草原の椅子(下) (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.80
  • (54)
  • (73)
  • (84)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 602
感想 : 47
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344401013

作品紹介・あらすじ

五十歳になり、さらに満たされぬ人生への思いを募らせる憲太郎と、大不況に悪戦苦闘する経営者・富樫。人の使命とは? 答えを求めるふたりが始めた人生という鮮やかな大冒険。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • -安心しているということは、能天気に油断しているのとは全く違う。物事にかしこく対処し、注意をはらい、生きることに努力しながら、しかも根底では安心している。そういう人間であろうと絶えず己に言い聞かせることだ。
    -人情のかけらもないものは、どんなに理屈が通っていても正義ではない  (孔子)

    これから50歳まで、どう生きるか、考えさせられた1冊。

  • 宮本輝さん、「錦繍」を数十年前に読んだのみ。
    よしもとばななさんのWEB上の日記に宮本氏の人格の高潔さを感じさせる文章を読んだ日に書店にて文庫本上下を発見し即購入しすぐに読み終えた。

    50才という同じ年令の、しかし私などとは違い社会経験も人生経験も豊かである二人の男性の友情を軸に、恋愛、親子愛、子供を育てるということ、生きていくということ、日本人であるということ、様々なテーマを、優しい箴言を登場人物の思いとして語らせている。
    自分はどう思うか?どうであるか?という問いかけを始終しながら読み進めた。

    非情に良い読後感。品性いやしくない人間らしい登場人物たちが秀逸。
    50年生きてきた自分を振り返り少々の落胆を禁じ得ないが、この本に出会ったことに感謝。

    フンザは無理でも、土を踏みしめ歩き、星をいつまでも眺めていたいと思った。近いうちに絶対に行ってこよう。

  • 憲太郎が恋心を寄せる篠原貴志子。両親に捨てられた五歳の圭輔。行き場のない思いを抱えた人間たちが、不思議な縁で憲太郎と結ばれてゆく。しだいにこの国への怒りと絶望を深める憲太郎は、富樫と壮大な人生再生への旅を企てる。すべてを捨て、やり直すに価する新たな人生はみつかるのか?ひとりひとりの人生に熱く応える感動の大長篇。

  • 再読、何年ぶり?

    確か 素敵なフレーズがあったはず。

  • わたしのなかのレジスタンスが「けっ、説教くさいぜ」と言うが、わたしのなかの仙人が「真摯に生きるとはこういうことじゃ」と言っている。
    お互いに深くリスペクトしあっている、遠間と富樫がいい。のだが、女で遊ぶ描写に、いつの時代も女は男っぷりを上げる道具として使われるのだなと遠い目になる。
    そして子どもに弱いので、圭ちゃん……!!と涙ぐむこと数多。子どもは幸せでなければならないし、そういう世の中でなければならないよ。

  • 「安心しているということは、能天気に油断しているというのとはまったく違う。物事にかしこく対処し、注意をはらい、生きることに努力しながら、しかも根底では安心している。そういう人間になろうと絶えず己に言い聞かせることだ。」
    「子供は、可愛がられて育たなければならない。それは、野放しに好き勝手に振る舞わせることではない。何が悪で、何が正義かは、厳然と教えなければならない。何が下品で、何が品位のあることなのか。それをも教えなくてはならない。そのためには、親代わりの俺こそが、あらためて人間の正しい振る舞いについて学び、そして実践しなければならないのだ。」
    「人生の大事に対して、結局は感情で対処した人間は、所詮、それだけの人間でしかないんや。」
    「正しいやり方を繰り返しなさい。」
    「大人とは何か。幾多の経験を積み、人を許すことができ、言ってはならないことを決して口にせず、人間の振る舞いを知悉していて、品性とユーモアと忍耐力を持つ偉大な楽天家。」

  • ちょっと説教くさい箇所が多くて気になる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    憲太郎が恋心を寄せる篠原貴志子。両親に捨てられた五歳の圭輔。行き場のない思いを抱えた人間たちが、不思議な縁で憲太郎と結ばれてゆく。しだいにこの国への怒りと絶望を深める憲太郎は、富樫と壮大な人生再生への旅を企てる。すべてを捨て、やり直すに価する新たな人生はみつかるのか?ひとりひとりの人生に熱く応える感動の大長篇。

  • 下巻は一気に読み上げた。
    私利私欲にまみれ、志しをなくした政治家や官僚に怒り、それを変えることができない日本の社会に絶望していた主人公たち。
    しかし、次第に心根の綺麗な人たちがいる限り、世の中の歪みは正され、絶望は希望に変わっていくと考えを変えていく。
    そして最期のフンザへの旅で、「正しいやり方を繰り返しなさい」と教えられる。
    親から虐待を受け捨てられた圭輔を引き受け育てることで、主人公たちも昇華していったのではないか。
    心根を綺麗に、正しいやり方を繰り返していく生き方を貫きたいと思った。

  • 涙が出たどころじゃない。嗚咽。電車とかで読むの要注意。通学電車で読んで恥ずかしい思いをしたが、涙が止められなかった。
    圭輔が愛おしくて仕方ない。ただそれだけでこの作品の価値あり。是非是非多くの人に読んでもらいたい。

全47件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮本輝の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×