- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344401068
作品紹介・あらすじ
敗戦後の混乱の中、食俊平は自らの蒲鉾工場を立ち上げ、大成功した。妾も作るが、半年間の闘病生活を強いられ、工場を閉鎖し、高利貸しに転身する。金俊平は容赦ない取り立てでさらに大金を得るが、それは絶頂にして、奈落への疾走の始まりだった…。身体性と神話性の復活を告げ、全選考委員の圧倒的な支持を得た山本周五郎賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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f.2023/8/14
p.2023/5/10 -
昔読んだ本
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下巻も上巻と同じように、嫌な気分になる小説だった。エンタメ的な快適さはなくて、もしかしたらこれは純文学なのではないかと思った。金俊平のモデルは著者のようだし、息子の成漢がのちにタクシー運転手になるところも著者と同じだ。
血と骨は両親から受け継ぐもので、息子の話が強く出てくるのかとも思ったが、そういうわけではない。タクシー運転手として東京で暮らしている成漢は、肉親の関係はずっとついてくるのだと思った。それで、著者が何を言いたいのかが分からない。親からの宿命や業が、子にはまとわりつくということなのか。何か見つけられるメッセージがあるのだろうが、描写が凄まじくてそれを探すには精神力が必要な作品だ。
文章はすごくまとまっているわけではないが力は強いと感じる。視点などは、あまり統一されておらず、わざとかは分からないが、それが煩雑さを助長させる。
金俊平の30代から死ぬまでを書いた小説になるのだが、やはり金俊平の怪異ぶりは凄まじい。そういう悍ましいシーンで薄れてしまいそうだが、意外と権力者には弱いようで、警察や日本人には暴力を振るわないし、息子の学校の先生が訪ねて来たときなどは平身低頭していた。金俊平の暴力は自分より弱いものだけにしか向かわないのだ。自分のことは棚にあげて人を責める。これは在日朝鮮人である著者のメッセージか。日本という国は、金俊平という人物で表しているのかな。
著者の他の作品や、どういう政治思考を持つ人物かを知ると、本書の見方も変わってくるかもしれない。 -
山本周五郎賞
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うろおぼえなんですが、この野獣みたいな金というおっさんが本当に嫌で、なんでこんな本読まなきゃいけないんだろうと心にダメージを受けながら読みました。押しが強いとかそういうレベルではなく生理的に受け付けなかったなあ。。。
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実話なら凄まじい。
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結局これは俊平の物語のようでこの大きな台風の影響を受ける周りの人々の物語なのだ
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P462
第11回 山本周五郎賞 受賞作品 -
下巻になると親子の確執が明確になってくるのだが、その描写が凄まじい。
金俊平は本当にひどい男だが、実際にこんな人はいたのかもしれないと思わせる。暴力に怯え、儒教による親子観に縛られ、父親に屈する子どもたちは、濃い「血縁」から逃れられない。
親子の確執が描かれるだけでなく、戦前から戦後の日本と在日朝鮮人のリアルな姿が描かれている気がした。