虚貌 下 (幻冬舎文庫 し 11-3)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344403468

作品紹介・あらすじ

嵌められた男の出所から、新たなる惨劇が幕を開ける-。二十一年前の事件の加害者たちが、何者かによって次々と惨殺された。癌に侵されてゆく老刑事は、この事件を最後と決意して命懸けの捜査に乗り出した…。それぞれの人生が交錯するクライマックスまで、一瞬たりとも目が離せない!これがエンターテインメント小説の最前線だ。

感想・レビュー・書評

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  • それは惨たらしい放火殺人事件から始まった。
    両親は殺害され、姉は下半身付随、風呂場に逃げ込んだ弟はガソリンをかけられて顔を失った。
    21年の時を経てあきらかになっていく事実。

    冒頭の放火のシーン、特にまだ幼かった弟への容赦ない暴力。
    私はこの子と同じ頃、自宅の風呂で大火傷を負いしばらく入院していた時期がある。
    小学生ながら瞬時に顔だけは庇い無事だった。
    自分の不注意を責め泣いていた母の顔も、皮膚の溶ける痛みもはっきりと記憶している程で、読んでいても身体が痛くなるようで、辛かった。
    顔を失った弟が大人になるまでの長い年月を思うとラストは切なすぎた。

  • 面白かった!

    やっぱり単独犯ではないのだろうけど、どんな風に共謀していったか…とか諸々??はあるのだけど。
    守年の目線から事件を見たら、十分納得。

    久しぶりに夢中になって読んだ。

    雫井脩介さんは、これで2つめ。これから色々読んでみたいと思う。

  • 途中で犯人とそのトリックが予測できたけれど、それを踏まえても読み応えがあり満足。

    殺人の手段はかなり惨く、想像しただけでも吐き気を覚えるようなものですが、犯人が心の底まで鬼と化していないことが唯一の救いでしょうか。

    怖いけれど、温もりを感じることもできました。

  • 評価は5.

    内容(BOOKデーターベース)
    嵌められた男の出所から、新たなる惨劇が幕を開ける―。二十一年前の事件の加害者たちが、何者かによって次々と惨殺された。癌に侵されてゆく老刑事は、この事件を最後と決意して命懸けの捜査に乗り出した…。それぞれの人生が交錯するクライマックスまで、一瞬たりとも目が離せない!これがエンターテインメント小説の最前線だ。

    最後は頭の中がこんがらがってしまった。本物そっくりって・・・そんなマスクは実際に出来るのか?という疑問は置いておいて、犯人の苦しい人生を思うとつい応援してしまった。
    しかし、刑事の娘はいい年していったい何を考えているんだ?熱中症?

  • 面白かった。
    ミステリーとしては、ちょっといまいちでしたが、エンターテイメントとしては楽しめました。
    本題の虚貌とある通り、本書のテーマは「顔」にまつわる物語。
    「顔」にもつコンプレックスや思いがあちこちに散りばめられています。
    人はそれぞれ仮面をまとっている。そんなところが根幹にある物語です。

    そして、いよいよ下巻です。
    滝中の娘は、事務所の社長から整形手術を強制され、そこから逃げ出します。
    彼女の心が壊れていくところが怖い。
    さらに、自分の付き合っている男が21年前の事件の共犯者の一人と知ってしまいます。

    一方で、捜査を進めていくうちに、見つかった荒の死体。
    誰が荒を殺したのか?
    一連の殺人事件の犯人は誰か?
    そして、いよいよ、犯人らしき人が明らかになりますが、その殺人のトリックというかネタがミステリーではちょっと禁じ手(笑)
    ちょっとそれは無いのでは?

    そして、その犯人は最終的に目的を達成するという事になります。

    そして、ラストの展開へ...
    この展開はちょっと切ない。

    下巻では、仮面というかたちで顔が語られます。

    ということで、ミステリーとしては、そりゃないよね。っていうところがありますが、エンターテイメントとしてはとても楽しめる物語でした。

    お勧め!

  • 最高

  • 上巻からの続き。

    事件の加害者たちが次々と殺されていくなかで浮かび上がった容疑者。刑事の滝中はその人物がどうしても容疑者とは思えない。自身の身体も思うように動かず、また、娘の朱音ことも気がかりだ。

    解説で福井晴敏さんが語る冒頭に張られた伏線。それは彼の言葉が真実であることの裏付けになっていたのかと読後にわかった。読み終わったあと、またもう一度違う視点で読むと面白かった。

  • 末期癌と宣告された刑事や、芸能生活に疲れたその刑事の娘などがでてくるので、若干鬱々とした雰囲気が作品全体に漂うものの、面白くはあった。作品のトリック自体がミステリー的に面白くないという意見があるらしいが、顔と心の関係について興味深いものがあったし、そちらのほうが寧ろメインの話のように感じたので、私は全然気にならなかった。

  • ずいぶん昔に読んだ。これはないわ、という意見も聞いたが、私には大変面白かった。確か初めて読んだ雫井さんの作品だったように思う。

  • 「虚貌(下)」
    クライマックスは川で。


    序盤からテンポがどんどん上がっていき、ラストまで駆け抜けていく。クライマックスの川辺のシーンとショウさん追悼のための鮎釣りシーンがハイライトで、真犯人の心情と描写が秀逸。


    二十一年前の美濃加茂事件の加害者の内、ヤク中の坂井田、暴力団の時山が殺され、現場から荒の指紋が見つかり、荒を本ボシとして動くモリさん・辻コンビ。しかし、荒と共に追っていた山田裕二と思しき死体が発見され、更にボスのショウさんにアクシデントが発生する。


    一方で結局ヌード写真を了承した朱音は、同僚とも険悪になり、更にヌード写真を見て自分がどんな表情で撮られていたかを目の当たりにする。それをきっかけに自らの顔を醜いと思い込む様になる。更に朱音はヌードをきっかけに整形するよう社長に勧められる。


    刑事小説路線も朱音の物語も一気に加速して、最終的には2つは同じところに行き着く。どちらともに重要な存在はモリさんだ。癌に侵され闘病中だった彼は、美濃加茂事件を完全に終わらせる為、命をかけて盟友シュウさん率いる現場に舞い戻る。そして見えてくるのは、驚くべき真実。


    そんなモリさんは父の姿も見せる。現役時代のモリさんは、朱音の世話は亡き妻に任せっきりだった。その上に朱音の芸能界入りは反対だった為、彼女との関係修復から始まる(とは言ってもひどく悪い関係ではない)。そこから病にかかり、自らを見失い、そして湯本に依存する朱音を助けようとする。この時は、刑事ではなく父だった。


    モリさんは、美濃加茂事件の重さ、シュウさんとの絆、そして娘の為に命をかけて真犯人を追うのだ。そして全てを終える。かっこよかった。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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