ささらさや (幻冬舎文庫 か 11-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344405042

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。解説にも書いてある通り、加納朋子版ゴースト的なお話ですが、ミステリー的な要素を少し加えた感じで読み始めたら気になり、一気に読みたくなる本です。てるてるあしたという作品の前作となり、てるてるあしたに続いて行く物語です。一冊づつでも楽しめるし連作としても楽しめるし作品です。

  • 加納作品では珍しく人死にが出ます。それも冒頭。亡くなったのは新生児が産まれたばかりの若い父親。この物語は残されたサヤとユウ坊が新たな地、佐々良で人の温もりを感じながら生きていく話。ミステリーなのは死んだ旦那もちょいちょい出現するところ。サヤのために幽霊としてあらゆる人に取り憑いて……。星4なのは、やっぱり人が死んじゃうのは悲しいことなので。

  • 2014年11月に新垣結衣×大泉洋で映画化されてます。交通事故で突然死んだ夫が、時折人の体を借りて現れる。ハートフルミステリーみたいな感じです。主人公サヤの周りにいる人たちも個性豊かで面白いです。自分の周りにいたら面倒そうだけど(笑)私にもこんな奇跡が訪れないかな。読み終えた後、温かい気持ちになります。ただちょっとサヤを美しく描き過ぎかな。交通事故のごたごたはこの物語にはそぐわないのかもしれないけど、やっとの想いで掴んだ幸せをいきなり壊されたのに加害者に対するサヤの態度がちょっと穏やか過ぎる気がします。

  • すごくいいタイミングで出会えた本。夫を失くした主人公が乳児を育てるんだけど、夜泣き対応で途方にくれたり、離乳食に手こずる描写が育児あるあるで愛おしい。主人公を何かと助けてくれる町の人たちもみんな魅力的だった。何度も読み返したいやつ。

  • ◆トランジット・パッセンジャー◆
    交通事故で夫を失ったサヤは、赤ん坊の息子ユウスケと共に佐々良という街へ引っ越します。そこでは不思議な事件が次々と起こりますがその度に亡き夫が他人に乗り移って助けます。そんな中でサヤは母親として少しずつたくましく成長していく。「馬鹿っさや」という言葉の隠れた思いにジーンとしてみたり。。。人を思う「心」を物語にしたらこんなふうになりましたという感じの優しい優しい物語です。

  • 短編集。
    人生とは思いがけないことが起こるものだ。
    ニュースを見ても他人事にしか思えなかった出来事が、ある日突然我が身にふりかかる。
    サヤの夫も、まさかカツオのたたきを考えている最中に死ぬとは思っていなかっただろう。
    サヤにとっては、夫はようやく巡り会えた特別な人だった。
    この人なら…と思い、やっと心から安らげる家庭を持てたと思っていたのに。
    運命って残酷だな、と思わずにはいられない。
    そんなサヤを不憫に思ったからなのか、それとも現世に未練がありすぎたのか。
    サヤの夫は幽霊?となってサヤを見守り続ける。
    純粋で優しくて、馬鹿正直で口下手で、不器用な生き方しかできないサヤ。
    でも、意外に頑固な一面もある。
    実はサヤはとても強い人なのでは?と感じた。
    何て言えばいいのかわからないけれど、柔らかな強さみたいな。
    サヤとユウ坊をめぐって起こるいろいろな出来事。
    母親として成長しながらも、周りの人たちにめぐまれ、夫に見守られながら日々を過ごす。
    寂しさも、やがては薄れていくのだろう。
    ユウ坊が、きっと寂しさも哀しみも、すべてをその笑顔で包み込んで消してくれるはずだ。
    あたたかで、優しくて、ほんの少しの可笑しみもある物語だった。
    それにしても、母親ってなんて強いんだろう。
    電車内でのエリカとおじさんとの対決では、「お見事!」と思いながら「怖っ!」とも思った。
    子供連れってそんなに冷遇されてないように感じるのは当事者じゃないから?
    きっとおじさんのような人は、虫の居所が悪ければ誰にでも八つ当たりするんじゃないのかな。
    エリカのあの切り返しは、もう身についた処世術のようなものなのだろう。
    母親ってやっぱり強い。

  • 子供が生まれた直後に夫を亡くしたさや。
    それを取り巻く、近所のばあさんたち、シングルマザーのえりか。
    そして、無念を残して成仏できない夫。

    ピンチになると成仏できない夫が誰かに乗り移って助けにくる物語ですが、最終的にはさやが成長していく過程が描かれています。

    特に心に残るところはありませんでしたが、楽しく読めました。

  • 和製ゴースト、との評をよく見かけます。僕の場合は映画の方を見てませんので、「へぇ、ゴーストってこんな話なんだ」と感心してしまうわけですが。

    どこまでもどこまでも優しいお話。ただし、誰も悪意を持ってないぶん、"悪役"側の人達の怖さがいっそう際立っている気もします。いい話だねぇ、ホロリとくるねぇ、で終わらせることの出来ない何かが潜んでいるようで、ちょっと評価の難しい1冊です。

    いや、素直に読めばいいんですけどね(苦笑)。

  • 「はるひのの」を先に読んだから順番が前後したけど、それはたいした問題じゃなかったです。本作の赤ん坊が、件の作品の主人公だった、ってのは後から気付きましたが、その関係性を知らなくても十分に楽しめました。少しずつ謎解きみたいなことも出てくるけど、自分的には極上のヒューマンドラマ。使者を絡めても、それが陳腐な仕上がりだと”冒涜やん”って腹立たしく感じるけど、ここではすこぶる効果的に使われています。ほのぼの温かい気持ちに浸れる素敵短編集。

  • 事故で夫を失ったサヤと赤ん坊のユウ坊。お人好しで頼りない彼女が事件に巻き込まれる度に、亡き夫が他人の姿を借りて助けに来る。そして二人が永遠の別れを迎えるまでの愛しく切ない日々。それは青かった柿が赤くなるまでのささやかな時間。
    久代、夏、珠子という一癖も二癖もある三婆たちと、サヤとの距離感が素敵。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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