睡魔 (幻冬舎文庫 や 3-8)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (566ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344403079

感想・レビュー・書評

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  • 男は止まる事ができない。
    熱に浮かされてわざと這いずる。
    堕ちても這いずる。
    女はもたげる事ができない。
    無駄に骨の髄まで削られる。
    悪夢に縋る。

  • 何をやっても続かず借金ばかり。
    それなのに毎晩のように飲み歩く趙奉三と悪友の李南玉。
    タクシー運転手だった趙奉三は事故に遭ったことから、そのことを小説に書いたりしていたが、失業中だった。
    南玉に誘われ、色々と仕事をしてみるが2人ともいい加減な性格だから、続かない。
    南玉から健康マットを売る仕事に誘われた時、趙奉三はねずみ講ではないかと警戒し、なかなかやるとは言わなかった。
    それなのに、ズルズルと引きずり込まれ、こんなことをやっていてもいつかまたダメになると思いながらものめり込んでいく。
    たまに自己啓発の講習会でもあるけど、その場の雰囲気というか、そんなものに流されてしまうんだろうなぁ。
    これがまた、梁石日の体験に基づいて書かれているというのだから驚き。
    面白くないはずがない。

    2020.2.27

  • 2008年09月03日 07:46


    「血と骨」で知って、「闇の子供たち」で激しく衝撃を受けて、梁石日が気になる。


    社会の底辺を生きる趙は昔からの悪友の誘いに乗ってネズミ講にはまる。
    金を儲けて女に溺れて、結果最後に残ったのは莫大な借金。


    当たり前やろ、たいした知識も持たずにマルチに手出して成功するわけないやん。自分なら絶対ありえへんし。
    っていう自信をおもいっきり崩してくれる本です。

    騙されてるとかそうじゃないとか、人が「受け入れる」態勢に入ったらもう関係ないんだな。


    人の芯の部分を、耐え切れない恐怖や悪意が触ることで、その人がそっち方面に壊れてしまうっていうのは貴志祐介とかで結構お目にかかる。そしてその「狂い」は伝染するのもわかる。


    今回は真逆の現象、でも結果は同じ。

    マルチ商法の研修会で、店子を増やすために会社側は様々な趣向をこらして取り込もうとするんだけど、その方法には人の善意や信じる力、みたいなのを全面に打ち出したものが多い。

    主人公はこれがネズミ講ってわかってる。でもぎりぎりの状態で、人の優しさに触れて、愛情を感じたとき、ある意味壊れてしまう。そしてやっぱり、この「狂い」も伝染する。

    これは怖い。

    元手なしのサービス業は究極の商売と呼ばれ、近年異常な発達を見せている。
    ならば、この暴力も恫喝すらも必要としない、つまり金銭も労力すらもいらない誘惑法は、これから先どう使われるのだろうか。

    いや、もしかしたら普段から、無自覚なだけで、すでに操られているのかもしれない。

    善意や信頼、その類を含めても、人間に造れないものはもうないような気がする。そういう本でした。

  •  わたしは過去に著者の『血と骨』で、下巻を読む気力がわかずに断念した経緯がある。読みすすめることに嫌気が差す気分を味わいたい人にはおすすめな一冊である。『睡魔』も小粒ではあるが完読後の喪失感は十分に味わえる。変態趣味な方に、梁 石日はおすすめな作家だ。

  • 梁石日さんの著書は初めてです。
    この本も随分昔に買って、、、、なが~~~~い間、本棚で眠ってました。なんで買ったのかなぁ?

    著者、、並びに主人公が在日朝鮮人。
    ご自身がモデルと言われてます。
    はじめはダラダラと物語が進行してたんだけど途中からのめりこんで読みました。

    最初、マルチ商法を覚めた目で見ていた主人公がどんどんとぬかるみに陥るようにマルチ商法にのめりこんでいく様がうまく描けてます。

    この主人公の周りの世界、そしてマルチ商法の世界、今の時代にもきっとあるんだろうなぁと思わせますね。
    そしてそこには色恋沙汰と暴力がお金と複雑に絡み合い、糸を紡ぐように存在してるんでしょうね。
    なので読み進むにつれて引きずり込まれていくんだろうな。

  • 闇の子供達を読んだ時は自分の想像も出来ない世界に衝撃を受け、今回も世の中であらゆビジネスがある中で何が真実かわからなくなった。商売は堅実であれば儲かるもんでもないし、売ったもん勝ちなのか。
    なんにせよ入ってきたお金を後先考えず使いまくれば結局、あぶく銭で終わるって事だな〜って思った。

  • 図書館にて借りました。

    ネズミ講じゃない!!と力説されつつ、どこがやねん!!と突っ込みながら読んだ作品(笑)

    潰してもなんでも「会社」を作る、と云う心意気は凄いと思うが普通に会社が出来上がる世の中も凄いと思う。

    しかしこういった売り方って、結果的に宗教に結びついちゃう気がする。

    あと、登場人物の名前がいつも読めません(泣)
    ふり仮名ふって下さい!!(切実)
    いつも、勝手にあだ名つけて読んでます(笑)

  • 自分では絶対に選ばないジャンルの本。

    義父の本棚から借りて読みました。

  • 普通の人が、いつの間にやらネズミ講にはまってしまう話。
    ……というよりはむしろ、そこそこだめ人間がさらなるだめ人間になっていく話。

    金、女、プライド。
    そんなものに目がくらんで、宗教じみた講習会に感動して、気がつけば健康マットを売り歩く。
    10年も前の話ではないのになんか古臭い気がする。

    主人公とその周りがためすぎて、「私もハマってしまうのでは」という恐怖がわかない。
    要は「売れ」という話が、人生訓だの宗教っぽいものに融合していくのはよくある話だと思ったけど。

    時代が変われば、こういう犯罪の手口も変わっていくけど本質は変わらないだろうなあ。

    あとこの話のタイトルはなんで「睡魔」なんだっけ。
    登場人物がみんな日本人名じゃないんで、読み仮名付けてくれると読みやすいんだけどな。

  • すごい疾走感。なぜか狂い咲きサンダーロードを思い出した。

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著者プロフィール

1936年生まれ。『血と骨』『夜を賭けて』など作品多数。

「2020年 『魂の痕(きずあと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梁石日の作品

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