- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344031951
作品紹介・あらすじ
料理の異種格闘技番組「竃の鉄人」は異例の高視聴率を叩き出す富士テレビきっての人気バラエティである。鉄人・道場六三朗にテーマ食材のオマール海老で闘いを挑むのは、フランスの名門レストランで腕を磨いた注目の若き女性シェフ、河田千春。が、彼女の出自にはある秘密が隠されていた…。番組作りに魅せられ人生最高の味と数字(視聴率)を求めるTV屋と、すさまじき情念を一皿に捧げる料理人らがキッチンコロシアムを舞台に繰り広げる駆け引き、裏切り、陰謀の数々。やがて浮かび上がる家族の物語とは。濃厚な人間ドラマのエキスが凝縮した一冊。
感想・レビュー・書評
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ラストレシピもスゴイ本だったけど、この作品も最高だった。
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家で料理を作るくらいなら、コンビニでさっさと弁当を買って、食事にはなるべく時間をかけない生活をずっと続けていた自分が、なぜか毎週欠かさず見ていた料理番組が「料理の鉄人」だった。
料理番組を見ているというより、どちらかというと60分一本勝負の格闘技を見ているような気分だった。
フォアグラとかキャビアとか食べたことなかったし、見たこともない食材も多かったし、味の想像なんてついていたのかどうかも疑わしいが、画面に映る独創的な料理の数々を、ああいつか食ってみてえと生唾飲んで眺めていた。
和・中華・フレンチの達人がいたが、最強だったのは和の鉄人・道場六三郎。
この本は鉄人の中の鉄人・道場を中心に据えて様々な過去と因縁を暴いていくミステリー。
登場する鉄人や審査員もほぼ本名で登場してくるので、頭のなかでは「料理の鉄人」のイメージのまま読めて楽しかった。
料理の鉄人が始まった経緯や、料理人の出演交渉の裏側などとても興味深い。元プロデューサーの著者しか知らないことが多くあって、一応フィクションという形をとっているが、実際に起こった事件とかも多くあるのだろう。挑戦者も店の看板を背負って出てくるわけだから、そりゃ負けないようにああだこうだ条件はつけるよなぁ。
ちょっと難点をあげると、登場人物の心理面描写が単調に感じられた。小説のスジは面白いのにもったいない。思うに、このストーリーとテーマの重さを表現するには、もっと登場人物たちが葛藤する描写を入れて分量を増やさないと読者には伝わらないと思う。そんなに結論を急がなくてもいいのに。倍くらいにしてもいいと思う。急いだばっかりに「火サス」みたいな展開になっちゃったぞ。その辺がテレビ出身の方が書いた本だなあと思う。
でもね、面白い。料理の鉄人が好きだった人は絶対おもしろいと思うはず。
最近映画化された『ラストレシピ』の原作本も気になるので読んでみようと思う。 -
料理の鉄人!
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最後の食材を無駄無く使う部分の描写がイマイチでした
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ほぼ実名なのにフィクションとは。
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料理の鉄人と登場人物がかぶって読みやすかった。物語としては物足りないけど、あっという間に読み進めたし、読後感もいい。
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かつてのTV番組『料理の鉄人』を下敷きにしたお話。
実際と非常に似通った名前の登場人物が登場し、一瞬フィクションなのかノンフィクションなのかわからなくなる(いい意味で)。
TV放映当時は小学生で、番組も好きで見ていたので、登場人物が語るセリフや描写などに郷愁みたいなものを感じてしまう。
『あれは旨すぎるな』(P30)なんてもう……。
内容自体は精緻な小説というよりTVドラマ的な印象。正直前作の『ラストレシピ』はテンプレ的な要素が鼻についたけど、今回はその予定調和的展開が逆に熱かったです。結末は賛否ある気がしましたが、楽しい小説でした。 -
料理の鉄人見たことないからあんまり
思い入れはないが、
鉄人たちくらいはわかった。
作者と同じ名前の主人公が
なぜ途中から急に若い奴の心をつかむのかとか、
ご都合主義満載展開とか、
日本語が酷いとか、
頭の暴力描写無くて全然よくない⁇とか、
いろいろアレだけど
割り切って楽しめば良い暇つぶし。 -
2018/01/03 001
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本書『キッチンコロシアム』は、1993年から1999年までフジテレビで放送されていたバラエティ番組「料理の鉄人」をモチーフにした小説です。
(本文中に出てくる和・洋・中の鉄人たちの名前も番組の名前をそのまま使っている)
ストーリーに淀みがなく、初め、すべてが分からないところから徐々に全体像が見えてくる感じのストーリー展開が読みやすいし、引き込まれました。
本書では、鉄人と挑戦者の料理バトルの場面を中心に物語は展開しますが、
料理という題材をここまで熱く書いた作品を自分は知りません!
本文中で、和の鉄人道場六三郎の言葉として対戦対手に対し、
手を加えすぎて、本来の味を損なわせているという意味を
「しゃぶしゃぶはよかったがサラダはいただけない。
あれは旨すぎるな」
と表現するのはうならされました。
「ただの使用人に過ぎなかった。12年もの時間を使い料理を学んできたつもりだったが、それはあの店の料理を完全にコピーできる技術を習得するための月日だった。そこには自分自身の料理など一つも存在していない。」
と、負けた料理人たちの葛藤の様子もリアリティがある。
試合に負けた日の苦悩というのは鉄人たちも同様で、
「助手の子が鶏に油掛けをしていた時にちょっと雑だなと感じてはいたんだが、それを注意しそこなった。カレームのような挑戦者が相手の場合、どっちがおいしく作れたかという戦いにはならない。どっちが失点を多く積み上げてしまったか、それが勝敗をわける。それがわかっていながらおれはその注意を怠ったわけだ。」
と自らの料理を猛省する。
料理バトルは悔しいだけでなく、バトルを通して成長できるというのが本書の面白いところだと感じました。
「五十を過ぎている僕が、いまじゃ持売れるに勉強をし始めているんだ。鉄人をやるまではなじみの客相手の料理でよかったけど、いまは日本中の人が僕の料理をみている。挑戦者に勝つ以上にその人たちをがっかりさせたくない。」
この意気込みで料理をしているシェフは日本中にもあまりいないだろうと思う。
この料理バトルの裏側で繰り広げられる駆け引きや因縁、浮かび上がる家族の物語とは?
本書は、バトルの熱さ、人間ドラマ、ミステリー、料理、陶芸など様々なテーマが入り乱れているものの、そのすべてがそっくり料理されていて、様々な味が楽しめる絶品です。