凍りついた香り (幻冬舎文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 幻冬舎 (2001年8月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344401365

凍りついた香り (幻冬舎文庫)の感想・レビュー・書評

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  • やはり、小川洋子さんの小説は、独特な世界観だ。
    現実を生きる人たちの物語なのに、どこか現実感が欠けているというか、童話めいているというか。

    職場で突然自殺をしてしまった調香師の弘之。“ルーキー”と呼ばれ皆から親しまれていた彼の恋人・涼子は、弘之がなぜ死んでしまったのか、過去を辿りながら理由を探し始める。
    弘之の弟・彰と風変わりな母親との短期間の共同生活、そしてプラハでの出来事。
    孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題…いくつかのキーワードから死者をたずねる謎解きが始まる。

    大筋はミステリ風だけど、結果的にはっきりと謎が解けるわけではなくて、終始ふわふわとした雰囲気。
    そして静けさ。小川洋子さんの小説は、どれを読んでも静けさがある。
    主人公が感情を荒立てることがなくて、どこか客観的だからだろうか。
    読んでいて言い知れぬ悲しさを感じるのだけど、その静けさがとても心地好い。

    エンタメ小説ではないし、ここが面白い!とも言えない種類の小説だけれども、この雰囲気にはまる人は小川洋子さんの小説を全部読んでみたいと思うはず。
    私もその一人で、徐々に読んでいってる最中。

    物語の中心はルーキー(弘之)なのに、彼はもう死んでいて、回想や過去の中にしか生きていない。
    それなのに周りの人間たちは皆ルーキーに囚われたままで、彼の突拍子のなさや天才的なところに、いつまで経っても振り回され続けている。
    人間は多面的で、“私の知らないあなた”や“あなたの知らない私”が絶対にある。どの部分が表でどの部分が裏とかではない。全部本物のその人だけど、相手によって見せる面が違うのは自然なことだ。
    どれだけ親しく、近しくなっても、きっとそれは変わらない。未知な部分があるからこそ、人は人に惹かれる。

    そんなことを思いながら、静かに読み終え、本を閉じた。
    最後まで、静けさに満ちた小説でした。

  • 美しい。綺麗で匂いたつような文章。

    2011・12・18

  • ある日突然自殺してしまった恋人の過去をめぐるお話。

    恋人の「ルーキー」に関しては、とても美しく描かれていて魅力的な小説ではあるんだけど、
    主人公の悲しみが癒されるわけでもなく、
    自殺した理由を納得できるわけでもなく、
    状況としては何も進んでいかない。
    ただ、「ルーキー」の過去が美しくたどられていくだけ。

    ほんとにただそれだけなのに、小説としてきちんとしてるのがすごい。
    ふつう、何らかの理由を発見して、なんとなく納得して、なんとなく物語になっていくものなんだろうけど。
    ストーリーじゃなくて、細部の魅力で惹きつける、そんな小説でした。
    面白かった。

  • 亡き調香師だった彼が残した香りのイメージを辿っていく物語。香りを文学で表現するのってとっても冒険だったでしょうに、ちゃんとイメージさせてもらえます。素晴らしい。いくつか読んだ小川さんの作品は、どれも予定調和をよしとしない、”たゆたう”感が独特です。

  • 恋人の自殺から、主人公の知らなかった顔が次々と現れて、彼の実家や過去の転機となったであろうプラハへ訪れてからの出来事が交互に織り交ぜられながら少しずつ"彼"の過去を知っていく話。
    どうして死んでしまったんだろう? そう思いながら一気に読了。

  • 小川洋子の静かで美しい語調の際立つ長編作品。亡くなった恋人がどのような人だったのか、人に会い、旅に出て、不思議な幻想世界に迷い込みながらも見つけていく。
    恋人の影を探し求める1人の女性の悲しみや戸惑いと、鮮やかな才能を持ちながら自分の才能とうまく生きていくことができなかつた恋人、そして、その姿を見ながら自分や周りと折り合いをつけて生きていく恋人の弟。
    全ての登場人物の恋人の才能への眼差し、彼を救えなかった、それどころか、彼自身を見つけてあげることさえできなかった悲しみを背負う姿は、どうしてここまで細やかに心情の機微を文字に起こせるのかと、こちらが苦しくなるほどである。

  • 今でも彼の指先が、耳の後ろの小さな窪みに触れた瞬間を覚えている。まずいつもの手つきでびんの蓋を開けた。それから一滴の香水で人差し指を濡らし、もう片方の手で髪をかきあげ、私の身体で一番温かい場所に触れた
    孔雀の羽根、記憶の泉、調香師、数学の問題
    いくつかのキーワード身体死者をたずねる謎解きが始まる。

  • なんと魅力的な主人公だろうか。視覚を塞ぎ、嗅覚、聴覚、触覚に生きた。
    誰かが損なわれることに我慢がならず、自分を失った弘之。ルーキー。
    プラハのジェニャックも魅力的。言葉を超えた世界。
    最後の算数を教える場面の描写で泣いた。
    自殺の理由なんて外からは分からない。それがメッセージ。
    ただ彼は受け入れたんだな、死を。

  • 小川洋子の小説は,常に,「死」が寄り添っている感じがする。
    そもそも,主人公の存在が希薄
    主人公は確かに存在するが,「死」にまつわる部分(死者に関する部分)以外はぼんやりとしていて,情景が浮かばない
    何とも,不思議な感覚を与えてくれる

  • ずーっときれいな景色を眺めているような話だった。
    しんとした静かなきれいな風景が香りと共に閉じ込められているような話だった。

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