生を踏んで恐れず―高橋是清の生涯 (幻冬舎文庫) (幻冬舎文庫 つ 2-6)
- 幻冬舎 (2002年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344402249
感想・レビュー・書評
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高橋是清の伝記小説。
高橋がどんなにか波乱万丈な一生を送ったか、はっきり言ってこれ程までに内容の濃い人生を送ったとは正直驚いてしまった。
幕末絵師と女中の間に生まれた私生児で、仙台藩足軽に養子に出され、14歳で騙されてアメリカに奴隷で売られる。自由の身になってのち、芸者遊びにうつつを抜かし、芸者に養われる。株屋、牧場経営、翻訳家、ペルーの銀山経営と職を転々とし、やがて日銀総裁の地位に達する。
日露戦争の戦費調達を一手に引き受け、英米独仏の要人とコネクションを持ち、欧米を駆け回って海外金融市場での日本の信用確立、起債を成功させる場面は圧巻。金融危機ではモラトリアムを実施。軍部の暴走に敢然と立ち向かい軍事費の抑制に努力した結果、最後には二・二六事件の凶弾に倒れた。
勿論彼の持つ幸運もあったろうが、抜群の英語力と一心に努力を続けること、そしてその人柄から出会った多くの人々から愛された人たらしの面が彼をしてこの波乱万丈な一生を走りきったのであろう。
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14歳で留学したアメリカで奴隷に売られ、帰国後の日本では相場師から首相までを経験した高橋是清。昭和初期の金融恐慌を鎮めるなど蔵相を7回務めた不世出の政治家は後に、2.26事件に斃れる。この国の危機を何度も乗り切った男は何を優先し、どんな決断をしたのか?
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ホリエモンの帯にひかれて購入。
歴史の授業で出てくる名前の一人で せいぜい名前と、ダルマ宰相のあだ名ぐらいが 有名な感じではあるけれど、 印象が全く変わってしまうくらい 八面六臂の活躍する是清の生涯が面白い。 日本の金融の危機を救い 何度不幸や失敗に巻き込まれても 持ち前のバイタリティーと明るさで乗り越えていく姿は 豊臣秀吉のような出世物語の趣である。
「力によって立つものは滅び、徳を持って立つものは栄える」と是清は言う。同時に、自国を自分で守る力も「徳」であると考えている。日露戦争当時、英米が日本に金を貸したのは、その「徳」を日本にというより是清に見たからであった。その国に卓越したスピリットがあるとすれば、それは個人によって体現されているはずであると、英米は信じたからだ。世界の分断と対立構造に対し、何らアイデアを世界に提示できない日本、中国・韓国との対応でバタバタする日本を見て、是清はあの世でなんと言うのだろうか。 -
高橋是清の業績として代表的なものはやはり日露戦争時の外債募集成功であるが、それまでのあまりに修羅場な数々の経験が、自己の保身ではなく国家へ尽くす覚悟とそれに伴う楽天的な姿勢を培い、海外の様々な立場のひとから信頼される人物となったんだ、というのがとてもよくわかった。器の広さ、というものだろうか。
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こういう人が時代を引っ張っていくんだなと思います。
とにかくパワフルな人生に圧倒されました。 -
高橋是清の波瀾万丈の生涯。本人は幼児の頃の体験から幸運に恵まれていると信じ、終始楽観主義を貫いたとのことだが、彼の人間の大きさ、無私の心、魅力が周囲をして彼を助けずにはいられない気持ちにさせたのだろう。その意味で、幸運は彼自身が呼び込んだものに違いない。
外債発行や金融政策のくだり、良く分からない点も多かったが、彼の手腕は現代でも十分通用するのではないだろうか。そういえば少し前に、平成の高橋是清と呼ばれた政治家がいたっけ。