったと言われている。ある種の独占販売契約を結んだ敏腕画商のテオの手を持ってしても何故そうであったのか。浮世絵や印象派を売りまくった林忠正ならぱ才能開花を待つパトロネージュではなく画商としてゴッホの絵を取り扱いたかったのではないか。ひょっとするとテオは意図的に売らなかったのではないか。兄弟愛の裏に、もっと入り組んだ嫉妬や憎悪、そしてそれらを超越した血脈が通ずる者ゆえの深淵なる想いがあったのではないか。ゴッホ展に展示される数々の手紙と作品からテオとフィンセントの関係にはそんなものを感じる。

  • 人間は繊細な生き物だと考えさせられる作品だった。繊細が故に彼らが描く芸術は評価され、人々の心を揺さぶるものになるのだということも再確認した。

  • ゴッホのことを知ってると面白いって思うかもしれません。
    私はそこまで詳しくなかったからそんなに刺さらなかったなぁ。
    ただ、日本人の奮闘を感じて面白いって思いました。

  • 浮世絵販売にパリに来た日本人とフィンセントとテオのファン・ゴッホ兄弟の物語。こんなこともあったかも、と伝記を読んでいるように思えた。決して明るい話ではないのに勢いが感じられました。表紙が星月夜なのもインパクトあります。

  • ゴッホ。読むと絵が見たくなる。
    そして良いタイトルだなぁと。

  • どこまで事実でどこまでが創作なのかわからないが、少なくとも多くの史実をもとに書かれたと思う
    あらためて、作品を見て見たいと思った

  • 星月夜をmomaで見て惹かれて読んだ本。
    伝記とまではいかないだろうけど、昔の話はやっぱりあまり得意じゃないから読み返しはしないかな。
    これを書く知識量はすごい。本を書くってあまりにも力がいるなあ。

  • 史実に基づいたフィクションとの事ですが、ノンフィクションの様に思えます。ゴッホ兄弟の悲しい人生とゴッホの絵への情熱が凄く伝わりました。ゴッホと言う孤高の画家の誕生に弟のテオや日本人画商そして浮世絵が多いに関わっている事を知る事が出来ました。凄く楽しい美術の教科書を読んでいる様で、ゴッホについて勉強出来ました。悲しいけど良い作品です。

  • どのキャラクターの考え方に共感するか、という視点でこの物語を読み進めていった。
    基本的に皆好き。
    計算高く熱い林忠正も惹かれるし、素直な重吉も毒気がなくて癒される。
    特に、献身的に兄ゴッホの世話をするテオが最高にいい奴。ただひたすらに推せる。幸せになってほしい。

    タンギー親父もお人好しで、こういう人が経営しているお店の常連になりたい。


    この物語から、兄のゴッホの葛藤や孤独という感情や苦悩が良く理解できた。
    自分の思いを前面に表現するんだ!ってゴッホが頑張って描いたと解釈したので、これからゴッホの絵の見方変わるなと思った。


    美術に興味あるけど、美術の歴史から覚えてく!的なノリじゃないので、多くの人に開かれている絵画に関する物語を書いてくださった作者(浜田マハ)さんに感謝です。

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×